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間章 ソノサキの合間の話
間話88.悲しい恋の行方12
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とても困る。
唐突に祐市は、自分が好きだなんてとんでもない事を言い出した。邑上誠は心のどこかにそれを望みはしていたけれど、それは同時にない事だと諦め混じりで思っていたからこそと言う部分があるのは否めない。つまりは本気でそんなことは絶対に起きないと思っていたからこその、ささやかな願望にすぎない筈だった。
そして祐市は誠のことを甲斐甲斐しく世話をする傍ら、時々キスしていいか?なんて事を真正面から聞いてくるようになってしまったのだ。というかこれまでは好きな時に好きなように性的な道具として誠を扱って来た筈の祐市に、そんな風に丁寧に前置きされてしまうのにどうやって答えたらいいのか、慣れたらいいのか。
困る、困る…………から
しかも結局は祐市のお強請りを誠が拒絶なんかできる筈がなくて、毎回毎回承諾する羽目になる。そして初々しい恋人にするみたいに優しく甘いキスをされ続けていく内に、チリチリするような別の欲望を感じ始めてしまったのにも気がついてしまう。それ自体も少しずつ誠の体力が戻り始めた証拠なのだろうけれど、だからと言って祐市に何と言えばいいのか。しかもそれに気がついてしまうと、一気にその欲望が膨れ上がってしまうのだ。
したい…………
いや、違う。そうじゃない。と言うかそういう機能が真っ先に傷害されていたらよかったのにと、誠は今更ながら心底思う。未だに手足は自由にならないのは変わらないのに、そこだけ元気って話しはないだろう?なのに、祐市は誠がそんなことになっているなんて梅雨程にも思っていない。そうとしか思えないのは誠の変化には気がつきもしないで優しい声で、またもやこう聞くのだ。
「誠、キスしていい?」
あぁもうと叫びたい。そんなことは聞かずに好きにしたらいいし、したければやりたいだけすればいい。それどころか前みたいに組み敷いて、ガツガツと尻の穴に突っ込んで無理矢理に犯せばいいのに。今の祐市と来たらどう考えても別人になってしまっていて、誠が『いい』と言うまで絶対に大人しくキス待ちして来る有り様なのだ。なんだって薬の副作用がある自分は兎も角、祐市まで純粋な子供みたいにこんなに変わってしまったのだろうか。あの夜、自分は嫉妬してあんたの女を市玄の生け贄にしたんだと確かに言ったつもりだったけれど、祐市はそれを何か変に曲解でもしたのだろうか?というか、昔自分を調教して、快楽漬けにしていた部分はどこに消え去ったのだろう。祐市ら仕事はまだ続けていると言ったし自分が落ち着いたら再開するなんて言っていたけれど、まだ仕事に出掛ける気配すらない。そうなるとある意味逆に、この日々のキスのお強請りは違う意味でキツい。
ずっと傍にいられるから、動かない手で自慰なんてもってのほかだし
あんたはそんな人じゃなかったろう?と誠が声高に言いたくても、言葉も自由にならない誠を期待にキラキラした瞳で真っ直ぐ見てくる祐市を見ていると切なくなってしまう。
「誠?」
「い…………ぃ。」
頬を染めて視線を背けながら絞り出す声に、祐市は子供みたいに心底嬉しそうに微笑む。そしてそっと宝物でも触れるみたいに頬を包み込んで持ち上げて、優しく丁寧なキスをしてくるのだ。
啄むように唇を刺激されているのに思わず微かに唇を開いて受け入れてしまうと、スルリと舌が差し込まれて柔らかに歯茎をなぞられていく。やがてその刺激で緩んだ口の中に深くそれを受け入れて、ユルユル舌を絡められて吸われるの刺激に腰の奥がジンジンと痺れるのが分かる。
「んぅ…………。」
地味にこのキスに関してだが、祐市はキスが上手いんだと今更ながらに思う。勿論比較対照がどうかと言われるとなんだけれど、素直に蕩けそうに気持ちいいし痺れるみたいに甘い。そんな風だからこうして舌を絡められて吸われたりしている内に、いつの間にか誠の全身からヘニャヘニャと力が抜けてしまう。
「んん、……ん…………っ……ぅ…………。」
タップリと誠の唇を堪能して祐市が体を離した頃には、正直何時もトロンと夢見心地になっていて。下手をしたらもっとと無意識に強請りそうになっている自分がここにいるのだ。その癖誠のその反応を知っているのか知らないのか、祐市はそれ以上を誠に絶対に求めてこないのにも気がついている。
何で………………?
以前の祐市は誠にキスは絶対にしない。その代わりに気絶するまで快楽で責め立てられたり、痛みで延々と身悶えさせるのが当然だった。それが市玄の支配にあった2人の日常で仕事みたいなものだったから、そうされるのは誠にとっても問題ではなかったのだ。そして市玄がいない今はそれをする必要がなくなっていて、しかもこのキスだけで祐市は満足してしまうみたいに、まるで誠の身体には手を出してこない。
して欲しい…………
芯まで覚え込んでしまっている身体の快楽が欲しくて、本能がジリジリと焦れる。しかも誠は一人きりの部屋で自慰をするにも手が不自由な上に、少しでも呻けば隣の部屋の祐市が心配して駆け込んでくる有り様なのだ。お陰でただ誠は欲望に炙られる身体をもて余してジリジリと耐え続け、祐市がその気になるのを待っているしか出来ない。
焦れる…………
自分が入院してからどれくらい経っているのか。少なくとも何ヵ月かの期間は、腸の中を男根に掻き回される事もなく過ごしているに違いない。それを望んだ事なんかこれまでなかったのに、今更そんなことを悶々と考える羽目になるなんて。
それこそ何年ぶりなのだろう。何もされないで何ヵ月もしないなんて
命令され日に何人もの男に尻を差し出しす事なんか当然の日々を送ってきた身体なのに、病に衰えると本当に性欲は二の次になるものだったらしい。生きるために身体は本能の中でも、別なものを優先していたわけだ。それはさておきだ、キスだけでただ只管に焦らされ続けているのを誠はどうしたらいいものなのか。
※※※
自分の事が自由に何も出来なくて、自分を祐市だと信じて依存している誠の素直な気持ちにつけこんでいるとは、邑上悠生だってちゃんと分かっているし悪いことをしているとは思っている。でも好きだと告げた時の真っ赤になって恥じらう誠は、表現しようがないくらい可愛らしくて素晴らしかった。抱き締めてキスをして、出来ることならもっと色々なことをしたいと暴走しそうになるくらいに、可愛くて可愛くて仕方がない。しかも自分が『好き』と告げても、誠には1つも拒絶の気配がなかったのは最高に幸せだった。
勿論自分が悠生と認識されてないのは分かっている
でも誠の傍にいるのは自分だけで、認識は異なっても見ているのは自分なのだ。だったら目の前の自分から『好き』と伝えたら、好きなのは自分なのだ。しかも『キスしていい?』と問いかけると、初心な乙女みたいに恥じらいながら『いい』と答える誠は途轍もなく可愛い。言葉に出来なくて身悶えたくなる程に、可愛らしくていじらしくて。このやり方は狡いと分かっているけど、この役得を堪能するくらいは許して貰いたい。
悠生と呼んで貰えなくても、自分のキスでクタクタに蕩けてしまう誠が凄く可愛い
どんなに誠が悠生を祐市だと思っていてもキスをしているのは悠生なのだから、悠生のキスで誠は気持ちよくなっている。まるでセックスで絶頂に達したみたいに、文字通りトロンと蕩けてしまう。それを何度も自らの行動で確かめられるのが、どんなに幸せなことか。
可愛すぎる、可愛すぎ…………凄く可愛い
それに何だかキスをしている内に気がついたのだけれど、実は誠は全くと言って良い程にキスをし慣れていない気がするのだ。祐市とは明らかに肉体関係があった筈なのに、毎回毎回キスの承諾に真っ赤になってしまう。
ここまで戸惑うのは、キスは殆んどしてないと言うことなんじゃないだろうか。
そう気がついたら、このキスで蕩けてしまっている誠は、本当に自分だけのものなんだと嬉しくなった。そしてそうなれば毎回キスしていいかと問いかけられる時の恥じらいに頬を染める誠も、きっと自分だけの誠だ。
「誠、キスしていい?」
『うん』と誠が言うまではちゃんと待つ。問いかけられ待ち構えられているのに、拗ねて恥ずかしそうに頬を染め、やがては『うん』と答えてくれる。そんな誠を堪能するのが、実はとっても楽しくて幸せなのだ。それを見ていられることに満ち足りた幸せな気分になるから、悠生は大人しくじっと待ち続ける。こんな風に顔色を変えたり表情を変えたりする人だと、昔から知っていたら2人はもう少し違う関係になれたのだろうか。流石に仲のいい親子にはなれなかっただろうけど、もっと2人で食事をしたり話をしたり親密な関係にはなれたかもしれない。でもそうなると誠に恋に落ちてしまっても悠生からキス出来ないから、それは今となっては少し困る。
「誠。」
「う…………ぃ、…………い。」
素直に『いいよ』とはまだ流石に言ってくれないけれど、結果的には『いい』と答えてくれるところがやっぱり可愛い。少しずつ体力を戻しているのか頬を包むと柔らかくて、顎を引き上げ唇をそっと押し付けるのにも密かに興奮もしている。
キュッと強く閉じた瞳に大人しく差し出された唇。
その癖キスに次第に蕩けて頬を赤くしていく様は、男だというのに凄く色っぽいと思う。そして快感にほどけてフワリと唇が開き始める頃には、気持ちいいのかウッスラと瞳が潤み始めていくのが悠生には見えている。
「は…………ふ、……ぅ……。」
少しずつこのキスに慣れてきているのか、甘い吐息と共に唇を微かに開く。それを見越したように、滑る舌を差し込まれるのにも最初ほどの抵抗もない。そうして舌を絡めて舌を扱きつつ舌先を軽く吸うと、ヒクヒクと誠の身体が微かに震えるのが分かるのだ。
可愛い。キスだけで、こんな反応するようになって…………
そんな風に何度もキスを重ねていたら、目に見えて誠が変わり始めたのに気がつく。体力的にも次第に元気を取り戻しつつあるのか、いや、これは勝手に悠生の目がそう誠を捉えているだけなのか。
艶っぽい……っていうか……
次第に日に日に誠の表情や身体に、艶が浮かび始めている気がするのだ。少しずつ食事を重ねて身体に取り戻し始めた肉付きのせいなのか、フワリと無意識の艶が滲み始めている。しかもジワリと全身から色気のような艶を醸しながらキスの後にポヤン……と蕩けている姿を見ると、悠生の中に強い欲望が沸き上がってくる。
欲しがってくれたら…………
そんな勝手な思いを抱いてしまう。誠が強請ってくれたら、きっと自分は歯止めが効かなくなると思う。何しろお陰で一人になると淫らな姿で泣く誠を妄想して、一人自慰に耽る回数が格段に増えてしまったのだ。ここに来て何度この妄想を繰り返してしまったろう。悠生は頭の中でもう何度誠を組み敷き、無理矢理衣類を剥ぎ取り、その股間を淫らに責め立ててしまったろうか。
だめ、悠生……もっとぉ
頭の中だから誠は自分の名前をちゃんと呼びながら、甘く蕩けた喘ぎを上げて泣く。それを何度も何度も自らの肉棒で突き上げ快楽の悲鳴を上げさせて、何度も中に白濁を大量に孕めと言わんばかりに注ぎ込む。それをもう何度繰り返したのか説明できないけれど、誠が望んでくれさえすれば何時でもそれを現実に出来る。
あぁ、もっとぉ、悠生ぃ、もっとぉ!
そんな風に泣きながら求められるのを頭の中に浮かべながら、固く下折起つ怒張を扱きたててしまう。誠の身体の中がどんな風に熱を含んで自分の物に絡み付き締め付けるのかを想像して、ギチギチとはち切れそうなモノを握りしめて。
欲望を吹き出しすと同時に、虚しくなるのは仕方がない。悠生にだって最初から、この妄想が無理難題だと分かっている。
もし誠から強請ってくれたら………………
誠がもし自分を欲しがってくれたとして、自分はその時どうするだろう。自分は悠生ではなく祐市として、誠を抱けるのだろうか。同性愛に偏見を持つつもりは全くないのだけれど、それでも男の誠を抱けるだろうか。自慰が出来てしまうのだからその程度は判別出来ると言われるのかもしれないけれど、正直言うと自分でもそこら辺はまだよく分からない。どんなに誠を好きで可愛いと思っていても、それと現実の行動は本当に伴うものなのだろうかとも思う。そして同時にもし自分が誠を抱いたとして、流石に自分が祐市ではないと気がついてはしまわないだろうか?キス程度ならそれ程の比較にはならなかったから良かったが、どんなに顔立ちが似ていても行為は違う筈だ。そして誠の話では祐市と言う人間は『調教師』でもあったと言うから、それと同じ行為が自分に出来る筈がないのは言われなくても分かりきっている。
それでも…………自分は…………
唐突に祐市は、自分が好きだなんてとんでもない事を言い出した。邑上誠は心のどこかにそれを望みはしていたけれど、それは同時にない事だと諦め混じりで思っていたからこそと言う部分があるのは否めない。つまりは本気でそんなことは絶対に起きないと思っていたからこその、ささやかな願望にすぎない筈だった。
そして祐市は誠のことを甲斐甲斐しく世話をする傍ら、時々キスしていいか?なんて事を真正面から聞いてくるようになってしまったのだ。というかこれまでは好きな時に好きなように性的な道具として誠を扱って来た筈の祐市に、そんな風に丁寧に前置きされてしまうのにどうやって答えたらいいのか、慣れたらいいのか。
困る、困る…………から
しかも結局は祐市のお強請りを誠が拒絶なんかできる筈がなくて、毎回毎回承諾する羽目になる。そして初々しい恋人にするみたいに優しく甘いキスをされ続けていく内に、チリチリするような別の欲望を感じ始めてしまったのにも気がついてしまう。それ自体も少しずつ誠の体力が戻り始めた証拠なのだろうけれど、だからと言って祐市に何と言えばいいのか。しかもそれに気がついてしまうと、一気にその欲望が膨れ上がってしまうのだ。
したい…………
いや、違う。そうじゃない。と言うかそういう機能が真っ先に傷害されていたらよかったのにと、誠は今更ながら心底思う。未だに手足は自由にならないのは変わらないのに、そこだけ元気って話しはないだろう?なのに、祐市は誠がそんなことになっているなんて梅雨程にも思っていない。そうとしか思えないのは誠の変化には気がつきもしないで優しい声で、またもやこう聞くのだ。
「誠、キスしていい?」
あぁもうと叫びたい。そんなことは聞かずに好きにしたらいいし、したければやりたいだけすればいい。それどころか前みたいに組み敷いて、ガツガツと尻の穴に突っ込んで無理矢理に犯せばいいのに。今の祐市と来たらどう考えても別人になってしまっていて、誠が『いい』と言うまで絶対に大人しくキス待ちして来る有り様なのだ。なんだって薬の副作用がある自分は兎も角、祐市まで純粋な子供みたいにこんなに変わってしまったのだろうか。あの夜、自分は嫉妬してあんたの女を市玄の生け贄にしたんだと確かに言ったつもりだったけれど、祐市はそれを何か変に曲解でもしたのだろうか?というか、昔自分を調教して、快楽漬けにしていた部分はどこに消え去ったのだろう。祐市ら仕事はまだ続けていると言ったし自分が落ち着いたら再開するなんて言っていたけれど、まだ仕事に出掛ける気配すらない。そうなるとある意味逆に、この日々のキスのお強請りは違う意味でキツい。
ずっと傍にいられるから、動かない手で自慰なんてもってのほかだし
あんたはそんな人じゃなかったろう?と誠が声高に言いたくても、言葉も自由にならない誠を期待にキラキラした瞳で真っ直ぐ見てくる祐市を見ていると切なくなってしまう。
「誠?」
「い…………ぃ。」
頬を染めて視線を背けながら絞り出す声に、祐市は子供みたいに心底嬉しそうに微笑む。そしてそっと宝物でも触れるみたいに頬を包み込んで持ち上げて、優しく丁寧なキスをしてくるのだ。
啄むように唇を刺激されているのに思わず微かに唇を開いて受け入れてしまうと、スルリと舌が差し込まれて柔らかに歯茎をなぞられていく。やがてその刺激で緩んだ口の中に深くそれを受け入れて、ユルユル舌を絡められて吸われるの刺激に腰の奥がジンジンと痺れるのが分かる。
「んぅ…………。」
地味にこのキスに関してだが、祐市はキスが上手いんだと今更ながらに思う。勿論比較対照がどうかと言われるとなんだけれど、素直に蕩けそうに気持ちいいし痺れるみたいに甘い。そんな風だからこうして舌を絡められて吸われたりしている内に、いつの間にか誠の全身からヘニャヘニャと力が抜けてしまう。
「んん、……ん…………っ……ぅ…………。」
タップリと誠の唇を堪能して祐市が体を離した頃には、正直何時もトロンと夢見心地になっていて。下手をしたらもっとと無意識に強請りそうになっている自分がここにいるのだ。その癖誠のその反応を知っているのか知らないのか、祐市はそれ以上を誠に絶対に求めてこないのにも気がついている。
何で………………?
以前の祐市は誠にキスは絶対にしない。その代わりに気絶するまで快楽で責め立てられたり、痛みで延々と身悶えさせるのが当然だった。それが市玄の支配にあった2人の日常で仕事みたいなものだったから、そうされるのは誠にとっても問題ではなかったのだ。そして市玄がいない今はそれをする必要がなくなっていて、しかもこのキスだけで祐市は満足してしまうみたいに、まるで誠の身体には手を出してこない。
して欲しい…………
芯まで覚え込んでしまっている身体の快楽が欲しくて、本能がジリジリと焦れる。しかも誠は一人きりの部屋で自慰をするにも手が不自由な上に、少しでも呻けば隣の部屋の祐市が心配して駆け込んでくる有り様なのだ。お陰でただ誠は欲望に炙られる身体をもて余してジリジリと耐え続け、祐市がその気になるのを待っているしか出来ない。
焦れる…………
自分が入院してからどれくらい経っているのか。少なくとも何ヵ月かの期間は、腸の中を男根に掻き回される事もなく過ごしているに違いない。それを望んだ事なんかこれまでなかったのに、今更そんなことを悶々と考える羽目になるなんて。
それこそ何年ぶりなのだろう。何もされないで何ヵ月もしないなんて
命令され日に何人もの男に尻を差し出しす事なんか当然の日々を送ってきた身体なのに、病に衰えると本当に性欲は二の次になるものだったらしい。生きるために身体は本能の中でも、別なものを優先していたわけだ。それはさておきだ、キスだけでただ只管に焦らされ続けているのを誠はどうしたらいいものなのか。
※※※
自分の事が自由に何も出来なくて、自分を祐市だと信じて依存している誠の素直な気持ちにつけこんでいるとは、邑上悠生だってちゃんと分かっているし悪いことをしているとは思っている。でも好きだと告げた時の真っ赤になって恥じらう誠は、表現しようがないくらい可愛らしくて素晴らしかった。抱き締めてキスをして、出来ることならもっと色々なことをしたいと暴走しそうになるくらいに、可愛くて可愛くて仕方がない。しかも自分が『好き』と告げても、誠には1つも拒絶の気配がなかったのは最高に幸せだった。
勿論自分が悠生と認識されてないのは分かっている
でも誠の傍にいるのは自分だけで、認識は異なっても見ているのは自分なのだ。だったら目の前の自分から『好き』と伝えたら、好きなのは自分なのだ。しかも『キスしていい?』と問いかけると、初心な乙女みたいに恥じらいながら『いい』と答える誠は途轍もなく可愛い。言葉に出来なくて身悶えたくなる程に、可愛らしくていじらしくて。このやり方は狡いと分かっているけど、この役得を堪能するくらいは許して貰いたい。
悠生と呼んで貰えなくても、自分のキスでクタクタに蕩けてしまう誠が凄く可愛い
どんなに誠が悠生を祐市だと思っていてもキスをしているのは悠生なのだから、悠生のキスで誠は気持ちよくなっている。まるでセックスで絶頂に達したみたいに、文字通りトロンと蕩けてしまう。それを何度も自らの行動で確かめられるのが、どんなに幸せなことか。
可愛すぎる、可愛すぎ…………凄く可愛い
それに何だかキスをしている内に気がついたのだけれど、実は誠は全くと言って良い程にキスをし慣れていない気がするのだ。祐市とは明らかに肉体関係があった筈なのに、毎回毎回キスの承諾に真っ赤になってしまう。
ここまで戸惑うのは、キスは殆んどしてないと言うことなんじゃないだろうか。
そう気がついたら、このキスで蕩けてしまっている誠は、本当に自分だけのものなんだと嬉しくなった。そしてそうなれば毎回キスしていいかと問いかけられる時の恥じらいに頬を染める誠も、きっと自分だけの誠だ。
「誠、キスしていい?」
『うん』と誠が言うまではちゃんと待つ。問いかけられ待ち構えられているのに、拗ねて恥ずかしそうに頬を染め、やがては『うん』と答えてくれる。そんな誠を堪能するのが、実はとっても楽しくて幸せなのだ。それを見ていられることに満ち足りた幸せな気分になるから、悠生は大人しくじっと待ち続ける。こんな風に顔色を変えたり表情を変えたりする人だと、昔から知っていたら2人はもう少し違う関係になれたのだろうか。流石に仲のいい親子にはなれなかっただろうけど、もっと2人で食事をしたり話をしたり親密な関係にはなれたかもしれない。でもそうなると誠に恋に落ちてしまっても悠生からキス出来ないから、それは今となっては少し困る。
「誠。」
「う…………ぃ、…………い。」
素直に『いいよ』とはまだ流石に言ってくれないけれど、結果的には『いい』と答えてくれるところがやっぱり可愛い。少しずつ体力を戻しているのか頬を包むと柔らかくて、顎を引き上げ唇をそっと押し付けるのにも密かに興奮もしている。
キュッと強く閉じた瞳に大人しく差し出された唇。
その癖キスに次第に蕩けて頬を赤くしていく様は、男だというのに凄く色っぽいと思う。そして快感にほどけてフワリと唇が開き始める頃には、気持ちいいのかウッスラと瞳が潤み始めていくのが悠生には見えている。
「は…………ふ、……ぅ……。」
少しずつこのキスに慣れてきているのか、甘い吐息と共に唇を微かに開く。それを見越したように、滑る舌を差し込まれるのにも最初ほどの抵抗もない。そうして舌を絡めて舌を扱きつつ舌先を軽く吸うと、ヒクヒクと誠の身体が微かに震えるのが分かるのだ。
可愛い。キスだけで、こんな反応するようになって…………
そんな風に何度もキスを重ねていたら、目に見えて誠が変わり始めたのに気がつく。体力的にも次第に元気を取り戻しつつあるのか、いや、これは勝手に悠生の目がそう誠を捉えているだけなのか。
艶っぽい……っていうか……
次第に日に日に誠の表情や身体に、艶が浮かび始めている気がするのだ。少しずつ食事を重ねて身体に取り戻し始めた肉付きのせいなのか、フワリと無意識の艶が滲み始めている。しかもジワリと全身から色気のような艶を醸しながらキスの後にポヤン……と蕩けている姿を見ると、悠生の中に強い欲望が沸き上がってくる。
欲しがってくれたら…………
そんな勝手な思いを抱いてしまう。誠が強請ってくれたら、きっと自分は歯止めが効かなくなると思う。何しろお陰で一人になると淫らな姿で泣く誠を妄想して、一人自慰に耽る回数が格段に増えてしまったのだ。ここに来て何度この妄想を繰り返してしまったろう。悠生は頭の中でもう何度誠を組み敷き、無理矢理衣類を剥ぎ取り、その股間を淫らに責め立ててしまったろうか。
だめ、悠生……もっとぉ
頭の中だから誠は自分の名前をちゃんと呼びながら、甘く蕩けた喘ぎを上げて泣く。それを何度も何度も自らの肉棒で突き上げ快楽の悲鳴を上げさせて、何度も中に白濁を大量に孕めと言わんばかりに注ぎ込む。それをもう何度繰り返したのか説明できないけれど、誠が望んでくれさえすれば何時でもそれを現実に出来る。
あぁ、もっとぉ、悠生ぃ、もっとぉ!
そんな風に泣きながら求められるのを頭の中に浮かべながら、固く下折起つ怒張を扱きたててしまう。誠の身体の中がどんな風に熱を含んで自分の物に絡み付き締め付けるのかを想像して、ギチギチとはち切れそうなモノを握りしめて。
欲望を吹き出しすと同時に、虚しくなるのは仕方がない。悠生にだって最初から、この妄想が無理難題だと分かっている。
もし誠から強請ってくれたら………………
誠がもし自分を欲しがってくれたとして、自分はその時どうするだろう。自分は悠生ではなく祐市として、誠を抱けるのだろうか。同性愛に偏見を持つつもりは全くないのだけれど、それでも男の誠を抱けるだろうか。自慰が出来てしまうのだからその程度は判別出来ると言われるのかもしれないけれど、正直言うと自分でもそこら辺はまだよく分からない。どんなに誠を好きで可愛いと思っていても、それと現実の行動は本当に伴うものなのだろうかとも思う。そして同時にもし自分が誠を抱いたとして、流石に自分が祐市ではないと気がついてはしまわないだろうか?キス程度ならそれ程の比較にはならなかったから良かったが、どんなに顔立ちが似ていても行為は違う筈だ。そして誠の話では祐市と言う人間は『調教師』でもあったと言うから、それと同じ行為が自分に出来る筈がないのは言われなくても分かりきっている。
それでも…………自分は…………
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