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間章 ソノサキの合間の話
間話111.おまけ おうちデート5
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何でか4人対戦の乱闘ゲームにまで圧倒的な強さを見せた外崎宏太に、実は個人的な本音としては普段の意趣返し目的でもあった結城晴は呆気にとられるしかない。実際のところ晴としては目が見えない宏太が何も出来なくて不貞腐れているのを、ニヨニヨしながら眺めてやろうと思っていたのである。
まぁそんなところで意趣返しという辺り、一寸せこくない?と狭山明良には流石に言われたのだけど、これまで見てきた中で宏太には何も勝てないと晴としても分かっているのだから何か1つくらいこっちが優勢なものを探したい。そうなるともう障害があると分かっている視覚頼りのものくらいしか手がないのだ。そしてそんな中で宏太を巻き込めるようなものと考えたら、最近榊仁聖と話したゲームがポンッと浮かんだのである。宏太には絶対に手が出せなくて、しかも外崎了を巻き込むのは簡単なもの。そんなわけで少し早いがクリスマスプレゼントにかこつけて、持参までして晴はニヨニヨするつもりだったのに。
何なんだよ!そのとんでもハイスペック!!!
心の底からそう叫んでやりたい。最初は何も出来ないのが分かりきっていて大人しく了を抱き上げて借りてきた猫みたいにしている宏太に、確かに晴は満足してニヨニヨしてゲームに興じていたのだ。それなのに絶対に宏太には出来なさそうだと思って始めたゲームを開始してから暫くしたら、宏太が何かを掴んだと言わんばかりにコントローラーを了の手ごと包み込んでアッサリとキャラ操作をして見せたのだ。
はぁぁ?!なに?それ?!
その上アッサリと3人対戦を『WINNER』表示で終わらせて、こんなもんかとか言い出した。そんな訳ないと晴だって思うものだから、それならと更に宏太にまでコントローラーを手渡して4人対戦を開始。流石にコントローラー自体を始めて独りで触る様子の宏太にボタンのありかとか押し方とかを了が説明していたから、宏太がゲーム初心者なのは絶対な筈だ。それでゲームを開始したはいいが、画面も何も見えていない筈の宏太に晴は何をどうしても勝てないのだ。しかも、何でか4人対戦で対戦相手どころか誰がどのキャラクターを動かしているかなんて、絶対にどれかも見えていない筈。そんな宏太なのに、どんなにキャラを変えても真っ先に晴がロックオンされ狙われている気がしなくもない。そうして当然みたいに晴の操作キャラクターが、一番先に舞台から撥ね飛ばされ退場させられてしまう。
「何でぇええ?!」
「凄ーい、宏太。」
しまいには了が殆んど自分のキャラ操作すら忘れて感心しながら宏太の操作にみいっていて、狭山明良は既に一足先に諦めの境地に達したようである。というか明良の内心では結果として何度再戦を繰り返しても晴は、宏太に無敵の強さを示されるばかりなのは言われなくても分かっているので早々に諦めた方がいいと思うところだ。宏太は言われなくても、キャラクターを操作しなくても相手を自動でロックオンしてくれる機能を活用している。勿論その機能は簡単操作としてつけられているので、玄人向けに機能をオフにすることは可能だ。これで自動でロックオンする機能を外せば、宏太にはこのゲーム自体が出来なくなるのは言うまでもない。だけど、それをすればただ単に弱いもの苛めというだけのこと。そして恐らく宏太は、相手の攻撃に合わせてガードとカウンターを繰り返しているだけである。相手のコントローラーの操作音で何をしようとしているか察して、ボタンをタイミングよくポチポチと押しているだけなのだ。しかし、そのタイミングが絶妙なのと、晴が全くそこに気がつかず只管に突入しているのは言うまでもない。晴が絶妙に突進していくから迎撃され続けているわけであって、別に宏太としては晴狙いではないのは言うまでもない。というか、オートロック機能がついているのこと自体に、晴が気がついているのかちょっと不安になってくる有り様だ。
「何でぇ?!おかしいって!もぉ!!」
「晴ー、無駄だと思うよ?晴の動き、全部読まれてるから。」
「何でぇ?!!おかしいって!目が見えないくせにぃいい!!」
結局どうやっても勝てず終わるしかないのは、目に見えていて。
悔し泣きしながら帰途につく晴に、早々に諦めた明良がヨシヨシと慰める役得に走ったは言うまでもない。そんな2人を苦笑いしながら了が見送って、リビングを通り抜け和室へ戻ってくるのに宏太はどこ吹く風とケロリとしている。結果論としては耳がいいことで上手く対処出来てしまえるようなものなら、やはり宏太は上手くこなせてしまうんだなぁと了もついつい笑ってしまう。
「…………音ゲーとかなら出来そうだよな、宏太も。」
「ゲームには興味がない。」
まぁ確かにこれまでの人生が全部が全部勝負ゲームみたいな宏太にしてみたら、作り物のゲームなんか大して興味のないものに違いない。それは言われなくても分かるしパソコンは操作する姿はよく見るけれど、むかしからゲーム機の類いを触る宏太なんて見た記憶もないし。
そうして再び宏太の胡座の上座りながらコントローラーをカチャカチャさせている了に、宏太はまだ何かしたいのか?と少しだけ放置されている退屈を臭わせる。確かにキャッキャッしている了を膝の上で愛でるのはいいのだが、やはりどうしても目の見えない宏太にはその間放置は放置なのだ。それでも確かに晴が言ったように家の事の大部分を宏太は了に依存しているし、了が何も言わないとはいえ自分が依存しているということ事態に自覚もある。
たまには息抜きと言われると…………確かにとも思うしな…………
このくらいの時間程度なら少し我慢して、大人しく待つくらいじゃないと了だって流石にストレスが溜まるのかもと思う。そんなわけで胡座の上で何かコントローラーをカチャカチャしている了を大人しく抱き上げて、素直に了がテレビゲームに飽きるのを待つことに宏太も腹を決めることにした。
「ふふ、退屈?宏太。」
「…………少しな。」
膝の上で了が可笑しそうに笑いながら振り返り甘い口づけをしてきたのに、宏太は少しだけ機嫌を直した様子で肩に顎を乗せてくる。その様子に了も楽しげに身体を預けながら、こういうのもいいかもなと呟く。
「イチャイチャしてる感が強いもんな、こういう風のって。」
「そんなもんか?」
「恋人ってなると最近はこんな感じで家でおうちデートするらしいしなー。」
『ゲーム云々は兎も角、今度は宏太も楽しめるものでイチャイチャ出来るの探してみよう』なんて笑う了が可愛すぎて、思わず背後から抱き締めグリグリ顔を押し付けてしまう。おうちデート以前に宏太の身体だと出来ることはかなり制限されてしまうけれど、それでもこうして一緒に出来ることを探そうとしてくれるなんていじらしすぎる。そんなことを思うとモヤモヤと違う欲求の方が沸き上がってしまう。
「こぉーら、おうちデートだからって、そっちばっか。」
「んん?」
「当たってるから、バレてるから。」
どうやら宏太の素直な下半身の方が先に、その上に収まって座っている了にアピールをしていたらしい。それを了から指摘されて『おうちデート』ってことは、そこまでセットなのか?と素直に宏太が肩越しに問いかける。
「まぁ、そうとも言う?そこら辺がフリーだからいいって話しもあるし。」
「ふぅん。」
胡座の上でモゾモゾ了が居心地悪そうにしているのは宏太の昂りが当たるからで、それに関しては宏太としては別に気にするでもない。しかし、世の中で流石に『デート』というからには、ちゃんとそこら辺もコミコミでのデートなのかと感心しなくもない。自宅に招待してそういうムードになるように出来るか出来ないかは、プラン次第ということか。
「…………こぉた?」
少し真剣に考え込んでいた宏太に了が声をかけてくる。膝の上の居心地の悪さは変わらないのか、少しずらして座ろうと企む了の腰を宏太が押さえ込み引き付けたままなのが気になるのだろう。
「こ、ぉた?なぁ。拗ねてる?」
「ん?」
甘い声で了からそう問いかけられたが、その問いかけの意図が掴めず宏太は珍しくキョトンとしてしまう。
実は宏太はこれまで『デート』はしたことがあっても、プランなんて考えもしたことがない。そうなのだ、実は余り相手の気を引くなんて行為自体したこともなければ、する必要性もなかった。大概これまではデートの相手が行きたいところを何となく会話の中から察して、そつなくこなすことが出来てしまった訳だし、デート時代それほど回数をこなしたわけでもない。何より仕事を始めてからは仕事優先で、そのまま片倉希和の熱烈アプローチで結婚したわけである。その後もついぞ夫婦でデートなんて甘いこともなかった宏太は、実はデートって何をするもんなんだ?の世界。そうなのである、ゲーム云々より何より『好きな人とのデート』ってものが何なのか一寸よく分かっていない。かといってそれを素直に話して誰かに聴くとして、誰に聴けと言うのか?強いて言えば幼馴染みの藤咲信夫なのかもしれないが、信夫だって初めての恋な上に目下嫁取りに向けて必死なところである。それに『なぁ?普通のデートってどういうものだ?』なんて聞こうものなら、『俺が聞きたい!!!』と怒鳴られそうな気もしなくもない。というか、昔はそれぞれに男前だイケメンだと騒がれたこともあるわりに、自分も藤咲もその点は余り経験値が高くなさそうだ。しかもそれをもう一人の幼馴染み・鳥飼梨央にバレでもしたら、あの女の事だ指をさして腹を抱えて笑うに違いない。
バカじゃねぇの!?アラフィフにもなって、まだデートの『デ』の字もわかんねぇのかよ!
お前に言われたくないとかえそうにも、向こうは夫である鳥飼信哉と全うに交際してデートを重ね、自宅まで送り届けて貰う事もあった。その2人を尾行をしていた津田宗治を宏太がキャッチしたこともあるし、その後2人は愛でたく結婚して子供まで作った訳なのだから。確実にデート経験値は宏太より高い梨央は、絶対に宏太が自分より劣っているのを知ったら馬鹿にする。地味に宏太はこの世の中では誰より梨央に馬鹿にされるのが、癇に障るのは言うまでもない。久保田松理に怒鳴られたり馬鹿にされるのとは実は全く違うのは、恐らく梨央が互いに幼稚園のスモックを着ていた辺りからの付き合いだからだろう。
「ごめんな、ゲームで盛り上がったりして。拗ねてるか?」
「あ、あぁそういうことか。」
別にそれに関しては気にもしていない。というか、まぁ晴にはどんなもんなんだ?お前、障害者相手に随分と大人げなくないか?とは言ってやりたいところだ。それに関しては後で然り気無く仕事上で仕返しするからいいとして、まだ若い了ならこういうものに興味があっても全然可笑しくない。何しろ世の中では時分と同じ年代になってもゲーム狂なんて奴らだってワンサかいるわけだし、その中には特殊音声解析とか何かに特化した人間もいて宏太には知らない知識を借りる時だってあるのだ。人間、音が聞き取れたとしても、それを全て判別なんか出来ない。宏太だって音は聞き取れても例えばそれがどこの鉄道の路線の音かなんて判別は出来ないので、そういうことに特化した某友人の知恵を借りたことがある。
あれはもう特殊技術だな
線路の継ぎ目を走る速度や、周囲への反響。それにマイクに当たる場所を通過する風圧の音。そんなものでこれはドコドコ線のドコソコ駅のホームで録音したもので、通過したのは電車のナニナニですねと返答できる人間が世の中にはちゃんといて、しかもそれが本当に正しいのだから恐ろしい。まぁそんな話しはさておき、パソコン慣れしている宏太としては、どういうプログラムを作るとこんな賑やかなゲームなんてものになるのかとは思える。そういう訳で了を抱き上げて、了がキャッキャッしながらゲームする音を聴くのは楽しいことの部類だ。ただ長い時間ゲームが同じだと同じ音の繰り返しで飽きてしまうのは事実だから、聴いているならどちらかと言うと物語性がある方が楽しめそうではある。
「そんなもの?」
「まぁお前を抱き上げてるのは楽しいが。」
「そっちか、スケベ。」
そっちって他に何を楽しめと言うんだと呆れるが、されど了が自分が一緒にいてツマラナイのじゃないかと心配してくれたのは少し嬉しい。それにこういうデートには当然セックス迄込みと言われれば、この後にご褒美があるんだろ?と嫌味を少しだけ含めてニヤリと口角をあげて見せる。
「………………まぁ、そ、だけど。」
…………否定される気で言った筈の言葉に想定とは違う反応が帰ってきて、何故か逆に恥ずかしくなってしまう宏太に了が少しだけ頬を染めてもう一度キスを落とす。どうや了が途中に居心地悪そうにモゾモゾしていたのは、股間を固くした宏太の胡座の座り心地が悪かったからだけではなかった…………らしい。
まぁそんなところで意趣返しという辺り、一寸せこくない?と狭山明良には流石に言われたのだけど、これまで見てきた中で宏太には何も勝てないと晴としても分かっているのだから何か1つくらいこっちが優勢なものを探したい。そうなるともう障害があると分かっている視覚頼りのものくらいしか手がないのだ。そしてそんな中で宏太を巻き込めるようなものと考えたら、最近榊仁聖と話したゲームがポンッと浮かんだのである。宏太には絶対に手が出せなくて、しかも外崎了を巻き込むのは簡単なもの。そんなわけで少し早いがクリスマスプレゼントにかこつけて、持参までして晴はニヨニヨするつもりだったのに。
何なんだよ!そのとんでもハイスペック!!!
心の底からそう叫んでやりたい。最初は何も出来ないのが分かりきっていて大人しく了を抱き上げて借りてきた猫みたいにしている宏太に、確かに晴は満足してニヨニヨしてゲームに興じていたのだ。それなのに絶対に宏太には出来なさそうだと思って始めたゲームを開始してから暫くしたら、宏太が何かを掴んだと言わんばかりにコントローラーを了の手ごと包み込んでアッサリとキャラ操作をして見せたのだ。
はぁぁ?!なに?それ?!
その上アッサリと3人対戦を『WINNER』表示で終わらせて、こんなもんかとか言い出した。そんな訳ないと晴だって思うものだから、それならと更に宏太にまでコントローラーを手渡して4人対戦を開始。流石にコントローラー自体を始めて独りで触る様子の宏太にボタンのありかとか押し方とかを了が説明していたから、宏太がゲーム初心者なのは絶対な筈だ。それでゲームを開始したはいいが、画面も何も見えていない筈の宏太に晴は何をどうしても勝てないのだ。しかも、何でか4人対戦で対戦相手どころか誰がどのキャラクターを動かしているかなんて、絶対にどれかも見えていない筈。そんな宏太なのに、どんなにキャラを変えても真っ先に晴がロックオンされ狙われている気がしなくもない。そうして当然みたいに晴の操作キャラクターが、一番先に舞台から撥ね飛ばされ退場させられてしまう。
「何でぇええ?!」
「凄ーい、宏太。」
しまいには了が殆んど自分のキャラ操作すら忘れて感心しながら宏太の操作にみいっていて、狭山明良は既に一足先に諦めの境地に達したようである。というか明良の内心では結果として何度再戦を繰り返しても晴は、宏太に無敵の強さを示されるばかりなのは言われなくても分かっているので早々に諦めた方がいいと思うところだ。宏太は言われなくても、キャラクターを操作しなくても相手を自動でロックオンしてくれる機能を活用している。勿論その機能は簡単操作としてつけられているので、玄人向けに機能をオフにすることは可能だ。これで自動でロックオンする機能を外せば、宏太にはこのゲーム自体が出来なくなるのは言うまでもない。だけど、それをすればただ単に弱いもの苛めというだけのこと。そして恐らく宏太は、相手の攻撃に合わせてガードとカウンターを繰り返しているだけである。相手のコントローラーの操作音で何をしようとしているか察して、ボタンをタイミングよくポチポチと押しているだけなのだ。しかし、そのタイミングが絶妙なのと、晴が全くそこに気がつかず只管に突入しているのは言うまでもない。晴が絶妙に突進していくから迎撃され続けているわけであって、別に宏太としては晴狙いではないのは言うまでもない。というか、オートロック機能がついているのこと自体に、晴が気がついているのかちょっと不安になってくる有り様だ。
「何でぇ?!おかしいって!もぉ!!」
「晴ー、無駄だと思うよ?晴の動き、全部読まれてるから。」
「何でぇ?!!おかしいって!目が見えないくせにぃいい!!」
結局どうやっても勝てず終わるしかないのは、目に見えていて。
悔し泣きしながら帰途につく晴に、早々に諦めた明良がヨシヨシと慰める役得に走ったは言うまでもない。そんな2人を苦笑いしながら了が見送って、リビングを通り抜け和室へ戻ってくるのに宏太はどこ吹く風とケロリとしている。結果論としては耳がいいことで上手く対処出来てしまえるようなものなら、やはり宏太は上手くこなせてしまうんだなぁと了もついつい笑ってしまう。
「…………音ゲーとかなら出来そうだよな、宏太も。」
「ゲームには興味がない。」
まぁ確かにこれまでの人生が全部が全部勝負ゲームみたいな宏太にしてみたら、作り物のゲームなんか大して興味のないものに違いない。それは言われなくても分かるしパソコンは操作する姿はよく見るけれど、むかしからゲーム機の類いを触る宏太なんて見た記憶もないし。
そうして再び宏太の胡座の上座りながらコントローラーをカチャカチャさせている了に、宏太はまだ何かしたいのか?と少しだけ放置されている退屈を臭わせる。確かにキャッキャッしている了を膝の上で愛でるのはいいのだが、やはりどうしても目の見えない宏太にはその間放置は放置なのだ。それでも確かに晴が言ったように家の事の大部分を宏太は了に依存しているし、了が何も言わないとはいえ自分が依存しているということ事態に自覚もある。
たまには息抜きと言われると…………確かにとも思うしな…………
このくらいの時間程度なら少し我慢して、大人しく待つくらいじゃないと了だって流石にストレスが溜まるのかもと思う。そんなわけで胡座の上で何かコントローラーをカチャカチャしている了を大人しく抱き上げて、素直に了がテレビゲームに飽きるのを待つことに宏太も腹を決めることにした。
「ふふ、退屈?宏太。」
「…………少しな。」
膝の上で了が可笑しそうに笑いながら振り返り甘い口づけをしてきたのに、宏太は少しだけ機嫌を直した様子で肩に顎を乗せてくる。その様子に了も楽しげに身体を預けながら、こういうのもいいかもなと呟く。
「イチャイチャしてる感が強いもんな、こういう風のって。」
「そんなもんか?」
「恋人ってなると最近はこんな感じで家でおうちデートするらしいしなー。」
『ゲーム云々は兎も角、今度は宏太も楽しめるものでイチャイチャ出来るの探してみよう』なんて笑う了が可愛すぎて、思わず背後から抱き締めグリグリ顔を押し付けてしまう。おうちデート以前に宏太の身体だと出来ることはかなり制限されてしまうけれど、それでもこうして一緒に出来ることを探そうとしてくれるなんていじらしすぎる。そんなことを思うとモヤモヤと違う欲求の方が沸き上がってしまう。
「こぉーら、おうちデートだからって、そっちばっか。」
「んん?」
「当たってるから、バレてるから。」
どうやら宏太の素直な下半身の方が先に、その上に収まって座っている了にアピールをしていたらしい。それを了から指摘されて『おうちデート』ってことは、そこまでセットなのか?と素直に宏太が肩越しに問いかける。
「まぁ、そうとも言う?そこら辺がフリーだからいいって話しもあるし。」
「ふぅん。」
胡座の上でモゾモゾ了が居心地悪そうにしているのは宏太の昂りが当たるからで、それに関しては宏太としては別に気にするでもない。しかし、世の中で流石に『デート』というからには、ちゃんとそこら辺もコミコミでのデートなのかと感心しなくもない。自宅に招待してそういうムードになるように出来るか出来ないかは、プラン次第ということか。
「…………こぉた?」
少し真剣に考え込んでいた宏太に了が声をかけてくる。膝の上の居心地の悪さは変わらないのか、少しずらして座ろうと企む了の腰を宏太が押さえ込み引き付けたままなのが気になるのだろう。
「こ、ぉた?なぁ。拗ねてる?」
「ん?」
甘い声で了からそう問いかけられたが、その問いかけの意図が掴めず宏太は珍しくキョトンとしてしまう。
実は宏太はこれまで『デート』はしたことがあっても、プランなんて考えもしたことがない。そうなのだ、実は余り相手の気を引くなんて行為自体したこともなければ、する必要性もなかった。大概これまではデートの相手が行きたいところを何となく会話の中から察して、そつなくこなすことが出来てしまった訳だし、デート時代それほど回数をこなしたわけでもない。何より仕事を始めてからは仕事優先で、そのまま片倉希和の熱烈アプローチで結婚したわけである。その後もついぞ夫婦でデートなんて甘いこともなかった宏太は、実はデートって何をするもんなんだ?の世界。そうなのである、ゲーム云々より何より『好きな人とのデート』ってものが何なのか一寸よく分かっていない。かといってそれを素直に話して誰かに聴くとして、誰に聴けと言うのか?強いて言えば幼馴染みの藤咲信夫なのかもしれないが、信夫だって初めての恋な上に目下嫁取りに向けて必死なところである。それに『なぁ?普通のデートってどういうものだ?』なんて聞こうものなら、『俺が聞きたい!!!』と怒鳴られそうな気もしなくもない。というか、昔はそれぞれに男前だイケメンだと騒がれたこともあるわりに、自分も藤咲もその点は余り経験値が高くなさそうだ。しかもそれをもう一人の幼馴染み・鳥飼梨央にバレでもしたら、あの女の事だ指をさして腹を抱えて笑うに違いない。
バカじゃねぇの!?アラフィフにもなって、まだデートの『デ』の字もわかんねぇのかよ!
お前に言われたくないとかえそうにも、向こうは夫である鳥飼信哉と全うに交際してデートを重ね、自宅まで送り届けて貰う事もあった。その2人を尾行をしていた津田宗治を宏太がキャッチしたこともあるし、その後2人は愛でたく結婚して子供まで作った訳なのだから。確実にデート経験値は宏太より高い梨央は、絶対に宏太が自分より劣っているのを知ったら馬鹿にする。地味に宏太はこの世の中では誰より梨央に馬鹿にされるのが、癇に障るのは言うまでもない。久保田松理に怒鳴られたり馬鹿にされるのとは実は全く違うのは、恐らく梨央が互いに幼稚園のスモックを着ていた辺りからの付き合いだからだろう。
「ごめんな、ゲームで盛り上がったりして。拗ねてるか?」
「あ、あぁそういうことか。」
別にそれに関しては気にもしていない。というか、まぁ晴にはどんなもんなんだ?お前、障害者相手に随分と大人げなくないか?とは言ってやりたいところだ。それに関しては後で然り気無く仕事上で仕返しするからいいとして、まだ若い了ならこういうものに興味があっても全然可笑しくない。何しろ世の中では時分と同じ年代になってもゲーム狂なんて奴らだってワンサかいるわけだし、その中には特殊音声解析とか何かに特化した人間もいて宏太には知らない知識を借りる時だってあるのだ。人間、音が聞き取れたとしても、それを全て判別なんか出来ない。宏太だって音は聞き取れても例えばそれがどこの鉄道の路線の音かなんて判別は出来ないので、そういうことに特化した某友人の知恵を借りたことがある。
あれはもう特殊技術だな
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「そんなもの?」
「まぁお前を抱き上げてるのは楽しいが。」
「そっちか、スケベ。」
そっちって他に何を楽しめと言うんだと呆れるが、されど了が自分が一緒にいてツマラナイのじゃないかと心配してくれたのは少し嬉しい。それにこういうデートには当然セックス迄込みと言われれば、この後にご褒美があるんだろ?と嫌味を少しだけ含めてニヤリと口角をあげて見せる。
「………………まぁ、そ、だけど。」
…………否定される気で言った筈の言葉に想定とは違う反応が帰ってきて、何故か逆に恥ずかしくなってしまう宏太に了が少しだけ頬を染めてもう一度キスを落とす。どうや了が途中に居心地悪そうにモゾモゾしていたのは、股間を固くした宏太の胡座の座り心地が悪かったからだけではなかった…………らしい。
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