鮮明な月

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第十七章 鮮明な月

243.

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それは悲鳴にも似た音なのに、蕩けるように甘く感じる愛しい人の声。そんな榊恭平の吐息交じりの喘ぐ声を直に聞き、口淫というその行為自体に欲情しながら恭平の肉茎を口に含んだ仁聖はわざと大きく淫らな音を立てる。それと同時に弱々しく快感に頭を振る恭平の淡く色づいた頬を眺めながら、滑らせてスイと足の付け根を探る指先をフックリとした柔らかな後孔へと伸ばす。

「ひぁっ!!……はぅっ!!」

前側に与えられていた口淫の快感に加えて、そこに指を差し込まれ体内を直に擦られる感覚。綻ばせられて中をクルリと擦られる甘い指の感覚に、全身を仰け反らせる様にして恭平が震えている。脚を開かされ閉じることも出来ない恭平の敏感な反応をじっくりと眺めながら、仁聖はその指を少しずつ探る様に更に奥に潜り込ませていく。濡れた指先の動きと肉茎を含む淫らな口の動き。強すぎる快感に声にならない悲鳴を上げながら恭平は全身を朱に染めて、探っていた仁聖の髪に触れた指をきつく自身に引き寄せる様にして体を強張らせていた。

「んうぅっ!!!くぅうううっ!!」

体の内部を指で探られビクリと大きく震えながら、恭平は肩を大きく喘がせてきつく眼を閉じ眉をよせる。次の瞬間弾ける歓喜を感じながら恭平が口の中で解き放つモノを、躊躇いもなく仁聖はそのまま口の中に全て受け止め飲み干していく。

「は……ぁ………う……ぅ。」

快感の衝撃にボンヤリとしている恭平の蕩けた表情を、仁聖は言葉もなくうっとりと眺めていた。やがて仁聖の空いた方の手がスルリと、弛緩した体の下に潜り込み細い腰を掬い上げる。未だ内部を探り続けている指の動きに翻弄され、恭平の意識は快楽に朦朧としているけれど、奥から沸き上がる熱を感じながら仁聖はそのしなやかな足を軽々と抱え上げた。恥ずかしい場所を曝される仁聖の動作なのだけれど、相手が仁聖なのだと恭平は素直に受け入れてくれる。

「じんせぇ…………。」

膝の後ろに添えられた熱い手に体を開かされた姿に、無言のまま見下ろしていた仁聖の表情が陶然とした微笑みを浮かべて振り落ちた。まるで当たり前の行為をするとでも言うかの様に、躊躇う仕草もなく後壁を広げる指先と一緒に仁聖の唇がそこに触れてくる。グチグチと濡れた卑猥な音をさせて、更に深く指を差し入れながら唇を離した仁聖が音をペロリと淫らな仕草で唇を舐めながら、快感に呆然としている恭平の表情を見下ろす。

「じんせ………も、やぁ…………。」

甘えるような恭平の蕩けた声。ダメといった筈なのに、もう我慢できないと恭平が強請る声は媚薬みたいに甘くて柔らかく誘ってくる。それに仁聖は身を伸ばして頬にキスを落としながら、執拗に緩やかに熱く蠢く様な内部を探りあげていく。指の動きに反応して息を跳ね上げる体の隅々までを味わう様に、肌に舌を這わせうっとりした仁聖の甘く低い囁き声が耳を擽る。

「……恭平、気持ち、い?」
「い、…………じんせぇ、…………もっ、と。」

仁聖を煽り立てる、甘い蜜の塊のような恭平の強請る声。自分の手の下で白磁の肌が薔薇色に染まっていて、熱をもった肌が不意に甘く強い香りを立ち上らせていく。媚薬の様なその香りに酔った仁聖の指の動きが更に音を立ててヌチュヌチュと激しくなるのを、濡れる卑猥な快感をそこから感じて耐え切れずに恭平は頭を振っていた。

「も、ゆび、や、じんせぇ、…………やぁっ!」

緩慢に執拗に指が穴を寛げる刺激が熱に変わって、遂には恭平自身も何度仁聖に先を強請っているのか分からなくなっている。朦朧と絶え絶えの息を上げていた恭平の体内から不意に音をたてて指が引き抜かれたのに、思わず安堵の吐息が恭平の唇から漏れて腕が仁聖の首元に絡み付く。次の瞬間足を割った仁聖の身体にパチパチと恭平が瞬きして視線を向けると、異常なまでに熱っぽく滾る様な青味がかったあの瞳で真っ直ぐに恭平は射すくめられている。

「恭平、俺……もう…………無理。我慢…………できない。」
「おれ、も…………じんせぇ……。」

頭上でうわ言の様に名前を囁きながら、不意にそれから強い熱を放つようなモノが今まで探られていた部分にペトリと押し付けられて恭平は思わず喉をならしてしまう。

仁聖の…………硬くて…………熱い…………

そう頭に認識されてしまうと、抵抗すら出来ない。そして恭平の弱い動きを物ともせずに、ヌルリと激しい熱と質量が体の中に1度に深く打ち込まれていく。

「ひぅっ…あああぁっ!!!んぅううっ!!くふぅ!」
「…ぁ…恭平…、きつ……。」

溜め息のような感嘆に満ちた吐息混じりの仁聖の声に、恭平はきつく眉を寄せながらいれられだけで達してしまいそうになっているのを必死に堪える。体を貫く熱に浮かされながら縋るしかない指先が、思わず仁聖の腕に爪を立てそうになるのを堪えていた。以前は我を忘れて縋りつき爪を立ててしまうのは良くあることだったけれども、最近はそう言う傷は仁聖の仕事に障るからなるべくつけないよう気を付けている。それでも快感に溺れそうで、ついその身体に縋りついてしまうのだ。、

「あぁああっ!!!…や…やぁ………あ…あぁぁ……っだめ、あぁ!」
「もう少し……ね?…………辛い?ゆっくり、がいい?」
「はぅっ………あぁ!!」

仁聖は更に深く奥に押し付けるように、グゥッと体を重ねてくる。覆い被さる仁聖自身の重みに、軋みが更に大きく腰に響いて体の中に太い楔が穿たれて行く。体の奥で弾けるような快感に黒曜石の瞳に滲んだ涙に気がついた仁聖が、そっと頬に唇を寄せ体を動かさないように緩やかな動作で舌を頬に這わせる。その唇から逃れられないまま息を弾ませる恭平の表情と甘美な内部の感覚を直に感じながら、仁聖は陶然として微笑む。

「このまま………暫く………こうしていてあげる、ね?恭平。」
「な…なん………でぇ…………んんっ。」

喘ぐような吐息を吐く恭平の額にかかる髪をそろりと掬い上げながら、その額と頬にもう一度順に柔らかなキスを落とす。肌を擦れさせながら仁聖がのし掛かり、そっと魅惑的に甘く低く耳に囁きかける。

「連日きついって言う、から………だから恭平の体が……俺のに、馴染むまで………このまんま、ね?」

酷く甘くそれでいて残酷な言葉に、恭平は頬を染めて眼を見開く。強い快感で身動きもままならない状態で、そのものから逃れるには当の仁聖がそれを擦りつけてくれるのを待つしかない。しかし、こうして明確に暫く動かすつもりは無いと意思表示をされて、恭平は混乱したように頬を染めてその顔を見つめる。言葉通りに埋め込まれた楔をそのままに、ただ微かに降り落ちるキスが溢れ出す涙だけを甘い感触を残して拭っていく。チクンと体の奥が脈打ち疼く感覚が、そのキスの後に生まれて恭平は身体を震わせていた。

「んう……ふぅ…っ………んんっ……くぅ。」

思わず溢れ落ちた吐息の甘えたような音に、恭平の表情が羞恥心に染まり歪む。それに気がついて眼を細めた仁聖が、囁くように熱っぽく耳元に言葉を溢した。

「……もう……動かしてほしいの?…………恭平。」

その言葉に硬く眼を閉じたまま、恭平は真っ赤になって強く首を横に振る。ところがその咄嗟の仕草に揺れた体に走った鋭い感覚に、恭平が更に大きく息を荒げると甘い喘ぎが放たれていた。その様子を眼に、仁聖はクスリと小さく笑みを溢す。少し意地悪い声で耳元で甘く囁き、そっと閉じられた綺麗な瞳を覆う瞼に軽い音を立てて唇を触れていく。

「動いて欲しくないんなら、何時までもこうしてるよ?俺は別にいいけど?」
「や…っ…うぅん!!?」

放った自分の声の反動に、快楽が電流のように背筋を走る。喘ぐ声を放ちながら恭平の体が仰け反り、その動きが更に次の反応を連鎖のように引き起こしていた。自分が身動ぎをした事で生まれた衝撃が、次の衝撃を繋いで連鎖反応をもたらしてしまう。恭平は焦ったように仁聖に潤んだ瞳を向けながら腕に指を絡ませて、ユラユラと腰が揺れる。自分の動作の反動で体が動き、それが衝動の連鎖を引き起こしたという事すら、既に恭平に知覚出来る世界のものではなくなろうとしていた。

「あぅっ……や、ぁ…………これ、んんんっ!じんせ…っ!」
「俺は動いてないよ?……恭平が自分で動いてるんだよ?気持ちいいの?」

微かに汗ばんだ額からサラリと艶やかな黒髪を撫でる指の下で、恭平は何を答えたら良いのか分からなくて必死に頭を振る。恭平自身の止められない体を揺するようなしなやかな体の動きを身体で直に感じながら、仁聖はうっとりと恥態を曝す恭平を見つめた。望んでいたものを目の前にして、望んでいた以上に鮮やかで甘美な快感。初めて触れた全てと繋がった部分から激しく沸き起こり、微かに息が熱を持って湿っていくのが分かった。

あぁ…………、…恭平………綺麗で可愛い……

緩々と自ら腰をうねらせてしまう状況に、身悶える綺麗で酷く官能的な姿。それを見つめて堪えきれなくなった仁聖は、ハッと一瞬激しい息を吐いて細い腰を掴み引き寄せるようにして思い切りズンと腰を突き上げていた。

「ああああぁぁああっ!!」
「恭………平…っ!もう…っ!………もう俺も、限界っ!動くよ?!」

激しく突き込まれた熱がズルッと引き抜かれ、再び熱を放ちながらガンと埋め込まれていく。とてつもない衝撃に腕の中の体は、無意識に仰け反り逃れようともがく。それを力一杯両手で引き寄せながら仁聖は何度も何度もその行為を音を立てて繰り返す。言葉にならない悲鳴が擦れてやがて鋭く短い吐息のような音に変わっていく。

「恭平…っ……、恭……平……ぁ…ん……、凄い……いい…。」
「はぅっあぁ!あぁぁ!」

激しく穿たれる動作の生み出す蟲惑的に溢れる卑猥な水音の先で、蠢く中の熱と絡みつくような感覚が次第に強くなって快感に震える。そして自らが動きを早める度に仁聖の腰まで、絡み付き蕩けさせるような強く深い快感が身体に広がっていく。

「じ……じん……………せ……っ。」
「ぅん……、恭平……凄い………、きつ、い…、気持ちい……ぃ。」

熱を持ってのし掛かる掠れた仁聖の甘い声に煽られ、恭平の腕も仁聖の体を離すまいと引き寄せ首に腕を絡み付かせてくる。そして仁聖の手に力強く抱き寄せられて、恭平は眉を寄せ甘ったるい悲鳴を耳元で上げ続けていた。やがて何も考えられない程にお互いの吐息の激しさだけが、室内に響く全てを埋め尽くす。

「じん、……せぇ、あ、じんせ…………っ!」

歓喜に満ちる甘い擦れ声で繰り返し名前を呼ばれ続け、声が甘く全身に深く沁みこんでいく。激しくギシギシと突き込まれる熱さの向こうで、仁聖の方も恭平に縋るようにして抱き締めていて。そうしながらソッと仁聖の方も、耳元に恭平の名前を熱く囁き続けている。繰り返される自分の名前を聞きながら、快楽の先をせかす様に恭平は甘く熱い擦れた声でその青年の名前を大きく喘ぐように叫んでいた。

「じ…仁聖っ!!も…、じんせ……あっ!!あぁっ!仁聖っ!!」

堪えきれないというように頭を振りながら首に回される腕と一緒に、激しい吐息と重なって名前を叫ばれている。それに仁聖は脈打つような強い快感を感じて、声に誘われるように更に自分をその体の中に深く捩じ込むようにググゥッと押し込んでいた。

「あぅうう!ひ、ぁあ!んんっくぅ!じ、んせぇ!!あぅ!」

不意に体の奥底に潜り込む感触の後で、弾けるように感じ始めた途轍もない快感に流され恭平の声が甘く上ずる。恭平の甘い嬌声と、その体から立ち昇る蕩けるように甘く扇情的な香りに、仁聖も当てられて眩暈を覚えている。

「恭平っ………俺・も………いくよ?いい?」

ズグッと擦る音を立てて、再度深々と奥に注挿される熱。それに思わず恭平の身体がしなって大きく仰け反る。自然と身体が仰け反り離れてしまいそうな恭平の体をきつく抱き寄せながら、仁聖は更に強く激しく音を立てて腰を打ち付けていく。

「んああっ!やっ!ぅあぁっ!!いっ…ああっ!!あぁあっ!」
「も、俺いくよ?!恭平………っあぁ………恭平も………いって?!!」

その声に反応するように鋭い歓喜の声を上げながら、殆ど同時にそれぞれの場所にそれぞれが熱く弾ける様な勢いで白濁した歓喜の証しを放っていた。

「あ……………あぁ………。」
「……恭……平、す…っごい…いい……、たまんない…。」

熱く甘い吐息を激しく喘ぐように肩で溢しながら、まだ繋がったままの体が不意に重みを増して覆い被さる。そして顔を寄せあうと、お互いに近寄り唇を探るように舌の先が互いのそれを撫でていく。そうしてフワリと目の前の仁聖の表情が、満足そうな微笑みに変わったのに恭平も気がついていた。
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