314 / 591
1月
255.ラナンキュラス
しおりを挟む
1月20日 金曜日
昨日のチョコの流れからか、今朝は香苗が光輝を放つ顔でニコニコしている。そうやって晴れやかな魅力で笑顔だと、香苗は正直とても魅力的な女の子なんだよね。なのに、何で土志田センセ相手だとツンケンしてしまうのかなぁ。
「いっつもそうやって笑ってた方がいいのに。」
「笑ってるじゃん。」
「好きな人の前でもってことよね?麻希ちゃん。」
そうそうっていうと香苗はムゥッて顔をして、私の机の上に頬杖をつくと分かってはいると呟く。香苗の場合分かってるんだけど、何かこう後一歩素直になれないってとこなんだよねぇ。普段の香苗がこうしてニコニコしてるから、余計にあのツンケンした態度は目立ったりもする。実は香苗が土志田センセを嫌ってるなんて噂があったりもするんだ。本当は正反対なんだけど、センセは一寸香苗の好意を感じてるような気配もあるし。ある意味ではセンセと生徒の間はこの関係の方が、安心なんだろうかなんて思ったり。だって、香苗がもしもセンセと付き合ったら、突然香苗の態度がデレッてなりそうな気がする。そう言ったら香苗が更にムゥッて顔になるところ、正直自分もそんな気がしてるんじゃないかな?
それにしても先月までの騒動が嘘みたいだけど、校舎の外壁は補修され始めているし体育館も一端更地に戻して新しく体育館を建てるか検討しているらしい。あの時の怪我が尾を引いているのは教頭先生の骨折くらいなもので、他の人はもう全然なかったことみたいな感じ。マスコミの人たちも今年に入ってからは学校周辺で彷徨くこともないし、世間ではもう全然違うニュースで盛り上がってる。停電の時もそうだったけど、ほんと世の中って1つのことから次のことに移るのが早いよね。
「麻希子。」
不意に呼び掛けられて視線をあげると、智美君が立っていてわたしは何?と首を傾げる。智美君、3学期は今のところお休みなしで皆勤中だったりもするんだよね。このままお休みするのがへったらいいなって、私も思ってたりする。
「麻希子って美術部なんだよな?」
「うん、香苗もだよ。」
「そっか、今から仮入部できる?」
私と香苗はその言葉に目を丸くする。一緒にいた早紀ちゃんも少し驚いたみたいだけど、3人ともが驚いたのに智美君が出来ないの?って首を傾げた。いや、入部出来ない訳じゃないけど、智美君が部活動入るの?どうしたの?って二人とも顔に出たらしくて、入りたくなったら悪いか?と少し智美君が不貞腐れたような顔をする。
いや、悪くないの、悪くないけど驚いた。
だって、智美君は今まで何を言われても帰宅部だったんだもの。自分は忙しいし、足のせいで送り迎えがあるからって、か頑なにお断りしてたの知ってるし。
若瀬君のパソコン部のお誘いも断ってたし、地味に囲碁将棋部からお誘いがあったのも知ってるんだよ?地質研究部の孝君にも誘われてたよね?それなのに、勧誘なしで美術部って驚いちゃうのは仕方ないと思わない?私と早紀ちゃんがそう言うと、呆れたように智美君が眼鏡越しに目を細めた。
「何で、……誘われたの……そこまで知ってるんだよ?」
あ、いや、探ってたわけじゃないよ?偶々聞こえちゃっただけでして。偶々だからね、偶々。香苗も誤魔化そうとして笑顔を浮かべてる。
「え?噂だよ?誘われたみたいっていう噂。ね、早紀。」
「そ、そうね、一寸した噂話よね。」
「新しい部長は香苗だし、智美君がいいならいいよね?香苗。」
「よかった、駄目なのかと思った。」
その言葉に香苗が目を細めてニヤリと笑うのに、智美君は何か思うところがあるみたいで少し眉を潜める。あと1年だけど智美君がやりたいことがあるならいいよねって私が笑うと、そうねと早紀ちゃんも同意してくれて。智美君が絵を描くって想像できないところだけど、記憶力抜群なわけだからそれっていいなぁ。写生しているみたいに風景画とか思い出しながら描けるって、一寸羨ましい気がする。あ、そうそう、いい忘れてたけど来年の美術部部長は香苗になったのです。最初は香苗自身が自分は色々問題も起こしてるし、そういうの向いてないと断ったらしいんだけど。先輩は見るところはちゃんと見てて、後輩の面倒もみて画力もあるし画材も大切にしてるって。勿論2年の暫くは問題はあったけど、今の香苗は信頼できるってお願いされたんだって。
そうそう部長と言えばあの合気道部の部長の話。
結局合気道部の新しい部長は、部活内の2年生がなったんだって。まあ、本来ならそれが普通で、宮内先輩が孝君を突然引き入れて部長にっていう方が無理難題だったんだよね。ただ宮内先輩から頭を下げられて、孝君は週一回だけ指導にいくことになったみたい。在校生に指導ってどうなのって思ったら、孝君てば段位が上がってしまったのを言われて断れなかったんだって。あともう少し段が上がれば指導者並みの実力なんだって言われたら、確かに断りにくい。因みに鳥飼さんにコーチ依頼は今のところ不発らしい。合気道部の子曰く上手いこと逃げられてるらしいんだけど、そう言えば孝君も宮内先輩から上手いこと逃げ回っていたっけ。そういうところ本当に兄弟だよね。
昨日のチョコの流れからか、今朝は香苗が光輝を放つ顔でニコニコしている。そうやって晴れやかな魅力で笑顔だと、香苗は正直とても魅力的な女の子なんだよね。なのに、何で土志田センセ相手だとツンケンしてしまうのかなぁ。
「いっつもそうやって笑ってた方がいいのに。」
「笑ってるじゃん。」
「好きな人の前でもってことよね?麻希ちゃん。」
そうそうっていうと香苗はムゥッて顔をして、私の机の上に頬杖をつくと分かってはいると呟く。香苗の場合分かってるんだけど、何かこう後一歩素直になれないってとこなんだよねぇ。普段の香苗がこうしてニコニコしてるから、余計にあのツンケンした態度は目立ったりもする。実は香苗が土志田センセを嫌ってるなんて噂があったりもするんだ。本当は正反対なんだけど、センセは一寸香苗の好意を感じてるような気配もあるし。ある意味ではセンセと生徒の間はこの関係の方が、安心なんだろうかなんて思ったり。だって、香苗がもしもセンセと付き合ったら、突然香苗の態度がデレッてなりそうな気がする。そう言ったら香苗が更にムゥッて顔になるところ、正直自分もそんな気がしてるんじゃないかな?
それにしても先月までの騒動が嘘みたいだけど、校舎の外壁は補修され始めているし体育館も一端更地に戻して新しく体育館を建てるか検討しているらしい。あの時の怪我が尾を引いているのは教頭先生の骨折くらいなもので、他の人はもう全然なかったことみたいな感じ。マスコミの人たちも今年に入ってからは学校周辺で彷徨くこともないし、世間ではもう全然違うニュースで盛り上がってる。停電の時もそうだったけど、ほんと世の中って1つのことから次のことに移るのが早いよね。
「麻希子。」
不意に呼び掛けられて視線をあげると、智美君が立っていてわたしは何?と首を傾げる。智美君、3学期は今のところお休みなしで皆勤中だったりもするんだよね。このままお休みするのがへったらいいなって、私も思ってたりする。
「麻希子って美術部なんだよな?」
「うん、香苗もだよ。」
「そっか、今から仮入部できる?」
私と香苗はその言葉に目を丸くする。一緒にいた早紀ちゃんも少し驚いたみたいだけど、3人ともが驚いたのに智美君が出来ないの?って首を傾げた。いや、入部出来ない訳じゃないけど、智美君が部活動入るの?どうしたの?って二人とも顔に出たらしくて、入りたくなったら悪いか?と少し智美君が不貞腐れたような顔をする。
いや、悪くないの、悪くないけど驚いた。
だって、智美君は今まで何を言われても帰宅部だったんだもの。自分は忙しいし、足のせいで送り迎えがあるからって、か頑なにお断りしてたの知ってるし。
若瀬君のパソコン部のお誘いも断ってたし、地味に囲碁将棋部からお誘いがあったのも知ってるんだよ?地質研究部の孝君にも誘われてたよね?それなのに、勧誘なしで美術部って驚いちゃうのは仕方ないと思わない?私と早紀ちゃんがそう言うと、呆れたように智美君が眼鏡越しに目を細めた。
「何で、……誘われたの……そこまで知ってるんだよ?」
あ、いや、探ってたわけじゃないよ?偶々聞こえちゃっただけでして。偶々だからね、偶々。香苗も誤魔化そうとして笑顔を浮かべてる。
「え?噂だよ?誘われたみたいっていう噂。ね、早紀。」
「そ、そうね、一寸した噂話よね。」
「新しい部長は香苗だし、智美君がいいならいいよね?香苗。」
「よかった、駄目なのかと思った。」
その言葉に香苗が目を細めてニヤリと笑うのに、智美君は何か思うところがあるみたいで少し眉を潜める。あと1年だけど智美君がやりたいことがあるならいいよねって私が笑うと、そうねと早紀ちゃんも同意してくれて。智美君が絵を描くって想像できないところだけど、記憶力抜群なわけだからそれっていいなぁ。写生しているみたいに風景画とか思い出しながら描けるって、一寸羨ましい気がする。あ、そうそう、いい忘れてたけど来年の美術部部長は香苗になったのです。最初は香苗自身が自分は色々問題も起こしてるし、そういうの向いてないと断ったらしいんだけど。先輩は見るところはちゃんと見てて、後輩の面倒もみて画力もあるし画材も大切にしてるって。勿論2年の暫くは問題はあったけど、今の香苗は信頼できるってお願いされたんだって。
そうそう部長と言えばあの合気道部の部長の話。
結局合気道部の新しい部長は、部活内の2年生がなったんだって。まあ、本来ならそれが普通で、宮内先輩が孝君を突然引き入れて部長にっていう方が無理難題だったんだよね。ただ宮内先輩から頭を下げられて、孝君は週一回だけ指導にいくことになったみたい。在校生に指導ってどうなのって思ったら、孝君てば段位が上がってしまったのを言われて断れなかったんだって。あともう少し段が上がれば指導者並みの実力なんだって言われたら、確かに断りにくい。因みに鳥飼さんにコーチ依頼は今のところ不発らしい。合気道部の子曰く上手いこと逃げられてるらしいんだけど、そう言えば孝君も宮内先輩から上手いこと逃げ回っていたっけ。そういうところ本当に兄弟だよね。
0
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
年下の彼氏には同い年の女性の方がお似合いなので、別れ話をしようと思います!
ほったげな
恋愛
私には年下の彼氏がいる。その彼氏が同い年くらいの女性と街を歩いていた。同じくらいの年の女性の方が彼には似合う。だから、私は彼に別れ話をしようと思う。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる