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1月
238.マツ
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1月3日 火曜日
昨日久々にあったと言うのに、のっけから腹を抱えての大爆笑の智美君。同情とか哀れみの目で見られたくないだろうから、重く沈んだ顔でこられるよりはいいんだろうけど。笑われた私としては何とも不本意だ。お着物が似合うって言われても、完璧モモンガだなってどうよ?!しかも、あんまりにも智美君が笑う上に、仁君なんて孝君にエゾモモンガってどんなのとか聞くし!しかも、孝君てばその場でググるし!!二人でこれが似てるとか、こっちの方が似てるとか言われても嬉しくないんだからっ!頬を膨らませた私をヨシヨシってしてる香苗も早紀ちゃんも笑いを噛み殺しててムゥッてなる。
「いいじゃん、可愛いってことだし。」
「でも、モモンガじゃないもんっ!」
「分かってる分かってる、モモンガみたいに愛くるしくて可愛いって褒められてるんだよ。可愛いものの例えなんだしね。」
「そうよ、麻希ちゃん、先輩達から可愛いって思われてるんだから。」
そうそう、世の中には爬虫類が可愛いひともいるんだから、いいじゃないか可愛い動物に例えられて。そう智美君が言うけど。そう………なのかな?いや、そこで納得してはいけない気がするけど……。そこで何でか可愛いと思う生き物なんて話をするもんだから、なんか上手く誤魔化されてる感が拭えない。不老長寿だから亀とか、蛙とか、可愛いのかなぁってものが幾つも出てくる。
「それより、智美君!明けましておめでとう!」
話を完璧に切り替えた私に、他の面々もそうだ!智美君ってなった。二度目なんだけど皆で並んでお詣りして智美君念願の露店を眺めて歩くと、何故か仁君と智美君が同じ反応をしている。凄い子供みたいにキラキラしてますけど、二人とも
「麻希!あれなに?!」
「えーっと、卵煎餅だね。」
「麻希子、あそこ亀がいる!」
あの何で二人で私に報告したり聞いたり?しかも、智美君が買って頂戴の目で見るし。いや代金はその都度貰ってるけど、自分で買ってみたらいいのに。って言うか智美君も仁君も絶対食べ過ぎ。さっきもんじゃ焼き串と焼き鳥とアメリカンドック食べてたのに、今度は焼きそばとたこ焼き?!香苗も早紀ちゃんも唖然としてるよ?まぁ、その背後で孝君がこっそりたこ焼きを買ってるのは別として。
そんなわけでどっちかと言うと、初詣と言うより露店を満喫した昨日の話。それじゃあねって皆で別れた後、少し智美君が歩くって言うから私は隣に並んで歩く。智美君はお土産なのか、りんご飴と薄焼きってお好み焼きみたいなのを手首にぶら下げている。
「楽しかった?」
「……うん。」
そっか、良かった。って私が言うと智美君は少し黙り込んだ。智美君はどこに車を迎えに来るようにしてるのかな?気にしながらも二人で並んで歩いていると、やっぱり礼慈さんのことが気にかかる。
「礼慈さんの調子はどう?」
「ん……だいぶ落ち着いてる。」
智美君の呟くような声に、私は少しホッとした。落ち着いているからこそ智美君だって来る気になったんだろうけど、それでも改めて答えられれば尚更だ。智美君がまた黙りこんで隣を歩いているのに、私は何か話したいことがあるのかなって覗きこむように見上げる。その仕草に気がついたのか、智美君は少しそっぽを向いて呟く。
「……晴れ着、凄く似合ってる……と思う。」
「ありがと、モモンガって笑わなかったら素直に喜べた。」
「可愛いと思うけど、シマエナガでもいいかな。」
シマエナガ?って首を傾げたら、その首の傾げかたが似てるとか言い出すし。もー、小動物とかに例えるのやめて欲しい。そうは思うけど、今そこを追及する気分にはなれない。私は少し戸惑いながら、智美君を見上げる。
「学校……これそう?」
私の問いかけに智美君は立ち止まると、真っ直ぐに私の顔を見下ろして黙りこんだ。何て答えたらいいか分からないでいるって、一目で分かるその表情は今まで見たことない。来れるとも来れないとも言えない、そんな風にその顔は言っている。
「このまま居なくなっちゃったりしないよね?」
その言葉に智美君は、凄く困った顔をした。楽しい時間を過ごしたから、これが最後って思ってたりしないよねって問いかけると、私の前で智美君の表情は更に困った顔に変わる。多分何処かで智美君がそんな風に考えるんじゃないかって、心の何処かで思ってもいた。でも、智美君はまだほんのちょっとしか外の世界を知らない。
「3年生になったら、もっと色々皆ですることもあるよ?もっと仲良く出来ることもあるし。」
「麻希子は、どうしてそんなに一生懸命引き留めるんだ?」
その言葉に私の頭の中には何故か、あの時の雪ちゃんの姿か浮かびあがった。雨の中何処かへ出ていこうと決心して暗い瞳で佇む雪ちゃんの悲しい姿に、目の前の智美君は何処か似ている気がする。
「今引き留めないと、智美君と会えなくなると思うから。」
それはあの時の感覚と同じ。このままにしておいてはいけないっていう、強い確信に似た気持ち。雪ちゃんと智美君では立場も今の状況もきっと全然違うって分かっているけど、それでもこのままにしておいたら駄目になっちゃう。何故かそう強く感じていた。
昨日久々にあったと言うのに、のっけから腹を抱えての大爆笑の智美君。同情とか哀れみの目で見られたくないだろうから、重く沈んだ顔でこられるよりはいいんだろうけど。笑われた私としては何とも不本意だ。お着物が似合うって言われても、完璧モモンガだなってどうよ?!しかも、あんまりにも智美君が笑う上に、仁君なんて孝君にエゾモモンガってどんなのとか聞くし!しかも、孝君てばその場でググるし!!二人でこれが似てるとか、こっちの方が似てるとか言われても嬉しくないんだからっ!頬を膨らませた私をヨシヨシってしてる香苗も早紀ちゃんも笑いを噛み殺しててムゥッてなる。
「いいじゃん、可愛いってことだし。」
「でも、モモンガじゃないもんっ!」
「分かってる分かってる、モモンガみたいに愛くるしくて可愛いって褒められてるんだよ。可愛いものの例えなんだしね。」
「そうよ、麻希ちゃん、先輩達から可愛いって思われてるんだから。」
そうそう、世の中には爬虫類が可愛いひともいるんだから、いいじゃないか可愛い動物に例えられて。そう智美君が言うけど。そう………なのかな?いや、そこで納得してはいけない気がするけど……。そこで何でか可愛いと思う生き物なんて話をするもんだから、なんか上手く誤魔化されてる感が拭えない。不老長寿だから亀とか、蛙とか、可愛いのかなぁってものが幾つも出てくる。
「それより、智美君!明けましておめでとう!」
話を完璧に切り替えた私に、他の面々もそうだ!智美君ってなった。二度目なんだけど皆で並んでお詣りして智美君念願の露店を眺めて歩くと、何故か仁君と智美君が同じ反応をしている。凄い子供みたいにキラキラしてますけど、二人とも
「麻希!あれなに?!」
「えーっと、卵煎餅だね。」
「麻希子、あそこ亀がいる!」
あの何で二人で私に報告したり聞いたり?しかも、智美君が買って頂戴の目で見るし。いや代金はその都度貰ってるけど、自分で買ってみたらいいのに。って言うか智美君も仁君も絶対食べ過ぎ。さっきもんじゃ焼き串と焼き鳥とアメリカンドック食べてたのに、今度は焼きそばとたこ焼き?!香苗も早紀ちゃんも唖然としてるよ?まぁ、その背後で孝君がこっそりたこ焼きを買ってるのは別として。
そんなわけでどっちかと言うと、初詣と言うより露店を満喫した昨日の話。それじゃあねって皆で別れた後、少し智美君が歩くって言うから私は隣に並んで歩く。智美君はお土産なのか、りんご飴と薄焼きってお好み焼きみたいなのを手首にぶら下げている。
「楽しかった?」
「……うん。」
そっか、良かった。って私が言うと智美君は少し黙り込んだ。智美君はどこに車を迎えに来るようにしてるのかな?気にしながらも二人で並んで歩いていると、やっぱり礼慈さんのことが気にかかる。
「礼慈さんの調子はどう?」
「ん……だいぶ落ち着いてる。」
智美君の呟くような声に、私は少しホッとした。落ち着いているからこそ智美君だって来る気になったんだろうけど、それでも改めて答えられれば尚更だ。智美君がまた黙りこんで隣を歩いているのに、私は何か話したいことがあるのかなって覗きこむように見上げる。その仕草に気がついたのか、智美君は少しそっぽを向いて呟く。
「……晴れ着、凄く似合ってる……と思う。」
「ありがと、モモンガって笑わなかったら素直に喜べた。」
「可愛いと思うけど、シマエナガでもいいかな。」
シマエナガ?って首を傾げたら、その首の傾げかたが似てるとか言い出すし。もー、小動物とかに例えるのやめて欲しい。そうは思うけど、今そこを追及する気分にはなれない。私は少し戸惑いながら、智美君を見上げる。
「学校……これそう?」
私の問いかけに智美君は立ち止まると、真っ直ぐに私の顔を見下ろして黙りこんだ。何て答えたらいいか分からないでいるって、一目で分かるその表情は今まで見たことない。来れるとも来れないとも言えない、そんな風にその顔は言っている。
「このまま居なくなっちゃったりしないよね?」
その言葉に智美君は、凄く困った顔をした。楽しい時間を過ごしたから、これが最後って思ってたりしないよねって問いかけると、私の前で智美君の表情は更に困った顔に変わる。多分何処かで智美君がそんな風に考えるんじゃないかって、心の何処かで思ってもいた。でも、智美君はまだほんのちょっとしか外の世界を知らない。
「3年生になったら、もっと色々皆ですることもあるよ?もっと仲良く出来ることもあるし。」
「麻希子は、どうしてそんなに一生懸命引き留めるんだ?」
その言葉に私の頭の中には何故か、あの時の雪ちゃんの姿か浮かびあがった。雨の中何処かへ出ていこうと決心して暗い瞳で佇む雪ちゃんの悲しい姿に、目の前の智美君は何処か似ている気がする。
「今引き留めないと、智美君と会えなくなると思うから。」
それはあの時の感覚と同じ。このままにしておいてはいけないっていう、強い確信に似た気持ち。雪ちゃんと智美君では立場も今の状況もきっと全然違うって分かっているけど、それでもこのままにしておいたら駄目になっちゃう。何故かそう強く感じていた。
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