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9月
116.マーガレット
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9月3日水曜日
恋占いでもしたくなるような澄んだ青空。お弁当を膝に空を見上げながら、ボーッとしていると早紀ちゃんと香苗が心配そうに私を覗きこむ。新しい信頼に結ばれた2人は案外気が合うみたいで、教室でも2人で話していることも増えたみたい。今日は智美君はお休みだし、孝君も生徒会の話し合いでお昼には屋上にこないらしい。
「どうしたの?麻希子。ぼーっとして。」
「食欲ないの?麻希ちゃん。」
2人に心配されて私は少し慌ててしまうけど、考え込んでいるのも嫌になってきてしまってキスの話は兎も角今のグルグルしてるところを話してみた。智美君を初めて見た時からドキドキして、格好いいし綺麗だなってずっと考えてる。でも、違う意味で雪ちゃんの事が好きだし大事にしたいって思ってるのは何でだろう。どっちが好きなのかって聞かれても答えられないし、どっちかを彼氏にしたいとかって考えてるわけでもない。恋ってなんなのって正直思う。
「恋ってなにかぁ、麻希子、難しいこと考えてんだ?」
「何って言われると、そうねぇ。」
私の質問に香苗も早紀ちゃんも答えられないみたいに、考え込んでしまった。あれ?簡単にはこれが恋って答えて来ると思ったのに、予想と全然違う反応だ。
「恋ねえ、何なんだろうなぁ、私も分かんないかも。」
「何かって聞かれても、確かに答えにくいわね。」
えええ?2人して好きな人いるじゃんと目が言ってたみたいで、香苗が足をだらしなく伸ばして空を見上げる。
「矢根尾の時もさ、好きだと思ってだけど。あの好きは今とは違うんだよね、正直。」
「違うの?」
「んー、何て言うか好きの質が違う?」
質?好きにも質があるのって私が目を丸くすると、香苗は空を眺めたまま呟くみたいに言う。
「前はさ、あたしが好きなんだから何がなんでも相手にも好きでいてもらわなきゃって必死だったんだよね、あたし。」
そう言われると確かに以前の香苗は、他の事は全部どうでもよくて矢根尾にだけ好かれていたかったみたいにみえる。でも、それを改めて自分で話している香苗は、まるで終わったことみたいに客観的にそれを話しているのが不思議だ。
「相手に好かれてなくても、自分は好きだからいいかなって今は思う。それに、もっと他の色々なこと知らないと相手に好きって言えないなって。」
「うん、私も分かる、その気持ち。香苗ちゃん。」
早紀ちゃんが同意を示したのに、香苗が恥ずかしそうに照れ笑いする。でも、私には少し理解できなくてムーッてなってしまう。
「難しい。」
私の呟きに香苗がおかしそうに笑いだす。早紀ちゃんまでつられて笑いだしたのに、私が不貞腐れる顔をする。だって、笑うけど私には質が違うなんてどころか、恋がなにかがわかんないんだもの。恋するとドキドキして眠れなくなるとか言うけど、夜はよく寝るしご飯も食べるし。小説みたいな恋愛なんて全然理解できない。
「充分麻希ちゃんは分かりやすいと思うけど。」
呟いた早紀ちゃんに香苗が何故か同意してる。何が?どこが?何で分かりやすいの?もー、真実の愛とかってどうやったら理解できるのかちっとも分かんない。
「一回キスでもしてみれば良いのに。」
香苗が唐突にそんなことを言い出して、私は思わずむせこんだ。何で恋の話をすっ飛ばして、唐突にキスすればになるの?!しかも、どうやってキスにいけばいいのよと私は更に不貞腐れようとして、あの時の雪ちゃんをまたもや思い出してしまった。
細くてヒョロヒョロだと思っていたのに、案外しっかりした筋肉がついてた雪ちゃんの体。男子が盛り上がってた腹筋だってちゃんと割れてて、腰の辺りも細いのにしっかりしてた。それに、髪を上に撫で付けた雪ちゃんは綺麗で格好いい。滴ってる雫を気にもしないで、私に壁ドンして少し傾げられた長い睫毛。その後に触れてきた柔らかいのに熱い唇の感触。
突然黙りこんで、しかも真っ赤になってしまった私。香苗は目を丸くして早紀ちゃんにヒソヒソ何か囁いてるつもりなんだろうけど、全部聞こえてるから!
「あれって、キスした?」
「あ、そうなの?」
何でよ!私何にも言ってないよっ!そう言いたいのに上手く言葉にならない。してなくはないけど、あれってどう考えたら良いのか分かんないんだもん。前の時みたいに寝ぼけてるわけでも、熱があるわけでもないし。雪ちゃん頭打ってたから、そのせいなのかもしれないしってブチブチ言う。そしたら呆れたみたいに香苗が私の顔を眺めて、わざとらしい溜め息をつく。
「頭ぶつけてとちくるってキスする訳ないじゃん。」
そうそうと早紀ちゃんまで頷いてるのに、私は余計頬を膨らませる。何で2人して。でも、あのキスってなんだったのかなぁ、正直。そこまで来て雪ちゃんが私の事どう思ってるかなんて、私今まで一度も考えたこともない事に気がついた。それを言った途端早紀ちゃんまで驚いたように目を丸くする。
「雪ちゃん、凄い難物相手にしてるなぁ」
「まあ、そこが麻希ちゃんらしいところよね。」
なんか、私らしいって言われたけど、凄くほめられてない気がするのはどうしてだろう。
恋占いでもしたくなるような澄んだ青空。お弁当を膝に空を見上げながら、ボーッとしていると早紀ちゃんと香苗が心配そうに私を覗きこむ。新しい信頼に結ばれた2人は案外気が合うみたいで、教室でも2人で話していることも増えたみたい。今日は智美君はお休みだし、孝君も生徒会の話し合いでお昼には屋上にこないらしい。
「どうしたの?麻希子。ぼーっとして。」
「食欲ないの?麻希ちゃん。」
2人に心配されて私は少し慌ててしまうけど、考え込んでいるのも嫌になってきてしまってキスの話は兎も角今のグルグルしてるところを話してみた。智美君を初めて見た時からドキドキして、格好いいし綺麗だなってずっと考えてる。でも、違う意味で雪ちゃんの事が好きだし大事にしたいって思ってるのは何でだろう。どっちが好きなのかって聞かれても答えられないし、どっちかを彼氏にしたいとかって考えてるわけでもない。恋ってなんなのって正直思う。
「恋ってなにかぁ、麻希子、難しいこと考えてんだ?」
「何って言われると、そうねぇ。」
私の質問に香苗も早紀ちゃんも答えられないみたいに、考え込んでしまった。あれ?簡単にはこれが恋って答えて来ると思ったのに、予想と全然違う反応だ。
「恋ねえ、何なんだろうなぁ、私も分かんないかも。」
「何かって聞かれても、確かに答えにくいわね。」
えええ?2人して好きな人いるじゃんと目が言ってたみたいで、香苗が足をだらしなく伸ばして空を見上げる。
「矢根尾の時もさ、好きだと思ってだけど。あの好きは今とは違うんだよね、正直。」
「違うの?」
「んー、何て言うか好きの質が違う?」
質?好きにも質があるのって私が目を丸くすると、香苗は空を眺めたまま呟くみたいに言う。
「前はさ、あたしが好きなんだから何がなんでも相手にも好きでいてもらわなきゃって必死だったんだよね、あたし。」
そう言われると確かに以前の香苗は、他の事は全部どうでもよくて矢根尾にだけ好かれていたかったみたいにみえる。でも、それを改めて自分で話している香苗は、まるで終わったことみたいに客観的にそれを話しているのが不思議だ。
「相手に好かれてなくても、自分は好きだからいいかなって今は思う。それに、もっと他の色々なこと知らないと相手に好きって言えないなって。」
「うん、私も分かる、その気持ち。香苗ちゃん。」
早紀ちゃんが同意を示したのに、香苗が恥ずかしそうに照れ笑いする。でも、私には少し理解できなくてムーッてなってしまう。
「難しい。」
私の呟きに香苗がおかしそうに笑いだす。早紀ちゃんまでつられて笑いだしたのに、私が不貞腐れる顔をする。だって、笑うけど私には質が違うなんてどころか、恋がなにかがわかんないんだもの。恋するとドキドキして眠れなくなるとか言うけど、夜はよく寝るしご飯も食べるし。小説みたいな恋愛なんて全然理解できない。
「充分麻希ちゃんは分かりやすいと思うけど。」
呟いた早紀ちゃんに香苗が何故か同意してる。何が?どこが?何で分かりやすいの?もー、真実の愛とかってどうやったら理解できるのかちっとも分かんない。
「一回キスでもしてみれば良いのに。」
香苗が唐突にそんなことを言い出して、私は思わずむせこんだ。何で恋の話をすっ飛ばして、唐突にキスすればになるの?!しかも、どうやってキスにいけばいいのよと私は更に不貞腐れようとして、あの時の雪ちゃんをまたもや思い出してしまった。
細くてヒョロヒョロだと思っていたのに、案外しっかりした筋肉がついてた雪ちゃんの体。男子が盛り上がってた腹筋だってちゃんと割れてて、腰の辺りも細いのにしっかりしてた。それに、髪を上に撫で付けた雪ちゃんは綺麗で格好いい。滴ってる雫を気にもしないで、私に壁ドンして少し傾げられた長い睫毛。その後に触れてきた柔らかいのに熱い唇の感触。
突然黙りこんで、しかも真っ赤になってしまった私。香苗は目を丸くして早紀ちゃんにヒソヒソ何か囁いてるつもりなんだろうけど、全部聞こえてるから!
「あれって、キスした?」
「あ、そうなの?」
何でよ!私何にも言ってないよっ!そう言いたいのに上手く言葉にならない。してなくはないけど、あれってどう考えたら良いのか分かんないんだもん。前の時みたいに寝ぼけてるわけでも、熱があるわけでもないし。雪ちゃん頭打ってたから、そのせいなのかもしれないしってブチブチ言う。そしたら呆れたみたいに香苗が私の顔を眺めて、わざとらしい溜め息をつく。
「頭ぶつけてとちくるってキスする訳ないじゃん。」
そうそうと早紀ちゃんまで頷いてるのに、私は余計頬を膨らませる。何で2人して。でも、あのキスってなんだったのかなぁ、正直。そこまで来て雪ちゃんが私の事どう思ってるかなんて、私今まで一度も考えたこともない事に気がついた。それを言った途端早紀ちゃんまで驚いたように目を丸くする。
「雪ちゃん、凄い難物相手にしてるなぁ」
「まあ、そこが麻希ちゃんらしいところよね。」
なんか、私らしいって言われたけど、凄くほめられてない気がするのはどうしてだろう。
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