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30代の話 Terminal
65.噛み合わない話し合い
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夏が色を濃くした八月。
私の周囲はにわかに騒がしいものになった。
私自身の体調の回復と同時に、私が全ての決着をつけるために動き出し始めたからだ。同時に既に回復はしたものの三度目の過剰服薬による自殺未遂が彼と彼の両親にも伝えられ、私から直接ではないが離婚の意思を伝えた事も関係している。私の父を経由して相手の両親へ離婚の意思を伝えて数日間、実家の住所も電話番号も知っている筈の彼から直接の反応は見られなかった。
その頃になってやっと私は携帯の電源をいれた。それでも全く彼からの電話もメールもなく時が過ぎていく。最ももしあったとしても一人の時に話をしようとは思わなかったから、きっとかかってきてもとらなかっただろう。
そして奇妙な偶然ともいえるのかもしれないが、結納を交わしたのと同じ日。
私はもう一度過去に向き合うために、俊一と最後に過ごした家に両親と再び足を向けた。ほんの一ヶ月前までそこに住んでいたはずなのに、訪れたその家は随分過去の記憶の中にあった。久々にみるそのアパートは外観は綺麗なのにどこか薄汚れて見える。そして、久々に足を踏み入れた部屋の中も雑然とゴミ袋が積み重なり、埃にまみれているようだった。
まるで結納の時と同じ両家の親を交えたその場で、私は真っ直ぐに前を向き座った。そして、目の前の男を以前とは全く違った様子で冷静に見つめていた。逆に彼は私の視線から逃れるように目を伏せたままだ。
「体調はどうなんですか?入院したんでしょう?」
義理の母の言葉に答えたのは私ではなく、私の父だった。入院を伝えてからその後一度も彼からも彼の両親からも病状を心配どころか状況を問い合わせる連絡がなかったことに、私の父は憤慨していた。
(彼からの手紙は私が入院している最中、私が入院したとは知らずに届いたものらしかった。先に目を通した母が憤慨して棄てようとしたのを父が一端保管し、私が落ち着いたのをみて読ませることに決めたそうだ。)
その怒りを包み隠した言葉は酷く事務的で冷たい感じすらうける。
しかし、入院はともかく彼は、自分の両親に私が実家に戻った事すらも伝えていなかったことも発覚した。同時に私が自殺未遂を繰り返したことも伝わっていなかったし、病気で治療中なのも伝えられていなかった。
彼自身の事は幾らか伝わっているのに私の事は何一つ伝わっていなかった事で、彼に対する父の怒りはかなりのものなのだ。一見静かだが、怒っているのは横にいてもよく感じらる。そして、実は静かだが母も同じように怒っているのが、二人の子供の私にはよく分かる。
同時に私を見ようともしない男の心中も私には分かる気がした。両親にばらされたくないことを知っている私が以前とは違って、彼の言うことを聞かないのではないかと彼は怯えている。そして、その両親も既に私が離婚したいと考えているのを知って落ち着かないのだ。恐らくその場で一番冷静だったのは、当の本人である私なのではないだろうか。
「それで…アキコはどうしたいんだ?」
口火を切った彼の父に、私の父が鋭く言葉を遮る。
「…貴方が呼び捨てにはしないでいただけませんか?アキコはうちの子供です。」
義理の父の言葉に言い返した私の父の膝に微かに諌めるように私は手を置いて言葉を抑える。父が一瞬不満を匂わせたが、口を閉じたのをみて私は息をついた。
そして私は真っ直ぐに射抜くかのような視線で目の前の視線を合わせようとせず俯き体を丸める男を見た。
せめて私を見たらどうなの?
男は社会生活のいやな部分から逃げて、嫌な出来事から逃げてきた。自分の全てを知ってそれを話す事の出来る私からも逃げようとしている。
全てを語れば確実に身の破滅になる事を私が握っている事に気がついているのかいないのかは別にして、この場で私が言うことを聞かないのに怯えているのだ。既に私が泣き出したりしないことに、彼は違和感を感じ恐れているに過ぎないのだ。それが目に見えるような態度に、私は正直がっかりした。
その姿は余りにも幼く、幼稚だ。
気がついていたけど、見ない振りをしてきた。
でも、あなたは今とってもカッコ悪くて情けないよ。
自分が愛したはずの者は、元々こうだったのだろうか。
カッコ悪いし情けない。子供じゃないんだから、せめて真っ直ぐ背を伸ばして私を見たらどうなの?
そんな思いの中で、身動きもしない男の姿を見つめる。
「私は離婚する気です。」
静かに告げた私の声音に一瞬男は視線を上げ、その視線は困惑に満ちていた。
その瞳で私はそれでも最後には私が戻ると言うと、彼が信じ切っていたことに気がつく。私がこの場で頭を下げて戻らせてくださいと泣くと思っていたに違いなかった事に私は呆れるしかなかった。彼の父が当然のように理由を問いかけ、理由を口にしようとした私を慌てたように遮る声を出した彼に場が凍りつく。そんな彼を私は冷静な視線で見つめる。
「それ以上言うと頭に来るかもしれないから止めておいた方がいいぞ。」
奥歯を噛みながら低く放たれた脅しにしか聞こえない言葉が、どんなに場違いで誤ったものなのか彼は気がつかない。私の両親の怒りに更に油を注いだだけでなく、自分の父親にまで不信感を抱かせたのだ。そして、私はもうその場で彼がどう出ようが構わなかった。むしろ怒りだし普段のように殴ったら、その後の話が早いとすら思っていたのだ。
「やればいいわ、お互いの両親がいる前で理由を証明して見せる事になるだけよ。やりなさいよ。」
余りにも冷静な私の反論は、今まで男には向けたことのない聡明な昔の私らしい私の姿だった。
その姿に気圧された彼をまるで感情の起伏すら起こさない様子で私はただ静かに見つめ言葉を繋ぐだけに集中していた。もう、全ては結末に向かって走り出そうとしている事に気がついていないのはその場ではたった二人だけだ。それは彼と彼の母親に他ならなかった。
「アキコ…さんの意思は変わらないんですか?私達はやり直して二人でいてくれたらと…。」
仕切り直したように義理の父の言葉が緊張を帯びたのは、私が明確な意思を示したからだけでなく、目の前で息子が私を脅すのを見てしまったからだと思われた。自分の息子を諌めて続けた言葉に私は静かに口を開く。
「今まで何度もやり直そうとしてきましたし、幾つも我慢してきました。全てをお話すれば離婚したいと思う私の気持ちは当然だと、そちらも思いますよ。」
「何を勝手なこと言ってるんだよ!」
「…今まで勝手だったのは貴方でしょ?私が話している時に口を挟まないで。」
ピシャリとはね除ける私の口調の冷静さと比例して荒くなっていく彼の語気に彼の父親の表情がますます曇る。今にも立ち上がり殴りかかりでもしそうな気配をにじませる彼の歯軋りに、周りが戸惑うのも構わず慣れている私は彼から逃げもしない。それぞれに両家の親達が、片方は自分達の息子を諌めようと、片方はその男が何か行為に出たらすぐさま娘を守ろうと身を堅くするのが分かった。しかし、もし暴力を振るうならそこで全ては終わる。もし振るわなかったとしても私が全てを暴露してしまっても終わる。男にとって今後の家族との自分の姿を思うなら、私に全て何一つ話させずに話を終結させることしかない。しかし、そこまで考えは回らないのだろうという事も、彼を目の前にして私は理解できた。
「お母様方は知らないでしょうが、今まで何度かの浮気もありましたし、私は彼の子供も中絶しました。もうそれだけでも女性として十分すぎる苦痛だと思います。」
私が静かに告げると初めて彼の母親の表情が曇る。
実は孫がいたかもしれないの事を彼がやはり伝えているはずがないと私が思った通りだった。それと同時に歯軋りにが強くなり、立ち上がりそうな彼を初めて彼の父が諌める。味方のはずの父に諌められて、彼は私の言葉に牙をむいた。
「浮気は、ここ一年はしてないじゃないか。」
「一年しなかったら全部チャラだと思える神経が分からない。口を挟まないでと、私言ったわよ?貴方は私の意見を何時もそうやってへし折って、一度も聞こうともしなかったわね。」
私にあっという間にやり込められて拳を震わせるその姿を、私は泣く事もせず今までとは違う冷ややかな目で見つめた。やるならやればいいというその瞳にある決意にやっと気がついたのか彼は激しく戸惑う表情を浮かべ押し黙る。
そして、そこでやっと自分の今後も含め身を守る為に話されたくない事実が私に握られていることに気がつく。それが私にあっさりと見抜かれるほど、ハッキリと顔色が代わり周囲が心配そうに彼の様子を探る。今更、私が握っている切り札とも言える隠されている事実の存在に気がついたように彼は私の顔をまじまじと見つめた。
「…貴方は私が言う理由はもう分かるでしょう?」
正面から静かにそういった私の目を見ながら、彼は冷静になるどころか逆上したかのように頬を染めて歯ぎしりしながら私を見据えた。言葉の中に含まれる二人しか知らない現実に、義理の両親である二人は戸惑う表情を浮かべる。そして彼は、私の言葉に動揺を見せなかった私の両親の姿に私が何処まで話したのかを伺うように睨み付けた。
「貴方は私達の娘の事を知ろうしなかった、私達の子として育ってきた娘を理解しようとしなかったんだよ。」
実際には私は何も両親には話していない。ただ両親が冷静に二人を見て、何か隠していることがあるのだと判断しただけの事だ。それをどう判断したのか私の父が諭すようにそう口にした瞬間、予想外にその男は逆上の余り唾を飛ばす勢いで口を開いた。
「いいえ!理解してます。俺は彼女が大事だったし、彼女がまた戻ってくると思ったから此処で頑張ってるし。」
「大事だったら、何故君は一度もアキコを守ろうとしてくれなかったんだ?」
「守りました!ここに住んでいたんだし!」
「清潔にもせず、暖かい食事も与えず、綺麗な衣類も与えてもらえずいたでしょう。」
「それはアキの仕事です!!」
言葉の矛盾に私の父があきれ果てるのが伝わる。それは彼の父も同じく感じ取ったのが分かった。明らかな矛盾を平気で叫びたてる息子を止めようと、父親の手がかかるが彼はそれをはね除け喋り続ける。
「アキコは病気で家事も何もできなかった。出来ないのを知っていて放置したでしょう?」
「それは……僕も病気だから!」
「病気か。だったら、尚更ここに娘を戻す事はもっと出来ないだろう?また同じ事が起こる。」
「それは分かりませんっ!彼女はここで元のように仕事をしたら元気になるんです!」
矛盾を叫び堂々巡りをする彼とのやり取りに呆れ果てたように私は彼を眺めた。離婚したいという言葉を完全に忘れ去って、よくもまぁここまで矛盾した意見を言い続けられるものだ。同じことを感じたのだろう私の父は、溜め息混じりに彼を無視して彼の父に視線を向けた。
「アキコは死にかけたんだ、私達は親として娘を一番に守りたい。」
自分を無視した私の父の言葉に更に逆上を深める彼を見つめた私は、自分の父の言葉をそこで止めるよう手を握った。
目の前の男には理解できないという事が、私には分かっている。もうずっと彼は、自分だけを守る為に生きているのだから。
私が元のように稼げば、自分は安穏と暮らせる。私が再び前と同じ生活をすれば自分の世話をしてくれる。そう信じて疑う事もなかった。
何故なら今までの私は何をしても戻ってきたのだから。例え暴力を振るっても、言葉で傷つけても、浮気をしても、結局死にかけてすらも戻ってきたのだから、今度もそうだと信じてつゆほども疑わない。それなのに、思っていたのと今真逆に私はもうここに戻らないと宣言し、それを阻むなら両親に話していないことをばらすと脅かしたのだ。今まで従順な奴隷だったはずの私が、最悪の場面で反抗することが彼には信じられないのだ。そして、余りの逆上に涙を流しながらその後口にした彼の言葉が、この先の全てを決定付ける言葉になった事を彼は知らない。
「僕だって…苦しんで苦しんで、何度か死のうとしたんです。彼女が薬を飲んで酷く醜く膨れた腹をしてたのを知ってるから、それはやりたくないと思ったけど、方法がなくて仕方がなく薬を飲んで死のうともしたし、電車の線路に下りて死のうとして駅員に止められたり…。」
それは酷く稚拙で幼稚な言葉だった。
そしてそれ以上にその場にいた彼以外の全ての人間の心を凍りつかせる言葉だった。
彼はけして死のうと思った私の気持ちを理解はしない。
彼は私が行った行為をただ醜いと卑下し、自分も仕方がないからそれをしたと告げた。恐らく一錠か二錠多く飲んだことはあるのだろう。だけど、恐らくは行為を意図してしたのではない。もしそうでないなら、私が何百と錠剤を飲んだのを知っている彼が同等の事をするためには私と同じようにして薬を集めなければならないが、その集めるための知識が彼にはない。もし何とかそれをこなしたとして、同じことをしたのであれば相応の騒ぎとなったはずだ。つまりは今ここで一人で過ごしていられるはずがない。恐らくは、普段より多く飲んだ薬のお陰で、普段より長く眠って目を覚ましただけだったろう。
そして、彼はそんな事をしたらただではすまない事態を起こしたと嘘をついた。それが嘘であるのはたった一ヶ月前まで一緒に住んでいた私にとっても保護者にも当たる彼の両親の表情から言っても明白だった。
そんな事が現実にあったとしたら、尚更もう彼はここで一人では暮らしていないだろう。少なくとも線路に故意に降りて遅延など起こしでもしたら訴訟問題になりかねない。
大体にして、一ヶ月前まで一緒に住んでいた私に一度として自殺を仄めかす発言も行動も見せず毎日遊び歩いていた男がどうやってそれを隠して生きていたというのだろう。しかし、その周囲が当たり前のように理解していることも、それすらも口にした者は気がつかないのだ。
呆れ果てた目で泣きじゃくる姿を眺めながら、私と私の両親そして彼の父親は彼自身の言葉が幕を引いたことに溜め息を溢していた。そして、もう無駄な話を終えようとしたその時、驚くことにその茶番のような涙にあわせ男を慰め始めたものがいたのだ。
全ての幕を自分で引いた息子の姿に心底当惑した表情の彼の父親はその様子を横に躊躇いがちに私と彼女の両親を見やった。息子の言葉と私の言葉の先で全てはもう変えようのないことだと理解したその目は、もう言う事もないというように視線を伏せる。
「…もう離婚という方向で動くしかないという事でしょうね。」
「待ってよ、まだ時間がほしいんだ。」
不意に口を挟む泣きじゃくりながら言葉を挟んだ彼の姿に周囲の殆どが微かに呆れたように見つめる。
「ここで結論は出せない、だから約束どおり誕生日までは待ってほしい。」
「約束?」
私には全く聞き覚えのないことだった。
しかし、目の前の男は頑としてその言葉を覆そうとはしない。自分の誕生日までは自分はここで待つし、私が帰ってくる場所を守ると言い張るその理由は、到底私には理解できないものだった。同様に私の両親も彼の父親も呆気にとられ、彼の雄弁に約束を掲げる姿を見る。
今更いったいどうすればここに私が戻ってくると思うのだろうか。私自身が既に離婚したいとハッキリ言っているのにだ。
だが、一度言った言葉を覆そうともせず自分の告げた考えに固執する男を、その場にいた彼の母親以外が当惑した視線で見つめるだけだった。
「そうしましょう。そうするのがいいわよ。」
そして、更に彼の母親がそれに賛同したのを、当惑しきった視線で両親が見ているのが分かった。
※※※
長い帰途の道中で、後部座席に座った私は疲労の強い顔で窓の外を眺めた。
結局この日何も得たものはなく、ただ残り数ヶ月じっと耐えて過ごさなくてはならない事は苦痛ではあった。それでも私は私として意見を発した。
迷う事もなく、隠す事もなく。
話せばもっと多くのことを暴露することはできる。
最初の出会いから歪な愛を交わしてきたことも、それを続けて来たことも。結婚してからはそれが暴力にすりかわって、日々耐えたことも。
奴隷として扱われ、奴隷の誓約書を書かされそうになったことも。
殴られ気を失ったこともあった。
冬に水をかけられ放置されたこともある。
それだけではなく、彼が隠していること、私に罪を擦り付けたこと。
ああでも、泥棒扱いだけは訂正すればよかった。あのゲームの回数を示すカードを見せれば彼の浪費を証明するのは簡単だった。一枚100回まで記録されるゲームのカードが50数枚も、ご丁寧に電話の傍に重ねてあった。一枚5万円のカードが50枚以上、250万円以上も注ぎ込んで得たのが、架空の大佐だか少佐だかいう階級で、お陰で泥棒扱いされた妻に離婚を切り出されたわけだ。
私は苦く車の音に紛れるように小さな笑いを溢した。
だが、私はそうしなかった。
それを切り札にすることは出来る。
今度まだごねるのであれば、それらを披露するしか無いかもしれないが、今日はしなかった。憎みはしたが一時愛情があったのは確かなのだ。だから、彼を破滅に落とす事はしなかった。してしまえば、彼はあの両親からも見放されかねないと思ったのだ。
そして、私がそうしなくても、もう既に彼は一人で生きていくには余りにも稚拙で愚かすぎる事を証明して見せたのだから。
私は夏の日差しのに目を細めながら一つ深く息をついて、まだ完全に治ったとはいえない体に蓄積した疲労にウトウトと微睡む。やがて、バックミラー越しに父が疲れた顔で、私に休憩を問う。私は大丈夫と答えながら、また少し微睡んだ。
まだ、しなければならない事は山のようにある。
それでも私は新しい一歩を踏み出した事は間違いなかった。
私の周囲はにわかに騒がしいものになった。
私自身の体調の回復と同時に、私が全ての決着をつけるために動き出し始めたからだ。同時に既に回復はしたものの三度目の過剰服薬による自殺未遂が彼と彼の両親にも伝えられ、私から直接ではないが離婚の意思を伝えた事も関係している。私の父を経由して相手の両親へ離婚の意思を伝えて数日間、実家の住所も電話番号も知っている筈の彼から直接の反応は見られなかった。
その頃になってやっと私は携帯の電源をいれた。それでも全く彼からの電話もメールもなく時が過ぎていく。最ももしあったとしても一人の時に話をしようとは思わなかったから、きっとかかってきてもとらなかっただろう。
そして奇妙な偶然ともいえるのかもしれないが、結納を交わしたのと同じ日。
私はもう一度過去に向き合うために、俊一と最後に過ごした家に両親と再び足を向けた。ほんの一ヶ月前までそこに住んでいたはずなのに、訪れたその家は随分過去の記憶の中にあった。久々にみるそのアパートは外観は綺麗なのにどこか薄汚れて見える。そして、久々に足を踏み入れた部屋の中も雑然とゴミ袋が積み重なり、埃にまみれているようだった。
まるで結納の時と同じ両家の親を交えたその場で、私は真っ直ぐに前を向き座った。そして、目の前の男を以前とは全く違った様子で冷静に見つめていた。逆に彼は私の視線から逃れるように目を伏せたままだ。
「体調はどうなんですか?入院したんでしょう?」
義理の母の言葉に答えたのは私ではなく、私の父だった。入院を伝えてからその後一度も彼からも彼の両親からも病状を心配どころか状況を問い合わせる連絡がなかったことに、私の父は憤慨していた。
(彼からの手紙は私が入院している最中、私が入院したとは知らずに届いたものらしかった。先に目を通した母が憤慨して棄てようとしたのを父が一端保管し、私が落ち着いたのをみて読ませることに決めたそうだ。)
その怒りを包み隠した言葉は酷く事務的で冷たい感じすらうける。
しかし、入院はともかく彼は、自分の両親に私が実家に戻った事すらも伝えていなかったことも発覚した。同時に私が自殺未遂を繰り返したことも伝わっていなかったし、病気で治療中なのも伝えられていなかった。
彼自身の事は幾らか伝わっているのに私の事は何一つ伝わっていなかった事で、彼に対する父の怒りはかなりのものなのだ。一見静かだが、怒っているのは横にいてもよく感じらる。そして、実は静かだが母も同じように怒っているのが、二人の子供の私にはよく分かる。
同時に私を見ようともしない男の心中も私には分かる気がした。両親にばらされたくないことを知っている私が以前とは違って、彼の言うことを聞かないのではないかと彼は怯えている。そして、その両親も既に私が離婚したいと考えているのを知って落ち着かないのだ。恐らくその場で一番冷静だったのは、当の本人である私なのではないだろうか。
「それで…アキコはどうしたいんだ?」
口火を切った彼の父に、私の父が鋭く言葉を遮る。
「…貴方が呼び捨てにはしないでいただけませんか?アキコはうちの子供です。」
義理の父の言葉に言い返した私の父の膝に微かに諌めるように私は手を置いて言葉を抑える。父が一瞬不満を匂わせたが、口を閉じたのをみて私は息をついた。
そして私は真っ直ぐに射抜くかのような視線で目の前の視線を合わせようとせず俯き体を丸める男を見た。
せめて私を見たらどうなの?
男は社会生活のいやな部分から逃げて、嫌な出来事から逃げてきた。自分の全てを知ってそれを話す事の出来る私からも逃げようとしている。
全てを語れば確実に身の破滅になる事を私が握っている事に気がついているのかいないのかは別にして、この場で私が言うことを聞かないのに怯えているのだ。既に私が泣き出したりしないことに、彼は違和感を感じ恐れているに過ぎないのだ。それが目に見えるような態度に、私は正直がっかりした。
その姿は余りにも幼く、幼稚だ。
気がついていたけど、見ない振りをしてきた。
でも、あなたは今とってもカッコ悪くて情けないよ。
自分が愛したはずの者は、元々こうだったのだろうか。
カッコ悪いし情けない。子供じゃないんだから、せめて真っ直ぐ背を伸ばして私を見たらどうなの?
そんな思いの中で、身動きもしない男の姿を見つめる。
「私は離婚する気です。」
静かに告げた私の声音に一瞬男は視線を上げ、その視線は困惑に満ちていた。
その瞳で私はそれでも最後には私が戻ると言うと、彼が信じ切っていたことに気がつく。私がこの場で頭を下げて戻らせてくださいと泣くと思っていたに違いなかった事に私は呆れるしかなかった。彼の父が当然のように理由を問いかけ、理由を口にしようとした私を慌てたように遮る声を出した彼に場が凍りつく。そんな彼を私は冷静な視線で見つめる。
「それ以上言うと頭に来るかもしれないから止めておいた方がいいぞ。」
奥歯を噛みながら低く放たれた脅しにしか聞こえない言葉が、どんなに場違いで誤ったものなのか彼は気がつかない。私の両親の怒りに更に油を注いだだけでなく、自分の父親にまで不信感を抱かせたのだ。そして、私はもうその場で彼がどう出ようが構わなかった。むしろ怒りだし普段のように殴ったら、その後の話が早いとすら思っていたのだ。
「やればいいわ、お互いの両親がいる前で理由を証明して見せる事になるだけよ。やりなさいよ。」
余りにも冷静な私の反論は、今まで男には向けたことのない聡明な昔の私らしい私の姿だった。
その姿に気圧された彼をまるで感情の起伏すら起こさない様子で私はただ静かに見つめ言葉を繋ぐだけに集中していた。もう、全ては結末に向かって走り出そうとしている事に気がついていないのはその場ではたった二人だけだ。それは彼と彼の母親に他ならなかった。
「アキコ…さんの意思は変わらないんですか?私達はやり直して二人でいてくれたらと…。」
仕切り直したように義理の父の言葉が緊張を帯びたのは、私が明確な意思を示したからだけでなく、目の前で息子が私を脅すのを見てしまったからだと思われた。自分の息子を諌めて続けた言葉に私は静かに口を開く。
「今まで何度もやり直そうとしてきましたし、幾つも我慢してきました。全てをお話すれば離婚したいと思う私の気持ちは当然だと、そちらも思いますよ。」
「何を勝手なこと言ってるんだよ!」
「…今まで勝手だったのは貴方でしょ?私が話している時に口を挟まないで。」
ピシャリとはね除ける私の口調の冷静さと比例して荒くなっていく彼の語気に彼の父親の表情がますます曇る。今にも立ち上がり殴りかかりでもしそうな気配をにじませる彼の歯軋りに、周りが戸惑うのも構わず慣れている私は彼から逃げもしない。それぞれに両家の親達が、片方は自分達の息子を諌めようと、片方はその男が何か行為に出たらすぐさま娘を守ろうと身を堅くするのが分かった。しかし、もし暴力を振るうならそこで全ては終わる。もし振るわなかったとしても私が全てを暴露してしまっても終わる。男にとって今後の家族との自分の姿を思うなら、私に全て何一つ話させずに話を終結させることしかない。しかし、そこまで考えは回らないのだろうという事も、彼を目の前にして私は理解できた。
「お母様方は知らないでしょうが、今まで何度かの浮気もありましたし、私は彼の子供も中絶しました。もうそれだけでも女性として十分すぎる苦痛だと思います。」
私が静かに告げると初めて彼の母親の表情が曇る。
実は孫がいたかもしれないの事を彼がやはり伝えているはずがないと私が思った通りだった。それと同時に歯軋りにが強くなり、立ち上がりそうな彼を初めて彼の父が諌める。味方のはずの父に諌められて、彼は私の言葉に牙をむいた。
「浮気は、ここ一年はしてないじゃないか。」
「一年しなかったら全部チャラだと思える神経が分からない。口を挟まないでと、私言ったわよ?貴方は私の意見を何時もそうやってへし折って、一度も聞こうともしなかったわね。」
私にあっという間にやり込められて拳を震わせるその姿を、私は泣く事もせず今までとは違う冷ややかな目で見つめた。やるならやればいいというその瞳にある決意にやっと気がついたのか彼は激しく戸惑う表情を浮かべ押し黙る。
そして、そこでやっと自分の今後も含め身を守る為に話されたくない事実が私に握られていることに気がつく。それが私にあっさりと見抜かれるほど、ハッキリと顔色が代わり周囲が心配そうに彼の様子を探る。今更、私が握っている切り札とも言える隠されている事実の存在に気がついたように彼は私の顔をまじまじと見つめた。
「…貴方は私が言う理由はもう分かるでしょう?」
正面から静かにそういった私の目を見ながら、彼は冷静になるどころか逆上したかのように頬を染めて歯ぎしりしながら私を見据えた。言葉の中に含まれる二人しか知らない現実に、義理の両親である二人は戸惑う表情を浮かべる。そして彼は、私の言葉に動揺を見せなかった私の両親の姿に私が何処まで話したのかを伺うように睨み付けた。
「貴方は私達の娘の事を知ろうしなかった、私達の子として育ってきた娘を理解しようとしなかったんだよ。」
実際には私は何も両親には話していない。ただ両親が冷静に二人を見て、何か隠していることがあるのだと判断しただけの事だ。それをどう判断したのか私の父が諭すようにそう口にした瞬間、予想外にその男は逆上の余り唾を飛ばす勢いで口を開いた。
「いいえ!理解してます。俺は彼女が大事だったし、彼女がまた戻ってくると思ったから此処で頑張ってるし。」
「大事だったら、何故君は一度もアキコを守ろうとしてくれなかったんだ?」
「守りました!ここに住んでいたんだし!」
「清潔にもせず、暖かい食事も与えず、綺麗な衣類も与えてもらえずいたでしょう。」
「それはアキの仕事です!!」
言葉の矛盾に私の父があきれ果てるのが伝わる。それは彼の父も同じく感じ取ったのが分かった。明らかな矛盾を平気で叫びたてる息子を止めようと、父親の手がかかるが彼はそれをはね除け喋り続ける。
「アキコは病気で家事も何もできなかった。出来ないのを知っていて放置したでしょう?」
「それは……僕も病気だから!」
「病気か。だったら、尚更ここに娘を戻す事はもっと出来ないだろう?また同じ事が起こる。」
「それは分かりませんっ!彼女はここで元のように仕事をしたら元気になるんです!」
矛盾を叫び堂々巡りをする彼とのやり取りに呆れ果てたように私は彼を眺めた。離婚したいという言葉を完全に忘れ去って、よくもまぁここまで矛盾した意見を言い続けられるものだ。同じことを感じたのだろう私の父は、溜め息混じりに彼を無視して彼の父に視線を向けた。
「アキコは死にかけたんだ、私達は親として娘を一番に守りたい。」
自分を無視した私の父の言葉に更に逆上を深める彼を見つめた私は、自分の父の言葉をそこで止めるよう手を握った。
目の前の男には理解できないという事が、私には分かっている。もうずっと彼は、自分だけを守る為に生きているのだから。
私が元のように稼げば、自分は安穏と暮らせる。私が再び前と同じ生活をすれば自分の世話をしてくれる。そう信じて疑う事もなかった。
何故なら今までの私は何をしても戻ってきたのだから。例え暴力を振るっても、言葉で傷つけても、浮気をしても、結局死にかけてすらも戻ってきたのだから、今度もそうだと信じてつゆほども疑わない。それなのに、思っていたのと今真逆に私はもうここに戻らないと宣言し、それを阻むなら両親に話していないことをばらすと脅かしたのだ。今まで従順な奴隷だったはずの私が、最悪の場面で反抗することが彼には信じられないのだ。そして、余りの逆上に涙を流しながらその後口にした彼の言葉が、この先の全てを決定付ける言葉になった事を彼は知らない。
「僕だって…苦しんで苦しんで、何度か死のうとしたんです。彼女が薬を飲んで酷く醜く膨れた腹をしてたのを知ってるから、それはやりたくないと思ったけど、方法がなくて仕方がなく薬を飲んで死のうともしたし、電車の線路に下りて死のうとして駅員に止められたり…。」
それは酷く稚拙で幼稚な言葉だった。
そしてそれ以上にその場にいた彼以外の全ての人間の心を凍りつかせる言葉だった。
彼はけして死のうと思った私の気持ちを理解はしない。
彼は私が行った行為をただ醜いと卑下し、自分も仕方がないからそれをしたと告げた。恐らく一錠か二錠多く飲んだことはあるのだろう。だけど、恐らくは行為を意図してしたのではない。もしそうでないなら、私が何百と錠剤を飲んだのを知っている彼が同等の事をするためには私と同じようにして薬を集めなければならないが、その集めるための知識が彼にはない。もし何とかそれをこなしたとして、同じことをしたのであれば相応の騒ぎとなったはずだ。つまりは今ここで一人で過ごしていられるはずがない。恐らくは、普段より多く飲んだ薬のお陰で、普段より長く眠って目を覚ましただけだったろう。
そして、彼はそんな事をしたらただではすまない事態を起こしたと嘘をついた。それが嘘であるのはたった一ヶ月前まで一緒に住んでいた私にとっても保護者にも当たる彼の両親の表情から言っても明白だった。
そんな事が現実にあったとしたら、尚更もう彼はここで一人では暮らしていないだろう。少なくとも線路に故意に降りて遅延など起こしでもしたら訴訟問題になりかねない。
大体にして、一ヶ月前まで一緒に住んでいた私に一度として自殺を仄めかす発言も行動も見せず毎日遊び歩いていた男がどうやってそれを隠して生きていたというのだろう。しかし、その周囲が当たり前のように理解していることも、それすらも口にした者は気がつかないのだ。
呆れ果てた目で泣きじゃくる姿を眺めながら、私と私の両親そして彼の父親は彼自身の言葉が幕を引いたことに溜め息を溢していた。そして、もう無駄な話を終えようとしたその時、驚くことにその茶番のような涙にあわせ男を慰め始めたものがいたのだ。
全ての幕を自分で引いた息子の姿に心底当惑した表情の彼の父親はその様子を横に躊躇いがちに私と彼女の両親を見やった。息子の言葉と私の言葉の先で全てはもう変えようのないことだと理解したその目は、もう言う事もないというように視線を伏せる。
「…もう離婚という方向で動くしかないという事でしょうね。」
「待ってよ、まだ時間がほしいんだ。」
不意に口を挟む泣きじゃくりながら言葉を挟んだ彼の姿に周囲の殆どが微かに呆れたように見つめる。
「ここで結論は出せない、だから約束どおり誕生日までは待ってほしい。」
「約束?」
私には全く聞き覚えのないことだった。
しかし、目の前の男は頑としてその言葉を覆そうとはしない。自分の誕生日までは自分はここで待つし、私が帰ってくる場所を守ると言い張るその理由は、到底私には理解できないものだった。同様に私の両親も彼の父親も呆気にとられ、彼の雄弁に約束を掲げる姿を見る。
今更いったいどうすればここに私が戻ってくると思うのだろうか。私自身が既に離婚したいとハッキリ言っているのにだ。
だが、一度言った言葉を覆そうともせず自分の告げた考えに固執する男を、その場にいた彼の母親以外が当惑した視線で見つめるだけだった。
「そうしましょう。そうするのがいいわよ。」
そして、更に彼の母親がそれに賛同したのを、当惑しきった視線で両親が見ているのが分かった。
※※※
長い帰途の道中で、後部座席に座った私は疲労の強い顔で窓の外を眺めた。
結局この日何も得たものはなく、ただ残り数ヶ月じっと耐えて過ごさなくてはならない事は苦痛ではあった。それでも私は私として意見を発した。
迷う事もなく、隠す事もなく。
話せばもっと多くのことを暴露することはできる。
最初の出会いから歪な愛を交わしてきたことも、それを続けて来たことも。結婚してからはそれが暴力にすりかわって、日々耐えたことも。
奴隷として扱われ、奴隷の誓約書を書かされそうになったことも。
殴られ気を失ったこともあった。
冬に水をかけられ放置されたこともある。
それだけではなく、彼が隠していること、私に罪を擦り付けたこと。
ああでも、泥棒扱いだけは訂正すればよかった。あのゲームの回数を示すカードを見せれば彼の浪費を証明するのは簡単だった。一枚100回まで記録されるゲームのカードが50数枚も、ご丁寧に電話の傍に重ねてあった。一枚5万円のカードが50枚以上、250万円以上も注ぎ込んで得たのが、架空の大佐だか少佐だかいう階級で、お陰で泥棒扱いされた妻に離婚を切り出されたわけだ。
私は苦く車の音に紛れるように小さな笑いを溢した。
だが、私はそうしなかった。
それを切り札にすることは出来る。
今度まだごねるのであれば、それらを披露するしか無いかもしれないが、今日はしなかった。憎みはしたが一時愛情があったのは確かなのだ。だから、彼を破滅に落とす事はしなかった。してしまえば、彼はあの両親からも見放されかねないと思ったのだ。
そして、私がそうしなくても、もう既に彼は一人で生きていくには余りにも稚拙で愚かすぎる事を証明して見せたのだから。
私は夏の日差しのに目を細めながら一つ深く息をついて、まだ完全に治ったとはいえない体に蓄積した疲労にウトウトと微睡む。やがて、バックミラー越しに父が疲れた顔で、私に休憩を問う。私は大丈夫と答えながら、また少し微睡んだ。
まだ、しなければならない事は山のようにある。
それでも私は新しい一歩を踏み出した事は間違いなかった。
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