GATEKEEPERS  四神奇譚

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第一部

第五幕 大都市下

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遥か太古の開拓される前、ここは広大な湿地だったようだ。

人間が何時でも多く集まる場所を見つけた饕餮は、昼夜問わず人間が集う場所に酷く満足した。何時でもほんの少し手を伸ばすだけで、人間を捕まえることが出来る。餌の溢れている場所はそれにとって楽園に等しい。その潤沢な餌場を定住の地に決めた饕餮は、次の段階へ計画を進めていた。
何度も地を開拓するためか、大地の奥深くに潜り込んだ最も太い地脈を探り当てるのに大分時間をとられている。
饕餮は文字通り貪欲な字を模しただけあって、手近な者から貪り喰い荒らし力を大量に貯めこみながら奥を探った。手近なものを食い荒らしている内に、その中に内包する力の差を感じ始める。自分が欲しがる力を血に溜めているのは、若い女か何か手習いでもしているような修練を重ねた若い男のどちらかのようだ。若い女は地を探るのに必要な直感を高めるし、男の方は探りだした地脈を手繰るのに必要な力を操る力を高める。気がついてからはまずは若い女を、次には探しながら若い男を選びながら食い散らかす。若い女は簡単に手に入るが、男の方は期待するものは数が少なく難しかった。それでも期待はずれのものでも少しは足しになるだろうと、飽きもせずにふんだんに貪る。そして目指すものの目処がつき場所を決めてからの、饕餮の動きは四神が気がつく隙も与えずとてつもなく早い。

何しろ贄は飽きるほど次から次へと集まってくる。

お陰で使った力は直ぐ様補充することが可能だ。どんなに力が必要でも直ぐ様餌を頭から齧り、力を補強できるのは楽しかっ
た。地脈の本流を無理やり捻じ曲げて地表に引きずり出し、贄を大量に使い無理矢理抉じ開けた奇異な空間がそこには広がっていた。
この空間を作り出すために、饕餮が自分の妖力の贄として密かに確保していたものもやむを得ず一度解き放たねばならなかったのは痛い。しかし、解き放ったとは言え、この空間のなかにいる限りはそれが贄に代わりはなかった。
地表を覆う半球体の中に広がる黒い空間に閉じ込められた全てのものは、元々持っている機能を奪い取られていた。色鮮やかなきらびやかな都市の一片の欠片は、熱と光を奪われ全ての機能を失っている。ネオンも街燈も車のライトですら、目映かった光を持たず息を潜めていた。そこには何一つ光というものが、存在しない異形の場所に変わっていた。それでいて全ての物はそれぞれの形だけをクッキリと浮き立たせ、まるでモノクロの世界だ。そして、そこに存在している生物の多くもも、物と同じく生命の光を失って白と黒の世界の一部と化していた。それの中には大部分の人間も含まれているが、哀れなことに含まれなかった人間もいる。それは意図してではなく、人間としてよりも太古の人という種により近い本能を持っているということだ。

哀れだな、人に近いか。

息を殺し辺りを伺いながら、モノクロの通りを探り歩く気配がした。一緒にいた人間は恐らく光を失って倒れたのだろう、怯えにひきつる吐息がよく聞こえる。
この空間の中は果てしなく奇異でありながら、それでいて開いたばかりの地脈の傷から勢いよく溢れ出す未知の力に満たされていく。それが人に近い人間の本能にも影響したのだろう。それが不幸だとは知らないだろうが。
地の奥から沸き上がる矮小なモノ達は、それぞれに餌を求めて這い出し始めている。矮小なモノは外周を囲う球体をすり抜けるのも容易いだろうと、饕餮は邪悪な笑みを浮かべ微かな悲鳴を心地よく聞き取った。息を殺して探り歩いていた人間が、矮小なモノ達の群れに巡りあったようだ。それは肉食の蜘蛛や蜥蜴の大群に運悪く巡りあった、力のない肉の塊と同じ事。

さあ更に抉じ開け引き上げて、あれを引きずり出してやろう。

長年我らの頭上を地脈に乗り、流れ続けるあれが地脈の太い本流を巡り近づいてくる気配がする。しかし、まだ地脈の穴は小さく、あれを吐き出させるには物足りない。足の裏から地の奥底に食い込む己の牙の感触を確かめながら、溢れ出すどちらのものでもない地脈の勢いを肌に感じる。

「助けて!」

遠くから駆けてくる気配が、饕餮を仲間と誤認して叫ぶのが分かった。若いスーツ姿の女が転びそうになりながら、必死の形相で建物の影から踊り出す。仕事帰りの帰途の最中に巻き込まれた女は、既に荷物も放り投げ破れたストッキングを解れさせ裸足で駆ける。足の裏が傷つき、色のないアスファルトに赤い血の跡を残す。背後から追い立てる沸きだした矮小なモノ達は、知能の低いモノだが喰らうことは本能で理解している。四つ足の獣のように女に飛びかかり、それらは牙を向いて音をたてて女の衣類を裂いた。

「助けて!!」

甲高い悲鳴をあげて女は饕餮の足元に倒れこんだかとおもうと、佇む饕餮の足に必死ですがり付く。しかし、助けを求める女の瞳が驚きに凍るのを、心地よさげに饕餮は見おろした。一瞬で首だけをもぎ取った饕餮の足元では、女の体が無様に痙攣している。饕餮は手にした首に、ズイと突きだしそれを見せつける。

「何で?あ、あれ?」

地脈の本流の溢れ出した中心で、女の首は千切り捕られたのにまだ意識を保ったまま。二つに別れ、視界を失ってフラフラと歩く自分の体を見下ろしていた。矮小なモノ達がワッと体に群がり、女の肉を引き裂きあっという間に喰い荒らしていく。
女の髪を掴んだ饕餮の口がニイと残虐な笑みを形取り、その奥から異様に長い舌が獣のように這い出る。女の頬を舐め血の滴りを舌に受けたのを見てとった女が、今更のように甲高い悲鳴をあげた。その悲鳴にまだ幾人か建物の影を動き回る人間が、怯えに耳を塞ぎ物陰で息を殺すのを肌に感じる。

『もっと叫べ!哀れな女、お前の声で異変を告げろ!』

女は壊れた機械のように激しい金切り声に近い悲鳴を、饕餮の手に捕まれた生首のままあげ続ける。悲鳴と血の臭いが空間に響き渡り、残された人間の恐怖が辺りに漂い始めるのを饕餮は満足気に目を細めた。
地脈の溢れだした本流が、空間の中に満たされようとしている。心地よい本流の気配の中に、多くの人間の恐怖が浸透して辺りを侵食し始めていく。手の女は何時までも悲鳴をあげて、お陰で他の人間は更なる恐怖に物陰で震える。

『いいぞ!女!もっと叫べ!』

恐怖の侵食がその場に満ちる地脈を汚し始め、饕餮に更に心地よい環境を作り出す。空間の中心で饕餮はミヂミヂと牙をむいて、未だ地脈の傷を押し広げ続けていた。
それが密かに狙うものはその奥深くから、次第に流れて近づいてきているのを感じる。本流の奥底にそれは長く流れ続け密かに眠っているのだ。
不意に饕餮は彗星の如く空間に近付く、自分に敵意を持つ者の存在を感じ取って黒一色の瞳を宙に向けた。

思ったより、早い。傍に潜んでいたか。

それは実は人間でいえば、焦りにも似た感情だった。
人間が群れを成している不夜城を定住地に定め印をつけ始めた饕餮は、次の段階の為に莫大な妖力を蓄積し消費する必要があった。過去にも人間の群れの傍に定住し妖力を貯めたものはいたし、次の計画まで実際に及んだ事もある。しかし、その時も最後の最後で、奴等にまんまと阻止されてしまった。
地脈の底で生まれたモノ達が、地脈の本流をねじ曲げるには膨大な妖力を消費する。支流の地脈程度なら妖力は微量ですむのだが、饕餮が今求める計画には本流でなければ意味がない。そして、本流は土俵よりはるかに地の底に近い場所にある。
消費した妖力は餌を喰い補えばいいだけだ。しかし、それが容易いのは最初の段階までの事だ。次の段階に進んでしまったからには、あれを見つけ出すまで饕餮はここから移動できなくなった。ここであれが本流にのり流れてくるのを、大人しく待つしかなくなっているのだ。
潤沢な贄のお陰で妖力が全て蘇っていたとはいえ、新しくここに人間を引き入れられない今では容易に妖力を補うとはいかない。自分で開いたとは言えこの半球体の空間には、特殊な能力がなければ人間がそのまま通過して入ることはできない。つまりは補給は今中で動くことが可能な人に近い種だけ。しかも、矮小なモノに狩りたてられ、刻一刻と人数を減らしている。この状況で四神を全員を相手にするには些か部が悪すぎる。

まさか、今四神全員が揃っているとは思わなかったからな。

人間の体に宿すにはあれらも些か妖力が大きいのだろう、早々四人揃っているのは珍しい。過去の次の段階に辿り着いた時も確か奴等が揃っていたのは偶然ではないだろう。

ここまで辿り着いたのだから、あれを砕きさえすればいいのだ。

無限に等しく溢れるこの地脈は何にも属さない未知の力だが、この哀れな女の悲鳴のお陰で既に侵食が始まっている。それを完全に饕餮のモノにするには、狙うものを早急に崩すしか手はない。時間をかければもっと容易いだろうが、今から時間を稼ぐのは無理に等しい。何故か四神以外の餌どもの仲間にも穴を感知する能力が、昔より長けているのだから。だからこそ残る一つにかけるしか、術はない。それさえ、成し遂げれば均衡は崩れ、力が得られる筈だった。無垢な本流が自分達のモノへと、生まれ変わるのだ。

早く来い!

酷くゆっくりと感じる時の流れの中で饕餮は焦りを滲ませ、ジリジリと穴を深く押し広げ穴の底を探り続けていた。しかし、何故か穴の縁は拮抗するように、饕餮の力に抵抗を感じる。その理由が何なのかこの空間の中からでは、ハッキリしないのが苛立たしい。

早く!!早く来い!!早く!!

饕餮は二度とその身を砕かれ、地中に封印されたくはなかった。身動きもとれない闇の汚泥の中で砕かれ散らばった身を這いずりかき集めるのは、ジリジリと身を焦がされ先端から切り取られるような痛みを感じるのだ。そんな思いはもう沢山だった。妖力がまだあるうちに狙いのものを砕いて、自分が優位に立つ。しかし、そう考えた瞬間、四つの閃光が彗星の様に宙から球面の黒色の壁を打ち破った。その閃光がそれぞれ四方から空間の中に躍り込んだ。
異形を纏う四神はそえぞれの全身から光を放ちながら、饕餮の四方に降り立ち囲む様に立ち塞ぐ。饕餮は焦りの表情を体内奥深くに隠しながらも忌々しげに舌打ちした。そして、寺院の四神図をみるような、四つの神の姿をグルリと見回した。

『来たな、四神ども。』

そこには最初に見た童子の姿とは似ても似つかない姿が一人で女の叫ぶ首を手に佇んでいた。濡れたような黒髪、顔立ちは整い中性的ではあるが、長身の体つきは逞しく男のものだと分かる均整。張り付くような布地は、人間の裁断したものではないことは確かだ。その身で微笑みかけられれば、女は見惚れるに違いない。ただし、その瞳は白眼の存在しない、闇色の一色の瞳であることを除けばだ。そんな妖艶に成長した饕餮の姿に、四神は一瞬身を固くする。

『もう、十分だ。』

禍々しい気配は変えようもなく周囲に放たれ、饕餮は突然そう呟くと女の頭を無造作に放り投げた。悲鳴をあげながら地面に転がった生首が、目を見開きながら朱雀の巨体を見つめる。朱雀の深紅の瞳が震えるのを見越したように、矮小なモノ達が生首に向かって牙をむいた。朱雀は怒りに燃える紅玉の瞳で、首を守るように一凪ぎで焔で地表を舐めとる。矮小なモノ達ごと燃やし尽くしたのに、饕餮が残忍に手の血を舐めとりながら笑顔を浮かべた。

『女ごと焼き尽くすか、業火だな。朱雀。』

四神は不意に無言のまま、唐突に異形の姿を解きそれぞれ人の姿に変化した。微かに眉を潜めた饕餮を、四人は一定の距離を保つようにして見据える。
四人の体からはまるで内面から発光するように、モノクロの世界の中で四つの光を放つ。輝きはそれぞれに帯のように四肢に巻き付き、異装の上に鎧の如くそれぞれに纏う装具に変化する。

「大分好き勝手に暴れてやがったな、貴様。」

黒い帯の様な揺らめきをその両上肢から放ち、両手に黒曜の手甲を纏う玄武が忌々しげに吐き捨てる。四人の意外な行動に驚きつつも饕餮は、未だ焦りを体内におし隠したまま、過分な嘲りを含め唇の端を歪めて笑った。

『神獣に変化もせずに、己と戦うか?四神。』
「貴様の体でじっくり試すがいい。」

穏やかにすら聞こえる白虎の言葉が放たれると同時に、地を蹴り躍りかかるしなやかな鞭のような脚が白刃のような煌めきを放つ。脚だけでなく白虎の四肢が白銀の光を放ち弧を描き、饕餮の体に飛びかかった。その四肢は白銀の手甲だけでなく、脛当ても装備され光を放つ。まるで鋭く研がれた虎の爪が一閃する研ぎ澄まされた刀刃の様に、ギュパッと空間を切り裂き一筋の光の筋を残像の様に宙に残す。
その場から足を動かす事なく、その体を蛇のようにくねらせ攻撃を避けたはずの饕餮の髪がハラリと一房宙に舞い散って塵になって消えた。自分の髪が一房塵になるのを目にして饕餮は、白虎の四肢が白銀の光で鋭い刃と化している事に気がつき忌々しげに顔を歪めた。

今はこの場を動けぬ。

足の裏の感触に心の中でそう囁く。しなやかな神楽舞にすら見える白虎の滑らかな動きに、その者の産まれ持つ資質を見定め歯噛みした。気の練りかたをみても白虎は他の三神より一回り以上も熟練で、饕餮に触れる場所の気を触れた瞬間に爆発的に高密度に変化させてくる。そのせいで金気が瞬間的に饕餮の火気を上回り、自分の妖気を散らしていく。しかも、それを使いこなすための身のこなしが、元の素地からして人間離れした手練れのものなのだ。肉体でしか戦えなかった時代の者達の戦のしかたと、よく似た隙のない動きは今の饕餮には部が悪い。

ヒュパッ!シュパン!

空を切る音が鋭く顔の前を掠める。全く無駄のない円の動きから、流れるように繰り出される。掌底での打撃と鞭のようにしなる足技は、一時の隙もなく白虎がが何か武術の心得があることをありありと饕餮に感じさせた。そして、白虎は前回の戦闘で既に何かを感じ取っていたのだろう、饕餮の掌を避けるためにその腕の辺りを何なく払い退け受け流してくる。しかも、その動作の反動すら、白虎自身の攻撃の勢いに加えて回転し流れる攻撃を仕掛けてきている。

『くっ!』

一度腕を払いのけたかと思えば、トンと僅かな反動で倍の速度に変えて体を反転して足技が飛んでくる。鞭のようにしなる足が弧を描き、饕餮の顔めがけて振り下ろされた。寸でのところでかわしたと思っても、鋭い足技に空を切る白銀の光が再び髪の一房を切り落とす。次第に、白虎の動きが自分の動きに追い付き、自分の行動パターンを早くも掴み始めているのが饕餮にも感じられた。

シュパンッ!

反転した隙を突いて掌を伸ばす動作を起こした瞬間。まるで待ち構えていたかのようにその間隙をぬって、青龍の風を糧に増幅し、まるで針のように鋭く研ぎ澄まされた朱雀の炎の矢が襲いかかっていた。それは以前のとは異なり、慎重に気を練りこまれた炎矢で光線のように饕餮の腕を撃ち抜く。炎矢を取り込もうとすれば、白虎の足技がそれを阻み弧線を閃かせる。仰け反り足を避けるうち、炎矢はあっという間に宙に消し飛んだ。

『ちぃっ!おのれ!』

虚を突かれたように饕餮が、思わず声をあげそこを再び炎矢が手を貫き穴を穿つ。

ボヅッ!

穴の空いたままの手で燃え盛る炎の矢を掴み、咄嗟に白虎へ向けて投げ放つ。饕餮は前回の事を思い起こしニヤリと唇の端を歪めたが、目の前の白虎の見透かしたような視線にたじろいだ。白虎は投げ放たれた炎矢を全くそれをよける事なく、そのまま一直線に饕餮目がけて向かってきている。

相討ち目的か?!

炎の矢が当たると思われた瞬間、炎は不意に激しい水の本流に一息に飲み込まれ水蒸気となって饕餮の視界を覆い真白い視界の中で白刃が再び閃いた。

『くそっ!』

思わすこぼれた饕餮の声に、ヒュッと軽く息を継いだ白虎の白銀の四肢の刃が襲いかかる。同時に金気を後押しするように背後から放たれる玄武の激しい水の本流から生み出された刃が襲いかかり、二神の攻撃が寄り合わされ勢いを増幅し繰り出した。

『小癪な!!』
「てめェに言われたかねェなっ!」

宙から降り落ちる朱雀の放つ声と同時に、確実に白虎の直接の攻撃の間隙に炎の矢と水の刃が次々と矢継ぎ早に繰り出さらる。それと同時に青龍の放つ清廉な風が、三神の攻撃を素早く鋭い、まるで一連の巨大な攻撃に寄り合わす。
妖力が削られていなくともその場所から足をずらすことも出来ない饕餮には、攻撃の全てを避け続けることは不可能だ。それは饕餮自身が良く理解していた。しかし、だからと言って、足元にあれが今まさに流れてこようとしている今ここから逃げるわけにもいかない。

おのれ、後僅かだと言うのに!

一瞬気がそれたその瞬間を逃さないものが、そこにいる事を饕餮は失念した。繰り出された白虎の掌底を腕で払ったと思った次の瞬間、その白くしなやかな動きをした白虎の手が、まるで手品を見るかのようにヒュルッと一瞬にして反され饕餮の腕を掴んだ。

『?!』

一瞬白虎に掴まれたままの腕が体ごとぐいっと手前に引かれ、その場を動くまいとした饕餮の体が思わず腕を引きあげていた。瞬間その勢いを反動に柳の枝がしなる様な綺麗な弧を描いて、白虎の下肢が白銀の光でビュッと空を裂いて饕餮の頬をかすめる。足技がひいた一直線に宙に走る白銀の光の軌跡が、不意にバクリと音を立てて饕餮の頬に深い傷となって口を開いていた。
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