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11月
204.カスミソウ
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11月30日 火曜日
そうそうこの話は実は昨日の事なんだけど。私はあの時の『茶樹』でした誓い通り。一応建前としては清らかな心のつもりで矢根尾の松尾さんが話していた事を、聞いた通り香苗に親切に教えておいた。アパートの部屋で椅子で縛られた姿で、絶叫していたと話したら香苗が目を丸くする。
「絶叫?!」
「うん、2組の松尾ちゃんがお家まで聞こえて凄かったってお姉さんに話したんだって。」
「しかも椅子って!女にやられた?!だっさ!」
明らかにその話を聞いて、幸福そうに香苗はニンマリ笑う。香苗はなにかを想像したんだろうけど、直後に大爆笑を始める。何がそんなに面白いのか聞いたら、だって椅子だよ?椅子に拘束って気を失ってるか、自分でやらせないと縛れないじゃんっていう。え?まあ確かに言われればそうだね。よく知ってるなぁ香苗ってば。でも大人の男の人が気を失うって凄く難しいよね?って言ったらだからダサいんじゃん、自分で縛らせて女にしっぺ返しくらったんだって言う。
あー確か前に何か変態みたいな本を本屋で立ち読みしてるって誰かが噂の中で話してたもんなぁ。そっか、そう言う方面の変態さんだったんだ。え?でもそんな変態さんと付き合ってたんだよね?香苗。うわぁ悪いけど正直に言って、良かったね、別れて。あのまま付き合ってたら香苗も変態の道に連れ込まれてたかもしれないって思ったら、本気で気持ち悪い。いや、そう言う好みの人を差別してる訳じゃないんだけど、塾の先生が女子高生にそう言うことをしようとしてるかもって思ったら気持ち悪いよ。そう言う好みの人同士なら兎も角。
「香苗、別れて正解だったね。」
「染々言わないでよぉ、黒歴史なんだからさぁ。」
私の声に今は不貞腐れ顔だけど、香苗の表情は矢根尾の事を話していてももの凄くサッパリしてた。それを見てたら香苗にとって矢根尾との事はもう過去の事に変わったんだなぁって感じて、私は無邪気に他の子と話している香苗の姿を眺める。やっぱり恋愛ってする相手も大事なんだなぁ。センセに恋してる香苗は前とは本当に別人みたいに明るくて、凄く前向きに毎日を過ごしてるって感じるんだ。
※※※
と言うのが、昨日の話。
智美君には昨日の約束どおり孝君がチョクチョク気を使ってくれてるけど、何しろ相手があの智美君だからあんまり構うと姿をくらますらしい。あの足で一体どうやると合気道の達人の孝君の前から姿をくらましているのか。正直なところ驚いてしまうけど、考えてたみたらあの足で貯水槽の梯子を登り降りしてるひとだった。今のところ囲まれたり、教科書の嫌がらせみたいなことは起きてないみたい。ついでに言えば、智美君は体育を受けないので、センセみたいにジャージを切り裂かれるような嫌がらせは最初から除外。しかも、智美君てばあの嫌がらせの教科書を、そのままロッカーに置いてる。どうするのって聞いたらそのままにしておくって言うんだから驚きだ。やった方がロッカーそのままの教科書見たら、智美君が気がついてないのかって唖然とするのを楽しみにしてるみたい。それって確かに嫌がらせしてる方が驚きそうだ。
「智美君、孝君と会わなかった?」
「ん?会わなかったよ、何処行ったんだろうな?あいつ。」
早紀ちゃんの質問にシレッと答えてるけど、確実に何処かで孝君から逃げてるのがニンマリした表情から分かる。なんかこうなってくると、真剣に心配してるの馬鹿馬鹿しくなるなぁ智美君って。ここまで来ると実力行使以外は歯牙にもかけなさそうだけど、実力行使されても杖一本で年上を完膚ないくらい叩きのめしたんだよなぁ、智美君。きっと同じことを早紀ちゃんと香苗も思ってたみたいで、少し呆れ顔になってきてる。
「智美君、あんまり虐められてるの気にしてない?」
思わず私が率直に聞くと、智美君ってば真底楽しそうにニッコリ笑いながら言うんだ。
「虐めってこういうもんなんだなぁって感心はしてる。」
「感心?」
智美君らしいと言えばらしい考えだけど、感心っていうのは何に?そう私の顔に出てるみたいで、智美君は真剣な顔で言う。
「あの労力を他に回せたら、さぞかし有意義な活用ができるだろうな。そう思うよな?仁。」
若瀬君と全く違う話をしていた仁君が、唐突に智美君に話をふられて不思議そうに首を傾げる。実は仁君はスマホも何も持ってないらしくて、若瀬君に1番最初に持つのは何がいいか相談してたみたい。
「ん?なんのこと?」
「無駄な労力と時間を使うくらいなら、楽しいことに使う方がいいよなって話さ。」
意図は分からないけど、言葉には納得したみたいで仁君が同意する。いや、確かに楽しいことに労力と時間を使う方が良いに決まってるけど、虐められてる真っ最中とは思えない余裕。ポカーンとしてしまった私達の背後で、やっと戻って来た孝君が智美君の暢気な笑顔に深い溜め息をつくのが聞こえていた。
そうそうこの話は実は昨日の事なんだけど。私はあの時の『茶樹』でした誓い通り。一応建前としては清らかな心のつもりで矢根尾の松尾さんが話していた事を、聞いた通り香苗に親切に教えておいた。アパートの部屋で椅子で縛られた姿で、絶叫していたと話したら香苗が目を丸くする。
「絶叫?!」
「うん、2組の松尾ちゃんがお家まで聞こえて凄かったってお姉さんに話したんだって。」
「しかも椅子って!女にやられた?!だっさ!」
明らかにその話を聞いて、幸福そうに香苗はニンマリ笑う。香苗はなにかを想像したんだろうけど、直後に大爆笑を始める。何がそんなに面白いのか聞いたら、だって椅子だよ?椅子に拘束って気を失ってるか、自分でやらせないと縛れないじゃんっていう。え?まあ確かに言われればそうだね。よく知ってるなぁ香苗ってば。でも大人の男の人が気を失うって凄く難しいよね?って言ったらだからダサいんじゃん、自分で縛らせて女にしっぺ返しくらったんだって言う。
あー確か前に何か変態みたいな本を本屋で立ち読みしてるって誰かが噂の中で話してたもんなぁ。そっか、そう言う方面の変態さんだったんだ。え?でもそんな変態さんと付き合ってたんだよね?香苗。うわぁ悪いけど正直に言って、良かったね、別れて。あのまま付き合ってたら香苗も変態の道に連れ込まれてたかもしれないって思ったら、本気で気持ち悪い。いや、そう言う好みの人を差別してる訳じゃないんだけど、塾の先生が女子高生にそう言うことをしようとしてるかもって思ったら気持ち悪いよ。そう言う好みの人同士なら兎も角。
「香苗、別れて正解だったね。」
「染々言わないでよぉ、黒歴史なんだからさぁ。」
私の声に今は不貞腐れ顔だけど、香苗の表情は矢根尾の事を話していてももの凄くサッパリしてた。それを見てたら香苗にとって矢根尾との事はもう過去の事に変わったんだなぁって感じて、私は無邪気に他の子と話している香苗の姿を眺める。やっぱり恋愛ってする相手も大事なんだなぁ。センセに恋してる香苗は前とは本当に別人みたいに明るくて、凄く前向きに毎日を過ごしてるって感じるんだ。
※※※
と言うのが、昨日の話。
智美君には昨日の約束どおり孝君がチョクチョク気を使ってくれてるけど、何しろ相手があの智美君だからあんまり構うと姿をくらますらしい。あの足で一体どうやると合気道の達人の孝君の前から姿をくらましているのか。正直なところ驚いてしまうけど、考えてたみたらあの足で貯水槽の梯子を登り降りしてるひとだった。今のところ囲まれたり、教科書の嫌がらせみたいなことは起きてないみたい。ついでに言えば、智美君は体育を受けないので、センセみたいにジャージを切り裂かれるような嫌がらせは最初から除外。しかも、智美君てばあの嫌がらせの教科書を、そのままロッカーに置いてる。どうするのって聞いたらそのままにしておくって言うんだから驚きだ。やった方がロッカーそのままの教科書見たら、智美君が気がついてないのかって唖然とするのを楽しみにしてるみたい。それって確かに嫌がらせしてる方が驚きそうだ。
「智美君、孝君と会わなかった?」
「ん?会わなかったよ、何処行ったんだろうな?あいつ。」
早紀ちゃんの質問にシレッと答えてるけど、確実に何処かで孝君から逃げてるのがニンマリした表情から分かる。なんかこうなってくると、真剣に心配してるの馬鹿馬鹿しくなるなぁ智美君って。ここまで来ると実力行使以外は歯牙にもかけなさそうだけど、実力行使されても杖一本で年上を完膚ないくらい叩きのめしたんだよなぁ、智美君。きっと同じことを早紀ちゃんと香苗も思ってたみたいで、少し呆れ顔になってきてる。
「智美君、あんまり虐められてるの気にしてない?」
思わず私が率直に聞くと、智美君ってば真底楽しそうにニッコリ笑いながら言うんだ。
「虐めってこういうもんなんだなぁって感心はしてる。」
「感心?」
智美君らしいと言えばらしい考えだけど、感心っていうのは何に?そう私の顔に出てるみたいで、智美君は真剣な顔で言う。
「あの労力を他に回せたら、さぞかし有意義な活用ができるだろうな。そう思うよな?仁。」
若瀬君と全く違う話をしていた仁君が、唐突に智美君に話をふられて不思議そうに首を傾げる。実は仁君はスマホも何も持ってないらしくて、若瀬君に1番最初に持つのは何がいいか相談してたみたい。
「ん?なんのこと?」
「無駄な労力と時間を使うくらいなら、楽しいことに使う方がいいよなって話さ。」
意図は分からないけど、言葉には納得したみたいで仁君が同意する。いや、確かに楽しいことに労力と時間を使う方が良いに決まってるけど、虐められてる真っ最中とは思えない余裕。ポカーンとしてしまった私達の背後で、やっと戻って来た孝君が智美君の暢気な笑顔に深い溜め息をつくのが聞こえていた。
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