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間章 ちょっと合間の話2
間話33.あの時の事
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貧血を起こした晴を抱き上げてゲストルームまで運んだ宏太に、少しムッとしたのは事実で。だって、そうだろう?自分の男が他の若い男を抱き上げて運ぶの、見ていて何ともないなんて、そりゃ熟年夫婦でもなきゃそんな風に冷静ではいられないだろ。しかも晴は自分と同じバイセクシャルな訳で自分は気がつかなかったのに、狭山明良という彼氏がやりまくってての貧血だなんて宏太に言われたら。
分かってたんなら、教えろって
そう思うし、それなら尚更抱き上げて行くのはどうかと思う。自分で肩を貸して引き摺っていけば良かったと思ってしまうのは、少なからずその行為に嫉妬するからだ。大の成人男性一人を軽々と抱き上げて歩ける、盲目の障害者なんてマトモに考えてもおかしい。しかも男なんだし俵担ぎしてるなら兎も角、貧血とはいえ晴を姫抱きは了が不貞腐れてもしょうがないと思う。咄嗟で無意識にやったんだろうけど、少なくとも宏太は晴の事が気に入ってるのは分かっているから余計に腹立たしい。
その反動で思わず自分からしたいと強請ってしまったら、あっという間にグズグズになるほど愛されてしまっていた。ベットに行こうと懇願しても移動の最中から熱烈な愛撫が始まってしまって、ベットに転がされた時点で濡れてしまった下着を揶揄される有り様。何しろ感じると分かっている場所を弄くられ丹念に舐められ吸われて、駄目と言うことすらできないのに気がつけば全裸に剥かれているし。
「こぉた、あ……あんっああ……。」
「珍しいな?ん?こんな風に…………、誘うのは。」
「う、っさい…………んんっ、あ、そこ…………っぅんっ!!」
どちらかと言えば了が背後から抱き締められて愛撫されるのに弱いのに気がつかれてからというものの、大概背後から覆い被さられたり抱きかかえられたり。スッポリ腕の中に納めら宝物みたいに抱き締められるようにして、じっくりと愛撫されるのには弱い。宏太に耳元で囁かれながら性感帯を弄られる色気に逆らえないし、宏太も見えなくても触りやすいし反応が分かりやすい様子なのが尚更だ。
「ここ、好きか?ん?」
「んんっ、や、んっんんっ、指、擦んなっあっ!」
耳を擽る色っぽい声に負けて思わず唇を指で押さえると、チュクチュクと音をたてて耳朶を噛みながら口から手を離さないと縛るぞと尚更煽るような宏太の声が言う。口を塞いでいるのなんか、お見通しだと言いたげで、しかも声を堪えるのも許してくれない。
「それとも寸止めで焦らしてやろうか?ん?」
「ば、かぁっな、なんで、んんっあっんんっそこっ」
器用な指先に亀頭を意地悪く擦られながら、鈴口を親指でクチクチと円を描くように刺激されるだけで先端が滑り快感が倍に変わる。その癖顎を捉えて離さない反対の手で顔をおさえられ、耳や項に口付けが執拗に降り落ちるのが心地よくて力が入らない。
「ここは?ん?了……言ってみろ、ここはどうだ?」
「んんっ!やっ、あっ!そこ、や、あっ!」
見えないからこうして聞いて確認したいのはもう分かっているけれど、丹念に愛撫されて一つ一つ気持ちいいかと確認されるのは結構恥ずかしい。それでも宏太は執拗に確認するしかないのは宏太自身が不安を感じているからで、了が嫌がるならしたくないと考えているからなのだ。そんな矢先にグイと大きく足を開かされてグニと足の付け根を押されると、目の奥がチカチカするような快感に声が跳ねる。
「そこっ、やっ!やぁっあっああっ!だめ、こぉた、それっ!」
「了は、本当に、ここ弱いな。ん、優しくやってやる。力抜け、ほら。」
「あっ、あっああっ!!ああっ!」
声が止めどなく溢れ出すような快感が腰で弾けて、力の抜けた体は宏太の腕にシッカリ包まれたまま。こんな風に大事にされることの経験がない上に、大事にしている方も大事にするという経験がないから尚更容赦せずに構ってくる。蕩けてメロメロになって喘ぎ続ける自分が信じられないのに、実際に足の付け根を柔らかく揉まれる刺激だけで了の快感に喘ぐ声は止まらないのだ。
「そこ、やら、ぁ、あ、だめ、やらぁ、い、く、いくからぁっ!」
「んん、可愛い声出して、ここそんなに効くか?ん?」
「や、あ、ああ、ん、でる、出ちゃう……や、あああっ!!」
嘘だと思うかもしれないが、そう思うなら自分でも押してみるといい。ここを上手い具合に押していると自分でだって大分気持ちよくなる筈だ。しかもこれをやっているのが宏太なのが余計に感じてしまう理由なのだから、了には抵抗の使用がない。やんわりと性感を煽り立てるように足の付け根がクックッとリズミカルに押し込まれ、その奥で痺れるような快感が腰の奥にビリビリと電気のように響く。喘ぎ続けてビクッと体を強張らせ思わず吹き出してしまった精液が、股間に違いところをさ迷う宏太の手に飛沫になって吹きかかった。それをペロッと淫らに舐めて、耳元で意地悪な声で脳の奥を擽りながら囁く。
「了、なんで急にしたくなった?」
「ふぇ?」
宏太の聞く事が想定外過ぎて変な声が出た。
宏太は気がついてないような顔をして、実は案外色々なことを察していて知らんふりをしているのだと最近になってやっと理解させられている。実は宏太は異様に耳がいいだけじゃなくて、気配とか空気とか目で見る筈の事も実は宏太は広範囲で察しているのだ。恐らくは元々その察知する方が能力が高くて、そこに目が見えなくなって音に集中するようになったから耳も過敏になったんじゃないだろうか。藤咲しのぶに聞いたら、恐らく子供の時から大人の様子を伺って上手く立ち回ることを、宏太は無意識にしてきたのだと言う。親に手間をかけない子供だったと言うが、そういうことばかり上手くなりすぎて必要な愛情が不足してるんだから本末転倒だ。
「あいつがいるのに、したいなんて…………何かあったか?」
「あ、いつ?」
「クソガキがいる時に、…………していいなんて、お前言わないだろ。」
クソガキ=晴の事なのは言うまでもない。うん、そこまでは察したんだ、という辺りは宏太もかなり成長したと了も思う。でも、肝心のとこは気がついてない。そこが大事なとこなのに、そういうとこが鈍感なのが宏太の残念なところ。
「了…………?」
「ばか…………。」
しかも、それを了に言えと。宏太は言わないと理解できないのは分かっているから、言うしかないのも少し腹立たしい。思わず俯いて頬が染まるのが宏太に見えないのは正直なところはありがたいところなのだが、見えないからと不安そうな顔で覗きこまれると余計に恥ずかしくて。思わず覗き込んだ唇に自分の唇を重ねてしまう。
「了……?」
「…………男なんだから…………姫抱きはないだろ……ばぁか。」
暫しの無言。どうやら本気であの時宏太は無意識で晴を抱えていたらしくて、たいして記憶に残っていないのかよく分かる。分かるからこそ、了は思わずまた不貞腐れてしまった。グイと手を伸ばしてもう一度唇を引き寄せて重ねると、今度は舌で柔らかで肉厚な扇情的な唇を舐めて刺激する。自分だってたかがコーヒーカップを先におかないとか、そんなことでも嫉妬した癖に。自分の時は何一つ気がつかないなんて、それは狡い。
「お前……俺の男なんだから…………他の男なんか抱えんなよ…………、次はないからな。」
「…………それは、…………嫉妬した、のか?」
今更理解したらしい宏太の頬が少し赤くなる。やっと理解したらしい宏太がなんでか謝る前にギュウッと強く了の体を抱き締めて、項に頬擦りして口づけてから嬉しそうな声で囁く。
「悪かった、無意識でやってた…………次からは床に転がしておく。」
「そういう意味じゃない……ひねくれもの。」
「ふふ、そうか、嫉妬したか…………、可愛いな、了は。」
二十六歳の男に可愛いはないといっても無駄なので、不貞腐れたまま膝の上にいるとスルリと回された手が顎と唇を捉えて弄くり始める。ひねくれものなのに宏太が幸せそうにそう言いながら笑う顔は何だか可愛くて、了としてはもう少し不貞腐れていたいのに負けてしまう。
「了、次は気を付けるから、な?もう一回……。」
「何?もう一回?何を……?」
何かを強請る宏太の声が、さっきより一段と甘く掠れて耳に直に吹き込まれてくる。甘く柔らかく蕩けていて、しかも酷く熱っぽくて官能的。宏太はまるで考えもせず了にだけ無意識にこの声を出すから、直に吹き込まれる了だって困ってしまう宏太の最強のお強請りの声。
「了……俺のって、もう一度。」
「んん?」
「もう一度、俺の男って。な?」
そんなことを相手の口から繰り返させたくてお強請りにはいる外崎宏太なんて、遠坂や昔の宏太の性格や行動を知っている人間が見たら卒倒しかねない。何しろこんなデレデレのベタ甘の宏太自体が、既に夢のような話なのだ。
「宏太は…………俺の……男……だから。」
「ふふ、もう一度。」
言わすなと言っても気にする筈もない。宏太に熱っぽく再度お強請りを繰り返されて、結局は恥ずかしいのにまた言わされて頬が熱い。何が楽しいんだとキレ気味で噛みついても、喜ぶばかりなので言っても無駄なのはもう言うまでもないのだ。
「なんだよ、もぉ、恥ずかしいっ!」
「可愛い。」
「男に可愛いを連呼すんな、気持ち悪い。」
「俺にゃ可愛い。了は可愛い。ここにほしいか?ん?」
熱っぽくそう囁かれ抱き締められたまま、腰に熱い昂りを押し当てられる。固くて熱くて、欲望が滾っているのを押し当てられ、要らないなんて言える訳がないのを知っていて意地悪な質問をしてくる俺の鬼畜で変態。こういうとこは依然としてサディストなので、言わないとくれないし、駆引きなんてあったもんじゃない。
「は、やく。」
焦れて腰を蠢かす了に興奮した宏太が、覆い被さり怒張を捩じ込まれている。
熱く蕩けた甘い喘ぎが室内に響いて、ギシギシとリズミカルにベットのスプリングが軋む音が響く。容赦なく組み敷かれる腕の力強さに、力強く体内の奥に打ち込まれる杭の熱さ。突き上げられ思わず仰け反りキュウン……ッと淫らに締め付けて、甘えてしまう自分の体は深く貫かれる快楽に完全に溺れてしまっている。
「んっ、くぅ、うんっ、んん、ふっ、あ、んっ!」
「了…………っ。」
「ふぅん、んんっ、あっ、ああっ!」
耳元で囁きかけられる声に余計に感じて了の口から甘ったるい喘ぎが溢れるのに、頭上で宏太が嬉しそうに微笑むのが分かる。
「了…………さと、る……っ。」
「あ、んま、あっ……名前、よぶ、なっあっんんっ……ぅ」
「呼ばれるの……いや、か?ん?」
擽るような耳元で囁く声が甘い。分かってる癖にといいたいけれど、その声自体が媚薬みたいに甘くて蕩けてしまいそうに染み込んでくる。しかも顎を囚われて腰を揺らされながら、背後から覆い被さり囁くのなんて密着した体温が生々しくて腰が砕けそうだ。
「ば、かぁ、いくっからぁ……っこぉたぁ!あぅっ!」
「ん、キチキチ締めて…………、俺もいい、了。」
「はぅっ!んんんっ、あっああっ!こぉたぁ、んんんっ!」
ユサユサと揺さぶられ押し上げられ、酩酊するような快楽。こんな快感に慣らされてしまったら、そんなことを考えるけれど、それより何より心がもう宏太なしではいられないのもよく分かっている。こんな風に誰かを必要としてしまったら、支えてもらわないと抱き締めてもらわないと生きていけない。
「いい、か?」
「き、くなっ、あ、ああっ、あっ、あっ!」
強く押し付けられ、グリンと中を抉られる快感に腰が容易く砕けてしまっている。脱力で崩れ落ちそうになれば抱き寄せられ上に座らされて、尚更深く繋がって終いには絶頂でガクガクと痙攣するほどに愛されていく。そして体内の奥深くで宏太の事を感じながら、了は震えるような喘ぎを上げていた。
※※※
ふっと夢の底で何か嫌なモノを見た気がして、ビクッと了の体が跳ねた。朦朧とする意識でモソモソと体を動かすと、抱き締めている腕が柔らかく了の事を引き寄せて頬を撫でる。どうやら激しすぎるエッチの後で失神して、そのまま眠り込んでしまっていたらしい。何時ものように抱き枕とまでいかないが、優しく抱き締められた腕に思わず頬を寄せる。
「…………どうした?」
夢現で何か見た気がするが、強い疲労感に呑まれて形が砕けていく。思い出せなくなっているのには気がついているが何か嫌な夢を見た気がすると呟くと、宏太の手が撫でながら大丈夫だと優しい声で囁いて甘ったるい口づけを落とすのに了は微笑む。
分かってたんなら、教えろって
そう思うし、それなら尚更抱き上げて行くのはどうかと思う。自分で肩を貸して引き摺っていけば良かったと思ってしまうのは、少なからずその行為に嫉妬するからだ。大の成人男性一人を軽々と抱き上げて歩ける、盲目の障害者なんてマトモに考えてもおかしい。しかも男なんだし俵担ぎしてるなら兎も角、貧血とはいえ晴を姫抱きは了が不貞腐れてもしょうがないと思う。咄嗟で無意識にやったんだろうけど、少なくとも宏太は晴の事が気に入ってるのは分かっているから余計に腹立たしい。
その反動で思わず自分からしたいと強請ってしまったら、あっという間にグズグズになるほど愛されてしまっていた。ベットに行こうと懇願しても移動の最中から熱烈な愛撫が始まってしまって、ベットに転がされた時点で濡れてしまった下着を揶揄される有り様。何しろ感じると分かっている場所を弄くられ丹念に舐められ吸われて、駄目と言うことすらできないのに気がつけば全裸に剥かれているし。
「こぉた、あ……あんっああ……。」
「珍しいな?ん?こんな風に…………、誘うのは。」
「う、っさい…………んんっ、あ、そこ…………っぅんっ!!」
どちらかと言えば了が背後から抱き締められて愛撫されるのに弱いのに気がつかれてからというものの、大概背後から覆い被さられたり抱きかかえられたり。スッポリ腕の中に納めら宝物みたいに抱き締められるようにして、じっくりと愛撫されるのには弱い。宏太に耳元で囁かれながら性感帯を弄られる色気に逆らえないし、宏太も見えなくても触りやすいし反応が分かりやすい様子なのが尚更だ。
「ここ、好きか?ん?」
「んんっ、や、んっんんっ、指、擦んなっあっ!」
耳を擽る色っぽい声に負けて思わず唇を指で押さえると、チュクチュクと音をたてて耳朶を噛みながら口から手を離さないと縛るぞと尚更煽るような宏太の声が言う。口を塞いでいるのなんか、お見通しだと言いたげで、しかも声を堪えるのも許してくれない。
「それとも寸止めで焦らしてやろうか?ん?」
「ば、かぁっな、なんで、んんっあっんんっそこっ」
器用な指先に亀頭を意地悪く擦られながら、鈴口を親指でクチクチと円を描くように刺激されるだけで先端が滑り快感が倍に変わる。その癖顎を捉えて離さない反対の手で顔をおさえられ、耳や項に口付けが執拗に降り落ちるのが心地よくて力が入らない。
「ここは?ん?了……言ってみろ、ここはどうだ?」
「んんっ!やっ、あっ!そこ、や、あっ!」
見えないからこうして聞いて確認したいのはもう分かっているけれど、丹念に愛撫されて一つ一つ気持ちいいかと確認されるのは結構恥ずかしい。それでも宏太は執拗に確認するしかないのは宏太自身が不安を感じているからで、了が嫌がるならしたくないと考えているからなのだ。そんな矢先にグイと大きく足を開かされてグニと足の付け根を押されると、目の奥がチカチカするような快感に声が跳ねる。
「そこっ、やっ!やぁっあっああっ!だめ、こぉた、それっ!」
「了は、本当に、ここ弱いな。ん、優しくやってやる。力抜け、ほら。」
「あっ、あっああっ!!ああっ!」
声が止めどなく溢れ出すような快感が腰で弾けて、力の抜けた体は宏太の腕にシッカリ包まれたまま。こんな風に大事にされることの経験がない上に、大事にしている方も大事にするという経験がないから尚更容赦せずに構ってくる。蕩けてメロメロになって喘ぎ続ける自分が信じられないのに、実際に足の付け根を柔らかく揉まれる刺激だけで了の快感に喘ぐ声は止まらないのだ。
「そこ、やら、ぁ、あ、だめ、やらぁ、い、く、いくからぁっ!」
「んん、可愛い声出して、ここそんなに効くか?ん?」
「や、あ、ああ、ん、でる、出ちゃう……や、あああっ!!」
嘘だと思うかもしれないが、そう思うなら自分でも押してみるといい。ここを上手い具合に押していると自分でだって大分気持ちよくなる筈だ。しかもこれをやっているのが宏太なのが余計に感じてしまう理由なのだから、了には抵抗の使用がない。やんわりと性感を煽り立てるように足の付け根がクックッとリズミカルに押し込まれ、その奥で痺れるような快感が腰の奥にビリビリと電気のように響く。喘ぎ続けてビクッと体を強張らせ思わず吹き出してしまった精液が、股間に違いところをさ迷う宏太の手に飛沫になって吹きかかった。それをペロッと淫らに舐めて、耳元で意地悪な声で脳の奥を擽りながら囁く。
「了、なんで急にしたくなった?」
「ふぇ?」
宏太の聞く事が想定外過ぎて変な声が出た。
宏太は気がついてないような顔をして、実は案外色々なことを察していて知らんふりをしているのだと最近になってやっと理解させられている。実は宏太は異様に耳がいいだけじゃなくて、気配とか空気とか目で見る筈の事も実は宏太は広範囲で察しているのだ。恐らくは元々その察知する方が能力が高くて、そこに目が見えなくなって音に集中するようになったから耳も過敏になったんじゃないだろうか。藤咲しのぶに聞いたら、恐らく子供の時から大人の様子を伺って上手く立ち回ることを、宏太は無意識にしてきたのだと言う。親に手間をかけない子供だったと言うが、そういうことばかり上手くなりすぎて必要な愛情が不足してるんだから本末転倒だ。
「あいつがいるのに、したいなんて…………何かあったか?」
「あ、いつ?」
「クソガキがいる時に、…………していいなんて、お前言わないだろ。」
クソガキ=晴の事なのは言うまでもない。うん、そこまでは察したんだ、という辺りは宏太もかなり成長したと了も思う。でも、肝心のとこは気がついてない。そこが大事なとこなのに、そういうとこが鈍感なのが宏太の残念なところ。
「了…………?」
「ばか…………。」
しかも、それを了に言えと。宏太は言わないと理解できないのは分かっているから、言うしかないのも少し腹立たしい。思わず俯いて頬が染まるのが宏太に見えないのは正直なところはありがたいところなのだが、見えないからと不安そうな顔で覗きこまれると余計に恥ずかしくて。思わず覗き込んだ唇に自分の唇を重ねてしまう。
「了……?」
「…………男なんだから…………姫抱きはないだろ……ばぁか。」
暫しの無言。どうやら本気であの時宏太は無意識で晴を抱えていたらしくて、たいして記憶に残っていないのかよく分かる。分かるからこそ、了は思わずまた不貞腐れてしまった。グイと手を伸ばしてもう一度唇を引き寄せて重ねると、今度は舌で柔らかで肉厚な扇情的な唇を舐めて刺激する。自分だってたかがコーヒーカップを先におかないとか、そんなことでも嫉妬した癖に。自分の時は何一つ気がつかないなんて、それは狡い。
「お前……俺の男なんだから…………他の男なんか抱えんなよ…………、次はないからな。」
「…………それは、…………嫉妬した、のか?」
今更理解したらしい宏太の頬が少し赤くなる。やっと理解したらしい宏太がなんでか謝る前にギュウッと強く了の体を抱き締めて、項に頬擦りして口づけてから嬉しそうな声で囁く。
「悪かった、無意識でやってた…………次からは床に転がしておく。」
「そういう意味じゃない……ひねくれもの。」
「ふふ、そうか、嫉妬したか…………、可愛いな、了は。」
二十六歳の男に可愛いはないといっても無駄なので、不貞腐れたまま膝の上にいるとスルリと回された手が顎と唇を捉えて弄くり始める。ひねくれものなのに宏太が幸せそうにそう言いながら笑う顔は何だか可愛くて、了としてはもう少し不貞腐れていたいのに負けてしまう。
「了、次は気を付けるから、な?もう一回……。」
「何?もう一回?何を……?」
何かを強請る宏太の声が、さっきより一段と甘く掠れて耳に直に吹き込まれてくる。甘く柔らかく蕩けていて、しかも酷く熱っぽくて官能的。宏太はまるで考えもせず了にだけ無意識にこの声を出すから、直に吹き込まれる了だって困ってしまう宏太の最強のお強請りの声。
「了……俺のって、もう一度。」
「んん?」
「もう一度、俺の男って。な?」
そんなことを相手の口から繰り返させたくてお強請りにはいる外崎宏太なんて、遠坂や昔の宏太の性格や行動を知っている人間が見たら卒倒しかねない。何しろこんなデレデレのベタ甘の宏太自体が、既に夢のような話なのだ。
「宏太は…………俺の……男……だから。」
「ふふ、もう一度。」
言わすなと言っても気にする筈もない。宏太に熱っぽく再度お強請りを繰り返されて、結局は恥ずかしいのにまた言わされて頬が熱い。何が楽しいんだとキレ気味で噛みついても、喜ぶばかりなので言っても無駄なのはもう言うまでもないのだ。
「なんだよ、もぉ、恥ずかしいっ!」
「可愛い。」
「男に可愛いを連呼すんな、気持ち悪い。」
「俺にゃ可愛い。了は可愛い。ここにほしいか?ん?」
熱っぽくそう囁かれ抱き締められたまま、腰に熱い昂りを押し当てられる。固くて熱くて、欲望が滾っているのを押し当てられ、要らないなんて言える訳がないのを知っていて意地悪な質問をしてくる俺の鬼畜で変態。こういうとこは依然としてサディストなので、言わないとくれないし、駆引きなんてあったもんじゃない。
「は、やく。」
焦れて腰を蠢かす了に興奮した宏太が、覆い被さり怒張を捩じ込まれている。
熱く蕩けた甘い喘ぎが室内に響いて、ギシギシとリズミカルにベットのスプリングが軋む音が響く。容赦なく組み敷かれる腕の力強さに、力強く体内の奥に打ち込まれる杭の熱さ。突き上げられ思わず仰け反りキュウン……ッと淫らに締め付けて、甘えてしまう自分の体は深く貫かれる快楽に完全に溺れてしまっている。
「んっ、くぅ、うんっ、んん、ふっ、あ、んっ!」
「了…………っ。」
「ふぅん、んんっ、あっ、ああっ!」
耳元で囁きかけられる声に余計に感じて了の口から甘ったるい喘ぎが溢れるのに、頭上で宏太が嬉しそうに微笑むのが分かる。
「了…………さと、る……っ。」
「あ、んま、あっ……名前、よぶ、なっあっんんっ……ぅ」
「呼ばれるの……いや、か?ん?」
擽るような耳元で囁く声が甘い。分かってる癖にといいたいけれど、その声自体が媚薬みたいに甘くて蕩けてしまいそうに染み込んでくる。しかも顎を囚われて腰を揺らされながら、背後から覆い被さり囁くのなんて密着した体温が生々しくて腰が砕けそうだ。
「ば、かぁ、いくっからぁ……っこぉたぁ!あぅっ!」
「ん、キチキチ締めて…………、俺もいい、了。」
「はぅっ!んんんっ、あっああっ!こぉたぁ、んんんっ!」
ユサユサと揺さぶられ押し上げられ、酩酊するような快楽。こんな快感に慣らされてしまったら、そんなことを考えるけれど、それより何より心がもう宏太なしではいられないのもよく分かっている。こんな風に誰かを必要としてしまったら、支えてもらわないと抱き締めてもらわないと生きていけない。
「いい、か?」
「き、くなっ、あ、ああっ、あっ、あっ!」
強く押し付けられ、グリンと中を抉られる快感に腰が容易く砕けてしまっている。脱力で崩れ落ちそうになれば抱き寄せられ上に座らされて、尚更深く繋がって終いには絶頂でガクガクと痙攣するほどに愛されていく。そして体内の奥深くで宏太の事を感じながら、了は震えるような喘ぎを上げていた。
※※※
ふっと夢の底で何か嫌なモノを見た気がして、ビクッと了の体が跳ねた。朦朧とする意識でモソモソと体を動かすと、抱き締めている腕が柔らかく了の事を引き寄せて頬を撫でる。どうやら激しすぎるエッチの後で失神して、そのまま眠り込んでしまっていたらしい。何時ものように抱き枕とまでいかないが、優しく抱き締められた腕に思わず頬を寄せる。
「…………どうした?」
夢現で何か見た気がするが、強い疲労感に呑まれて形が砕けていく。思い出せなくなっているのには気がついているが何か嫌な夢を見た気がすると呟くと、宏太の手が撫でながら大丈夫だと優しい声で囁いて甘ったるい口づけを落とすのに了は微笑む。
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