鮮明な月

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間章 ちょっと合間の話3

間話117.こういうのが

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調教という言葉は元来が動物向けの言葉なので、人間に用いる場合は侮蔑的な揶揄を含んだ言葉になる。そのため普通は人間には調教という用語を用いずに、トレーニング、訓練という言葉を用いることが殆んどである。所謂SMの世界では、それらの侮蔑的な意味を踏まえて人間に対し『調教』を行う。これは世間の一般常識に慣らされてしまっている相手に対し、SM的手法による性的快楽を促すため…………というような意味合いでとられているのだ。

「ほら、了…………こっち、脚抱えろ。」

具体的には、羞恥心は誰もが持っているものであるが、その羞恥心によって性の喜びを享受しきれない場合もある。例を挙げるなら、『縄で緊縛されたり、鞭打たれたり、浣腸されたりすることで快感を覚えることが変態性欲であり、それが異常だと思っている』相手を、『緊縛や鞭打ち、浣腸(その結果の、他人の眼前での排泄なども含む)という行為で快感を覚えるのは正しい』と現実の自分自身を恥じないようにする。
そんな一種の教育をSM世界での『調教』と呼ぶのだが、そう言う意味では素直に外崎宏太の言うことを聞いてベットの上で脚を抱えた外崎了はある意味調教済みと言えなくもない。

「……ここ、ヒクヒクしてるな?ん?」
「や、だぁ、言うなって。」

被虐者が責め手のきびしく淫猥な責めプレイなどに耐えかねて、『その羞恥や苦痛、恥辱から逃げ出してしまいたい、そうでなければ周囲の人間に救いを求めたい』などと思いかける事もある。でも『その思いを上まわる快楽やSMプレイへの欲求を、被虐者の心身に修得させ、改めてSMの世界に引きずり込む』ことも同様の『調教』といえる。ただし、これはあくまでSMプレイの範疇であり、精神的に追いつめると意図しない結果を招く。

そう言う意味でSMを履き違えたのが矢根尾だ。

そう過去で矢根尾俊一が倉橋亜希子にしていたことのように、一般的に肉体的精神的苦痛与える者に、受け続ける人間は苦痛を与える人間に従順になり、ある程度の命令に従うようになるのだ。その傾向が強くなると被虐側は暴力ですら好意ととらえ、相手に依存感情を持つ場合すらある。これは実際にはSMとは関係ない人間の適応機制の一種であり、防衛反応の一種なので本当のSMとは言えない。DVはただの暴力であって、SMとは別物と言うわけだ。

「俺に反応して……可愛く誘ってるな?ここ。」

クリンと指先に後孔をなぞられ、蕾のままだったそこを思わず了はひくつかせてしまう。頬を染めて微かに上がる吐息に宏太は微笑みながら、その耳元に唇を寄せる。
精神医学面での『性的サディズム』は、性的興奮を得るために一方的に何かを虐待するという性格異常を発揮し、一方の『性的マゾヒズム』では辱めを受けたり自らの肉体を損傷することで性的興奮を得るとされる。ただこれらは、正確に言うと性的倒錯(パラフィリア)と呼ばれる精神障害なのだという。勿論先ほど宏太が着たボンデージなどといったファッションスタイルもあって、日本では『緊縛』と呼ばれる縄で縛り付ける行為も見られる。
『ソフトSM』と呼ばれる行為では『手を(軽く)縛る』や『目隠しをする』といったプレイも見られる所謂性風俗におけるSMでは双方同意の上で行為が行われていて、また深刻な負傷を発生させないよう抑制された暴力または工夫された擬似的暴力であるといった特徴があるのだ。その一方で宏太がしていた、『ハードSM』と呼ばれるものでは『鞭打ち』や『ロウソク責め』、性器ピアスを取り付けるなどのプレイの分野もある。

「やんっ……あっ、これ、い……つもの、と。」
「恥ずかしいか?ここ、こんなに潤んでるの、触られて?ん?」
「んくぅ!」

結論としてはSMは主人の役割を演じる者と奴隷の役割を演じる者に分かれて、互いの合意のもとに行う性行為であって、サディズムとマゾヒズムの形の取り方はそれぞれ。痛みがなくても羞恥心を被虐と受けとれば充分SMの範疇に変わる。勿論縄で縛られることに快感を覚える人間も存在するし、鞭で打たれることに快感を感じる人間もいる。だから一概に黒革のベルトで全身拘束をされて、鞭で打たれ玩具で痛め付けられるだけがSMではないということだ。
宏太に試すように身体を触られながら、耳元で甘い声で触れている指先の事を指摘される。それだけでも恥ずかしいのに、宏太は更に耳元で甘く囁きかけてくる。

「了……?俺には見えないから、お前が…………。」

その言葉にトロンと蕩け始めながら、了は思わず手の動きに煽られてハゥ……と甘い声をあげてしまう。宏太の手が了の亀頭を緩やかな手付きで掌で作ったお椀を擦り付けてくる。

「了が…………何を…………どうされてるか、説明してみろ?な?」
「ふえ?んんぅ…………くぅ。」
「ほら、今、何を、どう…………されているんだ?」

クルリクルリと先端を掌で優しく撫で回されて、了の腰が蕩けて快感に跳ねる。恥ずかしくてしかたがないのに、それを強いられている了の喉がゴクリと大きな音を立てていた。無理矢理恥ずかしい姿で恥ずかしい事をするように強いられているのに、これが相手が宏太だと了には抵抗すら考えられなくなる。

「ほら、なにされてる?」
「手が…………掌で……ん、んん……っ……。」

そう口にした瞬間に宏太の掌が亀頭を擦るのを止めて、先端を指先で摘まむようにしてクリクリと擦り始める。

「ほら、続けろ?何を、どうされてる?説明してみろ?ん?」
「あっんん、指……っ……指で……先っ…………先っ摘まんで…………擦っ……。」

必死に何とか見ていることを説明しようとするが、与えられていく快楽の刺激で頭がジンジンと熱くなって酩酊していく。言葉が上手く紡ぎ出せない快楽の中で、それでも何とか宏太に言われる通り言葉にして説明しないとと思うと、視線は宏太の指先から目が離せない。

「指…………が、先っ……擦って…………るぅううっ!」
「良い子だ、じゃ次はちゃんと……何処をどう触られているか、説明しないとな?」

そう言いながら耳朶にヌルリと舌が這う。ヌチヌチと耳の奥に迄宏太が舐め回す音が反響して、了の口からはそれに反応して熱く吐息混じりの喘ぎが溢れていく。赤く膨れた了の怒張の先端に、指がヌリンと円を描く。

「ひぅ!!」
「ほら、良い子だから、俺に分かるように説明してみろ?了。」
「んんっ!せ、先端……っ。」
「何処の?」

その言葉の先で耳朶の奥に向かって、いやらしく……これは何処だ?と囁きかけてくる。身体が勝手にビクビクと痙攣して、酔わされて反応しているのが見えていて了は頬を染めて口を開く。

「お、れの、……チンポ……の先端……っ……。」
「了の勃起した、チンポの……だろ?ガチガチに、勃起した……了の……。」

そう宏太が耳に熱っぽく囁きながら宏太の指がクリクリと鈴口を擦り、溢れ出す滑りを熱く張り詰めた了の亀頭に擦り付けていく。そうして裏筋を擦る指を見つめながら片足の膝を自分で抱えながら卑猥な言葉を言うのに、了は自分の身体が勝手にジュクジュクと潤んで濡れていくのが分かる。

「恥ずかしいのが、随分良さそうだな?了。…………お道具も何にもなくても、気持ちいいか?ガチガチにして、漏れそうだな?ん?」
「そ、んな、言う、なよぉ……っ。」

熱をもったように頬が熱くて、しかも宏太の声でイヤらしい自分の身体を指摘されるのが恥ずかしい。それなのに身体はどんどん気持ち良く熟してしまって、更に気持ちいいことを宏太からして欲しがってもいる。

「こういうのをな、『調教』ってんだよ、分かるか?」
「んぅ…………。」
「恥ずかしくて……たまんねぇのに……して、欲しいだろ?ん?」

チュ……と耳朶をねぶられて、熱を直に注ぎ込まれて感覚が酩酊する。宏太の甘い声に逆らえずに何でも言うことを聞くしかできなくなる……それが『調教』なんだと囁かれてしまう。駄目なことでも自ら欲しくなるように躾られるんだと甘い声で囁かれ、しかも宏太が熱のこもった声で更に耳を犯してくる。

「了…………気持ちいいか?ん?」
「い、んぅいい。手、気持ちい、こぉたの、声もぉ。」

甘えるように宏太に縋りつき喘ぎながら言う了に、宏太は微笑みながら更に甘く低く耳を犯しにかかる。

「了…………その気持ちいいの、全部お前のもんだからな?分かるか?」
「んん、れん、ぶ?」
「そうだ、蕩けて気持ち良くしてやる……俺の全部が……お前だけのモノだ。」

目の奥がチカチカするような快感。覆い被さり甘く囁くこの淫らな声も、了を溺れるくらい気持ち良くしてしまう指も手も。頭の芯が痺れて蕩けてしまう程、一瞬で頭の中が熱で煮え滾る。ヒクンッと身体が痙攣して、勝手に身体が反応していく。

「ふぁ、あ、やら、なに、んんっ、んぅ!こぉ、た。」
「頭ん中でいきそうか?ん?可愛い奴だな……了は。」

耳から流れ込む宏太の声が頭の奥まで掻き回してきて、滅茶苦茶に身体がそれを変換して感じてしまう。ほんの少し指で触れているだけなのに、自分の身体が勝手に反応させられてしまうのに了は怯えるように宏太の身体にしがみつく。

「や、こん、な、こわっい!!やらぁ……!ううっ!んっ!」
「大丈夫だ…………良い子だな?そのまま受け入れれば良い、ほら。」
「んぅ、ううんっ!や、指ぃ、こすんのや、いくっ!」
「良い子には、もっと沢山気持ち良くしてやる。ほら。」

柔らかく甘い声で抱き締められ尚更甘く刺激されながら耳に吐息を吹き込まれるだけで、簡単に絶頂に押し上げられてしまう。キツく扱かれているわけでもないし、先端を指でやんわり擦るだけなのに、宏太の声に反応して身体が言うことを聞かない。トロリと蕩けさせるような吐息を吹き込まれて、しがみつきながらあっという間に宏太の手に精を吹き出してしまう。

「んんっ!あっ!」
「くく、……可愛い奴だな…………。ほら、お前の可愛いここは何した?」

射精を掌で受け止めた宏太に囁かれ、揺れる視線を向けると粘つく精液を塗り抜けられた宏太の手が視線に入ってくる。掌と自分の亀頭の先端からトロリと糸が引くのが見えて、宏太が今度は少し意地悪な声を吹き込む。

「ほら、悪い子だな?俺の手にこんな…………悪い子は言うこと聞かないとな?ん?」

ゾワリ……と背筋に震えが走るのを感じて震えながら、了は自分が吐き出してしまったモノを掌に残した宏太を見つめる。宏太は僅かに口角を緩めて微笑むと、また覆い被さって耳に向かって囁きかけ始めていた。

「良い子なら言われた通りするな?脚が降りてるぞ?ちゃんとさっきみたいに持ち上げるんだ?…………分かるな?ん?」

宏太の身体に縋りついた反動で下ろしてしまっていた脚をもう一度持ち上げろと囁かれて、拒絶しても良いはずなのに了は震えながら自らの右足を抱えるように持ち上げてしまう。さっきみたいに後孔をなぞられるとしたら、今はきっと快感でまた悲鳴をあげてしまいかねない。それでも宏太の言葉に逆らえないまま、了は脚を抱え込む。

「…………良い子だな、今度は何処を触って欲しい?ん?」

チュ……と再び口づけられ問いかけられるのに、そんなの決まってると心の中が叫ぶのが聞こえる。欲しいものなんてもう決まっていて、今すぐそこを触って欲しいのに宏太は焦らすように口づけていく。

「やだぁ……焦らすの、ぉも、やぁ…………。」
「ふふ、可愛い声で泣くな?了は。」

それでも口付けしか与えられないのに、焦れてしまう了が思わず宏太の手を脚を抱えていた右手で掴み引き寄せる。

「ここ、触って…………こぉた、さわってぇ……。」
「教えたな?俺には見えないから、ちゃんと言葉にしろって。なぁ?」

そう熱い吐息で再び強いられる。何もかも蕩けさせられ酩酊させられて、どんなに駄目だと分かっていても欲しがって強請らせてしまう。そう言う風に身体も頭の中までも作り替えられてしまう、それが『調教』であってそこに痛みを加味するか羞恥心を加味するかだけの違いなのだ。

「お尻……さわってぇ……お尻の孔の中…………こぉたぁ。」

震えながら甘ったるい声を出して、強請るしかできない状態にあっという間に追い込まれてしまう。自らフシダラな格好を曝して宏太の愛撫を欲しがって股を開いて、宏太が興奮して襲いかかってくれるように。ヌルリと自分の精液で滑る宏太の指先が、強請った通りの場所に触れて体内に潜り込む。

「はぅぅん!!」

思わず仰け反り歓喜の声をあげてしまった了に、微笑みながら宏太はユックリまだ焦らすように指で体内を擦り始めていく。

「これが、欲しいのか?もっとか?ん?」
「も、っとぉ。あぅう!そ、こ、もっとぉ!」

グチュグチュと音を立てて掻き回され始めるのに、了はどうしようもない程に感じきって歓喜に震えていた。

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