鮮明な月

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間章 アンノウン

間話5.影

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室内にはギシギシと微かに軋む床の音。それに重なる甘く蕩けた吐息に悩ましく喘ぐ声が、何とか押さえ込もうとして口元を塞いでいる両手から溢れ落ちる。純和室の設えの暗いの闇の中で、全裸にさせられ上半身を崩した四つん這いの体に獣のようにのし掛かっているもう一つの影。ジュプ、パチュパチュンッと淫らな濡れる音が、腰に腰を打ち付ける動きと同時に室内の壁に生々しく卑猥に響き渡る。

「ひっんっ!んっ…………ひぅっ!」

駄目と制止しようにも口を開くと全てが喘ぎに変わってしまうから、四つん這いで必死に顔を俯せて口を手で押さえ込むしか晴には出来ない。それを知っていて背後から覆い被さる雄は、意地悪く腰を激しく奥に向かって先端を擦り付けるように揺すりたてていた。グプッグプッと腹が突き破られると思うほど激しく、硬く張り詰めて容積を増した怒張を腸の奥までミッチリと嵌め込むように呑み込ませてくる。

「んっ、ふぅっ!ん、んぅっ!んんっ!」

キチキチと食い絞めるようにきつく入り口で根本を締め付けながら、怒張を容赦なく咥え込ませられた腸の中はうねりトロリと蕩けてネットリと絡み付いて。突きあげるように差し出される腰を掴みズンズンッと怒張を強く打ち込むと、腰を押さえた手の内でビクビクと尻が痙攣するように震えている。

「…………気持ちい?」

そっと顔を近づけ耳元で低く囁く問いかけに、更に全身でのし掛かられ深く楔を捩じ込まれて闇の中でもわかるほど晴の耳朶が真っ赤に染まる。気持ちよくて仕方がないと示しているのは分かっているが、何分この場所が場所だから普段よりも必死に声を堪える姿。それに背筋がゾクゾクするほど可愛くて興奮してしまう自分、わざと大きくクポックポッと淫らな音をたてて出し入れを繰り返す痛いほどに張り詰める赤黒い怒張。

「…………もっと、深く、ズポッ、ズポ、…………する?」
「んんっ!んぅー……っ!!くぅんんっ!」

意地悪に浅く深くユサユサと腰を緩く前後に揺すられると、気持ちよくなる場所が時折擦られるようで怒張を食い絞める力がキュウキュウと強まる。
後で泣きべそかきながらこんなことをしてと怒るかもとは一応は思ってはいるが、明良の姉と母に押しきられて夕飯を相伴することになった晴は結局姉達に酒を勧められ見事に撃沈したわけで。結局明良は泊まる気ではなかったのに、二階の明良の昔から使っている部屋に仲良く並んで寝ることになったのだった。勿論準備された布団は二組だけど、抱き上げられないと歩けないくらいにベロベロに酔っぱらって、二人きりになった途端に今までは我慢してたと言わんばかりにデレデレの甘えたになった晴が悪い。

明良ぁ、俺、明良が大好きぃ

そんなことを言いながらギュウッと明良にしがみついてグリグリと頭を胸に擦り抱きついて来た晴に、完璧に腹を括ってこうして家族にまで紹介した明良が理性の限界を突破したわけで。そんな明良が、その先を大人しく我慢する筈がない。
因みに祖父も帰宅していて、大事な人を連れてきましたと深々と頭を下げて口にした明良に目を丸くはした。けれども祖父・高良は、腹を括っている明良の顔を見てそれ以上何も言わなかったのだ。ついでに言うと目下明良の父親は単身赴任中で、明良の身内は姉達の夫達・父以外は全員晴と顔を会わせたことになる。
最初は結城晴が恋人ですと明良が打ち明けた時、もれなく狭山家全員が呆然としていた。でも明良が晴がいれば他には何も要らない、晴だけが欲しくて何よりも大事で、この気持ちは絶対に折れないと家族に堂々と宣言したわけで。勿論男同士という点では暫し家族を納得させるにも時間がかかったのも事実。だがもし理解してもらえなくても構わないという明良の生まれて初めての本気に、明良の産まれた時からの付き合いの姉達がまずは理解を示してくれたのだった。

晴はとてつもなく可愛くて、全部大好きで、俺の大事な人

そう数ヶ月明良が迷うことなく言い続けた結果が、実は今日の紹介なのだ。本当はもう少し時間をかけるつもりもあったけれど、この間の高橋至の事件で晴の様子を見て明良としてはこれは男としてもハッキリさせるべきだと思ったのだった。明良としても今後ずっと隠したまま暮らし続けるつもりは全くないし、晴が自分の傍にいるのに障害になるものはさっさと取り除いてしまいたかった。それに何よりも明良は晴を手離す気なんて微塵もない。それなのに何時までも晴を気落ちさせたままで、しかも外崎了の腕の中で見す見す泣かせるなんてそんな馬鹿なことを繰り返すつもりは毛頭なかった。だからもう晴と二人でデートや買い物したり外に出ることも厭わないし、なるべくスキンシップも増やして、晴をさっさとグズグズに自分に溺れさせてしまうつもりなのだ。だから、甘えたになっている晴を組み敷いて服を剥ぎ取ったら、その先をするのは当然。

大きな声だしたら駄目だよ?晴

一応はそう告げた明良の言葉に少し我に帰った晴が、ここが明良の実家だと思い出して今更四つん這いになって逃げようともがき出したわけで。明良はそんなの許すわけがないし我慢するつもりもないから、全てを曝した淫らな晴の四つん這いの体勢を逃すわけがない。ここぞとばかりに背後から腰を押さえ込み、弄くり回してあっという間に晴を泣かせ始めたのだった。そして淫らに解されてしまった後は、冒頭に至る。

「んんっ、んっんぅんっ!あ…………きら、や……っ!んんっ!くぅんっ!!」

腰を両手で掴み逃がさないように押さえ込んだままズルンと怒張を無造作に半分以上も抜き出して雁首を入り口に引っ掻けたかと思うと、直後に再び腰を強く掴んで根本まで深々と奥まで一気に音をたてて捩じ込む。チカチカするような凄まじい快感に晴の腰が強張り、ピクピクと痙攣しながら甘い声が溢れ落ちてくる。

「んんんっ、んふぅ!!うんっ!」
「エロ…………晴ってば、声、エロ、すぎる…………。」

背後から腰を突き出すようにして怒張を深々と捩じ込みながら覆い被さり耳元でそう熱っぽく囁かれるだけで、晴の腰が痙攣してまたもビクンッと跳ね、中ではうねるように明良の怒張を締め付けてしまう。そして明良が晴を最も快感に狂わせ、支配するると知っている場所。

「くふっん!!!!」

嵌め込むようにグプンと怒張を押し込まれてしまうと、晴は腰を猫のように高くあげたままで布団の上にヘタンと上半身を崩れ落としてガクガクと震えている。

「気持ち、い?晴。」
「ん、んんんっ…………んぅぅ…………んぅ!」

明良に激しく深く突きあげられる快感に晴は、トロトロと下折たつ肉棒の先端から大量の蜜を滴らせだしている。突き入れられる快感にトロンと瞳を蕩けさせた晴は、それでもまだ必死に声が漏れないようにと口元を手で覆いながら明良にのしかかられていて。そんな仕草に堪らなくなった明良が細くしなやかな晴の片足を掴んで、逸物を捩じ込んだままグルリと体をかえしたのに晴の口から甲高い喘ぎが溢れる。

「あ、きらぁっ!やぁっ!ひんんんっ!」

捻れるように腸の中を強く掻き回されて晴の体の痙攣が強くなるのに、睦み会う声を下に聞かれても別に構うものかと考えている明良は悠然と微笑む。そして正常位の体勢で晴の片足を肩に高く担ぎ上げた明良は、容赦なく更に激しく腰を前後にガツガツと振り立て始めていた。

「んぅ!や、ひゃうっ……くぅんっ!」

あまりにも激しい注挿に必死で口元を押さえていた晴の指が、僅かずつだが緩みだして抑えきれない喘ぎが弾け出す。その薔薇色に頬を染めて必死で声を堪えようとしている顔は、酷く淫らで扇情的に瞳を潤ませていて明良は思わず生唾を飲んでしまう。

こんなにも感じやすくて、淫らで、可愛くて、色っぽい。

それが自分だけに向けられていることを明良はもう知ってしまったから、尚更のこと興奮して激しく腰をふりたてて晴をてっぺんまで昇り詰めるよう追い上げていく。今まで交際してきた女性にこんな風に心底可愛いと感じたこともないし、大体にして自宅の自室でセックスなんて考えたこともなかった。それすら塗り替えて今すぐに抱きたくなるほど、明良にとって晴は可愛くて、あからさまに明良の欲情を煽り立ててしまう。

「晴が、悪い、俺のこと、誘う、から。」
「そ、なぁ……お、れぇ、らん、にもぉ…………。」

既に蕩けきって呂律の回らない晴の、その声も顔も破壊力抜群の淫らな可愛さで。思わず全力で更に快楽に引きずり落として、明良は全身から汗を滲ませながら囁きかける。

「可愛い……晴、愛してる、んっ!」
「やぁ、あ、きらぁんんんっ!いっちゃ、う!んっ、んぅ……。」

堪えきれずに可愛い声で懇願の声をあげる晴の唇を貪るように奪いながら、明良は床の軋みも気にせずに更に激しく腰を突き上げ始める。明良に唇を塞がれて自由になった晴の手が迷うことなく自分の首に縋りつくように回されるのに、明良は満ち足りた気分で晴を抱き寄せて晴の奥に愛を注ぎ込もうとしていた。



※※※



別段代わり映えのない日常的な街中の風景。人混みは途切れることなく大体一定で右往左往と動き続け、周囲の店舗もそれを気にすることもなく通常の営業をこなす。別にそれが当然の空気なのに、その中で何か異質になっているのは自分だけだった。それに気がつくまで、自分でも自分が異質だとは理解できない。それが何故なのかすら理解できていないのだから、異質がなんなのかという本質的な問いすら頭には浮かばないのだ。だけど、歩くうち自分の目的がどこなのかわからないのに、端と気がついてしまった。

ここは…………何処だったっけ…………

街並み。人混み。こうして歩く道にはどこか記憶が揺らされるような、そんなことはないような、そんな不思議な感覚にフワフワとした足取りで辺りを見回しながら歩き続けていた。だけど誰もそんな様子の自分に声はかけはしないし、同時に自分も誰かに声もかけない。やがて何度も同じ場所を歩き回る自分をみて、ヒソヒソと戸惑いに満ちた顔で交わされる噂話が耳に微かに届いてふと首を傾げる。

なんでかな…………何で、ここに来たんだろう…………。

ふとそう考えて指先を何気なく見下ろすが、その手には何も記憶を揺らされるようなことはない。指先を何気なく動かす感覚に一見すると別段普通の人間と大差がないのに、何処かそれはマトモではないように感じ取れる。何が違うのかはハッキリとは言えないし、何処がおかしいのかもハッキリとはわからないのに、何かがマトモなものとことなる存在。自分がそうだと気がついたが、だからといって自分が何が出来るわけでもなくて。そうして、また自分は再び歩き始めていく。



※※※



最近の風間祥太は不運続きだといえた。元々の配属だった二課から一課に移ることになったのは兎も角、昨年から一生分といっても過言ではない事件に巻き込まれ続けてきたのだ。殺人鬼絡みの一大事件は警察署全体だけでなく、社会まで巻きこんだわけで。個人的にも大事な人や相棒だった遠坂が死に、その後も関係者が犯人まで含めて次々と消えていくという奇っ怪な状況。しかも七月頭には関連の街中を飲み込んだ大騒動の中手首の骨を高校の後輩には折られるし、その後も奇妙な事件続きで骨折した手を抱えて仕事をし続ける羽目に。

「それで、俺に連絡とるってどういう繋がりなんですか?」

つい先日傷害事件に絡んで連絡をとったのは事実だが、直にまだ事件も起きてるかどうか分からない状況でこういう電話を相手がかけてくるのは珍しい。それに相手は不機嫌そうに電話口で、気になることがあると言う。

『映像に残らずに…………街中を動き回れる人間。』

そんな言葉を口にするのは外崎宏太で、二人が関係した事件でそういう特殊な活動が得意だった人間は当に他の人間の手で彼岸の岸を渡りきってしまった。ただその技術を教え込まれて身につけた存在がいて、その人間を風間は探してもいる。

「………戻ってきたってことですか?三浦が。」
『分からん。ところで倉橋は見つかったか?』

倉橋と外崎がいうのは、事件の関係者立った女性・倉橋亜希子のことで、行方不明になって約二ヶ月が経とうとしている。倉橋亜希子は近郊で看護師をしていた女性だが、去年の事件に大きく関わりがあったと目されていた。その彼女と風間は接触があったのだが、行方不明になって彼女は生死すら不明なままなのだ。そして、彼女と関わりがある殺人鬼・三浦和希が、街中でも映像に残らずに世の中を活動する方法を身につけた人間なのだった。

「まだ、なにも。」
『そうか、矢根尾は?まともになったか?』

矢根尾というのは倉橋の一人目の夫で、世の中では倉橋亜希子を殺したとされている容疑者だ。ただ矢根尾はその後ショック状態で、マトモに会話すらできないままなのだ。
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