GATEKEEPERS  四神奇譚

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第三部

第五幕 都市下・宇野邸

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視界の中に広がるのは鬱蒼とした深い森と険しい崖。
微かに流れる沢の音、鳥の鳴く声と木々の葉擦れの音に、何処か遠くで獣の嘶く声がする。ここで聞き続けていれば、やがては夜になりトラツグミの細く悲しげな鳴き声が虫の音と共に響く。別に特別なことではなく、ここではさも当然の日常の姿だ。長い時の中で視界に広がる世界は緩やかに変化を見せるが、それはほんの僅かな些細な変化にしか過ぎない。
様々な生き物を眺めて、それらが産まれ育ち朽ちていくのを見た。
時には火を使い木々で住みかを作る生き物も居たが、いつの間にかそれは朽ちてしまっていて、気が付けは住みかにしていた木々も朽ち森に飲み込まれていく。
何もかもが流転してやがては土に還る。
それをただジッと見つめていく。
他の生き物のように同胞もなく、ただ独りきりで永劫にも感じる時の中を変わることもない。成長すら感じずにただその中で過ごして、長い年月を経ていくのを見つめながら時を待つ。
それが与えられた全てだった。
正直なところ他には何も求められてはいない。
ただひたすらにこの自然の中で過ごし、長き年月をここで待ち続けている。

何も考えることもなくただひたすらに時を待つ

それが苦痛だとか孤独だとかという感情は何一つ持ち合わせていない。何しろそんなものは与えられていないし、求められてもいない。他に何も与えられることはなく感じることもなく、四季の移り変わりだけを感じながらそこに居続ける。そんな風にして誰かに必要とされることも知らず、やがて来る時のために穏やかに待ち続けてきたのだ。

無垢なまま

当然のことだけを得て、そのために存在してきた。それ以外のことに目を向けることもなく、ただ産まれたときのまま変わらないのに疑問すら持たない存在。やがて時が近づいて、本能が囁く。

あれらから受け取らねば

その感覚にそうかと納得して立ち上がると、それはそれに成るべく、ユックリと歩きだす。そうして光を目指してここまでやって来たのだ。あれらから直ぐ様受け取り去る筈だったが、どうやってあれを受けとるのか方法すら長すぎる年月で互いに失念してしまったようだ。
それのせいなのか気がつけば今の自分の中には、無垢以外のものがいる。

余計なもの

そう思うと自分の中のそれが思わぬほどに中で抵抗する。余計なんかじゃないと激しく抗議して、返せと叫びたててくるのに密かに驚いてしまう。そんなにも大切なものが生まれると言うことの意味を知りたくなる。そんなものがどうして今まで与えられることがなかったのか、その理由を知りたいと密かに考えてしまう。
記憶の中の青々とした緑を眼下に眺め、再びそれは森の木々の梢の音に耳を傾け沢を跳ねる岩魚の水音に耳を澄ます。やがて夜が来てトラツグミが鳴き始めると、それに引かれた闇が物悲しげな顔をして浮かび始める。
だが、それに何をするわけでもない。これは記憶なのだから、ただ何時もと同じく眺めるだけに過ぎないのだ。



※※※



ふっと意識が眠りの底から戻ってきて、瞼に日の光を感じる。瞬きして見つめる視界は、白い天井と何時もとは違う香りのする室内。体を起こして周囲を見渡すがここがどこなのか全く分からないし、記憶の中の木立も棗の木も感じない。一瞬こちらが夢なのか途すら考えるが、かけて寝ていたらしい布団をはいで抜き出した足は普通に床に降ろされた。

足……

違和感はあるが、これも自分の足だと不思議なことを頭で考える。これも?ではこれでない足はなんなのだと思うのに答えが導き出せない。頭の中は何もない空白だけで、歩き出してもフワフワとして何が本当なのか現実なのか判別がつかない。野山を歩き回っていた記憶が重なって、同時にこの空間を歩く足。
生き物の気配がすると無意識に考えて、そちらに足が動いているが意図した動きではない。光に溢れた部屋の中に栗毛に近いような黒髪をフワフワと揺らして、丸い栗鼠や兎のような純粋な光を湛えた瞳がこちらを見つめる。

「仁君、おはよ。なにか食べる?」

当然のように声をかけられるが、見ている世界が何なのか理解できないでいる。ここは何なのか、夢なのか、その疑問が頭を埋めて、相手が仁と呼んだのが誰のことなのかすら分からない。戸惑い凍りついていると背後から軽く小動物のような軽やかさで駆け寄って来る気配がして、強い光が射し込む。足元から見上げて覗きこむ顔が、鮮やかに微笑みかけて口を開く。

「あー、仁君だ!どうしたの?!家にお泊まりしてたの?!」

仁。
澤江仁。
そうだ。
自分は澤江仁で、この光を持っているのは智美や衛。
衛は宇野衛、同じように少し光ってる宇野さんと暮らしてる。

「衛?」
「おはよぉ!仁君。」

うん、と頷きながら頭の中を引き寄せる。
宇野さんの恋人は、信哉と似た光が少しある麻希子。
流れ込むように数珠繋ぎになって思い出すと、リビングでじぶんにこえをかけたのが麻希子だとわかる。

「麻希子。」

仁の声に麻希子は何も言わずに、優しく微笑み立ち上がって、何か作ろうかって言いながらキッチンに向かう。あっという間に湯気をたてるスープとエビピラフが出来上がって、テーブルに並べられると衛に手を引かれて椅子に腰掛け手を合わせる。口に含むスープの味が口の中に広がると、幸福感が頭をしめていく。

美味しい……。

簡単に短時間でこんなに美味しいものを作れるのは凄いことだと思う。自分でも何度か信哉と一緒に作ってみたが、人間の感覚は不思議で本能的に対処していることが多くて真似できない。そんなことを無意識に考えてしまう自分に、我に帰ってしまっていた。

人間は…………って、俺は違うってこと?そんなわけない、体力がなくて倒れることがあるくらい、何も人間と変わらない筈だ

「仁君……何か…………思い出したの?」

麻希子にそう問いかけられて、思わず人間はと考える自分に困惑する。何故自分は人間なのに、人間とは別の枠から考えるようにいってしまうのか。それを突き詰めるのは恐ろしく悲しい。麻希子にそれを話してしまうのは、怖くて悲しいのだと思う。だけど空白ばかりの記憶の中には、あの光景だけが鮮明に刻み込まれていて。

「断片的……。」
「断片?」
「森とか…………沢とか…………家…………。」

鬱蒼とした深い森と険しい崖、谷川に落ちる雪解けの染み出していく沢。何時かは人が暮らしていたこともあるが、既に朽ち果て森の一部に飲まれつつある家屋。それが何処なのか、そして何時なのかすら答えることができない。もしかしたら、夢に過ぎなくて、現実ではないかもしれない光景。
呟くように言うと、余りにも断片的過ぎるみたいで麻希子は心配したように見つめる。壊れた硝子の破片みたいに部分的で、キラキラ光るけどその前後は何も繋がらない。それなのにその光景が今ある方の記憶を照らすと、そこがまるで真っ白になってしまって抜け落ちていく。

「照らされると、そこが真っ白くなって抜け落ちる。」

呟くとそうとしか説明できないのに気がつく。ここにある光で引き留められなければ、きっとあのまま何もかも失っていた。智美とよく似た気配の衛が仁と呼んでくれなければ、きっと澤江仁はあのまま消え去ってしまっていた気がする。

「衛の声で……光が少し遮られた。ありがとう。」

戸惑いながら仁を見つめる二人の姿に、それでももう時間がないのは肌で感じていた。恐らく次の季節は無理だと何故か感じ取れているのは、既に殻に細かいヒビが入り始めているのを感じているからでもある。



※※※



タイミングよく顔を会わせた四倉梨央が信哉の家に向かおうとしていたのを引き留めた宇野智雪は、不可解な現状を彼女に説明していた。あり得ない筈の親戚の出現と行方がわからなくなっている幼馴染み。実際に信哉と交際している梨央も用があって信哉と連絡をとろうとしていたが、とれないのを気にして自宅に向かおうとしていたところだった。合鍵を既に持っている彼女が突然部屋に入って行って、その得体の知れない親戚と顔をあわせて何も起きないとは思えない。

「悌順の方も同じで、いない筈の親戚が家を占拠してます。」
「気持ち悪いな。」

雪の話を総合的にまとめてみた梨央の感想がそれで、彼女は暫し考え込んだ様子だ。

「仁もいないのか?……家に。」
「その仁君は、昨日の夜に逃げるように言われて、家で預かってます。」

その言葉に四倉梨央が眉を潜める。恋人の預かっていた少年は逃げるように言われて、恋人は目下連絡がとれない状況。家に乗り込んでもいいが、そうするには情報が足りないなと彼女は雪と似た思考過程で冷静に言う。

「幼馴染みの職場知ってるか?もう一人の方。」
「知ってます、知り合いもいますから。ああ、信哉の方も今うちの雑誌で連載持ってるから、連絡が来てるかもしれない……。」

彼女の一言で雪にも少しだけ何をすればいいかが見えた気がして、ブツブツと考えながら呟くのに彼女は微かに微笑む。その微笑みは昔よく接していた信哉の母親の鳥飼澪に少し似ていて、雪は思わず見いってしまっていた。

「私も知り合いにそういうの調べるのが得意な奴がいるから、情報を集めてもらう。仁のことは頼むんでもいいか?」
「わ、わかりました。」

四倉梨央は都立総合病院の看護師でもあるが、実家はここ周辺では現在は土建会社という由緒正しい任侠一家。実は高校時代のヤンチャな辺りに信哉を初め雪と悌順の三人が、組員にスカウトされる騒動を起こしたことのある正にお相手だったりもする。
流石に年の功で無茶はしないだろうとは思いつつ、危ないことはしないで下さいと釘を刺す。これでもし彼女に何か起きでもしたら信哉が本気で暴れ兼ねないし、本気で暴れられたら恐らく雪どころか誰にも止められない。

「私はただの看護師だから危ないことは出来ないから、そっちは信哉と幼馴染みに任せておくよ。」

賑やかにそんなことを口にした彼女と改めて連絡先を交換する。それにしてもある意味人間兵器みたいな信哉と実はある意味では同等に暴れる能力のある土志田悌順が、そう簡単に誰かに捕まるとは思えない。大体にして悌順は従弟の宇佐川義人と暮らしているし、入り浸る槙山忠志だっている。
宇佐川義人だってあんなに穏和そうにしていて、柔道は実は有段者なのはあまり知られていない。それに槙山忠志だって元は体操の都大会優勝者で、そうそう簡単に何か出来る相手とも思えないのだ。四倉梨央と別れて自宅に戻りながら違和感が増していくのに気がついて、雪は一先ず同級生の風間祥太に電話をかけていた。

『どうした?宇野?何かあったのか?』
「風間、近郊でなんか起きてるとか聞いてないか?信哉と悌順が連絡がとれない。」

その言葉だけで相手には異変が伝わるのだから、信哉と悌順の認識というのもおかしなものだ。先日夜回りで会ったがと風間は考え込むように呟いて、事故や喧嘩騒ぎはなかったなと考えながら言う。

「従弟の義人もいない。後は、槙山って……。」
『槙山?槙山忠志か?』
「なんだ、知ってるのか?」

話せば何でか槙山忠志のことも知っているらしく、風間は尚更考え込んだ。自由業みたいな信哉と槙山なら兎も角、悌順や義人が消えるのは確かにおかしいなと答えられて随分と槙山のことも知っているのだとわかった。

『失踪届け出すか?雪。』
「出したいところだけど、何でか突然親戚を名乗る奴等がそれぞれでてきて、自宅を占拠してる。」
『何だと?あいつら親戚はもういないだろ。』

流石に数少ない幼稚園から高校までの付き合いだけあって、風間も二人の家庭環境はバッチリだった。俄然おかしな状況に刑事の風間の声が真剣味を増して、訝しげに言う。

『信哉の親父さんはそれを知ってるのか?』
「なんだ、そこも知ってるのか?」

この間事件の協力をして貰った時に聞いたと風間が言うが、確かに信哉の親戚を名乗るなら父親の関係も知っている可能性はある。

『一応連絡先は知ってるが、信哉が連絡とれなくなってどれくらいだ?』
「大体半日。」
『案外短いな……、明日まで連絡がとれなきゃ親父さんに聞くか。』

早急に連絡して騒ぎを広げるわけにはいかない刑事らしい時間の取り方に、苦笑いしながら何か分かったら教えてくれと頼んでおく。それが済んでから何気なく連絡をとったのは外崎宏太だった。

『おー、どうしたよ?雪。』

相変わらず人を食ったように暢気そうな口調だが、街の騒動なら外崎に聞いた方が早そうだと気がついたのだ。少し聞きたいことがあってと口にした途端、相手は当然みたいにこう口にした。

『信哉と先生の兄ちゃんの件だろ?雪。』
「…………何処かに盗聴器つけてんですか?僕に。」

電話の向こうで、ははと暢気に笑う外崎はお前につけてもおもしろくないだろなんて平然と言う有り様だ。面白かったらつけかねないのかと心底呆れたくなるが、ここでそれを言っても外崎宏太にはどこ吹く風に違いない。何しろ外崎と来たら街のどこにどれくらいの盗聴器を仕掛けているか、わかったものじゃないのだ。

『リオに頼まれて、目下胡散臭い親戚がどこから現れたか調べてんだよ。』
「…………何で四倉さんが出てくるんです?」

そこを問いかけられて外崎は暢気に知らねぇのかと言う。

『俺の幼馴染みだよ、あのアマ。いつの間にか信哉とできてんだ。』
「生々しい表現止めないと、可愛い奥さんに嫌われますよ?」
『問題ねぇ、これも含めて愛されてるぞ?』

これだからと言いたくなるが、なら話が早い。親戚と名乗るものが何者で何処から来て、二人の家を占拠したのか分かれば、信哉達に何が起きているかも分かるだろう。おまけに警察と都立総合病院にも情報がはいればわかるし、後は都立第三高校の教頭でもある福上と信哉の父親の真見塚成孝にも情報を得られれば。香坂の自宅なんかも福上に聞いてから、そう考え色々と算段していた矢先、ハッと雪はお姫様のことを思い出す。

「麻希子。」
「うん。」
「麻希子、状況が分からないから、あんまり香坂に電話しないで。」

その言葉に既に何度か電話しているのに、思わず溜め息をつきたくなる。危なかった、これ以上ほっておいたらうちのお姫様は何をどうするか分かったものではないと考えてしまう。

「麻希子は香坂の自宅の場所は分かるの?」
「正確な住所とか、位置は分かんない……何回かお邪魔したことは……。」

何だとと言う思いが顔に出たのか、お見舞いだもんと麻希子が慌てて言い訳する。そこは後でキッチリさせて貰うことにして、現状がどう言うことかだけは説明しておくことにした。
信哉と悌順はどちらも行方が分からないこと、親戚はいない筈の親戚を名乗る人間勝手に入り込んでいること。香坂の関連は分からないが、信哉と香坂が知り合いなら、何か関連した事態で澤江仁に逃げるように連絡したに違いない。つまり仁の事を探しているかもしれないから、麻希子が香坂智美に連絡をとる内にここにいることがばれてしまう可能性があること。一先ず警察の風間と情報通の外崎には協力してもらっているから

「巻き込まれて欲しくないから普段通りにしてて。何かあったらちゃんと連絡も説明もするって絶対約束するから。いい?」

何時になく厳しく言うが、これでも時に行方不明になったりするので不安は拭えない。何とか早い内にけりをつけておかないとと雪は思案を巡らせていた。
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