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間章 ちょっと合間の話2
間話13.勘違いでお願いします!!
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「ええぇぇ?!」
夕暮れ過ぎの街中でバッタリ偶然に(?)出くわした顔に結城晴は今自分がどんな格好をしているかも忘れて、思わず叫んでしまったのは正直仕方がないことだった。周囲には夜の街に出歩く人波か溢れ、晴の声に振り返りはするものの気にしている気配もない。とは言え目の前の相手に晴は呆然としたままだ。
「………………晴?」
ハッと我に返った。そうだった、藤咲の仕事依頼の関係とやらで誰かに書類を手渡すために、晴は再び女装して出動していて『五十嵐ハル』をやっていて。黒髪の艶やかなウィッグを結い上げ、清楚な大人しめのブラウスに長めのスカート姿、一見すれば大人しい感じの可愛い女の子なのだ。
何で女装かといわれると身元がバレるのが困るのと相手の希望だと宏太がいうから、晴も素直にそうなんだと納得した辺り。しかもここで待ち合わせて待っている間に既に二~三人からナンパされ、晴自身実は内心自分でも女装が上手くなってきてる気がしないでもない。何しろナンパ男達は話している間晴が男だとは気がついてない風で、待ち合わせなんですぅと微笑むと連絡先を聞きたがった男までいた。それにしても仕事とはいえこんな姿を明良にみられたらお仕置きされそうなんて一瞬考えた瞬間、振り返ったら晴の目の前に明良が何時ものスーツではなく私服で立っていたのだ。
…………何でだ、凄く宏太に嵌められた気がする。
誰かは会えばすぐ分かるけど、気を付けとけよ?そう宏太から意味深に言われていた上に女装ときたから、高橋至とか晴の顔を知ってるやつかなぁと呑気に考えつつも気合いをいれて化けてきたのだ。流石にあの色キチがいのドブ臭い親父は病院送りになったとは宏太から聞いたけど退院する可能性もなくはないし、そいつの場合尚更茶髪ウィッグのフェミニンな五十嵐ハルは少し危険だ。というわけで今回は少しタイプの違う感じで化けたが、藤咲には上手だわと褒められ了には以前と同じく写真撮影されている。
探偵っぽいよな?変装出来るのって。
なんて了の言葉に乗せられている場合じゃなかった。勿論こんなの了に宏太がさせる訳がないのは理解しているし、最初の女装だって自分も探偵っぽいなんてノリノリでやったのは事実だし、この間は一応はストーカー予防だったけど。そう必死に言い訳してみるが、それにしても目の前の明良の表情が満面に微笑んでいる筈なのに、まるで笑顔に見えないのはなんでだろうか。
ひ、人違いですぅ!勘違いですぅ!と咄嗟に晴は脱兎のごとく逃げようとしたが、既に時遅しで明良にガッチリ腕をとられてしまって逃げようにも逃げられない。挙げ句の果てに手の中の書類を、簡単に明良に抜き取られてしまう。
「あ、それっ。」
「外崎さんからの書類でしょ?藤咲さん関係の。」
そう言われて、あーっ!絶対これは嵌められたっ!明良が相手なら別に女装の必要ないし!!っていうか明良なら明良だって言えばいいし!間男完全撲滅目的でやりやがったなと晴は心の中で叫ぶ。勿論もう晴には明良がいるから了に間男する気は微塵もないけど、この間の間男の件宏太は恐らく減給程度ではスッキリしてないに違いない。っていうか、その話明良にしてないだろうなと心配になってしまうのは、自分が云々より明良に嫌われるのが心配な訳で。
に、逃げたいぃ!
そう心の中で思っても完全に腕を捕まれて逃げようがない晴は、ニッコリと微笑みかけてくる明良に手を引かれて大人しく従うしかなくなってしまった。しかも明良ときたらこんな格好してたのに対する意地悪なのか、普通に女の子をエスコートするみたいに晴を食事に連れていく。お陰で晴は俯いて恥ずかしいやら明良の視線が気になるやらで、まるで食事の味なんか分からない有り様だった。
「あ、きらぁ…………。」
もう許してという視線で覗き込みながら名前を呼んでも、手を繋いだままの明良はまるで離してくれる気もない。女装の腕前がいいのと夜のネオンのお陰で実は男とは中々バレなくて済んでいるが、それでもこれでは仕事でもなくて完全にデートみたいで正直恥ずかしくて顔があげられないのだ。本当に女の子だったら幸せだろうけど、何しろ女装は女装だし、明良は恋人だけどこの格好をどう思っているか分かんないし、正直今すぐ泣きたい、着替えたい。
覚えてろ、外崎宏太!後でストーカーしてるの了にバラしてやる!
そう誓いながら明良に連れられて歩いている晴の手を、明良がグイと強く引く。あれ?と思った時には引き寄せられて、腰に手を回されて覗き込んだ明良に物陰に引き込まれてキスされていた。唐突な行動に真っ赤になってしまう晴に、明良が瞳の奥を覗き込むようにして囁く。
「晴、こういう格好が好きなの?」
「ち、違う!仕事でっ!」
ストーカーの件以外は一応は女装は仕事の一貫としてやってるから!趣味じゃないし、外崎の手伝いでやってるだけで、日常的にしてる訳じゃない!そう断言しておくけど、明良はニッコリと笑ってそうなの?と耳元に低く囁く。
「ひゃっ……耳っやっ!」
噛んだり舐めたりされると甘ったるい声が落ちてしまって抵抗もできない晴に、明良は手を繋いだまま晴のことを引き寄せて更に耳朶を責めてくる。ダメ、こんなとこで、恥ずかしいと懇願しても、明良がほんのちょっと悪戯するだけで、晴は完全に女の子みたいにプルプルと物陰で身を縮こまらせて震えてしまう。何時もの優しくて満面の笑顔だけど笑ってないと晴が感じたのはどうやら当たりで、どう考えてもこの行動は意地悪な明良になっている気がする。それでも物陰の壁に押し付けられるようにして耳朶をチュチュと虐められると、あっという間に腰が気持ち良く痺れ始めていく。ヤバい、気持ち良くなると慌てて晴がもがき出す。
「あ、きら。や、やだ。お願い……っ。」
「何を?」
「こんなとこで……やだっ。」
震えながらそう懇願する晴に、明良はフゥと一つ溜め息をついた。
「……あき、ら?」
「晴が悪いんだよ?こんな可愛いく、俺を誘うから。」
「ひゃうっ!」
スルンとスカートの下に潜り込み腰を撫でられる熱い指に、晴が小動物のように跳ねて声を挙げる。誘ってないと頭を必死に振っても明良は微笑んだまま、何でか晴の下着を簡単にズリ下ろしてしまった。流石に長いスカートの下のことだから表には見えはしないが、夜風がスゥスゥと足を撫でるのに晴は思わず震え上がってしまう。しかも明良ときたらあっという間にその下着を晴の足首から抜き取って、晴から奪い去ってしまったのだ。
「あ、あきらっ、やだっ返してっ!」
「スカートだから見えないし、晴が濡らさなきゃ平気でしょ?」
えええ?!そんなもの?!そんなのありなの?!いやないでしょ!と思うけれど、明良はにこやかに晴の下着をポケットに隠してしまうし、軽い夏物の布地は歩くだけで翻って足元から夜風が肌を撫でてるし。下着一枚ないだけでこんなに差があるなんてと、女性ってこんなの日常的にどうしてるんだ、いや女性だって下着なしでは履かないだろうが。晴は真っ赤になって俯き、翻りそうなスカートを抑え込む。
「晴?今日は俺の家でいい?」
「えっあ、あの、俺。」
「一緒に帰ろ?はい、手。」
このまま帰る気でいる?と晴の目が潤みながら明良を見上げるが、下着は返して貰えそうにないし手で押さえていても夜風にスカートの中の肌が撫でられてしまう。それに晴の腰には明良の手が回されていて、引き寄せられるとどうしようもない。薄い布地越しでも分かる熱い明良の指の感触が、時折腰を撫でたりするだけで温度に全身が気持ち良くて震える。しかも意地悪な明良は時々耳元で囁いたり耳朶にキスしたりして晴のことを煽るし、晴の体の方は明良の熱い体温に既に酔い始めてしまっていた。
「はーる?……今はオンナノコでしょ?」
「ふぇ……?」
「硬くしちゃ、ダメ。エッチなの見えてるよ?」
そう言われて何のことか気がついた晴が、カァッと一際真っ赤になって俯き咄嗟に前をショルダーバッグで抑え込む。下着で押さえられてない晴の自由になった陰茎が薄いスカートの布地越しに立ち上がり形を現し始めてしまったのを、抱き寄せながら歩く目敏い明良にみられてしまったのだ。クスクス笑いながらそれでも耳元を責める明良に俯いて前にバックを抱えた晴は完全に乙女で、傍目にもただ単にイチャつくバカップルにしか見えない。
「ずーいぶん仲良さそうだねぇ?!」
「ひゃっ!」
突然見ず知らずの酔いの回った男に背後から肩に手を回された晴が悲鳴を挙げたのに、酔った男は可愛いと下卑た笑いをあげる。今はタイミング悪いっ!と心の中で叫ぶが、既に目の前の明良の微笑みが真っ黒に塗り変わっていくのが、晴には見ているだけで分かった。
「駄目だって~、茂木ーっ、若い子に手出したらさぁ?」
「えー?貞友だって可愛いっていってたじゃーん?ねぇ?おにぃさん、彼女可愛いねー。」
「……可愛いですよ?晴は。」
冷静に微笑みながら返してるけど明良の顔が笑ってるようで、全然笑ってない。しかも、既に彼女ってそれ違うしと晴だっていいたいのに、酔っている男性は気がつかず晴の肩に手を乗せたまま飲みに行こうとごね出している。見る間に目の前の明良の顔が氷の微笑みに変わりつつある気がして、勘違いだよね?勘違いだっていってと心の中で叫ぶ。真っ黒な上に氷の微笑みって、綺麗な顔して怖いよ、明良ってば。それでも茂木と貞友というらしい二人は、気がつかないらしくて面倒臭い絡み方を続けている。
「ハルちゃんって言うんだ~?可愛いねぇ?幾つぅ?」
「…………離してもらえませんか?晴のこと。」
「いいじゃん、俺と楽しい時間過ごそうよ~、ねぇ?ハルちゃん。」
いやあんたに名前で呼ばれたくないし。というかこんな会話しても晴は男、幾らバイセクシャルとは言えもう他人としたくもなければ、今は恋人の明良の視線の方が気になる。それを気にもかけてない茂木という男が肩を尚更引き寄せて、酒臭い息を吹き掛けて耳元に話しかけ続けていく。今更気がついたけど、他人だと明良と違って何とも感じないのには驚きだ。
「ハルちゃんって、清楚っぽくていいなぁ、処女?」
「やめてもらえませんか?……いい加減。」
「いいじゃん、彼氏ーっ、もうやった?ハルちゃん、処女だった?ちーでた?」
最悪な酔っ払いの下卑た絡みに周囲も遠目に眉を潜めていて、晴はいい加減男だとバラそうかなと思い始める。そうでもしないとこの話が収まりそうがないのだ。明良にまで絡み始めているから、ここで晴が男とわかれば一気に萎えるはず。
「ハールちゃん、今からお兄さんとエッチしなーい?気持ちいいよー?天国見せちゃうよ?俺。」
「ぎゃはは、なに彼氏の前で?あ、彼氏いたら3Pかぁ!」
「3Pかぁ、おしりの処女貰えちゃうかなぁ?俺。」
あ、バカ!と思ったけど茂木が既に口に出してしまった言葉は、明良の堪忍袋の緒を一瞬で一刀両断していた。肩にのせられていた手が一瞬で払われたと思った時には晴はグイと手前に体を引かれて抱き寄せられ、背後の茂木の顎がバクンと妙な音をたてて左右に揺れてもんどりうって大の字に道に倒れ込む。どうみても晴の肩越しには明良の長い足が見えているし、今の音って顎に当たってるよね?!その足?!
「いつまでも…………俺の晴にきたねぇ手で触ってんじゃねぇ!糞が!」
う、うわぁっ!明良さん?!素ですか?それ。今の空手的な蹴りですか?しかも一撃必殺で顎って、その人ちゃんと生きてる?!あ、良かった、生きてるし意識あるみたい。一応明良も手加減はしていたようでポカーンっていう唖然とした顔で上半身を起こした茂木という男に、貞友という男が慌てて駆け寄っていく。その隙に行くよと手をとられて駆け出した晴は、スカートの裾を押さえながら明良の背中を見つめて追いかけだしている。いや、明良って本気で空手してたんだと驚くけど、あれって大丈夫?と問いかけると明良は苦笑いで答えた。
「ちょっと、イラッときた。」
「ちょっとって。」
「だって、晴にベタベタ触るし、下卑たこと言うし。」
いや、あれかなり酔ってたし女だと思ってたけどねと晴の方も苦笑いしてしまうけど、ほんの軽く当てただけだから折れてはいないだろうしと明良はいう。ほんの軽くであの音?!ヤッパリ本気出したら相手が死ぬかもって本当なんだ?!それでも確りと恋人繋ぎで握られた手に思わず晴は、明良のことを見つめて辺りを見渡すとチュッと軽くキスをする。
「晴。」
「えっと……その、驚いたけど、カッコよかった……し。」
そうモニョモニョと俯きながら呟く晴に明良は目を瞬かせて、グイと手を引き寄せてくる。今のところ辺りに人気はないし明良に引き寄せられ素直に従う晴を、住宅地の中とは言え明良が抱き締めてくるのに晴はまるで乙女のように再び頬を染めてしまっていた。
夕暮れ過ぎの街中でバッタリ偶然に(?)出くわした顔に結城晴は今自分がどんな格好をしているかも忘れて、思わず叫んでしまったのは正直仕方がないことだった。周囲には夜の街に出歩く人波か溢れ、晴の声に振り返りはするものの気にしている気配もない。とは言え目の前の相手に晴は呆然としたままだ。
「………………晴?」
ハッと我に返った。そうだった、藤咲の仕事依頼の関係とやらで誰かに書類を手渡すために、晴は再び女装して出動していて『五十嵐ハル』をやっていて。黒髪の艶やかなウィッグを結い上げ、清楚な大人しめのブラウスに長めのスカート姿、一見すれば大人しい感じの可愛い女の子なのだ。
何で女装かといわれると身元がバレるのが困るのと相手の希望だと宏太がいうから、晴も素直にそうなんだと納得した辺り。しかもここで待ち合わせて待っている間に既に二~三人からナンパされ、晴自身実は内心自分でも女装が上手くなってきてる気がしないでもない。何しろナンパ男達は話している間晴が男だとは気がついてない風で、待ち合わせなんですぅと微笑むと連絡先を聞きたがった男までいた。それにしても仕事とはいえこんな姿を明良にみられたらお仕置きされそうなんて一瞬考えた瞬間、振り返ったら晴の目の前に明良が何時ものスーツではなく私服で立っていたのだ。
…………何でだ、凄く宏太に嵌められた気がする。
誰かは会えばすぐ分かるけど、気を付けとけよ?そう宏太から意味深に言われていた上に女装ときたから、高橋至とか晴の顔を知ってるやつかなぁと呑気に考えつつも気合いをいれて化けてきたのだ。流石にあの色キチがいのドブ臭い親父は病院送りになったとは宏太から聞いたけど退院する可能性もなくはないし、そいつの場合尚更茶髪ウィッグのフェミニンな五十嵐ハルは少し危険だ。というわけで今回は少しタイプの違う感じで化けたが、藤咲には上手だわと褒められ了には以前と同じく写真撮影されている。
探偵っぽいよな?変装出来るのって。
なんて了の言葉に乗せられている場合じゃなかった。勿論こんなの了に宏太がさせる訳がないのは理解しているし、最初の女装だって自分も探偵っぽいなんてノリノリでやったのは事実だし、この間は一応はストーカー予防だったけど。そう必死に言い訳してみるが、それにしても目の前の明良の表情が満面に微笑んでいる筈なのに、まるで笑顔に見えないのはなんでだろうか。
ひ、人違いですぅ!勘違いですぅ!と咄嗟に晴は脱兎のごとく逃げようとしたが、既に時遅しで明良にガッチリ腕をとられてしまって逃げようにも逃げられない。挙げ句の果てに手の中の書類を、簡単に明良に抜き取られてしまう。
「あ、それっ。」
「外崎さんからの書類でしょ?藤咲さん関係の。」
そう言われて、あーっ!絶対これは嵌められたっ!明良が相手なら別に女装の必要ないし!!っていうか明良なら明良だって言えばいいし!間男完全撲滅目的でやりやがったなと晴は心の中で叫ぶ。勿論もう晴には明良がいるから了に間男する気は微塵もないけど、この間の間男の件宏太は恐らく減給程度ではスッキリしてないに違いない。っていうか、その話明良にしてないだろうなと心配になってしまうのは、自分が云々より明良に嫌われるのが心配な訳で。
に、逃げたいぃ!
そう心の中で思っても完全に腕を捕まれて逃げようがない晴は、ニッコリと微笑みかけてくる明良に手を引かれて大人しく従うしかなくなってしまった。しかも明良ときたらこんな格好してたのに対する意地悪なのか、普通に女の子をエスコートするみたいに晴を食事に連れていく。お陰で晴は俯いて恥ずかしいやら明良の視線が気になるやらで、まるで食事の味なんか分からない有り様だった。
「あ、きらぁ…………。」
もう許してという視線で覗き込みながら名前を呼んでも、手を繋いだままの明良はまるで離してくれる気もない。女装の腕前がいいのと夜のネオンのお陰で実は男とは中々バレなくて済んでいるが、それでもこれでは仕事でもなくて完全にデートみたいで正直恥ずかしくて顔があげられないのだ。本当に女の子だったら幸せだろうけど、何しろ女装は女装だし、明良は恋人だけどこの格好をどう思っているか分かんないし、正直今すぐ泣きたい、着替えたい。
覚えてろ、外崎宏太!後でストーカーしてるの了にバラしてやる!
そう誓いながら明良に連れられて歩いている晴の手を、明良がグイと強く引く。あれ?と思った時には引き寄せられて、腰に手を回されて覗き込んだ明良に物陰に引き込まれてキスされていた。唐突な行動に真っ赤になってしまう晴に、明良が瞳の奥を覗き込むようにして囁く。
「晴、こういう格好が好きなの?」
「ち、違う!仕事でっ!」
ストーカーの件以外は一応は女装は仕事の一貫としてやってるから!趣味じゃないし、外崎の手伝いでやってるだけで、日常的にしてる訳じゃない!そう断言しておくけど、明良はニッコリと笑ってそうなの?と耳元に低く囁く。
「ひゃっ……耳っやっ!」
噛んだり舐めたりされると甘ったるい声が落ちてしまって抵抗もできない晴に、明良は手を繋いだまま晴のことを引き寄せて更に耳朶を責めてくる。ダメ、こんなとこで、恥ずかしいと懇願しても、明良がほんのちょっと悪戯するだけで、晴は完全に女の子みたいにプルプルと物陰で身を縮こまらせて震えてしまう。何時もの優しくて満面の笑顔だけど笑ってないと晴が感じたのはどうやら当たりで、どう考えてもこの行動は意地悪な明良になっている気がする。それでも物陰の壁に押し付けられるようにして耳朶をチュチュと虐められると、あっという間に腰が気持ち良く痺れ始めていく。ヤバい、気持ち良くなると慌てて晴がもがき出す。
「あ、きら。や、やだ。お願い……っ。」
「何を?」
「こんなとこで……やだっ。」
震えながらそう懇願する晴に、明良はフゥと一つ溜め息をついた。
「……あき、ら?」
「晴が悪いんだよ?こんな可愛いく、俺を誘うから。」
「ひゃうっ!」
スルンとスカートの下に潜り込み腰を撫でられる熱い指に、晴が小動物のように跳ねて声を挙げる。誘ってないと頭を必死に振っても明良は微笑んだまま、何でか晴の下着を簡単にズリ下ろしてしまった。流石に長いスカートの下のことだから表には見えはしないが、夜風がスゥスゥと足を撫でるのに晴は思わず震え上がってしまう。しかも明良ときたらあっという間にその下着を晴の足首から抜き取って、晴から奪い去ってしまったのだ。
「あ、あきらっ、やだっ返してっ!」
「スカートだから見えないし、晴が濡らさなきゃ平気でしょ?」
えええ?!そんなもの?!そんなのありなの?!いやないでしょ!と思うけれど、明良はにこやかに晴の下着をポケットに隠してしまうし、軽い夏物の布地は歩くだけで翻って足元から夜風が肌を撫でてるし。下着一枚ないだけでこんなに差があるなんてと、女性ってこんなの日常的にどうしてるんだ、いや女性だって下着なしでは履かないだろうが。晴は真っ赤になって俯き、翻りそうなスカートを抑え込む。
「晴?今日は俺の家でいい?」
「えっあ、あの、俺。」
「一緒に帰ろ?はい、手。」
このまま帰る気でいる?と晴の目が潤みながら明良を見上げるが、下着は返して貰えそうにないし手で押さえていても夜風にスカートの中の肌が撫でられてしまう。それに晴の腰には明良の手が回されていて、引き寄せられるとどうしようもない。薄い布地越しでも分かる熱い明良の指の感触が、時折腰を撫でたりするだけで温度に全身が気持ち良くて震える。しかも意地悪な明良は時々耳元で囁いたり耳朶にキスしたりして晴のことを煽るし、晴の体の方は明良の熱い体温に既に酔い始めてしまっていた。
「はーる?……今はオンナノコでしょ?」
「ふぇ……?」
「硬くしちゃ、ダメ。エッチなの見えてるよ?」
そう言われて何のことか気がついた晴が、カァッと一際真っ赤になって俯き咄嗟に前をショルダーバッグで抑え込む。下着で押さえられてない晴の自由になった陰茎が薄いスカートの布地越しに立ち上がり形を現し始めてしまったのを、抱き寄せながら歩く目敏い明良にみられてしまったのだ。クスクス笑いながらそれでも耳元を責める明良に俯いて前にバックを抱えた晴は完全に乙女で、傍目にもただ単にイチャつくバカップルにしか見えない。
「ずーいぶん仲良さそうだねぇ?!」
「ひゃっ!」
突然見ず知らずの酔いの回った男に背後から肩に手を回された晴が悲鳴を挙げたのに、酔った男は可愛いと下卑た笑いをあげる。今はタイミング悪いっ!と心の中で叫ぶが、既に目の前の明良の微笑みが真っ黒に塗り変わっていくのが、晴には見ているだけで分かった。
「駄目だって~、茂木ーっ、若い子に手出したらさぁ?」
「えー?貞友だって可愛いっていってたじゃーん?ねぇ?おにぃさん、彼女可愛いねー。」
「……可愛いですよ?晴は。」
冷静に微笑みながら返してるけど明良の顔が笑ってるようで、全然笑ってない。しかも、既に彼女ってそれ違うしと晴だっていいたいのに、酔っている男性は気がつかず晴の肩に手を乗せたまま飲みに行こうとごね出している。見る間に目の前の明良の顔が氷の微笑みに変わりつつある気がして、勘違いだよね?勘違いだっていってと心の中で叫ぶ。真っ黒な上に氷の微笑みって、綺麗な顔して怖いよ、明良ってば。それでも茂木と貞友というらしい二人は、気がつかないらしくて面倒臭い絡み方を続けている。
「ハルちゃんって言うんだ~?可愛いねぇ?幾つぅ?」
「…………離してもらえませんか?晴のこと。」
「いいじゃん、俺と楽しい時間過ごそうよ~、ねぇ?ハルちゃん。」
いやあんたに名前で呼ばれたくないし。というかこんな会話しても晴は男、幾らバイセクシャルとは言えもう他人としたくもなければ、今は恋人の明良の視線の方が気になる。それを気にもかけてない茂木という男が肩を尚更引き寄せて、酒臭い息を吹き掛けて耳元に話しかけ続けていく。今更気がついたけど、他人だと明良と違って何とも感じないのには驚きだ。
「ハルちゃんって、清楚っぽくていいなぁ、処女?」
「やめてもらえませんか?……いい加減。」
「いいじゃん、彼氏ーっ、もうやった?ハルちゃん、処女だった?ちーでた?」
最悪な酔っ払いの下卑た絡みに周囲も遠目に眉を潜めていて、晴はいい加減男だとバラそうかなと思い始める。そうでもしないとこの話が収まりそうがないのだ。明良にまで絡み始めているから、ここで晴が男とわかれば一気に萎えるはず。
「ハールちゃん、今からお兄さんとエッチしなーい?気持ちいいよー?天国見せちゃうよ?俺。」
「ぎゃはは、なに彼氏の前で?あ、彼氏いたら3Pかぁ!」
「3Pかぁ、おしりの処女貰えちゃうかなぁ?俺。」
あ、バカ!と思ったけど茂木が既に口に出してしまった言葉は、明良の堪忍袋の緒を一瞬で一刀両断していた。肩にのせられていた手が一瞬で払われたと思った時には晴はグイと手前に体を引かれて抱き寄せられ、背後の茂木の顎がバクンと妙な音をたてて左右に揺れてもんどりうって大の字に道に倒れ込む。どうみても晴の肩越しには明良の長い足が見えているし、今の音って顎に当たってるよね?!その足?!
「いつまでも…………俺の晴にきたねぇ手で触ってんじゃねぇ!糞が!」
う、うわぁっ!明良さん?!素ですか?それ。今の空手的な蹴りですか?しかも一撃必殺で顎って、その人ちゃんと生きてる?!あ、良かった、生きてるし意識あるみたい。一応明良も手加減はしていたようでポカーンっていう唖然とした顔で上半身を起こした茂木という男に、貞友という男が慌てて駆け寄っていく。その隙に行くよと手をとられて駆け出した晴は、スカートの裾を押さえながら明良の背中を見つめて追いかけだしている。いや、明良って本気で空手してたんだと驚くけど、あれって大丈夫?と問いかけると明良は苦笑いで答えた。
「ちょっと、イラッときた。」
「ちょっとって。」
「だって、晴にベタベタ触るし、下卑たこと言うし。」
いや、あれかなり酔ってたし女だと思ってたけどねと晴の方も苦笑いしてしまうけど、ほんの軽く当てただけだから折れてはいないだろうしと明良はいう。ほんの軽くであの音?!ヤッパリ本気出したら相手が死ぬかもって本当なんだ?!それでも確りと恋人繋ぎで握られた手に思わず晴は、明良のことを見つめて辺りを見渡すとチュッと軽くキスをする。
「晴。」
「えっと……その、驚いたけど、カッコよかった……し。」
そうモニョモニョと俯きながら呟く晴に明良は目を瞬かせて、グイと手を引き寄せてくる。今のところ辺りに人気はないし明良に引き寄せられ素直に従う晴を、住宅地の中とは言え明良が抱き締めてくるのに晴はまるで乙女のように再び頬を染めてしまっていた。
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