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間章 ソノサキの合間の話
間話51.夏の終わりに5
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近隣でも類を見ない超がつきそうな豪邸のリビング。整えられている快適な空調に、これまた高級で寝るのにも問題のない快適なソファー。2階まで吹き抜けのになっている高い天井で、音もなくユッタリと回るシーリングファン。どこもかしこも整えられ、須く高級そうな家具のしつらえ。しかも広大な敷地の庭には木目調のウッドデッキというか縁台があり、そこにはリゾートさながらのカウチ、それ以外にも庭園風の区域もあれば、バーベキューをするための道具を納めるわりとしっかりした小屋まであって。
どこぞのリゾートかよ…………
しかもそれにもう誰も疑問がない様子で、当然のように高級肉を調理する端から食うなんて……流石に金持ちってやつはと思わずにはいられなかった。いや自分の家だってわりと大きな旧家なのだが、こんな風に誰かを呼んで騒ぐなんて経験がない。大学時代?そんなことをする暇なんか自分にある筈がないだろう。いやいや、こんな自己憐憫を重ねている場合ではないけども。
なんてことをボンヤリと考えつつ、天井を見上げながら庄司陸斗は今日気が付いたことを頭の中で纏め続ける。陸斗が知りたいことは、正直まだまだ山程あるし何も真実には近づいてもいないと思う。それでも少しずつ外崎宏太の交遊や会話の中から察した様々なことを、丁寧に少しずつだが結び合わせていくしかない。少なくともこの先に導かれて出てくる陸斗の知りたい真実のためには、やはりここで働くという選択は最適な手段だろう。
こうしてみると風間祥太のアンダーグラウンドの情報源は、やはり外崎宏太なのは間違いない筈だ。あの仕事場の機械の一部は、何かマトモではないことをするための物のようだし。表向きは真っ当なコンサルタント業だというが、幼馴染みの芸能会社社長やら武術道場の知人やら交際関係だけでも外崎は普通ではない。それに今日は来なかったとか、少しだけ顔を出したとか、まだまだ交流関係ですら底が見えないところもある。
まだ今は……何とか外崎との関係を良好に保っていかないと……
大体にして良好とすら言えない関係なのだ。まだ自分が異端であり警戒されている人間だというのは、言われなくても分かっている。だから下手な動きは今はしないつもりだ。可能性があるのであれば、腕が治ったら外崎邸に居候なんて方法がとれはしないか検討してもらえないか一応外崎に持ちかけてみるつもりでいる。それに十分耳からでも情報は入ってくるのだし、それを集めるのだって重要な筈だ。
それこそ分類して情報を結びつけて…………
そう考えていた瞬間、ふと何かが聞こえたような気がして陸斗は眉を潜めた。
何か微かな音が聞こえたような気がして、何故か自然と思わず息を詰めて耳を澄ましている。家が鳴る軋みとかとは違うし、襖の向こうの結城晴達は既に眠っているのか物音は一切聴こえない。当然の事なのだが、もう一つのソファーで酔って撃沈しカーカー寝息をたてて眠っている鈴徳良二が起きたわけでもない。
何だ……?
階段の軋む音でもないし、かといって一階のリビングの天井が吹き抜けになっているからと言って階上の部屋の音がここまで響いて聞こえるとは思えない。というかもっと軽くて微かな音だった気がする。
そうだ、言うなれば軽くて素足…………の足音のような。
そう頭の中で閃いた瞬間、何故かゾワッと全身に悪寒が走った気がした。いやいや、この家の中は以前の外崎了に説明をされた通り、誰もがほぼ素足で歩く。足元には大きな荷物はおかないし、特に外崎宏太が歩く範疇には椅子とかも置かないように気を配ってある。下手に物を動かしたりすると、いつの間にか外崎了がやって来てスルスルと物を定位置に戻して去っていくのだ。だから、誰もがほぼ素足でペタペタ歩いているのは不思議じゃない。それなのに何故かこの足音は、この家にいる誰よりも羽のように軽い。今夜ここにいる中で一番体重が軽そうなのは、恐らく結城晴だと思う。勿論身長はあるが華奢な体型をしている榊恭平や外崎了も、自分よりは軽い筈だが身体のラインを見た事のある晴が一番軽い筈だ。でも晴は奥の和室に狭山明良と一緒にいて、襖はキチンと閉じられたままなのは視界に入っている。ふと見れば両腕に鳥肌が立っていて、寒くも暑くもない筈の快適温度の筈なのに微かに吐息が白く濁って見える。
え?
思わず寝ぼけているのかと試しに口から吐息を吐き出してみるが、口からは普段と何も変わらない普通の吐息がはぁという音と共に吐き出される。それでも両腕の鳥肌は尚更ハッキリと沸き立ち、背筋だけがゾワゾワと寒気を伴って凍りつく。
ええ?
生まれてこの方、こんな経験はしたことがない。しかも何でだろう、耳の奥がガンガンしているみたいな爆音がしていて、これが自分の心拍の音だと気が付くまで大分かかってしまった。ドッコドッコと跳ね回る自分の心臓の音に自分が何かに怯えているのだと、やっとここにきて気が付いた。
怯えてる?何に?どうして?
頭の中で自分に向かって問いかけてみるが、全く理解できないまま恐怖心だけが更に大きく膨れ上がり何故か目を閉じることも出来ずにいる。あぁこれはきっと寝る前に皆で怪談なんてことをしたものだから、頭の中でアドレナリンが過剰分泌してしまったに違いない。身体のこの反応はそのアドレナリンの誤作動。そうだ、心拍が激しいのはそれで説明がつく。そう思いながら、あえて頭上のシーリングファンから視線を外さないようにする。それなのに何故か視線の端に、何かが白く浮かんでいる気がして咄嗟に目を閉じてしまった。
あぁ!馬鹿!
一度目を閉じてしまったら、今度は逆に開眼できなくなってしまう。何しろそんなことをしたら、次に目を開けて何か見えたら対応しきれないからだ。ずっと見てたんなら何処から来たとか何とか理由がつけられるかもしれないけれど、目を閉じてしまったら何処から来たかも何をしていたかもわからない。
分からないから、もうこうなったら寝るしかない!意地でも!
何故かそう心で叫んだ瞬間、リビングの中にペタッと1つだけ足音のような音が響き渡った。その先は続かない。続かないからどこら辺に何かがいるのかも、そんな足音を立てる生物が室内にいるのかどうかも答えられなくなる。
マジか?!マジなのか?!いや!聞いてない!俺は何も聞いてない!!
もしかしたら上の誰かがキッチンに飲み物でも取りに来たのか、それとも合鍵を持っていたりする誰かがやって来たのか?いや玄関は開いてない筈だし、リビングの扉は音もなく開くのか?というか混乱しているぞ?庄司陸斗。落ち着け!音自体が気のせいで何か別な音かもしれないだろ。怪談話をしたから何かが歩み寄ってきたなんて、そんな非現実的で非日常的で超常現象なんて話がこんな簡単に起こる筈が…………。
「なんも……きかねぇで、ねでるふりしでろ。」
不意に耳に入った方言と思われる独特の発音混じりの低い声に、思わずビクリと全身が震える。この声は?一緒にリビングのソファーに寝ていた鈴徳の声なのだろうか?それにしては随分足元を這うような低く響く声だが、訛りが強くて本来なら聞き取れなかった筈なのに『聞かないで寝ているふりをしろ』と何故か言われた気がする。というか自分は訛りだと何故分かった?自分は生まれも育ちも首都圏だし、親戚一同訛りがあるような土地に住んでいる訳でもない。でも何故か本能的に従うしかないと感じる。言われたとおり目を閉じたままじっとしていると、いつの間にかトロトロと眠りに落ちていくのを感じていた。
…………あれ?でも……………………
鈴徳の声かとも思ったけれど、鈴徳は訛りがあるような話し方ではなかった筈。それに声の背後で、ずっとカーカーという鈴徳良二の規則正しい寝息が聴こえ続けていたような…………
※※※
防音完璧な2人きりの寝室とは言え、今夜は榊恭平達や結城晴達も泊まっている。それは分かっているから、控えめになんて考えてしまう時点で『待て』がどうこうという話ではないのは先ずさておき。互いに良い具合にホロ酔いなのもあって、ついついイチャついてしまったのは最近の宏太の変化のせいだと了は思っている。
だって、宏太が可愛いくて、ヤバいから悪い。
そう思ってしまうくらい、了に対しての感情を隠せていない宏太の様子に『したく』なるのは男の本能だ。まぁする時には宏太に存分に『されて』いるのだけれど。とは言え音は漏れのない完璧な筈の防音があってないような気分になるのは、宏太の聴覚が異常に良すぎて普段から何でも聞き取ってしまうのを目にしているからでもある。
腰を抱き上げられた了の後穴は、押し当てられた宏太の怒張の先端を抵抗することなく受け入れてしまう。何度も何度も繰り返され、すっかり馴染まされてしまった狭い穴を滑らかに先端が押し広げていく。それを感じながら宏太の滑らかな黒髪に指を絡ませ引き寄せて、了は宏太の肉感的な唇に唇を重ね舌を差し込む。そんな体内に潜り込む熱さと絡み付く舌の感触に、背骨に沿うような激しい快感が弾けていく。
何時もみたいに奥まで全て埋め込んで。
そのまま滅茶苦茶に突いて突いて、掻き回して、奥深くに熱いものを沢山注ぎ込んで欲しい。頭がそれだけで埋め尽くされているのに、今夜の宏太ときたら何時もみたいに奥まで一気に貫いてはくれないままピタリと動きを止めてしまっていた。お陰で抱き上げられた了は唇を重ね舌を絡ませたまま、中途半端に貫かれ身動ぎも出来ずに腰を前後に揺らす。
「んぅ、う、ぅん。」
甘ったるく先を強請る吐息を唇に直に吹きかけ腰を揺する了に、宏太だって腰に手を触れているのだから気が付いている筈だ。それなのに宏太は、何故か押さえ込んでいた了の腰から手を離してしまう。そして不意に既に下折立って蜜を滴らせ始めていた了の陰茎に、宏太は指を這わせ鈴口を擦る。
「はぅっ……!!んんっ!」
もう自分はそこを弄られるよりも宏太を奥深くに埋め込んで体内を掻き回して貰う方がいいのにと、唇を重ねて声が出せない了は心の中で叫ぶ。了の方から縋りついて唇を重ね舌を絡めてくるのを存分に楽しみながら、宏太の指先が意地悪く更に先端を擦り快感を引き出していく。
「ん、う、うふっう!」
ニチニチと湿った音を立てて先端から丹念に指が了の陰茎を擦り上げていく刺激に男としての快感がはぜて、思わず怒張を飲み込んだままの腰が大きくくねる。全身がビクッビクッと快感に震えるのに、宏太を咥えこんだままの穴もキュウキュウと太杭をきつく喰い絞めていく。絡み合う舌の滑る感触と一緒に前後に膨らむ快感に、了は全身を薔薇色に上気させて腰を揺らめかせる。
それでも本音は物足りない。
与えられる快感に堪らなくなって唇を離した了が、蕩けて甘ったるい掠れ声でなく。
「あ、ぅ、くぅんん!や、こぉ、た、チンポや、っ!」
「ん?良くないか?ここは?」
スリッと頬が擦れあうような仕草をして耳元に囁きかける宏太の声が、更に甘く神経を擽ってくる。宏太の指だ、良くない筈がない。それでもそれ以上を知っている身体が、違うものを必死に求めている。
「いいんだろ?ベトベトにしてるぞ?ん?」
「ふぁ、あ!ち、がっあぁあ!」
意地悪なのか本気でしているのか。更に宏太の指先がユルユルと先端を回すように擦り快感を叩き付けてきて、了は全身をビクビクと震わせて苦悩めいた声を溢す。淫らな動きで先端を執拗に刺激されるのに、どうしようもなく蕩けさせられ追い詰められていく。出来ることなら腰をもっと深く落としてしまいたいのに、宏太が与えてくる突き上げるような快感に上手く身体が動かせない。
「こぉ、たぁ、や、それ、やっ、やぁっ!」
「んん?どうした?気持ちいいだろ?ん?」
どうやら宏太が本気でそっちで自分をいかせようとしてるのを察して、了は首筋に腕を回し再び縋りつくとフルフルと頭を振ってみせる。了の柔らかな髪がサラサラ擦れる感触に首を横に振っている了の様子を感じ取ったのか、宏太は少しだけ戸惑いが滲む顔つきを浮かべてみせた。そして了が嫌がるならと指先がスルリと先端をなぞるようにして離れていく。その手がそのまま了の腰を抱くのに任せて了は息をあらげたまま。
「…………さとる?」
低く響く声に名前を呼ばれて、了は首筋に顔を埋めたまま掠れた声で『お願い』と繰り返す。その刺激ではない方がいいのだと明らかに透けて見える了の訴える声に、宏太の口元がフワリと柔らかく笑みを作ってみせた。そうして擽るような響く声が、了の耳元に笑いを含みながら囁く。
「少し、じゃないのか?ん?」
「いじわる……ばかぁ……。」
少しだけと了が言ったから、一応宏太としては今夜は手加減しようとはしてくれたらしい。ただ手加減の方向性が噛み合わなかったから、結局了は甘えた声で再び『お願い』と繰り返すしかなくなってしまう。
「奥……せつない……こぉたぁ…………。」
首元にすり寄るようにして強請る了に、宏太は艶やかに微笑みながら腰を抱く手に力を込めていた。
どこぞのリゾートかよ…………
しかもそれにもう誰も疑問がない様子で、当然のように高級肉を調理する端から食うなんて……流石に金持ちってやつはと思わずにはいられなかった。いや自分の家だってわりと大きな旧家なのだが、こんな風に誰かを呼んで騒ぐなんて経験がない。大学時代?そんなことをする暇なんか自分にある筈がないだろう。いやいや、こんな自己憐憫を重ねている場合ではないけども。
なんてことをボンヤリと考えつつ、天井を見上げながら庄司陸斗は今日気が付いたことを頭の中で纏め続ける。陸斗が知りたいことは、正直まだまだ山程あるし何も真実には近づいてもいないと思う。それでも少しずつ外崎宏太の交遊や会話の中から察した様々なことを、丁寧に少しずつだが結び合わせていくしかない。少なくともこの先に導かれて出てくる陸斗の知りたい真実のためには、やはりここで働くという選択は最適な手段だろう。
こうしてみると風間祥太のアンダーグラウンドの情報源は、やはり外崎宏太なのは間違いない筈だ。あの仕事場の機械の一部は、何かマトモではないことをするための物のようだし。表向きは真っ当なコンサルタント業だというが、幼馴染みの芸能会社社長やら武術道場の知人やら交際関係だけでも外崎は普通ではない。それに今日は来なかったとか、少しだけ顔を出したとか、まだまだ交流関係ですら底が見えないところもある。
まだ今は……何とか外崎との関係を良好に保っていかないと……
大体にして良好とすら言えない関係なのだ。まだ自分が異端であり警戒されている人間だというのは、言われなくても分かっている。だから下手な動きは今はしないつもりだ。可能性があるのであれば、腕が治ったら外崎邸に居候なんて方法がとれはしないか検討してもらえないか一応外崎に持ちかけてみるつもりでいる。それに十分耳からでも情報は入ってくるのだし、それを集めるのだって重要な筈だ。
それこそ分類して情報を結びつけて…………
そう考えていた瞬間、ふと何かが聞こえたような気がして陸斗は眉を潜めた。
何か微かな音が聞こえたような気がして、何故か自然と思わず息を詰めて耳を澄ましている。家が鳴る軋みとかとは違うし、襖の向こうの結城晴達は既に眠っているのか物音は一切聴こえない。当然の事なのだが、もう一つのソファーで酔って撃沈しカーカー寝息をたてて眠っている鈴徳良二が起きたわけでもない。
何だ……?
階段の軋む音でもないし、かといって一階のリビングの天井が吹き抜けになっているからと言って階上の部屋の音がここまで響いて聞こえるとは思えない。というかもっと軽くて微かな音だった気がする。
そうだ、言うなれば軽くて素足…………の足音のような。
そう頭の中で閃いた瞬間、何故かゾワッと全身に悪寒が走った気がした。いやいや、この家の中は以前の外崎了に説明をされた通り、誰もがほぼ素足で歩く。足元には大きな荷物はおかないし、特に外崎宏太が歩く範疇には椅子とかも置かないように気を配ってある。下手に物を動かしたりすると、いつの間にか外崎了がやって来てスルスルと物を定位置に戻して去っていくのだ。だから、誰もがほぼ素足でペタペタ歩いているのは不思議じゃない。それなのに何故かこの足音は、この家にいる誰よりも羽のように軽い。今夜ここにいる中で一番体重が軽そうなのは、恐らく結城晴だと思う。勿論身長はあるが華奢な体型をしている榊恭平や外崎了も、自分よりは軽い筈だが身体のラインを見た事のある晴が一番軽い筈だ。でも晴は奥の和室に狭山明良と一緒にいて、襖はキチンと閉じられたままなのは視界に入っている。ふと見れば両腕に鳥肌が立っていて、寒くも暑くもない筈の快適温度の筈なのに微かに吐息が白く濁って見える。
え?
思わず寝ぼけているのかと試しに口から吐息を吐き出してみるが、口からは普段と何も変わらない普通の吐息がはぁという音と共に吐き出される。それでも両腕の鳥肌は尚更ハッキリと沸き立ち、背筋だけがゾワゾワと寒気を伴って凍りつく。
ええ?
生まれてこの方、こんな経験はしたことがない。しかも何でだろう、耳の奥がガンガンしているみたいな爆音がしていて、これが自分の心拍の音だと気が付くまで大分かかってしまった。ドッコドッコと跳ね回る自分の心臓の音に自分が何かに怯えているのだと、やっとここにきて気が付いた。
怯えてる?何に?どうして?
頭の中で自分に向かって問いかけてみるが、全く理解できないまま恐怖心だけが更に大きく膨れ上がり何故か目を閉じることも出来ずにいる。あぁこれはきっと寝る前に皆で怪談なんてことをしたものだから、頭の中でアドレナリンが過剰分泌してしまったに違いない。身体のこの反応はそのアドレナリンの誤作動。そうだ、心拍が激しいのはそれで説明がつく。そう思いながら、あえて頭上のシーリングファンから視線を外さないようにする。それなのに何故か視線の端に、何かが白く浮かんでいる気がして咄嗟に目を閉じてしまった。
あぁ!馬鹿!
一度目を閉じてしまったら、今度は逆に開眼できなくなってしまう。何しろそんなことをしたら、次に目を開けて何か見えたら対応しきれないからだ。ずっと見てたんなら何処から来たとか何とか理由がつけられるかもしれないけれど、目を閉じてしまったら何処から来たかも何をしていたかもわからない。
分からないから、もうこうなったら寝るしかない!意地でも!
何故かそう心で叫んだ瞬間、リビングの中にペタッと1つだけ足音のような音が響き渡った。その先は続かない。続かないからどこら辺に何かがいるのかも、そんな足音を立てる生物が室内にいるのかどうかも答えられなくなる。
マジか?!マジなのか?!いや!聞いてない!俺は何も聞いてない!!
もしかしたら上の誰かがキッチンに飲み物でも取りに来たのか、それとも合鍵を持っていたりする誰かがやって来たのか?いや玄関は開いてない筈だし、リビングの扉は音もなく開くのか?というか混乱しているぞ?庄司陸斗。落ち着け!音自体が気のせいで何か別な音かもしれないだろ。怪談話をしたから何かが歩み寄ってきたなんて、そんな非現実的で非日常的で超常現象なんて話がこんな簡単に起こる筈が…………。
「なんも……きかねぇで、ねでるふりしでろ。」
不意に耳に入った方言と思われる独特の発音混じりの低い声に、思わずビクリと全身が震える。この声は?一緒にリビングのソファーに寝ていた鈴徳の声なのだろうか?それにしては随分足元を這うような低く響く声だが、訛りが強くて本来なら聞き取れなかった筈なのに『聞かないで寝ているふりをしろ』と何故か言われた気がする。というか自分は訛りだと何故分かった?自分は生まれも育ちも首都圏だし、親戚一同訛りがあるような土地に住んでいる訳でもない。でも何故か本能的に従うしかないと感じる。言われたとおり目を閉じたままじっとしていると、いつの間にかトロトロと眠りに落ちていくのを感じていた。
…………あれ?でも……………………
鈴徳の声かとも思ったけれど、鈴徳は訛りがあるような話し方ではなかった筈。それに声の背後で、ずっとカーカーという鈴徳良二の規則正しい寝息が聴こえ続けていたような…………
※※※
防音完璧な2人きりの寝室とは言え、今夜は榊恭平達や結城晴達も泊まっている。それは分かっているから、控えめになんて考えてしまう時点で『待て』がどうこうという話ではないのは先ずさておき。互いに良い具合にホロ酔いなのもあって、ついついイチャついてしまったのは最近の宏太の変化のせいだと了は思っている。
だって、宏太が可愛いくて、ヤバいから悪い。
そう思ってしまうくらい、了に対しての感情を隠せていない宏太の様子に『したく』なるのは男の本能だ。まぁする時には宏太に存分に『されて』いるのだけれど。とは言え音は漏れのない完璧な筈の防音があってないような気分になるのは、宏太の聴覚が異常に良すぎて普段から何でも聞き取ってしまうのを目にしているからでもある。
腰を抱き上げられた了の後穴は、押し当てられた宏太の怒張の先端を抵抗することなく受け入れてしまう。何度も何度も繰り返され、すっかり馴染まされてしまった狭い穴を滑らかに先端が押し広げていく。それを感じながら宏太の滑らかな黒髪に指を絡ませ引き寄せて、了は宏太の肉感的な唇に唇を重ね舌を差し込む。そんな体内に潜り込む熱さと絡み付く舌の感触に、背骨に沿うような激しい快感が弾けていく。
何時もみたいに奥まで全て埋め込んで。
そのまま滅茶苦茶に突いて突いて、掻き回して、奥深くに熱いものを沢山注ぎ込んで欲しい。頭がそれだけで埋め尽くされているのに、今夜の宏太ときたら何時もみたいに奥まで一気に貫いてはくれないままピタリと動きを止めてしまっていた。お陰で抱き上げられた了は唇を重ね舌を絡ませたまま、中途半端に貫かれ身動ぎも出来ずに腰を前後に揺らす。
「んぅ、う、ぅん。」
甘ったるく先を強請る吐息を唇に直に吹きかけ腰を揺する了に、宏太だって腰に手を触れているのだから気が付いている筈だ。それなのに宏太は、何故か押さえ込んでいた了の腰から手を離してしまう。そして不意に既に下折立って蜜を滴らせ始めていた了の陰茎に、宏太は指を這わせ鈴口を擦る。
「はぅっ……!!んんっ!」
もう自分はそこを弄られるよりも宏太を奥深くに埋め込んで体内を掻き回して貰う方がいいのにと、唇を重ねて声が出せない了は心の中で叫ぶ。了の方から縋りついて唇を重ね舌を絡めてくるのを存分に楽しみながら、宏太の指先が意地悪く更に先端を擦り快感を引き出していく。
「ん、う、うふっう!」
ニチニチと湿った音を立てて先端から丹念に指が了の陰茎を擦り上げていく刺激に男としての快感がはぜて、思わず怒張を飲み込んだままの腰が大きくくねる。全身がビクッビクッと快感に震えるのに、宏太を咥えこんだままの穴もキュウキュウと太杭をきつく喰い絞めていく。絡み合う舌の滑る感触と一緒に前後に膨らむ快感に、了は全身を薔薇色に上気させて腰を揺らめかせる。
それでも本音は物足りない。
与えられる快感に堪らなくなって唇を離した了が、蕩けて甘ったるい掠れ声でなく。
「あ、ぅ、くぅんん!や、こぉ、た、チンポや、っ!」
「ん?良くないか?ここは?」
スリッと頬が擦れあうような仕草をして耳元に囁きかける宏太の声が、更に甘く神経を擽ってくる。宏太の指だ、良くない筈がない。それでもそれ以上を知っている身体が、違うものを必死に求めている。
「いいんだろ?ベトベトにしてるぞ?ん?」
「ふぁ、あ!ち、がっあぁあ!」
意地悪なのか本気でしているのか。更に宏太の指先がユルユルと先端を回すように擦り快感を叩き付けてきて、了は全身をビクビクと震わせて苦悩めいた声を溢す。淫らな動きで先端を執拗に刺激されるのに、どうしようもなく蕩けさせられ追い詰められていく。出来ることなら腰をもっと深く落としてしまいたいのに、宏太が与えてくる突き上げるような快感に上手く身体が動かせない。
「こぉ、たぁ、や、それ、やっ、やぁっ!」
「んん?どうした?気持ちいいだろ?ん?」
どうやら宏太が本気でそっちで自分をいかせようとしてるのを察して、了は首筋に腕を回し再び縋りつくとフルフルと頭を振ってみせる。了の柔らかな髪がサラサラ擦れる感触に首を横に振っている了の様子を感じ取ったのか、宏太は少しだけ戸惑いが滲む顔つきを浮かべてみせた。そして了が嫌がるならと指先がスルリと先端をなぞるようにして離れていく。その手がそのまま了の腰を抱くのに任せて了は息をあらげたまま。
「…………さとる?」
低く響く声に名前を呼ばれて、了は首筋に顔を埋めたまま掠れた声で『お願い』と繰り返す。その刺激ではない方がいいのだと明らかに透けて見える了の訴える声に、宏太の口元がフワリと柔らかく笑みを作ってみせた。そうして擽るような響く声が、了の耳元に笑いを含みながら囁く。
「少し、じゃないのか?ん?」
「いじわる……ばかぁ……。」
少しだけと了が言ったから、一応宏太としては今夜は手加減しようとはしてくれたらしい。ただ手加減の方向性が噛み合わなかったから、結局了は甘えた声で再び『お願い』と繰り返すしかなくなってしまう。
「奥……せつない……こぉたぁ…………。」
首元にすり寄るようにして強請る了に、宏太は艶やかに微笑みながら腰を抱く手に力を込めていた。
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