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1月

237.タケ

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1月2日 月曜日
「明けましておめでとうー!」

参道の入り口で待ち合わせしていた私に元気に手を降って駆け寄ったのは香苗だ。香苗はニーハイのブーツにコート姿で、足が出てるところ寒くないの?

「ひゃー、お振り袖!」

はい、私は本日も朝からママとお着物と格闘。昨日もやったから今日は悲鳴にはならなかったけど、ママっては毎日同じ晴れ着の分けないでしょって昨日とは別のお振り袖を出してきた。何枚あるのって言ったら3枚って胸を張られたんだけど、多いのか少ないのかはよくわからない。節度のある程度に持ってるんだと言うんだけど、普通のお家には着物が何枚あるものなんだろうか。ちなみに昨日の衛の着物は羽織袴で可愛かった。七五三にも着れるんだけどね、男の子は七歳がないからねぇって。あ、そうなんだ、全部あるのかなって思ってたんだけど。兎も角黒地に紅の刺繍が入った着物は中々かっこよかったので、存分にママが写真撮影をしていた。パパは置いてきぼりにしたせいか、あの後もずっとションボリでどうしたのって聞いたら。

とついじゃうんだなぁ

って。何の事だかわかんないけど、一人しんみりしててママに鬱陶しいわよ!って笑われていた。何はともあれ昨日の紫に赤のお着物と違い、今日は緑に辻が花っていう柄のお着物で帯が赤と黒。少し大人っぽい感じなのかな?半襟っていう襟元と帯あげの布が淡い黄緑なのがポイントみたいだけど。

「似合うなぁ、麻希子。ママさんが着付けたの?」
「うん、着せてもらったー。香苗もかっこかわいい。」
「あはは、お世辞ー。」

節操のある程度でキャピキャピしてたら、薄桃色から朱色に鮮やかな花の模様のお着物姿の早紀ちゃんと、何と!着物姿の孝君が!

「明けましておめでとー!孝君凄い!!着物だ!」
「明けましておめでとう、麻希ちゃん、香苗ちゃん。」

男の子でお正月お着物って珍しい!ってワイワイしたら、孝君の家では着物は別に珍しくないんだって。あ、そう言えば一度行ったときお母さんもお父さんも和服だった。そうだよね、あのお家だもんねぇっ。

「あと誰来るの?」
「えーと、仁が来る。」

仁君やっと携帯かなにか持ったのか。来たら連絡先交換してもらおう。

「あ、あとね、智美君来るよ!」

私の言葉に他の面々が目を丸くする。メンタル調整中ってしてたから、その後連絡しても返答なしだったと孝君が不貞腐れた顔を浮かべた。でも、今朝《行く。》って来たから約束は守ってくれると思うんだよね。そう話してたら、仁君が今年二度目の明けましておめでとうを。連絡先交換しよって言ったら使い方わかんないから、やってって。

「あー、モモちゃーん?!」

そんな私達に歓声めいた声がかかって、私はあうぅってなる。何故、年始からモモですかーっ!駆け寄ってきたのは爽やかな笑顔の坂本先輩だ。

「モモじゃありません!」
「明けましておめでとうー!」

私に飛び付いて来た坂本先輩は、こうしてみると早紀ちゃんのお姉さんみたい。

「ま、真希ちゃん!走ったら危ないよ!!」

坂本先輩の背後からは凄く慌てた顔の男の人と、源川先輩と恭平さん。何にもないところなのに慌てている男の人に、坂本先輩は大丈夫って笑ってる。

「いいなぁお振り袖、私も着たかったぁ。」

そういう坂本先輩はワンピース姿。私の頭を撫でようにも結い上げてあるので撫でられないと不満顔だ。確かに坂本先輩も着物が似合いそうだから、着てないって少し不思議かも。イケメン3人を連れても見劣りがしないところは、流石坂本先輩だけど。

「着ればよかったのに、先輩。」

そんなことを言う香苗はニーハイブーツにショートパンツなんて、晴れ着には攻めてる格好だけど香苗によく似合ってる。坂本先輩も確かにおめかしだけど、大人しい感じな服装だ。

「着ようと準備万端だったんだけどねぇ。」

キャピキャピしてる私達に慌てて声をかけた人が、困った顔で源川先輩達と顔を見合わせている。もしかしてどっちかは坂本先輩の彼氏なのかな?そう思ってたら、坂本先輩が私達に声を潜めた。

「栗毛の方のイケメンがね、私の旦那様なの。」

あ、やっぱり片方が……え?はい?彼氏じゃなくて?旦那様??3人で目を丸くしてると、先輩ってば凄く幸せそうに笑いながら卒業したら彼と結婚するのって爽やかに言う。ええええ?!結婚?!しかも卒業したらって、あと3ヶ月しかないよ?!先輩!!呆気にとられてる私達に、まだ学校では秘密ねって坂本先輩は言うけど。どうみても先輩ってば、嬉しくて話しているようにしか見えない。

あ、あんまり隠す気がなさそう…

しかも、坂本先輩ってば、自分でおめでたなのよってニコニコしてる。おめでたっておめでた?!!!さ、さっき彼氏さんが慌てた意味が分かった。坂本先輩は言いたかった話をすると、じゃあねーって賑やかに将来の旦那様に駆け寄る。

「走っちゃ駄目だよ!真希ちゃん!危ないでしょ?」
「大丈夫よ。転びそうになったら、篠ちゃんが助けてくれるから。」

呆気にとられている私達の理由がわからない孝君と仁君が、背後でキョトンとしている。歩き出した坂本先輩達を見送っていたら、源川先輩が賑やかに笑いながら私の肩をポンと叩く。

「明けましておめでとう。」
「明けましておめでとうございます。」

皆がそれぞれに頭を下げて年始の挨拶をしていたら、源川先輩がマジマジと私の姿を眺める。馬子にも衣装とか、なんかそんな風なことを言われそうな…やな予感……

「振り袖似合うな、モモ。」
「あ、ありがとございます。」

あれ?予想と違って普通に褒められた?

「……やっぱりエゾモモンガだよな。可愛いし。」
「はい?」
「振り袖きたら、完璧。」

ブハッと背後で吹き出す声がする。うう、振り袖を褒められたっていうよりモモンガに余計見えるってことかい!モモンガじゃないもん!不貞腐れた私に笑いながら源川先輩が、またなって言いながら坂本先輩達に追い付く。振り返ると皆して笑ってるのかとおもったら、誰も笑ってない。そこで1人爆笑してたのは、遅れて着いた智美君だった。
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