GATEKEEPERS  四神奇譚

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第三部

第九幕 境界

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かおるの手は燃えるほどに熱くて、火気を持っている自分でも随分と久々に熱いと考えていた。真冬の最中にしか出会うことがなかったし、何時も薄着で寒そうに顔色を悪くしていたかおるは本当はこんな体温なのかと驚いてしまう。それに彼女は突然に全身から焔を吹き上げたかと思うと、次の瞬間そこには深紅の鬣と鱗を生やした麒麟・炎駒に変容していた。

「………………えん、く?」

目の前にいる深紅の光を放つ姿に忠志が呆然と呟くと、それは僅かに頭を下げて忠志の顔を覗きこむ。かおるが炎駒なのかと一瞬戸惑うが、そんな訳がないと言うことも心のどこかで理解できる。何処かで繋がっているのかもしれないが、同じものではなくてその中にあるものはその瞳を通して見透かすことが出来てしまう。

返してもらいに来たんだ……お前の中の自分を……

他の四神と同じに、自分の中にある火気の根元であるものを炎駒は返してほしいのだ。そう感じた瞬間何かが、記憶よりもずっと深く遠い根底から揺れ動くのを感じ取った。
それは果てしなく過去の事で、他の三人と朱雀だけが異なる。

俺だけ……、朱雀だけ…………

朱雀だけは他の四神とは異なる生まれかたをする。他のものと違って必ず朱雀だけが、炎の中でしか産まれないのは薄々気がついていた。先代の生まれたホテル火災も、自分の家の放火も、どちらも朱雀はその渦中の人間だ。でも、他の三人は身内の死を知ると共に、四神の力が目覚めるのを感じたという。確かに自分も妹の遺体を見た瞬間朱雀が目覚めたが、その時自分の手足は燃え付きかけていた。

朱雀だけは一度死んで生まれてる…………。

双子の片割れを失って、生まれるんだと炎駒は静かに言う。火気は人には選られがたく、片割れの魂と共に炎駒になるものを引き寄せる。その双子は共に育つこともあれば、胎児の時点で共存していることも事態は様々だ。そうするしかなかったのは、一番最初の朱雀が炎の中で二度とこんな悲しく苦しい思いを他人にさせたくないと願ったからだ。
四神の全てが同じように麒麟に選ばれて、同じような願いで、その他からを受け入れたのは、やがて自分が預かったものを育てきった時に完全な麒麟がこんな思いをしなくてすむ世の中を与えてくれると信じたからだった。

「その時が来たってことなのか……?」

そうであれば二度と炎の中で兄弟を失いながら、一度死んで甦る朱雀は生まれない。

そうだと言ってやりたいが……私にも分からない…………

確かに麒麟は生まれようとしているが、炎駒はそうだと言えないという。落胆しかけるけれど、何故そうだと言えないのかとといかけると炎駒は静かに告げた。確かに朱雀は今までも特殊な存在だったが、今までの朱雀とは忠志も大きく異なっていたのだ。

片割れが、女児なんて今まではなかったからな…………それに、

つまり今の四神が四人とも特異で、稀で、そして運命の時の者だった。何もかもが予想外で何もかもが想定出来ないから、炎駒にも答えられない。しかも当の麒麟自身まで想定外の存在として、育ってしまったのだ。

「想定外?」

人間でありたいなんて麒麟が考えるなんて、そう炎駒は何故か穏やかに笑うように囁いた。人間とは違う存在の麒麟が、人間でありたいと願う。そんな奇妙な奇跡が何故起こってしまったのか、何でか忠志には目の前の炎駒を見て理解できる気がした。
自分の前で最初に炎駒と名乗ったのは、麒麟でではなく澤江仁だ。
そう理解した瞬間、全身から何かが抜けていくような感覚と一緒に力が抜けて足元が揺らぐのを感じていた。何が起きたのか分からないが、忠志の役割はこれですべて終わりだと頭の中で囁く。

帰って当然のように暮らして、何時か何処かで和希やかおるにもう一度。

そう願ってはいたが、かおるの存在は人間ですらなく、和希は殺人鬼の上に記憶を次々と失っていく。これで終わりだと感じたら、このまま終わってしまうのもいいかとすら感じてしまう。帰る方法すら分からないのだから、それで終わってもと諦めた瞬間ガクンと体が落下を止めた。かおるのように熱くて確りした手が、自分の手を握ったのだ。ふと視線を向けると、そこに居たのはかおるではなかった。

「か…………ずき?」

幼い頃の記憶とは違う金髪は自分と同じような明るさだが、顔立ちは間違いなく三浦和希だった。目の前で和希が自分の手を握り身を乗り出して、自分が落ちないよう必死になっているのが見てとれる。

「何、やってんだよ!!片手怪我してんだ!早く上がれよ!!」

今まで聞いたことのない怒鳴り声。驚いて見れば自分の手を握っている反対、右手はダランとしていて関節でも外れているように見えた。既に炎駒の姿はなく、崖のような足元は底の見えない闇で自分がどうなっているのかも理解できない忠志を支えているのは和希の腕一本だ。支えることですら驚きだが、火気を体内に宿したと信哉から聞いていたから、それでなんとか支えているのだと気がつく。

「忠志!早く上がれっ!!」
「………………和希……。」

殺人鬼で逮捕されれば死刑になるしかない三浦和希。それに全てが終わってしまった自分に、菊池遥の中で消えてしまった真名かおる。戻ったとして何か自分達には未来があるのだろうかと、今まで感じたことのない絶望感に心が包み込まれてしまう。終わりなのだから、二人ともこの地の底に落ちて終わってしまえば、そう考える忠志を支えきれなくなって和希が呻く。

「一緒に…………。」

終わりにしようと告げかけた瞬間、突然に白銀の獣が和希の背後から顔をつきだしたのに忠志は目を丸くした。それは人間の顔をしているのに体は銀色と黒の縞模様の虎の身体、しかも尾は異様に太く大きな蛇の頭で、それが音もなく忠志の襟元を毒牙も突き立てないように噛むとズリズリと一気に引き摺り上げ始める。どう見てもというよりは異形のものだと一目で分かるが、それは全くも敵意もなく二人を助けようとしていた。

「た、すかった……。」

忠志を上に引き上げた後に、和希が肩の痛みに呻きながら忠志の手を掴んだまま空を見上げいう。だがその獣は和希には顔を向けるでもなく、意図も容易く二人を尾の蛇で背に担ぎ上げてヒョウと甲高く哭く。その声はまるで泣いているように物悲しく響き唐突に空に駆け昇っていくのに、和希は驚いたように目を丸くする。

「あんた……何?亜希子の知り合い?」

その背で何かに安堵したように毛皮に触れて問いかける和希に異形は何も答えることもなく、まるで階段でもあるように勢いよく宙を駆け上がり出した。



※※※



その腕を見上げた瞬間、義人は驚きに目を丸くしていた。そこに居たのは宙を飛ぶことはできない筈の信哉で、その体は薄く発行して白銀に光ったまま。そしてその頭上には信哉の身体と同じく、白銀に光る鬣をした麒麟が一体存在して宙に浮かんでいる。

「し、んやさん?」
「確りしろ、義人。帰るぞ。」

瞬きをしても中空に浮かんでいる信哉の姿は消えることもなく、腕を掴んだ指の感触も確り現実として残っていて、しかも信哉は何一つ諦めもしていない。驚きながらその姿を見上げると白銀の鬣を靡かせたの麒麟が、青い鬣の麒麟と並び立つ。瓜二つなのに全く別な存在の二体が、闇の中で鮮やかに発光して辺りを照らす。

「あれは……?」
「索冥。聳孤や炎駒と同じだ。」

同じ?と問い返すと説明が難しいと信哉は苦笑いしながら、グイと一気に腕を引き上げ同じ高さまで義人を引き上げた。索冥と呼ばれる白銀の鬣の一体が僅かに頭をふり頭上を仰ぐのに、分かっていると言いたげに信哉が義人に口を開く。

「義人。向こうだ、行こう。」

足元の黒い滝はいつまでも絶えることなく、音もなくいつまでも地の底に向かって落ちて行き、その奥は底の見えない漆黒の闇。底に向かって落ちていく様々な記憶は既に洋装ではなく、絹織物であったり綿の着物だったりしていく。羨み、羨望し、沢山の所謂負の感情というものを吸い込んでいくのが見える。

「どこに……向かうんですか?信哉さん。」
「忠志を拾って、悌を拾って帰る。」

迷いもなくそう答える信哉にはまるで、その帰途の路が見えているようだ。手を引かれ迷いもなく宙を駆けているのが、それこそ奇妙なのにその自信に何故かひどく安堵する。そして、同時に聳孤は死んだと告げたのにと戸惑いもしていた。音もなく傍を駆けている二体は声を出すわけでもないのに、何か会話を交わしているようにも見えて義人は戸惑いながら信哉の背中を見つめる。
握られた手はこの世界に落とされた時のような幻覚とは思えなかった。確りと体温が感じられ、ハッキリと自分の手を握っていて、そして唐突に気がつくと足元が土を踏んでいる。

「土……。」
「見えるか?よし。」

思わず口にした瞬間信哉が手を離したかと思うと、突然に悲鳴が上がった。

「わぁっ!!!」

沸いて出たという言葉が一番ふさわしいも思うが、中空から投げ出された身体を咄嗟に抱き止めたのは信哉で目を回したように忠志がその腕の中でうえっと奇妙な声を上げる。その上頭上を見上げた義人の上には気絶している三浦和希が落ちてくる始末だ。

「な、何で落とすんだよっ!」

異形のものが頭上で浮かんだまま今も意識のある三人を人間の顔で見下ろすと、疲れた女性の掠れた声で囁く。いつの間にか三人の背後には三体目の麒麟が姿を見せていて、三色の麒麟が顔を揃えてその異形は怯えたように後退る。

《敵意はないわ…………子供を助けに来たの…………。》

その言葉に三体の麒麟は顔を見合わせて何か交わすように視線をあわせる。立ち上がった忠志が、その姿を見上げると、それは少しだけ高度を下げて忠志に近寄ると奇妙な事に人間の声で小さく囁きかけた。

「これ以上は………もう、…越えられない……、その子を連れて帰って………………。」
「あんたは…………?」
「その子の…………親みたいなものよ…………、可哀想な子、長くは生きられないかもしれないけど…………連れて帰って欲しいの。」

穏やかで悲しげな声に、思わず忠志が何かを言いかける。戻っても殺人鬼として捕まるだけの幼馴染みの両親のことも知っているのに、人間の顔をしたそれは和希を自分の子だというのだ。そして異形なのに、和希を元の世界に連れて帰って欲しいと願う。

「この先に……まだ、何人か残っているの。でも貴方達なら……連れていけるでしょう……?」

その意図がなんなのか理解できた様子の信哉がそれに向かって分かったと答えると、彼女は何故か安堵したような顔で気を失った和希の顔を見上げてホトホトと綺麗な真珠のような涙を溢した。そうして悲しげに頭を垂れると、道を譲るように後退り視界からとけるように姿を消していく。

《さぁ、いって…………ここも、やがて崩れるわ…………。》

それに背を押されるように三浦和希を背負った忠志を連れて、再び三人は路を進み始めている。




※※※



立ち上がると目の前にいたのは黒い鬣を靡かせた麒麟だった。見たこともないその姿に唖然とすると、頭を下げた麒麟の黒曜石のような瞳が悌順の瞳を覗き込んでくる。穏やかで静かな瞳をしたそれは促すように悌順を先導して、再び菜の花畑を横切り始めていた。さっきまでとは違うのは作り物めいた花畑ではなく、花は散り始め視線の先の巨大な古木は枯れようとしている。そしてそこに立っているのは、青年の姿だった。

「…………仁。」

そこに立つ澤江仁に黒い鬣をした麒麟が歩みより、彼は真っ直ぐに悌順の顔を見つめる。その瞳は普段から見慣れた生徒の瞳でもなく、ここ何ヵ月も共に過ごしてきた人間のものでもなかった。

《もう少しで、皆がくる。》

その声が囁き、それは酷く穏やかで悲しげに聞こえる。
物語の始まりは、麒麟の存在だった。
混沌が太極になり、陰と陽に別れた時、順に五つの気は生まれ循環した。陰は渾沌にかわり、陽はやがて麒麟になって二つは相反するものだ。だが麒麟は千年しか寿命を持たず、新たな麒麟を産み出すのには他の四つの気を純粋な密度で育てないとならなかった。それを育てるためには器が必要で、器として選ばれたのが人外だったのだ。ただ人でないものは、それを育てる長い時を堪えられなかった。力に酔って純粋なものを育てられず、勿論人も動物も一体では命が短すぎて長く育てることはできない。だから四神を宿す人間を産み出したのだ。欲に左右されないよう孤独で子孫を作れない存在だけが、受け継ぎながらそれを育てる。

《…………それが一番だと考えた…………けれど、それが一番残酷な選択だった。》

麒麟が選んだのは病や戦で身内をなくした人間で、その約束は強力な力で四神の存在を縛りつけ続けた。力の欠片を依り代にして人間の魂ごと縛り付けた四神の力は延々と長い年月を縛り続け、ここまで続いてしまったのだ。同時に地の底の渾沌に力を渡すわけにはいかないから、四神は力の漏れ落ちる穴を塞ぎ続けないとならなかった。

「……それで、何でお前は俺達と暮らしたんだ?」

育ちきったものを受け取るだけだったら、既に一年近くこうして一緒に暮らす必要なんてなかった。それなのに澤江仁として四人の前にやって来た麒麟は、まるで普通の人間のように暮らしたのだ。

《記憶を……預けていた人間の目通して、時々世の中を見ていた…………。》

長く眠りにつき力が育つのを待つ間、麒麟はその力を見守るように、自分の記憶も同じように預けていたのだ。その記憶の持ち主を通して世界を見ているうち、ずっと淡々と何の変化のなかった記憶に色がついたのだという。
唐突な変化。
人間らしく生きようと足掻いて見せた四神の姿に、今までただの器でしかなかった四神も式読や星読の姿に興味が生まれた。何故、人間らしく生きないといけないのか、何故突然足掻き変わろうとしたのか、それを知りたくなったから、麒麟は昔記憶を預けた人間の姿を借りて戯れにやって来たのだ。

「戯れ……か。」
《そうだ。》


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