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第一部
第五幕 大都市下
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虚空に浮かんでいた饕餮が、フワリと邪悪な笑みを浮かべたまま地表へ降り立った。
まるで饕餮は四人の事などすっかり忘れ去ってしまったかのように、癒され艶を増した自分の体を試す様にウットリとした表情で眺めた。それは不意に背の肉を盛り上がらせ熊のような巨体に膨れ上がったかと思うと、次の瞬間には収束し均整のとれた長身に変容する。その変容に伴う妖気が、風を巻き起こすように四方に散った。
『くそっ!何て妖気だ!』
形勢は完全に逆転した。
毒気と化した地脈から吹き出し続ける気は、既に妖気と等しかった。ゲートの奥から吹き上げる妖気に敵である饕餮の傷が見る間に癒え、四人の方が気力を確実に削がれ始めている。それを如実に突きつけられながら、苦悩を秘めた小さな声が玄武の口から溢れ落ちた。
今でも彼等には要が何だったのかは分からないが、ある意味中立であった地脈を完全に変貌させてしまった。今まで中立な存在だと考えていた地脈が、実は自分達よりの存在だったことに気がつかされる。地脈が妖気に変わり果てたのは痛みと共に肌で感じ取れた。
このままでは、奴の思うつぼだ。
その思考が感覚で伝わったかのように、ほとんど同時に玄武と朱雀の体が動きそれぞれの手の前の空間に大気中から光のような粒子が凝縮され始める。玄武の纏う蛇の口前には花弁が広がる様に渦を巻く水流が姿を現し、朱雀の開いた羽の先では紅蓮の炎がうねり音を立てた。しかし、生み出された二つが先程までと比較しても確実に弱っている事が視覚的に明らかなのに、白虎は小さく舌打ちした。
奴と地脈の妖気に当てられている、あれじゃ駄目だ。
二方向から同時に襲いかかる水と炎を見つめながら背の白銀と黒の毛を逆立てて白虎は、自分達の形勢が如何に不利かを痛感した。饕餮は襲いかかるそのどちらも視認する事もなく、無造作に両手を掲げそれぞれに片手をかざす。炎は右の掌に触れた瞬間まるで啜りあげられるような音を立てて、ジュルンとその体内に呑み込まれる。片や左の掌に触れた水は瞬時にジュワァッと激しい音を立てて、濛々とした白い水蒸気となって立ち上った。その水蒸気を煙幕がわりに弧を描いて挑みかかる白虎の白銀の刃を、いとも簡単に片腕で弾き飛ばす。続けざまに放たれる青龍の風の矢すらも柳の様にひらりと簡単に体を揺らして避けると饕餮は、満ち溢れる妖力に楽しげな邪悪な笑声を上げた。
『もっと本気でかかって来い、四神。』
わざと一瞬動きを止めた饕餮の体を青龍のスパァンッという音とともに風の矢が貫き一直線に穴を穿つ。饕餮の体は見る間に塞がり、黒い血の一滴すら流す間もない。
『こんなものではあるまい?これでは退屈して寝てしまいそうだ。』
忌々しげに舌打ちをつきながら再び蛇の口から水流を放つ玄武の背後から、鋭い相貌でその姿を睨みつけ白虎の四肢がドッと重い音とともに弧を描いて叩きつけられる。饕餮は微かに口元から黒い炎を蛇の舌の様に覗かせて、軽々と虎の巨体を片腕ではじき返した。その勢いでクルリと体を反転させた白虎は、音もたてずに玄武の背後に降り立った。続けざまに水流を放ち続ける玄武に、何かを見定めた様子で白虎が背後から囁く。
『玄武、あの地脈を先に封じないと奴には致命打どころか一撃も当てられない。』
『分かってる!だけど…っ』
策がなにもでてこねぇんだよと忌々しげに言い放つ彼の言葉に、一瞬白虎は亀甲の巨体の背後で黙り込んだ。目の前では朱雀の放つ炎を、苦もなく飲み込みながら再び饕餮が嘲笑う。余裕すら見える饕餮の姿に、経験の少ない朱雀と青龍の顔があからさまな焦りの色に歪んでいく。饕餮が再び蛇の様にチラリと黒い炎の舌を覗かせたのを見やり、フッと白虎は決意した様に目を細めると息をついた。それはまるで何処か諦めにも似た表情だったが、今それに気がついた者は誰もいなかった。
『俺が地脈を封じる結界をはる。後は…お前に任せる、悌順。』
小さいがハッキリとした明瞭な声に弾かれた様に玄武は振り返ったが、そこに既に白虎の姿はなかった。モノクロの世界の中で白銀の光を放ち宙をクルリと身を翻し、駆け出した白影に向かって玄武は思わず叫んでいた。
『やめろ!!白虎!』
玄武の悲痛にも聞こえる叫び声が他の誰かの口を開かせる前に、白虎は宙でゴウッと更に激しい白炎を全身から放った。かと思うと巨大な四肢にその白炎を纏う。その猫科の動物独特のしなやかな体躯の動きで音もなく地を駆け、鋭い視線を饕餮の姿から外す事無く、グルリと左側へと回り込んだ。
『何をする気だ?西の方神。』
地を駆ける白虎の姿に、クツクツと嘲るような声をたてて饕餮が笑う。しかし、その姿には目もくれず白虎は思う場所に辿り着いたのか足を止めると、ガッとその両前足の鋭い爪をモノクロの大地に突き立てる。そして、その双眸を激しい白銀の光に輝かせたかと思うと、饕餮を凍りつく様な視線で射すくめ酷く冷たい冷気を孕む声音で言い放った。
『貴様の本質は火気。』
ピクリと饕餮の頬が動く。
チロリとその口から再び黒い炎が、蛇の舌の様に微かに覗いた。饕餮の行動を見ていれば自ずと分かることではあったが、本質をあえて宣言するわけはない。しかし、饕餮は朱雀の火気のみ吸い込み、自分のモノに織り変えて攻撃してきた。しかし、それ以外の攻撃を吸い込んだり、飲み込んだりは一度もしていない。妖力が満ち溢れた今でも本質は変えようもなく、妖力が増したことで逆に溢れだした火気を目の前に滲ませている。今や溢れんばかりの妖力に任せ、黒い炎をその身から隠しもせずに覗かせてすらいる。
不意にバチバチと激しい音を立てて白虎の体から勢いよく更に白炎が噴き出し、その白虎の体全体を包み込んだ。
『白虎!よせっ!金気のお前じゃ…!!』
『ならば、この方法は貴様に効果があるはずだ!』
玄武の声を遮るように白虎の体から溢れ出した白銀の輝きが、先に彼が地を駆けた円を駆ける。円が白銀の光の線で繋がった瞬間、溢れだそうとする地脈の穴を塞ぐように覆い包み込んだ。その光はそのまま柱の様に上空に反射するかのように立ち上り、モノクロの世界を照らし出した。
『白虎っ!』
白虎の体から放たれ地表を駆けるおびただしい気の流れの量に、思わず青龍は目を見張り声をあげる。白銀の光は閃光のように煌めきながら穴の表面を塞ぎ、饕餮への妖力の流入をおしとどめた。光の柱はそのまま饕餮自体の体をも絡め捕り、その場に鎖のように張り巡らされ地面にそれを押さえつけた。しかしそれはまるで、命を削る勢いでの気の放出としか青龍でなくとも理解できた。事実、饕餮を見据える白虎の表情が歪み苦痛の呻き声が、その口から見る間に溢れ落ち始める。それを、事前に察知していたかのように玄武は、あからさまに焦りの色を浮かべ巨大な水流を大気の中で生み出し初めていく。
『おのれ…西の…貴様。』
己の力の元となる穴を塞ぎこんだ白銀の光を忌々しげに見つめ、饕餮は締め付ける光から逃れようとギシリと音を立てて身じろぎした。
肥大化した妖力と邪気の渦巻く空間の中では、四神には最大限に力を発揮しきれない。
それを一番に理解して歯噛みしながら白虎は、更に全力で激しく光を放出する。鎖の様に絡みつく白銀の光を体から引き剥がそうと饕餮がもがくのを目にした瞬間、玄武は水流を生み出し更に白銀の光の蓋の上から水の蓋を被せるように穴を塞ぐ。それでも、勢いよく溢れようとする地脈の流れは激しく下から突き上げて来るのを感じる。必死で蓋をし続けながらも玄武は、呆然とした表情で下を見下ろし宙を舞う朱雀に向かって声を張る。
『朱雀!白虎の気を通して奴の火気を奪え!早くしろ!』
玄武の声に滲む焦りの色に、不意の朱雀の脳裏に彼の語った先代朱雀の話が過ぎる。朱雀は巨体の体を激しく震わせ紅蓮の炎で包み込み、激しく双翼を羽ばたかせると高く舞い上がった。朱雀は玄武の指示通り火気を奪うために、高い嘶く様な声をあげ眼下で光に絡みつかれ動きを止めた饕餮の持つ火気に気を集中し始めた。しかし、それを知ってか知らずか饕餮は、悠然とその場で光の鎖を引きずって立ち尽くしている。
白虎は周囲のその動きを視線ではなく肌で感じながらも一時も休まず気を放ち続ける。そうしながら、苦しげな息をつきつつ目の前の饕餮に向かって気を放ち続けた。
『西方の守護神白虎。……白虎はすなわち・金気。』
饕餮が低く呟くように言葉を放つのに、白虎は忌々し気に目を細める。今こうして自分が何をしようとしているのか、敵である相手が全て見抜いてそれを呟くのが分かったのだ。
『金侮火の理りをもって己を封じこみ、火気を弱らせ水気で滅する…か。』
その言葉を静かだが明瞭な声で饕餮が告げると、瞬間に饕餮の表情がさっと目に見える様な怒りを滲ませ顔色を人間のように変えたのが見える。
※※※
『金侮火』
それは五行思想の一つの考えである『相侮』に基ずく考えである。『相侮』は『相剋』とは反対の作用を示す反剋の関係を言う。金侮火とは、「金が強すぎると火の剋生を受けず、逆に金が火を侮る」という意味である。
つまり本質が火気であると見定められた饕餮に向かって、白虎がそれ以上の金気の力を持って饕餮を封じ弱らせ様としている。その上で弱った饕餮を、相剋である水気で滅ぼす。そうだろうと指摘されるのは分かりきっていた。だが、最初の妖気を他の事に大量放出している時点なら兎も角、今の妖力に満ち溢れた饕餮を上回る金気など白虎が持つはずがない。持つはずがないと知っていて、彼にはこうするしか方法がないのだ。四人の中でこの方法をとれるのは唯一白虎だけで、恐らく白虎が今
饕餮を弱らせられずに死ねば残りの三人は先ずこの場から生きて逃げる事を考えないとならない。それがわかっていても白虎がとれるのは、全生命力を代償に差し出して金気が僅かでも饕餮を上回るのにかける事だけだ。
※※※
饕餮は自分で放ったその言葉に人間の様にあらわな怒りの色を浮かべ、忌々しげに白虎の姿を睨みつけた。忌々しい事だが地下の深くから覗いていた時には、四神がここまで五行を使いこなせるかどうかは推し量れない。しかし、ふっと饕餮の視線がまるで値踏みをするかの様な色を浮かべる。
やはり白虎がこの中では一番の能力の使い手らしいな。
他の三神の気の流れも注意深く見定めてから饕餮は、ニヤリと邪悪な笑みをその唇に湛えた。己の能力も見定めた力量と五行を正しく理解し自分の能力を使い自分を封じにかかった白虎の姿。太古の四神と違い不完全な能力とは言え、その判断と決断は素早く不完全さを補おうとしている。饕餮は低くおもしろいと呟いた。
一番の能力者を他の者の前で八つ裂きにし、喰らい尽くしてやったらどれだけ面白いだろう。
そうしてやったらどれだけ他の者に絶望を感じさせ、苦悶の中で殺す事が出来るだろう。そう饕餮の思考が残忍な笑みの中で囁きかけている。饕餮はジャリとまるで光の鎖を力ずくで引きずる様に地を滑る音を立てた。
『貴様自身…どこまで耐えられるのかな?…西の方神。』
メリメリと音を立てて饕餮の体が、結界の中で光の鎖を引きずる様に更に一歩前へと踏み出した。不意に起こったその動作に大きな饕餮の妖力を含んだ火気が邪悪な勢いで強まり、白虎の清廉な金気が押し返される。火気の侵食の勢いに、思わず白虎の口から苦痛の動きが漏れる。
『止まれぇっ!!』
風に増幅され勢いを増した水の鋭い鎌が饕餮の体を切り裂こうと放たれ片腕をザクリと鋭く切り裂いて、まるで黒い華弁の様にその腕から黒い血液を光の蓋の上に散らした。しかし、饕餮自身の動きで僅かに緩んだ結界の一部から染み出した地脈の気が、緩々とだが傷を癒し塞いでいく。
『この程度の結界で、己を止められると思うか?地脈は人間のモノから我らのモノに変わったのだぞ?』
その言葉に微かな驚きを滲ませた白虎に、饕餮はあからさまに邪悪な嗤いを湛えた顔で真っ直ぐに白虎を見据えた。
『貴様を喰えば、どれだけ妖力が増すだろうなぁ?』
ニヤリと笑い言い放たれたその言葉に、朱雀は驚きに目を見張る。ジャリィと再びまた一歩、結界の中をにじり寄る饕餮の姿は、深い暗闇の奥へと落ち込んでいくかのような感覚を感じさせていた。ジリと再び一歩足を進めた饕餮の妖力の底知れない強さに、青龍と玄武も同時に力を放ちながら驚愕の表情を浮かべていた。
邪気に生まれ変わった地脈の気がこれ程までに自分達を弱め、人外を強大に成長させるものだとは今まで一度も思った事がなかった。彼ら自身ゲートはゲートでしかありえなく、ただ開いた穴がその周りに歪みを作り、その歪みという現象が事故を起こすものだと考えていた。しかし、そもそもその考え事態が、大きな間違いだった。奴等は地脈の気自体を生まれ変わらせる事が、最初から人外達の狙いだったのだ。そしてその鍵となる存在が、要と呼ばれるあの岩の存在だったのだろう。饕餮が一つと告げた事も考えれば、少なくとも幾つか要は存在するのだろう。要は恐らく地脈のフィルターのようなものなのではなかろうか、地脈を人間の住みやすい地脈にするためのフィルター。裏返れば人外の住みやすい地脈に塗り替えられる。
幾つ存在するかは分からないが、人外の狙いがもし叶えられたとして、最後に地上に何を引き起こすのかは全く予想もつかない。
『ち…くしょォ!!!』
無謀に半端な火炎を放てば、今の饕餮には逆に火気を吸いこまれ『比和』の効果で饕餮の妖力を強めてしまう。それをこの間の戦いで、朱雀はいやと言うほど痛烈に思い知らされていた。
朱雀は火炎を放つのではなく饕餮の体から妖力の元となる火気を吸いださないとならない。吸いだし浄化しようと試みていたのだが、思うようにならず思わず悲鳴の様に声をあげていた。
紅蓮の巨鳥の姿で火気を吸いだし、白虎に助勢しようとしても能力を細部に使いこなせない。未熟な朱雀には、逆に仲間である白虎の強く放たれる金気に遮られ饕餮の気に触れる事が出来ないでいたのだ。饕餮には自分がそれほど能力を使いこなせていない事を悟られている事も分かって、朱雀は憤りの声をあげる。
何か!何か考えろ!奴から火気を吸いだすにはどうしたらいいか!!
朱雀は燃え上がる紅玉の瞳で、光の鎖を引きずり歩き出す饕餮を見下ろしていた。ここからでは奴の気を吸い出すどころか、気に触れることもできない。ハッと気がついた様に顔つきを変えた朱雀には、方法はそれしか考えられなかった。白虎の再び苦痛にゆがんだ顔を目にした瞬間、決心したかのように朱雀は激しい金気の渦と化した光の柱の中へ躊躇なく身を躍らせた。
『朱雀?!』
背後に青龍の悲鳴の様な声が聞こえるのを感じながら、朱雀は一直線に金気の渦の中を舞う。激しい金気の放出は鋭い刃の様に体中を突き刺し、基本的な能力で劣る自分の双翼から炎の羽根がばらばらと飛び散る。体中が軋み切り裂かれる痛みを自覚しながらも朱雀は、その鋭い両下肢の鉤爪で饕餮の両腕に正面から掴みかかった。
『貴様っ!!?』
突然思わぬ姿が目の前に現れ直接両腕に突き立つ鉤爪が、その体から無理矢理火気を引きずりだし自分の体へと飲み込み始めたのを饕餮は忌々しげに眼を見開いた。
本来なら大気中に吸いだし金気を通った炎を浄化すればいいのだが、直接吸いだし体に流れ込む妖気をおびた火気は朱雀の身の内側から焙る様な苦痛をもたらす。今や巨鳥の体は金気の切り裂くような痛みと妖気の混じる火気に内側からも焙られる苦痛を感じながら、その鮮やかな紅蓮の羽根をバラバラと飛び散らせていた。しかし、それでも鉤爪を離すどころか更に深く肉に食い込ませて朱雀は、少しでも白虎からその身を離そうと両腕を引きずる様にして激しく双翼を羽ばたかせる。
『おのれっ!!小賢しい!』
『……る……せェよ!!』
その時初めて朱雀の視界の中に饕餮の両の掌が映り込んでいた。
まるで饕餮は四人の事などすっかり忘れ去ってしまったかのように、癒され艶を増した自分の体を試す様にウットリとした表情で眺めた。それは不意に背の肉を盛り上がらせ熊のような巨体に膨れ上がったかと思うと、次の瞬間には収束し均整のとれた長身に変容する。その変容に伴う妖気が、風を巻き起こすように四方に散った。
『くそっ!何て妖気だ!』
形勢は完全に逆転した。
毒気と化した地脈から吹き出し続ける気は、既に妖気と等しかった。ゲートの奥から吹き上げる妖気に敵である饕餮の傷が見る間に癒え、四人の方が気力を確実に削がれ始めている。それを如実に突きつけられながら、苦悩を秘めた小さな声が玄武の口から溢れ落ちた。
今でも彼等には要が何だったのかは分からないが、ある意味中立であった地脈を完全に変貌させてしまった。今まで中立な存在だと考えていた地脈が、実は自分達よりの存在だったことに気がつかされる。地脈が妖気に変わり果てたのは痛みと共に肌で感じ取れた。
このままでは、奴の思うつぼだ。
その思考が感覚で伝わったかのように、ほとんど同時に玄武と朱雀の体が動きそれぞれの手の前の空間に大気中から光のような粒子が凝縮され始める。玄武の纏う蛇の口前には花弁が広がる様に渦を巻く水流が姿を現し、朱雀の開いた羽の先では紅蓮の炎がうねり音を立てた。しかし、生み出された二つが先程までと比較しても確実に弱っている事が視覚的に明らかなのに、白虎は小さく舌打ちした。
奴と地脈の妖気に当てられている、あれじゃ駄目だ。
二方向から同時に襲いかかる水と炎を見つめながら背の白銀と黒の毛を逆立てて白虎は、自分達の形勢が如何に不利かを痛感した。饕餮は襲いかかるそのどちらも視認する事もなく、無造作に両手を掲げそれぞれに片手をかざす。炎は右の掌に触れた瞬間まるで啜りあげられるような音を立てて、ジュルンとその体内に呑み込まれる。片や左の掌に触れた水は瞬時にジュワァッと激しい音を立てて、濛々とした白い水蒸気となって立ち上った。その水蒸気を煙幕がわりに弧を描いて挑みかかる白虎の白銀の刃を、いとも簡単に片腕で弾き飛ばす。続けざまに放たれる青龍の風の矢すらも柳の様にひらりと簡単に体を揺らして避けると饕餮は、満ち溢れる妖力に楽しげな邪悪な笑声を上げた。
『もっと本気でかかって来い、四神。』
わざと一瞬動きを止めた饕餮の体を青龍のスパァンッという音とともに風の矢が貫き一直線に穴を穿つ。饕餮の体は見る間に塞がり、黒い血の一滴すら流す間もない。
『こんなものではあるまい?これでは退屈して寝てしまいそうだ。』
忌々しげに舌打ちをつきながら再び蛇の口から水流を放つ玄武の背後から、鋭い相貌でその姿を睨みつけ白虎の四肢がドッと重い音とともに弧を描いて叩きつけられる。饕餮は微かに口元から黒い炎を蛇の舌の様に覗かせて、軽々と虎の巨体を片腕ではじき返した。その勢いでクルリと体を反転させた白虎は、音もたてずに玄武の背後に降り立った。続けざまに水流を放ち続ける玄武に、何かを見定めた様子で白虎が背後から囁く。
『玄武、あの地脈を先に封じないと奴には致命打どころか一撃も当てられない。』
『分かってる!だけど…っ』
策がなにもでてこねぇんだよと忌々しげに言い放つ彼の言葉に、一瞬白虎は亀甲の巨体の背後で黙り込んだ。目の前では朱雀の放つ炎を、苦もなく飲み込みながら再び饕餮が嘲笑う。余裕すら見える饕餮の姿に、経験の少ない朱雀と青龍の顔があからさまな焦りの色に歪んでいく。饕餮が再び蛇の様にチラリと黒い炎の舌を覗かせたのを見やり、フッと白虎は決意した様に目を細めると息をついた。それはまるで何処か諦めにも似た表情だったが、今それに気がついた者は誰もいなかった。
『俺が地脈を封じる結界をはる。後は…お前に任せる、悌順。』
小さいがハッキリとした明瞭な声に弾かれた様に玄武は振り返ったが、そこに既に白虎の姿はなかった。モノクロの世界の中で白銀の光を放ち宙をクルリと身を翻し、駆け出した白影に向かって玄武は思わず叫んでいた。
『やめろ!!白虎!』
玄武の悲痛にも聞こえる叫び声が他の誰かの口を開かせる前に、白虎は宙でゴウッと更に激しい白炎を全身から放った。かと思うと巨大な四肢にその白炎を纏う。その猫科の動物独特のしなやかな体躯の動きで音もなく地を駆け、鋭い視線を饕餮の姿から外す事無く、グルリと左側へと回り込んだ。
『何をする気だ?西の方神。』
地を駆ける白虎の姿に、クツクツと嘲るような声をたてて饕餮が笑う。しかし、その姿には目もくれず白虎は思う場所に辿り着いたのか足を止めると、ガッとその両前足の鋭い爪をモノクロの大地に突き立てる。そして、その双眸を激しい白銀の光に輝かせたかと思うと、饕餮を凍りつく様な視線で射すくめ酷く冷たい冷気を孕む声音で言い放った。
『貴様の本質は火気。』
ピクリと饕餮の頬が動く。
チロリとその口から再び黒い炎が、蛇の舌の様に微かに覗いた。饕餮の行動を見ていれば自ずと分かることではあったが、本質をあえて宣言するわけはない。しかし、饕餮は朱雀の火気のみ吸い込み、自分のモノに織り変えて攻撃してきた。しかし、それ以外の攻撃を吸い込んだり、飲み込んだりは一度もしていない。妖力が満ち溢れた今でも本質は変えようもなく、妖力が増したことで逆に溢れだした火気を目の前に滲ませている。今や溢れんばかりの妖力に任せ、黒い炎をその身から隠しもせずに覗かせてすらいる。
不意にバチバチと激しい音を立てて白虎の体から勢いよく更に白炎が噴き出し、その白虎の体全体を包み込んだ。
『白虎!よせっ!金気のお前じゃ…!!』
『ならば、この方法は貴様に効果があるはずだ!』
玄武の声を遮るように白虎の体から溢れ出した白銀の輝きが、先に彼が地を駆けた円を駆ける。円が白銀の光の線で繋がった瞬間、溢れだそうとする地脈の穴を塞ぐように覆い包み込んだ。その光はそのまま柱の様に上空に反射するかのように立ち上り、モノクロの世界を照らし出した。
『白虎っ!』
白虎の体から放たれ地表を駆けるおびただしい気の流れの量に、思わず青龍は目を見張り声をあげる。白銀の光は閃光のように煌めきながら穴の表面を塞ぎ、饕餮への妖力の流入をおしとどめた。光の柱はそのまま饕餮自体の体をも絡め捕り、その場に鎖のように張り巡らされ地面にそれを押さえつけた。しかしそれはまるで、命を削る勢いでの気の放出としか青龍でなくとも理解できた。事実、饕餮を見据える白虎の表情が歪み苦痛の呻き声が、その口から見る間に溢れ落ち始める。それを、事前に察知していたかのように玄武は、あからさまに焦りの色を浮かべ巨大な水流を大気の中で生み出し初めていく。
『おのれ…西の…貴様。』
己の力の元となる穴を塞ぎこんだ白銀の光を忌々しげに見つめ、饕餮は締め付ける光から逃れようとギシリと音を立てて身じろぎした。
肥大化した妖力と邪気の渦巻く空間の中では、四神には最大限に力を発揮しきれない。
それを一番に理解して歯噛みしながら白虎は、更に全力で激しく光を放出する。鎖の様に絡みつく白銀の光を体から引き剥がそうと饕餮がもがくのを目にした瞬間、玄武は水流を生み出し更に白銀の光の蓋の上から水の蓋を被せるように穴を塞ぐ。それでも、勢いよく溢れようとする地脈の流れは激しく下から突き上げて来るのを感じる。必死で蓋をし続けながらも玄武は、呆然とした表情で下を見下ろし宙を舞う朱雀に向かって声を張る。
『朱雀!白虎の気を通して奴の火気を奪え!早くしろ!』
玄武の声に滲む焦りの色に、不意の朱雀の脳裏に彼の語った先代朱雀の話が過ぎる。朱雀は巨体の体を激しく震わせ紅蓮の炎で包み込み、激しく双翼を羽ばたかせると高く舞い上がった。朱雀は玄武の指示通り火気を奪うために、高い嘶く様な声をあげ眼下で光に絡みつかれ動きを止めた饕餮の持つ火気に気を集中し始めた。しかし、それを知ってか知らずか饕餮は、悠然とその場で光の鎖を引きずって立ち尽くしている。
白虎は周囲のその動きを視線ではなく肌で感じながらも一時も休まず気を放ち続ける。そうしながら、苦しげな息をつきつつ目の前の饕餮に向かって気を放ち続けた。
『西方の守護神白虎。……白虎はすなわち・金気。』
饕餮が低く呟くように言葉を放つのに、白虎は忌々し気に目を細める。今こうして自分が何をしようとしているのか、敵である相手が全て見抜いてそれを呟くのが分かったのだ。
『金侮火の理りをもって己を封じこみ、火気を弱らせ水気で滅する…か。』
その言葉を静かだが明瞭な声で饕餮が告げると、瞬間に饕餮の表情がさっと目に見える様な怒りを滲ませ顔色を人間のように変えたのが見える。
※※※
『金侮火』
それは五行思想の一つの考えである『相侮』に基ずく考えである。『相侮』は『相剋』とは反対の作用を示す反剋の関係を言う。金侮火とは、「金が強すぎると火の剋生を受けず、逆に金が火を侮る」という意味である。
つまり本質が火気であると見定められた饕餮に向かって、白虎がそれ以上の金気の力を持って饕餮を封じ弱らせ様としている。その上で弱った饕餮を、相剋である水気で滅ぼす。そうだろうと指摘されるのは分かりきっていた。だが、最初の妖気を他の事に大量放出している時点なら兎も角、今の妖力に満ち溢れた饕餮を上回る金気など白虎が持つはずがない。持つはずがないと知っていて、彼にはこうするしか方法がないのだ。四人の中でこの方法をとれるのは唯一白虎だけで、恐らく白虎が今
饕餮を弱らせられずに死ねば残りの三人は先ずこの場から生きて逃げる事を考えないとならない。それがわかっていても白虎がとれるのは、全生命力を代償に差し出して金気が僅かでも饕餮を上回るのにかける事だけだ。
※※※
饕餮は自分で放ったその言葉に人間の様にあらわな怒りの色を浮かべ、忌々しげに白虎の姿を睨みつけた。忌々しい事だが地下の深くから覗いていた時には、四神がここまで五行を使いこなせるかどうかは推し量れない。しかし、ふっと饕餮の視線がまるで値踏みをするかの様な色を浮かべる。
やはり白虎がこの中では一番の能力の使い手らしいな。
他の三神の気の流れも注意深く見定めてから饕餮は、ニヤリと邪悪な笑みをその唇に湛えた。己の能力も見定めた力量と五行を正しく理解し自分の能力を使い自分を封じにかかった白虎の姿。太古の四神と違い不完全な能力とは言え、その判断と決断は素早く不完全さを補おうとしている。饕餮は低くおもしろいと呟いた。
一番の能力者を他の者の前で八つ裂きにし、喰らい尽くしてやったらどれだけ面白いだろう。
そうしてやったらどれだけ他の者に絶望を感じさせ、苦悶の中で殺す事が出来るだろう。そう饕餮の思考が残忍な笑みの中で囁きかけている。饕餮はジャリとまるで光の鎖を力ずくで引きずる様に地を滑る音を立てた。
『貴様自身…どこまで耐えられるのかな?…西の方神。』
メリメリと音を立てて饕餮の体が、結界の中で光の鎖を引きずる様に更に一歩前へと踏み出した。不意に起こったその動作に大きな饕餮の妖力を含んだ火気が邪悪な勢いで強まり、白虎の清廉な金気が押し返される。火気の侵食の勢いに、思わず白虎の口から苦痛の動きが漏れる。
『止まれぇっ!!』
風に増幅され勢いを増した水の鋭い鎌が饕餮の体を切り裂こうと放たれ片腕をザクリと鋭く切り裂いて、まるで黒い華弁の様にその腕から黒い血液を光の蓋の上に散らした。しかし、饕餮自身の動きで僅かに緩んだ結界の一部から染み出した地脈の気が、緩々とだが傷を癒し塞いでいく。
『この程度の結界で、己を止められると思うか?地脈は人間のモノから我らのモノに変わったのだぞ?』
その言葉に微かな驚きを滲ませた白虎に、饕餮はあからさまに邪悪な嗤いを湛えた顔で真っ直ぐに白虎を見据えた。
『貴様を喰えば、どれだけ妖力が増すだろうなぁ?』
ニヤリと笑い言い放たれたその言葉に、朱雀は驚きに目を見張る。ジャリィと再びまた一歩、結界の中をにじり寄る饕餮の姿は、深い暗闇の奥へと落ち込んでいくかのような感覚を感じさせていた。ジリと再び一歩足を進めた饕餮の妖力の底知れない強さに、青龍と玄武も同時に力を放ちながら驚愕の表情を浮かべていた。
邪気に生まれ変わった地脈の気がこれ程までに自分達を弱め、人外を強大に成長させるものだとは今まで一度も思った事がなかった。彼ら自身ゲートはゲートでしかありえなく、ただ開いた穴がその周りに歪みを作り、その歪みという現象が事故を起こすものだと考えていた。しかし、そもそもその考え事態が、大きな間違いだった。奴等は地脈の気自体を生まれ変わらせる事が、最初から人外達の狙いだったのだ。そしてその鍵となる存在が、要と呼ばれるあの岩の存在だったのだろう。饕餮が一つと告げた事も考えれば、少なくとも幾つか要は存在するのだろう。要は恐らく地脈のフィルターのようなものなのではなかろうか、地脈を人間の住みやすい地脈にするためのフィルター。裏返れば人外の住みやすい地脈に塗り替えられる。
幾つ存在するかは分からないが、人外の狙いがもし叶えられたとして、最後に地上に何を引き起こすのかは全く予想もつかない。
『ち…くしょォ!!!』
無謀に半端な火炎を放てば、今の饕餮には逆に火気を吸いこまれ『比和』の効果で饕餮の妖力を強めてしまう。それをこの間の戦いで、朱雀はいやと言うほど痛烈に思い知らされていた。
朱雀は火炎を放つのではなく饕餮の体から妖力の元となる火気を吸いださないとならない。吸いだし浄化しようと試みていたのだが、思うようにならず思わず悲鳴の様に声をあげていた。
紅蓮の巨鳥の姿で火気を吸いだし、白虎に助勢しようとしても能力を細部に使いこなせない。未熟な朱雀には、逆に仲間である白虎の強く放たれる金気に遮られ饕餮の気に触れる事が出来ないでいたのだ。饕餮には自分がそれほど能力を使いこなせていない事を悟られている事も分かって、朱雀は憤りの声をあげる。
何か!何か考えろ!奴から火気を吸いだすにはどうしたらいいか!!
朱雀は燃え上がる紅玉の瞳で、光の鎖を引きずり歩き出す饕餮を見下ろしていた。ここからでは奴の気を吸い出すどころか、気に触れることもできない。ハッと気がついた様に顔つきを変えた朱雀には、方法はそれしか考えられなかった。白虎の再び苦痛にゆがんだ顔を目にした瞬間、決心したかのように朱雀は激しい金気の渦と化した光の柱の中へ躊躇なく身を躍らせた。
『朱雀?!』
背後に青龍の悲鳴の様な声が聞こえるのを感じながら、朱雀は一直線に金気の渦の中を舞う。激しい金気の放出は鋭い刃の様に体中を突き刺し、基本的な能力で劣る自分の双翼から炎の羽根がばらばらと飛び散る。体中が軋み切り裂かれる痛みを自覚しながらも朱雀は、その鋭い両下肢の鉤爪で饕餮の両腕に正面から掴みかかった。
『貴様っ!!?』
突然思わぬ姿が目の前に現れ直接両腕に突き立つ鉤爪が、その体から無理矢理火気を引きずりだし自分の体へと飲み込み始めたのを饕餮は忌々しげに眼を見開いた。
本来なら大気中に吸いだし金気を通った炎を浄化すればいいのだが、直接吸いだし体に流れ込む妖気をおびた火気は朱雀の身の内側から焙る様な苦痛をもたらす。今や巨鳥の体は金気の切り裂くような痛みと妖気の混じる火気に内側からも焙られる苦痛を感じながら、その鮮やかな紅蓮の羽根をバラバラと飛び散らせていた。しかし、それでも鉤爪を離すどころか更に深く肉に食い込ませて朱雀は、少しでも白虎からその身を離そうと両腕を引きずる様にして激しく双翼を羽ばたかせる。
『おのれっ!!小賢しい!』
『……る……せェよ!!』
その時初めて朱雀の視界の中に饕餮の両の掌が映り込んでいた。
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