226 / 693
第十四章 蒼い灯火
間話11.S
しおりを挟む
SはサービスのS。
何でかそんな言葉が頭に残ってしまったのは、最近の出来事のせいで欲求不満だからだろうか。勿論バイセクシャルだから相手は男女どっちでもいいんだけれど、了に少し粉をかけてしまった上に……あの時実際にはいけてない訳で。なにかで解消と思うにも、実はそんな気にもなれないでいる。
なんだかなぁ……
こうなったら風俗……は嫌だし、アダルトビデオ……もあんまり好みの役者のがないからピンと来ない。アダルトビデオだと基本女の子がされるのをみるんだけど、どうも甲高い喘ぎ声が演技ッぽく感じて嘘っぽい。かといって男ものを見ても、基準が高いのかちっとも興奮できない。ちゃんと性欲はある筈なのに、今一つ気持ちが乗りきれないからモヤモヤしてる。それが了の件が実は凄く痛手だったからだろうとは自分でも分かっていた。だって一時期とは言えあんなに散々なほどに睦みあったのに、まさかの全身全霊での完全拒否…………。
流石に元セフレとしては心が痛い。
これでもし痛くないとしたら、その方がちょっとヤバい人だと思う。痛くないようなヤツが、あの了に昔悪戯したドブ臭い親父に変わるんじゃないだろうか。
因みにあの変態は七月に入って直ぐ辺りに駅の西側の山際の辺りで、婦女暴行容疑とかなんとかで逮捕されたらしい。あれだけガッツリ男にガン堀りで回されても、女好きが変わらなかったのには、ある意味称賛に値する。ただし見つかった時に完全に頭が異世界にいってしまっていたらしく、精神病院に入ったとか逸物チョン切られたとか都市伝説が飛び交っていたりもして。
「どうしたのかな?晴君。」
『茶樹』のマスター久保田惣一は渋いロマンスグレーのイケメンオヤジだが、志賀松理という内縁の美人妻がいて最近やっと志賀の親戚に紹介して貰ったと目下人生薔薇色だ。そんな久保田に宏太が話していた事を口にすると、久保田はおやおやとにこやかに笑う。この時間帯の『茶樹』は少しアイドルタイムだから、客足も少ないので中々人様には聞かせられないような話題を暢気に話したりもする。
「随分懐かしい話だねぇ。」
「え?久保田さんも知ってるの?」
知ってるも何もと久保田は朗らかに笑いながら言う。
「それは私の口癖だからね。」
はい?!と晴が詰め寄ると、久保田は暢気に昔話をしはじめたのだ。
久保田惣一は昔、SMバーを経営していた。そのSMバーにフラりと現れた外崎宏太は、当時は金融関係の会社員を辞めたばかりで無職。本人がSMに興味があるというから久保田が調教師としての技術を身に付けさせてみたら、案外性にあってて宏太はかなり有名なSMの調教師になったという。やがてSMバーを閉店させることにした久保田から店をそのまま買って、宏太がバーを経営し始めて。その後紆余曲折あって今の状況になった。
紆余曲折のとこはかなりはしょって濁されたけど、あんまり根掘り葉掘りしてはいけなさそうな気配が久保田の笑顔からもプンプンする。それにしても金融マンから調教師の店舗経営でコンサルタント…………なんちゅう人生だよと思うが、そこは久保田が平気で口にすると言うことは、たいして昔馴染みには秘密にしていないと言うことか。そこまで考えてハッと気がつく。
「つまり、久保田さんって、しゃちょーの師匠?」
「はは、あっという間に宏太の方が上手になっちゃったけどね。」
上手って…………調教師にも上手い下手があるのか、等と思わず考え込んでしまったのはここだけの話。それにしても調教師!それで目も見えないのにあの手際の良さだったのかと至極真っ当に納得したが、上手いという言葉が何でか心に引っ掛かってしまったのは何でだろう。
※※※
気がつくと口に細い竹のような物が、真横に通るように噛ませられている。口角に食い込む細い竹に、満足に口を開くこともできないのに気がつく。腕は後ろに組まされて体ごと縛られ動かすことも出来ないし、その先が柱か何かに結わえ付けられているのか歩くことすら出来ない。
古めかしい畳の和室に、鴨居。
昭和かと突っ込みたいが、実際のところ平成生まれの晴が、そこに突っ込める内容でもない。
何で?あれ?
ワイシャツだけを着たまま縛られているから肌への刺激はないが、一体なんでこんな格好だっけと呆然と思案する。ストーカーとか?いやいや、自分のストーカーは女装程度で不潔なんて叫んでた、そんなうら若い乙女にこの緊縛はちょっと、いやかなり無理。
「考え事か?ん?」
ですよね。と頭の中で考えてしまったのは、声が出せないからで、しかも何であんたですかと突っ込みたい。しかも迷いもなくあっという間に膝上に赤い麻縄を通されて縛り上げ、腰より高く吊り上げられてしまった。下着も履いてなくて室内の空気が股間を撫でるのに、思わず頬が染まってしまうのは仕方がない。
何やったっけ?ここまでされるようなこと。
何もやってないとは言えないところが残念だが、とは言え了一筋の相手が自分を相手にSM。あんまりしつこく聞いたからSMに興味があると思われたか、それとも久保田から情報が耳に入ったか。興味がない訳じゃないが、せめてこんなゴリゴリのSMじゃなくソフトSMから初めて欲しい。
「本当にお前態度に出るな。」
そう言いながら長い指が晴の顎を撫でる。目が見えないのに何がわかるんだろうと思ったら、相手はニヤッと口角を上げて笑い突然襟元を掴むと音をたててワイシャツのボタンを引きちぎった。驚きに身がすくむのを見越していたように普段の軽口を叩いている時の相手ではなく冷淡な冷ややかな空気を放ちながら、指先がまるで確かめるように縄の合間から覗く肌を滑る。
「ん、んんっ。」
声の出せない晴を無視して、鳥の羽根のように軽く爪の先がカリと乳首を掠めた瞬間思わず声が漏れた。何しろ了から様々快感を教えられた体だから、刺激にはつい反応してしまう。それを見逃すはずもない指先が何度も先端を円を描くように揉み、爪の先でカリカリと先を掻く。
「んくっ、んっんん。」
「開発済みだったな、ここは。」
ヤバい、本当に刺激の加え方が上手くて、腰が重く蕩けてくる。硬く立ち上がってしまった乳首を指先が押し潰すように挟み、クニクニと捏ね回されるのに股間はあっという間に立ち上がってしまった。すると大きな手が今度は怒張の先端を握り、親指を鈴口に擦り付けはじめる。
「っっ!んんっ!んっ!ふっ!んんっ!」
鈴口に親指を捩じ込もうとしてるみたいな、強い刺激に腰がくねる。それでも片足は吊り上げられていて満足に腰を引くことも出来ないから、亀頭の刺激にだけ妙に集中させられてしまう。
「だらしねぇな、ドロドロだぞ?ん?」
グチュグチュ音をたてて擦られながら、そんなことを低い掠れた声で囁かれると腰が快感で痺れてくる。出そうと思った途端意地悪く指先が離れて、息を荒らげる晴の怒張を相手はグッと強く握った。鋭い痛みに呻いたが、相手は迷うことなく鈴口にヒヤリとするモノをあてがう。
「う、んんっ?!んんっ!」
「興味あるんだろ?了がされてんの見て欲しがってたもんな?」
柔らかな声で言われて金属の先端が、クプッと鈴口にめり込む。細い尿道を硬く冷たい金属で犯される恐怖感と、それが進んでくる強い違和感。確かにこれを嵌められ啜り泣く了はエロくて、興奮したし、気持ち良さそうと思った。でも心積もりもなくヌプヌプと入っていく金属の棒が、尿道を突き破ったらと不安は強い。緊張しているせいで怒張は尚更硬く、挿入の感覚が強く腰に突き刺さる。
「んんっ!んぅ!んうぅ!」
「随分欲張りだな?簡単に飲み込むぞ。」
見る間に十センチも金属を捩じ込まれ、怒張の先端に銀色の輪がつけられたみたいに見える。フゥフゥと口枷の隙間から溢れる吐息に、相手は笑いながらその銀色の輪を指で弾いた。チィンッという金属の跳ねる音と同時に、まるで射精する時みたいな熱い痺れが腰に走る。
「んふぅっ!」
「ふん、気持ちいいか、良かったな。」
何度も何度も指で強く金属の輪を弾きながら、晴が快感に身悶えるのを相手は笑いながら見えない目で観察している。気持ちいいのに塞き止められて射精だけが出来ない。射精寸前の快感が何度も走るのに、そこにだけは上り詰められなくて腰が痙攣してしまう。
あ、ああ、何これ、すごい、ヤバい、
ジンジンと腹の中で塞き止められた精液が疼き、時々思い出したように弾かれる膨れた乳首の刺激まで重なって腰が勝手にくねる。足を閉じることもできないで快感に俯く晴の顎を長い指が押さえ込み、相手は穏やかにここからが本番だと笑う。ただでさえこれだけでこんなに気持ちいいのに、相手は妙に細い張り型を手にすると晴の後孔に押し当てて奥に向かってめり込ませていく。
「んんっんふぅっ!ふうぅ!ううっ!」
グポと音をたてて自分のものよりも細い物が奥に入り、細くて物足りないと感じているのを知っているように更に先に入る。無理矢理ではなくソッと優しく、ゆっくり奥に入り込んでくる感覚が止まらないのに晴は息を詰めていた。コツコツと奥に当たって、そこで緩く円を描くように揺さぶられ、更に奥に進もうと長いものの先が中を擦る。
「んぅ!んうぅーっ!ふぅう!んふぅ!ううっ!」
無言のまま揺らされ少しずつ奥に入り込むモノに感じたことのないほど、奥まで侵されていく。それでも射精だけはどうにもならなくて、晴は畳に残された左足がガクガク震え出すのに気がついた。
「足がつくと、力が抜けねぇな……。」
ふんっと何気ない言葉が耳に入ったと思ったら、今度は残っていた左足迄意図も簡単に吊し上げられて体が床をみる形に水平に揺れる。背中と両足とで吊るされ、しかも足は蛙のように開かされたまま。その上体内に捩じ込まれたモノは晴が自力では吐き出せないほどに、深く奥まで突き刺さっている。
嘘、こんなの、ヤバい、気持ちい、凄い。
思考が混濁するほどの快感がジンジンと腰にまとわりつく。下向きに刺さっているのだから抜け落ちてもおかしくないのに、尿道の金属棒の先が自然と宙で揺れると寸止めの快楽に腰が宙で泳ぐ。そして、また後孔の細い物が体内に柔らかく刺さり、突き当たりを緩くウネウネと円を描いて擦りあげる。
「うふぅ!!ううっうふうっんふぅ!ううん!っっっ!」
グリンと何か奇妙な感覚がして張り型の亀頭部分が今までにない奥に潜った途端、目の奥がチカチカと瞬いて息が詰まった。全身が突っ張って気持ちよくてガクガクと震えて、勝手にいくのが抑えられない。
「っっっ!!っーっ!」
「結腸まで犯されるのは気持ちいいだろ?病み付きになるぞ?ん?」
結腸?長くて細いものが奥深くに嵌まりこんでしまって、何一つ動かしてもいないのに気持ち良すぎて狂う。勝手に体内が嵌まっている感触に締め付けて感じて達して弛緩して、また嵌まっている感触に締めて感じて達して弛緩して。独りでにそれを勝手に体が繰り返していて、止まらない。口枷から涎を滴らせて、頭が真っ白になって、射精もできずに腹の底が蕩けて
※※※
「…………って言う夢をみた。」
ブハッと背後の外崎宏太が吹き出したのに、晴はそこ笑うとこかと不貞腐れて宏太の背中を睨み付ける。この話は笑うとこじゃない、相手は夢だからって一応は濁したけど、目の前の宏太に晴がSM調教される夢だったのだ。薄暗い和室で鴨居に麻縄で吊るされて、身体中を弄くられ、奥底に捩じ込まれた玩具でガクガクと痙攣しながら絶頂する。
あまりにも気持ちよくてお陰で目が覚めて普通にベットの上だったのに、晴は呆然と暫く動けなかったくらいだった。ここどこ、さっきのは何?と夢精でベショベショの股間の不快感に気がつくのに大分かかったくらいに。
夢の中なのに凄く気持ちよくて、しかも相手が社長。
それにしたって幾ら相手はあんただったと言わないからって、ここまで死ぬほど爆笑されているのは何なんだ。晴が不貞腐れて睨んでいると、余りの笑いの発作に了が仕事場に顔を出して一体どうかしたのかと聞く始末。
「ふ、ふはは、何なんだ、それはっ。和室で吊るしって、昭和か!ふっくくっ。」
「そんな笑うなってばっ!」
「昭和?なんの話?」
「くっははっ!欲求不満か、SM小説かなんか読んだんだろ?くくくっ。」
「は、腹立つーっ!」
まるで意にもかえさずそこまで大爆笑されるのに、SMって畳で麻縄で緊縛じゃないのって思わず口にしたら了にまで何それなんて言われてしまう有り様だ。って違うのSMってといったら、了は縄って経験ないなんて平然と言う。
「こら、余計なこと言うな。」
「あ。」
この二人一応SMしてるって自覚はあるんだと、今更だが改めて晴も思ったりする。それにしてもなんでSM?と了に聞かれて、今度は晴が答えに詰まってしまう。流石に夢の内容まで話すのはあれだし、了に本気で欲求不満と思われるのも地味に嫌だ。そこまで考えてなんで外崎宏太にはよくて、了には駄目ってことが結構あるんだろうと首を傾げてしまう。
「そんなに調教されたきゃ、いい知り合い紹介するぞ?ん?」
「冗談だろ?!そういう意味じゃないし!」
見ず知らずの調教師なんて御免だと食って掛かると、何でか宏太は本気にするなと更に爆笑している。別にSMしてみたい訳じゃないし、夢と現実が同じじゃないことくらいは分かっているつもりだ。しかも、もし現実でもあんなこと……縛られて吊るされて、自分ではどうしようもない状態で痙攣するほどの快感に飲まれる…………あんな快感が実際に起こったら、それこそ晴はドップリSMに浸かってしまう。
でも、社長ならあれ位できんのかな……。
そんな風に一瞬考えて慌てて、なしなし!と思考を振り払う。何を考えてんだか、外崎宏太は幾ら以前調教師でも、今は了の旦那、了以外は興味なしなんだ。しかも社長で間男扱いで、ガキ扱いなんだから、夢はただの夢!妄想は妄想!そういい聞かせるように頭をブンブンと振る晴なのだった。
何でかそんな言葉が頭に残ってしまったのは、最近の出来事のせいで欲求不満だからだろうか。勿論バイセクシャルだから相手は男女どっちでもいいんだけれど、了に少し粉をかけてしまった上に……あの時実際にはいけてない訳で。なにかで解消と思うにも、実はそんな気にもなれないでいる。
なんだかなぁ……
こうなったら風俗……は嫌だし、アダルトビデオ……もあんまり好みの役者のがないからピンと来ない。アダルトビデオだと基本女の子がされるのをみるんだけど、どうも甲高い喘ぎ声が演技ッぽく感じて嘘っぽい。かといって男ものを見ても、基準が高いのかちっとも興奮できない。ちゃんと性欲はある筈なのに、今一つ気持ちが乗りきれないからモヤモヤしてる。それが了の件が実は凄く痛手だったからだろうとは自分でも分かっていた。だって一時期とは言えあんなに散々なほどに睦みあったのに、まさかの全身全霊での完全拒否…………。
流石に元セフレとしては心が痛い。
これでもし痛くないとしたら、その方がちょっとヤバい人だと思う。痛くないようなヤツが、あの了に昔悪戯したドブ臭い親父に変わるんじゃないだろうか。
因みにあの変態は七月に入って直ぐ辺りに駅の西側の山際の辺りで、婦女暴行容疑とかなんとかで逮捕されたらしい。あれだけガッツリ男にガン堀りで回されても、女好きが変わらなかったのには、ある意味称賛に値する。ただし見つかった時に完全に頭が異世界にいってしまっていたらしく、精神病院に入ったとか逸物チョン切られたとか都市伝説が飛び交っていたりもして。
「どうしたのかな?晴君。」
『茶樹』のマスター久保田惣一は渋いロマンスグレーのイケメンオヤジだが、志賀松理という内縁の美人妻がいて最近やっと志賀の親戚に紹介して貰ったと目下人生薔薇色だ。そんな久保田に宏太が話していた事を口にすると、久保田はおやおやとにこやかに笑う。この時間帯の『茶樹』は少しアイドルタイムだから、客足も少ないので中々人様には聞かせられないような話題を暢気に話したりもする。
「随分懐かしい話だねぇ。」
「え?久保田さんも知ってるの?」
知ってるも何もと久保田は朗らかに笑いながら言う。
「それは私の口癖だからね。」
はい?!と晴が詰め寄ると、久保田は暢気に昔話をしはじめたのだ。
久保田惣一は昔、SMバーを経営していた。そのSMバーにフラりと現れた外崎宏太は、当時は金融関係の会社員を辞めたばかりで無職。本人がSMに興味があるというから久保田が調教師としての技術を身に付けさせてみたら、案外性にあってて宏太はかなり有名なSMの調教師になったという。やがてSMバーを閉店させることにした久保田から店をそのまま買って、宏太がバーを経営し始めて。その後紆余曲折あって今の状況になった。
紆余曲折のとこはかなりはしょって濁されたけど、あんまり根掘り葉掘りしてはいけなさそうな気配が久保田の笑顔からもプンプンする。それにしても金融マンから調教師の店舗経営でコンサルタント…………なんちゅう人生だよと思うが、そこは久保田が平気で口にすると言うことは、たいして昔馴染みには秘密にしていないと言うことか。そこまで考えてハッと気がつく。
「つまり、久保田さんって、しゃちょーの師匠?」
「はは、あっという間に宏太の方が上手になっちゃったけどね。」
上手って…………調教師にも上手い下手があるのか、等と思わず考え込んでしまったのはここだけの話。それにしても調教師!それで目も見えないのにあの手際の良さだったのかと至極真っ当に納得したが、上手いという言葉が何でか心に引っ掛かってしまったのは何でだろう。
※※※
気がつくと口に細い竹のような物が、真横に通るように噛ませられている。口角に食い込む細い竹に、満足に口を開くこともできないのに気がつく。腕は後ろに組まされて体ごと縛られ動かすことも出来ないし、その先が柱か何かに結わえ付けられているのか歩くことすら出来ない。
古めかしい畳の和室に、鴨居。
昭和かと突っ込みたいが、実際のところ平成生まれの晴が、そこに突っ込める内容でもない。
何で?あれ?
ワイシャツだけを着たまま縛られているから肌への刺激はないが、一体なんでこんな格好だっけと呆然と思案する。ストーカーとか?いやいや、自分のストーカーは女装程度で不潔なんて叫んでた、そんなうら若い乙女にこの緊縛はちょっと、いやかなり無理。
「考え事か?ん?」
ですよね。と頭の中で考えてしまったのは、声が出せないからで、しかも何であんたですかと突っ込みたい。しかも迷いもなくあっという間に膝上に赤い麻縄を通されて縛り上げ、腰より高く吊り上げられてしまった。下着も履いてなくて室内の空気が股間を撫でるのに、思わず頬が染まってしまうのは仕方がない。
何やったっけ?ここまでされるようなこと。
何もやってないとは言えないところが残念だが、とは言え了一筋の相手が自分を相手にSM。あんまりしつこく聞いたからSMに興味があると思われたか、それとも久保田から情報が耳に入ったか。興味がない訳じゃないが、せめてこんなゴリゴリのSMじゃなくソフトSMから初めて欲しい。
「本当にお前態度に出るな。」
そう言いながら長い指が晴の顎を撫でる。目が見えないのに何がわかるんだろうと思ったら、相手はニヤッと口角を上げて笑い突然襟元を掴むと音をたててワイシャツのボタンを引きちぎった。驚きに身がすくむのを見越していたように普段の軽口を叩いている時の相手ではなく冷淡な冷ややかな空気を放ちながら、指先がまるで確かめるように縄の合間から覗く肌を滑る。
「ん、んんっ。」
声の出せない晴を無視して、鳥の羽根のように軽く爪の先がカリと乳首を掠めた瞬間思わず声が漏れた。何しろ了から様々快感を教えられた体だから、刺激にはつい反応してしまう。それを見逃すはずもない指先が何度も先端を円を描くように揉み、爪の先でカリカリと先を掻く。
「んくっ、んっんん。」
「開発済みだったな、ここは。」
ヤバい、本当に刺激の加え方が上手くて、腰が重く蕩けてくる。硬く立ち上がってしまった乳首を指先が押し潰すように挟み、クニクニと捏ね回されるのに股間はあっという間に立ち上がってしまった。すると大きな手が今度は怒張の先端を握り、親指を鈴口に擦り付けはじめる。
「っっ!んんっ!んっ!ふっ!んんっ!」
鈴口に親指を捩じ込もうとしてるみたいな、強い刺激に腰がくねる。それでも片足は吊り上げられていて満足に腰を引くことも出来ないから、亀頭の刺激にだけ妙に集中させられてしまう。
「だらしねぇな、ドロドロだぞ?ん?」
グチュグチュ音をたてて擦られながら、そんなことを低い掠れた声で囁かれると腰が快感で痺れてくる。出そうと思った途端意地悪く指先が離れて、息を荒らげる晴の怒張を相手はグッと強く握った。鋭い痛みに呻いたが、相手は迷うことなく鈴口にヒヤリとするモノをあてがう。
「う、んんっ?!んんっ!」
「興味あるんだろ?了がされてんの見て欲しがってたもんな?」
柔らかな声で言われて金属の先端が、クプッと鈴口にめり込む。細い尿道を硬く冷たい金属で犯される恐怖感と、それが進んでくる強い違和感。確かにこれを嵌められ啜り泣く了はエロくて、興奮したし、気持ち良さそうと思った。でも心積もりもなくヌプヌプと入っていく金属の棒が、尿道を突き破ったらと不安は強い。緊張しているせいで怒張は尚更硬く、挿入の感覚が強く腰に突き刺さる。
「んんっ!んぅ!んうぅ!」
「随分欲張りだな?簡単に飲み込むぞ。」
見る間に十センチも金属を捩じ込まれ、怒張の先端に銀色の輪がつけられたみたいに見える。フゥフゥと口枷の隙間から溢れる吐息に、相手は笑いながらその銀色の輪を指で弾いた。チィンッという金属の跳ねる音と同時に、まるで射精する時みたいな熱い痺れが腰に走る。
「んふぅっ!」
「ふん、気持ちいいか、良かったな。」
何度も何度も指で強く金属の輪を弾きながら、晴が快感に身悶えるのを相手は笑いながら見えない目で観察している。気持ちいいのに塞き止められて射精だけが出来ない。射精寸前の快感が何度も走るのに、そこにだけは上り詰められなくて腰が痙攣してしまう。
あ、ああ、何これ、すごい、ヤバい、
ジンジンと腹の中で塞き止められた精液が疼き、時々思い出したように弾かれる膨れた乳首の刺激まで重なって腰が勝手にくねる。足を閉じることもできないで快感に俯く晴の顎を長い指が押さえ込み、相手は穏やかにここからが本番だと笑う。ただでさえこれだけでこんなに気持ちいいのに、相手は妙に細い張り型を手にすると晴の後孔に押し当てて奥に向かってめり込ませていく。
「んんっんふぅっ!ふうぅ!ううっ!」
グポと音をたてて自分のものよりも細い物が奥に入り、細くて物足りないと感じているのを知っているように更に先に入る。無理矢理ではなくソッと優しく、ゆっくり奥に入り込んでくる感覚が止まらないのに晴は息を詰めていた。コツコツと奥に当たって、そこで緩く円を描くように揺さぶられ、更に奥に進もうと長いものの先が中を擦る。
「んぅ!んうぅーっ!ふぅう!んふぅ!ううっ!」
無言のまま揺らされ少しずつ奥に入り込むモノに感じたことのないほど、奥まで侵されていく。それでも射精だけはどうにもならなくて、晴は畳に残された左足がガクガク震え出すのに気がついた。
「足がつくと、力が抜けねぇな……。」
ふんっと何気ない言葉が耳に入ったと思ったら、今度は残っていた左足迄意図も簡単に吊し上げられて体が床をみる形に水平に揺れる。背中と両足とで吊るされ、しかも足は蛙のように開かされたまま。その上体内に捩じ込まれたモノは晴が自力では吐き出せないほどに、深く奥まで突き刺さっている。
嘘、こんなの、ヤバい、気持ちい、凄い。
思考が混濁するほどの快感がジンジンと腰にまとわりつく。下向きに刺さっているのだから抜け落ちてもおかしくないのに、尿道の金属棒の先が自然と宙で揺れると寸止めの快楽に腰が宙で泳ぐ。そして、また後孔の細い物が体内に柔らかく刺さり、突き当たりを緩くウネウネと円を描いて擦りあげる。
「うふぅ!!ううっうふうっんふぅ!ううん!っっっ!」
グリンと何か奇妙な感覚がして張り型の亀頭部分が今までにない奥に潜った途端、目の奥がチカチカと瞬いて息が詰まった。全身が突っ張って気持ちよくてガクガクと震えて、勝手にいくのが抑えられない。
「っっっ!!っーっ!」
「結腸まで犯されるのは気持ちいいだろ?病み付きになるぞ?ん?」
結腸?長くて細いものが奥深くに嵌まりこんでしまって、何一つ動かしてもいないのに気持ち良すぎて狂う。勝手に体内が嵌まっている感触に締め付けて感じて達して弛緩して、また嵌まっている感触に締めて感じて達して弛緩して。独りでにそれを勝手に体が繰り返していて、止まらない。口枷から涎を滴らせて、頭が真っ白になって、射精もできずに腹の底が蕩けて
※※※
「…………って言う夢をみた。」
ブハッと背後の外崎宏太が吹き出したのに、晴はそこ笑うとこかと不貞腐れて宏太の背中を睨み付ける。この話は笑うとこじゃない、相手は夢だからって一応は濁したけど、目の前の宏太に晴がSM調教される夢だったのだ。薄暗い和室で鴨居に麻縄で吊るされて、身体中を弄くられ、奥底に捩じ込まれた玩具でガクガクと痙攣しながら絶頂する。
あまりにも気持ちよくてお陰で目が覚めて普通にベットの上だったのに、晴は呆然と暫く動けなかったくらいだった。ここどこ、さっきのは何?と夢精でベショベショの股間の不快感に気がつくのに大分かかったくらいに。
夢の中なのに凄く気持ちよくて、しかも相手が社長。
それにしたって幾ら相手はあんただったと言わないからって、ここまで死ぬほど爆笑されているのは何なんだ。晴が不貞腐れて睨んでいると、余りの笑いの発作に了が仕事場に顔を出して一体どうかしたのかと聞く始末。
「ふ、ふはは、何なんだ、それはっ。和室で吊るしって、昭和か!ふっくくっ。」
「そんな笑うなってばっ!」
「昭和?なんの話?」
「くっははっ!欲求不満か、SM小説かなんか読んだんだろ?くくくっ。」
「は、腹立つーっ!」
まるで意にもかえさずそこまで大爆笑されるのに、SMって畳で麻縄で緊縛じゃないのって思わず口にしたら了にまで何それなんて言われてしまう有り様だ。って違うのSMってといったら、了は縄って経験ないなんて平然と言う。
「こら、余計なこと言うな。」
「あ。」
この二人一応SMしてるって自覚はあるんだと、今更だが改めて晴も思ったりする。それにしてもなんでSM?と了に聞かれて、今度は晴が答えに詰まってしまう。流石に夢の内容まで話すのはあれだし、了に本気で欲求不満と思われるのも地味に嫌だ。そこまで考えてなんで外崎宏太にはよくて、了には駄目ってことが結構あるんだろうと首を傾げてしまう。
「そんなに調教されたきゃ、いい知り合い紹介するぞ?ん?」
「冗談だろ?!そういう意味じゃないし!」
見ず知らずの調教師なんて御免だと食って掛かると、何でか宏太は本気にするなと更に爆笑している。別にSMしてみたい訳じゃないし、夢と現実が同じじゃないことくらいは分かっているつもりだ。しかも、もし現実でもあんなこと……縛られて吊るされて、自分ではどうしようもない状態で痙攣するほどの快感に飲まれる…………あんな快感が実際に起こったら、それこそ晴はドップリSMに浸かってしまう。
でも、社長ならあれ位できんのかな……。
そんな風に一瞬考えて慌てて、なしなし!と思考を振り払う。何を考えてんだか、外崎宏太は幾ら以前調教師でも、今は了の旦那、了以外は興味なしなんだ。しかも社長で間男扱いで、ガキ扱いなんだから、夢はただの夢!妄想は妄想!そういい聞かせるように頭をブンブンと振る晴なのだった。
0
お気に入りに追加
249
あなたにおすすめの小説
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
変態高校生♂〜俺、親友やめます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
学校中の男子たちから、俺、狙われちゃいます!?
※この小説は『変態村♂〜俺、やられます!〜』の続編です。
いろいろあって、何とか村から脱出できた翔馬。
しかしまだ問題が残っていた。
その問題を解決しようとした結果、学校中の男子たちに身体を狙われてしまう事に。
果たして翔馬は、無事、平穏を取り戻せるのか?
また、恋の行方は如何に。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる