GATEKEEPERS  四神奇譚

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第一部

第四幕 鳥飼邸

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冬も近く気配のする冷たい風を少し含んだ秋晴れの空の下、ブレザーにベストをキチンと着こんだ学生服の一人の青年が道を歩いていた。齢十七になったばかりの真見塚家・本妻の子である真見塚孝は、文化祭前の喧騒を逆手にとって生徒会の仕事もさておき道を急いでいる。手土産にと買ったケーキの箱を片手に、そわそわと落ち着かな気に異母兄の自宅に向かっていた。

実は孝にとって異母兄は物心つく以前からの憧れの人であり、孤高の気高い華の様に凛々しく敬愛する存在。何しろ彼は特別な人間なのだ。自分が自宅でもある道場の門下生になった時、実際には既に彼は門下生ではなくなって三年ほどの月日が経っていた。しかし、道場に通う他の年上の門下生達は、口々に鳥飼さん程の腕前は今までいないと判で押したように同じことを言う。
合気道や何らかの武道を、五歳前後から道場に通い始める事はそれほど珍しいことではない。孝ですら手習い程度にではあるが三歳から教えられている位だから、むしろ五歳では遅すぎる位だ。合気道にも他の武道と同じく段位はあるが一般的に段位は、十五歳位にならないと取れない。初段をとるにも一応規定があるのだけど、中学辺りで辞めている鳥飼信哉は実は段位をもっていないのだ。
それなのに鳥飼信哉が有名人な理由。鳥飼信哉が最も特殊だったのは、習い始めてほんの数ヵ月で合気道の型を全て理解して使うことができたという事だ。型を身に付けるだけでも普通は数年単位で覚える。それでも型の崩れやタイミングを図る事は難しい。しかし、彼はものの数ヵ月で完璧にそれを身につけた。しかも真見塚道場の門下生でもほとんど師伝されない武芸十八般と呼ばれる古武術を、小学生になった途端に師範つまりは孝の父から直接教えられている。実際には十四年も合気道の研鑽を続けても未だに孝には師伝は許可されていないし、今道場で師伝を受けているのは師範代一人だといえば、その破格の才能は分かるだろう。しかも道場を辞めてからも道場を自由に使っていいという師範並みの特別扱い。
直に本人や父に聞いたことはないのだが、誰しももう彼は学ぶことが無いから辞めたのだと囁いている。何しろ鳥飼は実は本来は真見塚の師匠に当たる血筋なのだという。既に故人の信哉の母・鳥飼澪の名前は演武を神楽舞のように完璧に舞うとまで言われた女傑、その一人息子が天才じゃないわけがない。道場を畳んだのは彼女の代だと言うが、多くの人が彼女は何時か鳥飼道場を再興すると考えていたと言う。そんな風に幾つも聞かされる、彼と彼の母親の武勇伝の多さに驚いた。
丁度彼が高校二年生ぐらいの頃、一時真見塚家に仮住まいをしたことがある。一回り近く歳の離れた自分にとって雲の上の人が、一時道場に預けられたのはてっきり段位をとるために再度道場に通うのだと孝は歓喜した。孝は必死にその後をついて回ってやっと少し打ち解けたと思った途端、彼は真見塚家を出ていってしまったのだが。

心無い人の悪意の言葉で異母兄と知った時には、流石にグレてみようと一時考えはした。したものの出来る事が孝の思考過程には、部屋にこもる程度の事しか思い浮かばなかったのだ。そんな時中学生の孝は産まれて初めて、彼が道場にいるのをみる事になる。
凛とした視線で道場に座る白の袴姿の彼は、ピンと張りつめるように周囲の空気を変えた。深く上座に向け礼をした直後、彼はまるで羽のように音もなくフワリと軽く立ち上がる。
まだ門下生のこない道場で行われる彼の演武。
シンと静かな空気を震わせ独り古武術の型を鍛錬する姿は、他の誰より洗練されていた。武術の一部は奉納に通じたものもあるというが、実際に演武を見て舞のように美しいと感じたのは彼のものだけだ。まるで美しい神楽舞を見ている様に、息つく隙もない完璧な型と体捌き。普通の人間ならどうしても立つ筈の畳を擦る足音すらしない、それは既に人間の領域を越えていたのだ。
同じ演武をする師範の父ですら、後半には足が畳を擦るし汗をかき息が上がる。歳が若ければ出来るものでもないのは、同じ演武を孝にさせれば孝は半分もいかずに汗だくになってしまう事でも分かる。それを彼は涼しげな顔で息を荒げることもなく、汗すらかく気配もない。更に古武術の型は実戦的で動きが激しいが、それすらも涼しげな顔色一つ変えるようすもない。それを順繰り一通りあそこまで中断もなく音もなく彼が舞えるのは、既に完全に身に付いてしまっているに違いない。

天才なんてもんじゃない、あれじゃ誰も彼の高みまで辿り着けない

既に実力は軽く父をしのぐ。そんなことは一目で分かった。しかも彼は母親譲りの美しいという形容が相応しい容姿を持つのだ。彼が異母とは言え自分の兄であるという事実。妾腹であるという事などどうでも良く、孝は天武の才能を心底誇らしいと事実思った。
彼が再び真見塚道場に通い師範として門下生を指導する姿を想像して孝が、彼の家を訪れる様になったのは十五歳の頃の事だった。初め彼は戸惑った様な表情を浮かべたが、一度も拒否する事はなく、時折困った微笑みを浮かべる事はあっても穏やかに部屋に招き入れてくれる。それから、信哉はずっと大人で理知的でモデルと言っても過言ではない美しい容姿を持ち、天武の才すらも兼ね備えた孝の自慢の敬愛する兄だ。もし兄が嫌がらなければ自慢して回りたいほどだが、そう言ったら彼が今までにない酷く困った顔をしたので諦める事にした程だ。

先月一度道場に来ていたと父から聞いてはいたが、暫く会わなかった。もしかしたら笑顔で迎えてくれるかもしれないと、内心淡い期待が心に浮かぶ。しかし、期待に胸を膨らませながら押した呼び鈴に反応して扉を開いたのは、彼の予想とは全く違う見知らぬ自分と同じ年程の青年だった。予想だにしない姿に、孝の表情が一瞬にして険悪なモノに一変した。

「お前、誰?」

のっけからのあからさまな敵意と不機嫌な声に、相手もムッとした様な表情を浮かべ二人の間の雰囲気が険悪なモノに変わる。自分とほぼ同じ年くらいの青年が、何故自分の兄の部屋から出てくるのか。何度か会った事のある兄の友人でもない、その相手が兄の服を当たり前の様に着ているのも癇に障る。不快を隠そうとしない孝の表情に、相手の表情も更に険悪さを増して、それはまるで出会ったばかりだというのに犬猿の仲を如実に表しているのが空気でも伝わった。

「仁、誰が………孝?」

リビングの扉を開いた信哉が二人を見やり声をあげると、パッと孝の表情が満面の笑みに変わる。目の前に立ちはだかっていた仁は、その孝のあからさまな変貌に気持ち悪そうに眉をひそめ背後を振り返った。

「信哉、誰?こいつ。」

敬愛する兄の名前を目の前で呼びすてにされ、癇に障った孝の表情が不快そうに怒りを滲ませる。戸口からその様子を見てとった信哉は、何なんだこの二人はとでも言いたげに呆れたように口を開いた。

「俺の弟だよ。孝、どうした?」

はいれよと声をかけられた孝は徐に目の前の仁を無視して、はいとにこやかに答え彼を押しのけるようにして部屋に上がる。それを見た仁は内心二重人格か?と首を傾げながら、扉を閉じた。
ここ数日で仁は此処での生活にずいぶん馴染んだ様子で、既に四人全員と顔を合せた。やはり全員を眩しそうに眺め、「全員がそれぞれの色に光って見える」と答える。とはいうものの、それ以外に突出して不思議な事を起こすこともなく、何かの拍子に戻るかもしれない記憶の回復を待っていた。

それとなく信哉から院の香坂智美に問い合わせてみたものの、今のところ該当しそうな者は現在はいないという返答だった。
因みに悌順が勤務先の教材を使用してみたところ、頭は大分良いようで高校生以上の学力があるかもしれないと分かった。知力は記憶とは全く関係ないようで、IQ本来の意味とは違うが、知能の高い記憶喪失者となっただけだった。馴染んできたせいか、毎日ちょっかいをを出しに来る忠志の言葉が移ってしまい四人を既に名前だけで呼んでいる。しかも、特に信哉は居候宅の主という事もあってかすっかり懐いてしまい、この状況に至っている。

ケーキの箱を傍らにキッチンで湯を沸かす信哉の横に、ヒョイッと仁が滑る様に近寄った。どうも気が合わないらしい二人に、同じ年くらいなのになぁと信哉は不思議そうに首を傾げる。そう言う自分も友人は少ない方だから、人の事は言えないのだが、最近は孝は友人も増えて安堵していたのに。仁は、孝に聞こえないように声を潜めて囁く。

「信哉とあいつ、兄弟なのにあんまり似てないのな。」

それが姿形を指しているのか、はたまた異能を指しているのか判別は付かない。忌憚のない言葉だが、信哉は思わす間破顔してその青年を見下ろす。今まで長く一人暮らしだったのに仁が始終傍に来るせいか、最近の彼は少し感情が表に浮かび出る事が多くなった様に見えた。これも、もしかしたら仁の能力のせいなのかもしれない。

「そうだな、母親が違うからな。」

穏やかに言葉少なくそう言いながらコンロの火を止める信哉に、仁はふぅんと言ったでけでそれ以上追及しようともしない。まるでそんな事たいしたことないと気にする様子でもないのだ。仁がペーパードリップの準備されたサーバーを、湯の注ぎやすい場所に押しやった。
見知らぬ自分とたいして年の変わらない青年と自分以上に親しげに話している信哉の姿に気がついた孝が、リビングで少し不満気な表情を浮かべてソファーに座りなおすのを見やりながら信哉は呆れながら少し苦笑する。兄として慕ってくれる事は確かに嬉しい事ではあるが、どうも父親に似て子供っぽいところが孝には過分に遺伝されてしまった気もする。

「で?どうかしたのか?孝」

差し出したマグカップを受け取りながら孝は、穏やかな視線で自分を見下ろす彼を見つめ返す。どうやらかなり気になるらしく、信哉の横に居る仁の姿をちらりと見やった。小さく溜息をついて親子だなぁと内心呟きながら、ポンとその頭を撫でて信哉もその向かいに座ると、当たり前のように仁がその隣にスルリと滑り込んだ。

「仁は色々事情があってな、預かってるんだ。いると話しにくい事か?」
「い、いや、そう言う訳じゃないんです。」

口ごもる孝の表情は、あからさまに言いにくいんじゃなくて、邪魔!と言いたげだ。それを知ってか知らずか、仁はケロッとした顔で、信哉の隣でマグカップを口に運んでいる。その態度からも、どうやら意地でも部屋を出ていく気が無いらしいことが感じられたのは気のせいだろうか。孝が微かに悔しそうな溜め息をつくのを見ると、余程この二人は気が合わないらしい。その二人の様子に一つ溜息をついてから信哉は、ふと思い出した様に孝を見た。

「先に言っておくが、道場にはいかないからな?」

先手を打たれてしまった孝の表情が、更に残念そうに曇る。実はこの道場に戻る戻らないの問答は、毎回来訪の度に繰り返されてきた事だ。毎回結論は同じなのだがあまりにも孝が繰り返すので、ここ最近は信哉が問答を始める前に先に釘を刺してくるようになってしまった。それは孝の作戦が誤った結果でもあるのだが、何故頑なに信哉が拒むのか彼には不思議でならない。あれだけの能力があったら畳んでしまった鳥飼道場を再開する事すらできるはずなのにと何時も思うのだ。
毎回の事とはいえ、彼にとっては最大の目標の一つを無残に打ち崩され肩を落とす。孝はがっかりしながらももう一つ話題があったのか、気分を変えた様に口を開く。

「最近、行方不明になる人が多いってニュース知ってますか?兄さん。」

思わぬ言葉が孝の口から飛び出し、ふと孝には気付かない程度の気配で信哉が身を固くした。横にいた仁は、ほんのわずかな気配の変化だったが、それでも彼の緊張に気がついてチラリと信哉を見た。しかし、あえて口を開かないのは今はそれが賢明と判断したのだろう。
異能を目で見る事の出来る仁には四人の能力は隠しようがなく、ゲートキーパーの仕事の事は伏せつつ四人が普通とは少し違うという事だけは説明した。記憶がないせいなのか、その持って生まれた能力のせいか、はたまた元々の資質なのか仁は案外素直にそれを理解し受け入れていた。信哉が緊張した内心を綺麗に包み隠して、普段と変わらぬ穏やかな声音で口を開く。

「最近噂にはなっているようだな?それがどうかしたのか?」
「道場の門下生の数人がここ数日行方不明になっているんです。同級生も一人数日行方をくらましてましたけど、そっちは先生が見つけたので。」

その言葉に信哉は眉を潜める。孝の同級生の行方不明の件は、孝の担任でもある土志田悌順から聞いて既に知っていた事だ。しかし、行方不明者の増加は限定的だとは院から報告を受けていたが、まさかこんなに身近な場所で起こっているとは考えていなかった。それも身近な範囲で数日という短期間に、数人も消えているなんて思いもよらなかった。動向には目を光らせているが、狭い範囲で短期間に数人は偶然とするには無理があるような気がする。もし、最悪を想定するなら、それは一つの可能性を示し始めているような気がした。

まさか、ここいらで奴が定住し始めたのか?

ふとそんな考えが心をよぎる。
ここいらはあの場所から一番近い都市ではないが、最も近い大きな都市ではある。絶対にあって欲しくはないが、絶対にないとも言い切れない事ではある。それに、人間の姿を真似る奴らは人間の多い場所を好む。何故なら奴らが紛れ込むのにも補食するのにも、都市部が適しているのは周知の事実だ。なまじ人の姿に近い人外であればある程、狡猾さを有している事もあるだけに、人に紛れ人を喰う事は大都市の方が容易くなってしまう事はすぐ気がつくだろう。それが人間に溢れている現代という世界なのだ。しかし、その思考は何時もの冷静で同様のない表情の奥にしっかりと包み込まれていて、目の前で見ている筈の孝にすら窺う事は出来ない。あえて気がついても口にしない、彼の隣りに座る青年を除けばだが。
孝はそれを知るはずもなく、マグカップを両手で包む様にして目を伏せたまま口を開いた。

「皆、それぞれ……少し問題があったり、してましたけど。」

それは、まるで自分にでも言い聞かせる様な辿々しい口調で、ふと信哉は彼の本意が分かった気がした。家庭の問題の内容は大事には出来ないが、孝が知る事のできる範囲の問題なのだろう。例えば親との不和や、疎遠等、本人が口にする程度の事。

「でも…家出するとか…そんな事はないはずなんです。」

翌日道場で一緒に鍛練の約束があった奴もいるしと小さく孝は言葉をつけたした。行方不明になった者の中に彼自身が親しくしていた物が含まれていた事が、その小さな溜め息とともに溢れ落ちるように伝わった。しかし、同時に彼の本意はそうではない。それはその幼くも見える表情にありありと表れている。信哉は孝に無言のまま、更に言葉の先を促す。

「歳もバラバラだけど…ホントに立て続けで…。」

道場に通っていた行方不明者は、おおよそ独り暮らしで姿を消したことに暫く気がつかれなかったようだ。職場の無断欠勤から行方が分からない事が明らかになって、道場に最後に通った日を何度か警察が聞き込みに来たらしい。と言うことは、行方不明になった日付にも少しばらつきがあるのかもしれない。それにしても、道場に通う門下生とは随分範囲が狭いとしか言えないだろう。

「少し兄さんが心配になって。」

ふぅとその言葉に納得した様に、信哉は溜め息をついて異母弟を見つめた。結局家族間に何らかの問題があって一人で居る事の多い人間が、次々と消えたという事が孝の心に引っ掛かったのだ。それが、異母兄で一人で暮らしている自分の事を思い起こさせたのだろう。形はどうあれ、自分の身を案じてくれた事は理解できて、微かに苦い笑みが信哉の顔に浮かぶ。

「そうか、心配してくれたんだな、ありがとう。」

過剰ではあるが自分を心配して来てくれた事には、正直に嬉しくは思う。率直な信哉の言葉にパッと嬉しそうに孝が笑顔になったのを見た途端、今まで真横で黙りこくっていた仁が不意にボソリと呟いた。

「……ブラコン。」

プチ、そう何かが切れる音がした気がするのは気のせいだろうか。いや気のせいだと思いたい、と正直に信哉は思う。だがどう見ても気のせいではなく、ワナワナと震える孝の顔がひきつっている。何でこの二人こんなにウマが合わないんだろうか。

「…大体、さっきから何で兄さんに寄りかかって座ってるんだよ!馴れ馴れしい!」
「信哉が何も言わないんだから別にいいだろ?」
「はぁ?!兄さんは優しいから我慢してくれてるんだ!」

呆れ果ててしまう位どっちでもいいようなことで、始まった二人の口論に信哉は思わず頭を抱えていた。
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