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第十三章 大人の条件
126.
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五月に入り、世の中では後半のゴールデンウィーク初日。
テレビはどこも行楽地の人混みのニュースで盛り上がっているが、仁聖はゴールデンウィーク中一回だけあったバイトだと早朝から出掛けていた。正直なところ恭平の方も立て込んだ仕事の追い込みに入ってしまったから、タイミングとしては丁度いい。黙々と文章を読み日本語に最適な表現を探しながら、前後の文章に最適な日本語を選び組み立てる。
翻訳している物が何なのかによって、言葉の選択は本当に重要なのだ。幼児向けの絵本と企業の資料では、『choice』という一言でも全く違う。絵本ならただ一言で『えらぶ』でも、企業の資料なら『選択』や『採択』、『選考』『選定』等と幾つも言葉があって、文面をみて最適なものを選ばなければならない。勿論英語の方だって『choice』だけでなく、『select』や『pickup』なんて言葉を使うこともあるが、向こうの言葉は行為を示すから割合ただ訳すのは簡単。でも文面の深味は翻訳次第で印象が変わる。そういう意味では鳥飼信哉の言葉の選定は幅が広くて深味があると、何度か翻訳したものを読んでみた恭平は溜め息混じりに考えた。
高校の時は文学の気配もなかったのになぁ……。
自分が知っている高校生の鳥飼信哉と言えば冷淡で無表情なイメージで、人を寄せ付けない感じだった。ところが今になって酒の場に呼ばれて見ると、仲間内では何時もこうだというとんでもない人物が見えてくる。再三エッセイを書けと鳥飼信哉から誘われているのも、実は大きな理由があって
お前、視野が少し狭いんだよ。試しに一度だけ何でもいいからエッセイ書いてみろ。新しく見えるものがあるかもしれないだろ?
そう信哉は言うのだが、確かに視野は狭いと恭平自身でも思う事がある。何しろ八年もこのマンションに籠って余り社会と関わらずに生きてきたのだし、元々産まれもあるのか世間と触れあわないように生きてきている。でもこのままではいけないと、今では感じつつあるのは事実なのだ。仁聖が日に日に成長して大人びていくのをただ眺めているようでは、余計に置いていかれそうな気がしてしまう。自分でも大人にならないとと、そう辞書を捲りながら考えてしまうようになっているのだから。
だからこの仕事が終わったら、少し自分でも踏み出してみる。
そのつもりになったのはそれが、少しだけ前に進む切っ掛けに変わるからだと自分でも思っている。この件は仁聖にはまだ話していないけれど、決まってからでいいと思ってしまうのはまだ自分がネガティブに考えている面が拭えないから。何しろ再三誘われているとはいえ、申し出てタイミングよく仕事があるとも限らない。だが、どちらにせよこの仕事を終わらせないと、次の仕事の受けようがない訳だから。本来のペースより早い期間で終らせる理由の一つはそれだ。他の理由?まあ、そこはさておき
※※※
帰宅して靴を脱ぎながら耳を澄ますと、かなりの勢いでキーを打つ音がしている。恐らく丁度興が乗って文章に成り始めたというところなのだろうから、一先ずそっと靴を脱いで中に入ると自室にバックを投げ込んで珈琲を入れにいく。今日のファンレターとプレゼントは精神的に疲れるものばかりだったから、持ち帰ってこなかった。どれもこれも会いたい、会って恋人にして欲しい、会ったらここに行きたいとかこれがしたいとか。プレゼントの方は高級すぎるネックレスや指輪、時計なんかで申し訳ないが返送して貰う事にした。スキンケア目的のメンズコスメのポスターのせいだろうが、その効果で素肌に着けて欲しいって送られてくるわけだ。でも流石に自分には相応不相応があるわけで、正直百万単位の貴金属や時計を贈られても困ってしまう。
《I don't have enough experience for your gift. Happy enough with just your feelings.》
自分にはまだ早すぎる贈り物です、気持ちだけで充分嬉しいなんて丁寧な手書きのカードで送り返しておいて貰ったが今のところお怒りの手紙は来ていない。珈琲をマグカップに注ぎ少し止まったキーを打つ音を見計らって、ドアをノックして顔を覗かせると柔らかな笑顔が迎えてくれる。
「おかえり。」
「うん、ただいま。珈琲のむかなって。」
「ありがとう、丁度入れにいこうかと思ってた。」
差し出されたカップを受け取り微笑みかけられるのに、仁聖も思わず微笑みかける。仕事はコンスタントに受けているから恭平は翻訳家としては、かなり有能なんだろうと思う。それに比べると自分はまだ身を立てるものを何も持っていないのに気がついてしまう。
「どうした?」
「あ、いや、昨日さ?書類がほしくて高校に行ってきたんだけど。」
思わず昨日感じた事を口にする。ほんの二ヶ月しか経っていないのに、全く空気の違う空間。まるで別世界のように感じる高校の教室と、彼らの持つ独特の空気。あそこにほんの少し前まで当然のようにいたのに、今では完全な別の世界なのだ。それに素直に驚くし、自分がここに場違いなのだと感じてしまった感傷に気がつく。
「ああ……なんとなくそれは分かるな。」
恭平がそう言いながら、自分もそうだと呟く。あの感覚が自分だけの事ではないのにホッとしながら、仁聖は何気なく椅子を回した恭平の足元に座るとその膝に向かって甘えるように頬を乗せる。
「それに、何かさ……。」
「ん?」
その頭を何気なく撫でながら恭平は、膝に頭をのせて甘え出した仁聖の言葉に耳を傾けた。訪れたらもう自分がいた筈の空間ではなくなっていたのに、少し寂しくなったなんて子供じみている。そんなの当然だと分かっているけど、それでもまだたった二ヶ月なのになんて思ってしまった。
「ちょっと後輩が大人びてて、寂しくなった……子供だね、これ。」
「ふふ、寂しく感じるのは自分も大人になったからだろ?違いがハッキリ目に見えたから寂しいんだ。」
ああ、そうかと撫でられながら納得する。今までは同じ制服で皆と同じことをしていればよかったのだが、今の自分はそれには類さない。大学生になったのだから当然のことなのだけど、あの空間では異質な存在になってしまうのに気がついて心細くなったのだ。優しく髪をすく指にうっとりしながら、優しい匂いのする膝に甘える。
「甘えただな?そんなに寂しかったのか?」
「うん…………なんか、寂しい。」
実際には恥ずかしくて口にしたいわけではないが、こうして話していると少し楽になる気がしてしまう。膝に甘えながらこんな子供じみた事を訴える自分を恭平は呆れたりしないだろうか。
「ごめん、子供っぽくて……。」
「ん?そんなことない……甘えたのお前も、ちょっと可愛いな。」
撫でられながら上目遣いに見上げると、少し楽しげな恭平の微笑みが見下ろしている。可愛いと言われて喜んでいいのか、悲しんだらいいのかわからないが、楽しそうな恭平の微笑みは以前より凄く綺麗だ。これで綺麗と言うと不満気な顔をするだろうけど、切れ長がの瞳に長い睫毛に艶やかな黒髪、厚くはないけど柔らかな唇、白く滑らかな透き通るような肌。どうしてこんなにも綺麗な造形なのか、仁聖には正直不思議でしかたがない。同じものを食べて同じシャンプーを使っても、こんなにも違う。
「なんだ?そんなに見つめて。」
「きょうへ…………愛してる。」
膝の上から思わず呟いた言葉に頭を撫でていた手が止まり、頬を少し薔薇色に染める。その様子もとても綺麗で思わずウットリしてしまうのに、恭平と来たら決まり悪そうに頬を染めたまま小さな声で俺もだよと呟く。仕事が一段落するまではいい子にしているつもりだけど、最近の恭平は以前と比べても格段にスケジュール管理がハッキリしてきていた。寝室の内側にかけたカレンダーに仕事を受けた日時と期間が記入されるようになって、しかも最短の予定と最悪の事態で最長期間まで記載されている。それでも殆どは最短に近い予定で終了する方が多いから、仁聖としてもスケジュール確認しやすいし予定が立てやすいのだ。
前は自分だけの生活の中のことだから無かったんたけど、俺が気にすると思ってスケジュール書いてくれるようになったんだろうなぁ……。
そんなほんの小さな恭平の心遣いの変化にすら、嬉しくなってしまう子供じみた自分の優越感。今までの生活にはなかったことを沢山してくれて大事にされて、それでいて大人になるのはユックリでいいからなんて無理をしないようにまで気を使わせて。まあ最近ではそれに仁聖の方も、自分のバイトなんかの予定を書き込むようになったわけなのだが。
「俺って……本当成長しない……なぁ。」
「ん?」
頭を撫でられながら呟いた仁聖に、恭平が不思議そうに首を傾げて覗きこむ。こんなに大事にされてると知っているのに、悌順の言葉が耳に残って気になって仕方がないでいる。
「恭平……あのさ?」
「うん、なんだ?」
「鳥飼って人と合気道やった時。」
うん、と恭平が不思議そうに見下ろしなから返事を返す。あの時恭平だけが投げられるという話になったのは、恭平の方が明確な態度を見せなかったからと悌順には見えたらしい。そんなことないのは恭平を間近で見てきた仁聖にはわかるが、それと本音云々の話は別物だ。
「更衣室でなに話したの?」
「何………って…?なんだ?今更。」
確かに今更な問いかけで、あの時二人っきりで更衣室に入られたの自体にも仁聖が嫉妬したのは、恭平も分かっていること。だけど、悌順に言われた事が気になって仕方がない。
「あの時…………?信哉さんとか?」
「うん。何話したの?」
※※※
「流石に道着の着方は覚えてるだろ?」
そう言いながら手渡された道着に目を落として、恭平は戸惑いながら視線をあげるとちゃんと洗濯してあるぞと意図の違う返答が帰ってくる。借りる道着が清潔かどうかを問いているわけではない。そうではなく、既に十年以上も前に身を引いたのでは?と問いかけると、鳥飼信哉は苦笑いを浮かべた。
「表立っては通っていないだけで、好きな時に少しな。」
「合気道続けていたんですか…………信哉さんは。」
「……これが俺と俺の親を繋いでいるからな、やってないと落ち着かないんだよ。」
そう何気なく呟く鳥飼信哉の横顔に、自分は逃げ出して目を向けようともしなかったと項垂れ溢してしまった。似たような母子家庭、しかも父親は通っていた道場の師範で、師匠に当たる男。同じ年代に母親を亡くして、同じように独りで過ごして、しかも同じような翻訳家になったそれぞれ。なのに鳥飼信哉は前向きに自分の道を模索していて、自分は逃げるために人と触れ合わずに済む事だけを選んできた。その証明のように鳥飼信哉は未だに合気道を続け、自分は既に道着の一枚も持たない。あんなに好きで続けてきた筈のものを、世の中から逃げるために完全に切り捨てて来た。
「たいして変わらん。俺だって、逃げてることもある。」
「…………そうは見えません。」
「そういうお前は、まあ相手は男性じゃあるが生涯を過ごしてもいい相手なんて重大な事を決めたんだろ?」
俺にはそういう相手は選べないと、信哉は感心した風にバサバサと服を脱ぎ捨てながら言う。その体はどうみても完全に日夜鍛え込まれた体躯で、全身にしなやかな筋肉がついているのに恭平は思わず絶句してしまう程だ。影に隠れて続けていたなんて言うが、その体はどうみてもこっそりの範疇にはない。
「……毎日やってるとしか見えませんね。その体。」
「いいや、月に何回かだ。運動はまあ適度にしてるけどな。」
「師範とですか?」
「演武だけだ。」
恭平の言葉が意図しているのは信哉の体つきは、合気道だけでなく古武術を完全に身につけ使いこなすだろうとしか見えないということだ。それを維持するには毎日何時間も師範との鍛練が必要なことくらい、長く離れている恭平でも分かる。合気道と組打術迄で辞めてしまった自分が言うのもなんだが、ただ演武をするだけで維持できる筋肉では到底ない。
「嘘ですよね?」
体を見て言われているのに、信哉は苦笑いをしながら自嘲ぎみに呟く。
「…………身に付けたものがものだからな、普段は対人はしない。」
それでもその信念を曲げて信哉が今回は対人戦でするとなったのは、結局自分が逃げに入ったからなのだと恭平も気がついてしまう。仁聖のように迷いもなく答えられたら、悌順の不況を買う事はなかった。それは自分が甘えて、また引き籠ろうとしたようなものだ。
「お前が伴侶を選んだのは建前か?恭平。」
「…………いいえ、自分で選びました……、あいつの人生ごと……欲しかったんです……俺は。」
素直にそう答えながら服を脱ぐ。まさかこんな事態になるとは考えもしなかったが、確かに選んだのは自分でそれをハッキリ口にできなかったのを見咎められたのは分かっている。あの時口にできなかったのは自分が仁聖に甘えたせいで、それを重ね続けていったら自分はただ仁聖の重荷に成りかねない気がした。そう何気なく言うと信哉は少し安堵を匂わせた笑いを溢す。
「それ、悌の前で言えてれば、投げられる事なかったぞ?恭平。」
「…………分かってます、だから素直に着替えてます。」
※※※
あの時の会話のことか?と一瞬戸惑う恭平の顔を、仁聖が不安気に見上げている。何も仁聖が心配するような内容ではないと思うが、何で一ヶ月も経ってから気にし始めたのだと首を傾げてしまう。また子供だからなんて考えているのだろうが、実際にはある意味子供だったのは恭平の方で仁聖は問題なかった。しかし、あの話を改めて説明しろと言われても、
「たいした話じゃない。気にしなくても……。」
「気になるよ!」
思わずそう言い放つ仁聖に、恭平は驚いたように目を丸くした。自分でもそんな声を出すつもりじゃ無かったのか仁聖が、ハッと我に返ってごめんと呟く。
「……ごめん、大声だして…………。」
もう一度繰り返した仁聖が項垂れて膝に顔を埋めたのに、恭平は戸惑いながら頭を撫でる。もしかしたら母校で何かあったのかもしれないなと、恭平は心の中で呟く。普段ない感傷に気になっていたことを納めきれないのかもしれないと気がついて、優しく頭を撫でて口を開く。
「ただ……俺がいつも逃げてばかりで、お前に甘えてばかりだって話をしただけだ。それだけだよ?仁聖。」
「甘えて……?」
ふと視線を上げた仁聖の髪を優しくすきながら、恭平は少し目を伏せて先を続ける。
「あの時、お前は迷わなかったろ?俺は言葉にするのに迷ってしまったんだ。」
「どうして……迷ったの……?」
それは素直な疑問だろう。同じ気持ちなら言える筈だと考えるのは当然で、言えないなら同じ気持ちではないのかと思ってしまうのも当然だ。だけど、言えなかった理由は本当は違う。
「その……言えなかったのは……。」
見る間に赤くなっていく恭平の顔を見上げ、仁聖は不思議そうにその様子に瞬きする。
「………その、………だから……。」
「恭平……?」
「俺は………、お前の、人生……全部欲しいなんて……思ってしまってて。そういうのは……自分勝手だなと……思ったら言葉に詰まったんだ…。」
相手に完全に甘えきっていてて、自分勝手な思いで相手の全てを欲しがっている自分に気がついたら、これじゃ相手に失礼じゃないかと思ってしまった。こんな勝手な感情で大事な人を振り回すのは幼稚な愛情と変わらないと思ったら、答えを出せなくて押し黙ってしまったのだ。ちゃんと伴侶として寄り添う気持ちでいる仁聖に、こんな思いでいいのかなんて戸惑ってしまった。
「ちゃんと……お前の事を欲しいと思って、自分で選んだと言えばよかっただけなんだ……でも、それを迷わず言えなかった。……情けないな。」
それを指摘されて自分でも恥ずかしくなったし、情けないとも思った。こんなに好きで愛しているのに、それで選んだと言えないなんて。
「自分で決めたのに、お前みたいに素直に言えないし、お前みたいに直ぐ言葉にもできない。」
それが全部とは言えないけど大事な時には、ちゃんと言葉にしないと駄目だと釘をさされたのだ。ちゃんと説明しておけばよかったのだけど、それをしなかったのも俺が恥ずかしかったからと教える。
「だから俺が情けないというだけだけど、少しずつ前に進むから。お前は気にしなくていいってことなんだ。分かったか?」
そう言われているのに見上げている仁聖の青味がかった瞳が、何でかまん丸になってウルウルとしている気がする。真っ赤になりながら辿々しく説明する自分が可笑しかっただろうかなんて考えながら、頭を撫でると仁聖が膝に縋りつくようにして身を大きく乗り出す。
「恭平……俺の事全部、欲しいって…………とこ、もう一回。」
「は?」
キラキラしたオーラを放ちながら輝く瞳で強請られる仁聖の言葉の意味がわからず恭平が問い返すと、もう一回言ってと繰り返して身を乗り出してくる。う、と思わず詰まるが最近の訳のわからないキラキラした色気を振り撒きながら、膝に縋って強請る仁聖の甘えた低い耳を擽るような声。
「お願い!もう一回!please!Can you say that again!」
何が一体そう何度も言わせたいんだと恭平は呆れ果ててしまいそうなのに、その無駄なキラキラがどうにも理性を邪魔をしている気がする。期待感満々で自分を見上げている瞳に、どうしたものかと恭平は再び赤面していた。
テレビはどこも行楽地の人混みのニュースで盛り上がっているが、仁聖はゴールデンウィーク中一回だけあったバイトだと早朝から出掛けていた。正直なところ恭平の方も立て込んだ仕事の追い込みに入ってしまったから、タイミングとしては丁度いい。黙々と文章を読み日本語に最適な表現を探しながら、前後の文章に最適な日本語を選び組み立てる。
翻訳している物が何なのかによって、言葉の選択は本当に重要なのだ。幼児向けの絵本と企業の資料では、『choice』という一言でも全く違う。絵本ならただ一言で『えらぶ』でも、企業の資料なら『選択』や『採択』、『選考』『選定』等と幾つも言葉があって、文面をみて最適なものを選ばなければならない。勿論英語の方だって『choice』だけでなく、『select』や『pickup』なんて言葉を使うこともあるが、向こうの言葉は行為を示すから割合ただ訳すのは簡単。でも文面の深味は翻訳次第で印象が変わる。そういう意味では鳥飼信哉の言葉の選定は幅が広くて深味があると、何度か翻訳したものを読んでみた恭平は溜め息混じりに考えた。
高校の時は文学の気配もなかったのになぁ……。
自分が知っている高校生の鳥飼信哉と言えば冷淡で無表情なイメージで、人を寄せ付けない感じだった。ところが今になって酒の場に呼ばれて見ると、仲間内では何時もこうだというとんでもない人物が見えてくる。再三エッセイを書けと鳥飼信哉から誘われているのも、実は大きな理由があって
お前、視野が少し狭いんだよ。試しに一度だけ何でもいいからエッセイ書いてみろ。新しく見えるものがあるかもしれないだろ?
そう信哉は言うのだが、確かに視野は狭いと恭平自身でも思う事がある。何しろ八年もこのマンションに籠って余り社会と関わらずに生きてきたのだし、元々産まれもあるのか世間と触れあわないように生きてきている。でもこのままではいけないと、今では感じつつあるのは事実なのだ。仁聖が日に日に成長して大人びていくのをただ眺めているようでは、余計に置いていかれそうな気がしてしまう。自分でも大人にならないとと、そう辞書を捲りながら考えてしまうようになっているのだから。
だからこの仕事が終わったら、少し自分でも踏み出してみる。
そのつもりになったのはそれが、少しだけ前に進む切っ掛けに変わるからだと自分でも思っている。この件は仁聖にはまだ話していないけれど、決まってからでいいと思ってしまうのはまだ自分がネガティブに考えている面が拭えないから。何しろ再三誘われているとはいえ、申し出てタイミングよく仕事があるとも限らない。だが、どちらにせよこの仕事を終わらせないと、次の仕事の受けようがない訳だから。本来のペースより早い期間で終らせる理由の一つはそれだ。他の理由?まあ、そこはさておき
※※※
帰宅して靴を脱ぎながら耳を澄ますと、かなりの勢いでキーを打つ音がしている。恐らく丁度興が乗って文章に成り始めたというところなのだろうから、一先ずそっと靴を脱いで中に入ると自室にバックを投げ込んで珈琲を入れにいく。今日のファンレターとプレゼントは精神的に疲れるものばかりだったから、持ち帰ってこなかった。どれもこれも会いたい、会って恋人にして欲しい、会ったらここに行きたいとかこれがしたいとか。プレゼントの方は高級すぎるネックレスや指輪、時計なんかで申し訳ないが返送して貰う事にした。スキンケア目的のメンズコスメのポスターのせいだろうが、その効果で素肌に着けて欲しいって送られてくるわけだ。でも流石に自分には相応不相応があるわけで、正直百万単位の貴金属や時計を贈られても困ってしまう。
《I don't have enough experience for your gift. Happy enough with just your feelings.》
自分にはまだ早すぎる贈り物です、気持ちだけで充分嬉しいなんて丁寧な手書きのカードで送り返しておいて貰ったが今のところお怒りの手紙は来ていない。珈琲をマグカップに注ぎ少し止まったキーを打つ音を見計らって、ドアをノックして顔を覗かせると柔らかな笑顔が迎えてくれる。
「おかえり。」
「うん、ただいま。珈琲のむかなって。」
「ありがとう、丁度入れにいこうかと思ってた。」
差し出されたカップを受け取り微笑みかけられるのに、仁聖も思わず微笑みかける。仕事はコンスタントに受けているから恭平は翻訳家としては、かなり有能なんだろうと思う。それに比べると自分はまだ身を立てるものを何も持っていないのに気がついてしまう。
「どうした?」
「あ、いや、昨日さ?書類がほしくて高校に行ってきたんだけど。」
思わず昨日感じた事を口にする。ほんの二ヶ月しか経っていないのに、全く空気の違う空間。まるで別世界のように感じる高校の教室と、彼らの持つ独特の空気。あそこにほんの少し前まで当然のようにいたのに、今では完全な別の世界なのだ。それに素直に驚くし、自分がここに場違いなのだと感じてしまった感傷に気がつく。
「ああ……なんとなくそれは分かるな。」
恭平がそう言いながら、自分もそうだと呟く。あの感覚が自分だけの事ではないのにホッとしながら、仁聖は何気なく椅子を回した恭平の足元に座るとその膝に向かって甘えるように頬を乗せる。
「それに、何かさ……。」
「ん?」
その頭を何気なく撫でながら恭平は、膝に頭をのせて甘え出した仁聖の言葉に耳を傾けた。訪れたらもう自分がいた筈の空間ではなくなっていたのに、少し寂しくなったなんて子供じみている。そんなの当然だと分かっているけど、それでもまだたった二ヶ月なのになんて思ってしまった。
「ちょっと後輩が大人びてて、寂しくなった……子供だね、これ。」
「ふふ、寂しく感じるのは自分も大人になったからだろ?違いがハッキリ目に見えたから寂しいんだ。」
ああ、そうかと撫でられながら納得する。今までは同じ制服で皆と同じことをしていればよかったのだが、今の自分はそれには類さない。大学生になったのだから当然のことなのだけど、あの空間では異質な存在になってしまうのに気がついて心細くなったのだ。優しく髪をすく指にうっとりしながら、優しい匂いのする膝に甘える。
「甘えただな?そんなに寂しかったのか?」
「うん…………なんか、寂しい。」
実際には恥ずかしくて口にしたいわけではないが、こうして話していると少し楽になる気がしてしまう。膝に甘えながらこんな子供じみた事を訴える自分を恭平は呆れたりしないだろうか。
「ごめん、子供っぽくて……。」
「ん?そんなことない……甘えたのお前も、ちょっと可愛いな。」
撫でられながら上目遣いに見上げると、少し楽しげな恭平の微笑みが見下ろしている。可愛いと言われて喜んでいいのか、悲しんだらいいのかわからないが、楽しそうな恭平の微笑みは以前より凄く綺麗だ。これで綺麗と言うと不満気な顔をするだろうけど、切れ長がの瞳に長い睫毛に艶やかな黒髪、厚くはないけど柔らかな唇、白く滑らかな透き通るような肌。どうしてこんなにも綺麗な造形なのか、仁聖には正直不思議でしかたがない。同じものを食べて同じシャンプーを使っても、こんなにも違う。
「なんだ?そんなに見つめて。」
「きょうへ…………愛してる。」
膝の上から思わず呟いた言葉に頭を撫でていた手が止まり、頬を少し薔薇色に染める。その様子もとても綺麗で思わずウットリしてしまうのに、恭平と来たら決まり悪そうに頬を染めたまま小さな声で俺もだよと呟く。仕事が一段落するまではいい子にしているつもりだけど、最近の恭平は以前と比べても格段にスケジュール管理がハッキリしてきていた。寝室の内側にかけたカレンダーに仕事を受けた日時と期間が記入されるようになって、しかも最短の予定と最悪の事態で最長期間まで記載されている。それでも殆どは最短に近い予定で終了する方が多いから、仁聖としてもスケジュール確認しやすいし予定が立てやすいのだ。
前は自分だけの生活の中のことだから無かったんたけど、俺が気にすると思ってスケジュール書いてくれるようになったんだろうなぁ……。
そんなほんの小さな恭平の心遣いの変化にすら、嬉しくなってしまう子供じみた自分の優越感。今までの生活にはなかったことを沢山してくれて大事にされて、それでいて大人になるのはユックリでいいからなんて無理をしないようにまで気を使わせて。まあ最近ではそれに仁聖の方も、自分のバイトなんかの予定を書き込むようになったわけなのだが。
「俺って……本当成長しない……なぁ。」
「ん?」
頭を撫でられながら呟いた仁聖に、恭平が不思議そうに首を傾げて覗きこむ。こんなに大事にされてると知っているのに、悌順の言葉が耳に残って気になって仕方がないでいる。
「恭平……あのさ?」
「うん、なんだ?」
「鳥飼って人と合気道やった時。」
うん、と恭平が不思議そうに見下ろしなから返事を返す。あの時恭平だけが投げられるという話になったのは、恭平の方が明確な態度を見せなかったからと悌順には見えたらしい。そんなことないのは恭平を間近で見てきた仁聖にはわかるが、それと本音云々の話は別物だ。
「更衣室でなに話したの?」
「何………って…?なんだ?今更。」
確かに今更な問いかけで、あの時二人っきりで更衣室に入られたの自体にも仁聖が嫉妬したのは、恭平も分かっていること。だけど、悌順に言われた事が気になって仕方がない。
「あの時…………?信哉さんとか?」
「うん。何話したの?」
※※※
「流石に道着の着方は覚えてるだろ?」
そう言いながら手渡された道着に目を落として、恭平は戸惑いながら視線をあげるとちゃんと洗濯してあるぞと意図の違う返答が帰ってくる。借りる道着が清潔かどうかを問いているわけではない。そうではなく、既に十年以上も前に身を引いたのでは?と問いかけると、鳥飼信哉は苦笑いを浮かべた。
「表立っては通っていないだけで、好きな時に少しな。」
「合気道続けていたんですか…………信哉さんは。」
「……これが俺と俺の親を繋いでいるからな、やってないと落ち着かないんだよ。」
そう何気なく呟く鳥飼信哉の横顔に、自分は逃げ出して目を向けようともしなかったと項垂れ溢してしまった。似たような母子家庭、しかも父親は通っていた道場の師範で、師匠に当たる男。同じ年代に母親を亡くして、同じように独りで過ごして、しかも同じような翻訳家になったそれぞれ。なのに鳥飼信哉は前向きに自分の道を模索していて、自分は逃げるために人と触れ合わずに済む事だけを選んできた。その証明のように鳥飼信哉は未だに合気道を続け、自分は既に道着の一枚も持たない。あんなに好きで続けてきた筈のものを、世の中から逃げるために完全に切り捨てて来た。
「たいして変わらん。俺だって、逃げてることもある。」
「…………そうは見えません。」
「そういうお前は、まあ相手は男性じゃあるが生涯を過ごしてもいい相手なんて重大な事を決めたんだろ?」
俺にはそういう相手は選べないと、信哉は感心した風にバサバサと服を脱ぎ捨てながら言う。その体はどうみても完全に日夜鍛え込まれた体躯で、全身にしなやかな筋肉がついているのに恭平は思わず絶句してしまう程だ。影に隠れて続けていたなんて言うが、その体はどうみてもこっそりの範疇にはない。
「……毎日やってるとしか見えませんね。その体。」
「いいや、月に何回かだ。運動はまあ適度にしてるけどな。」
「師範とですか?」
「演武だけだ。」
恭平の言葉が意図しているのは信哉の体つきは、合気道だけでなく古武術を完全に身につけ使いこなすだろうとしか見えないということだ。それを維持するには毎日何時間も師範との鍛練が必要なことくらい、長く離れている恭平でも分かる。合気道と組打術迄で辞めてしまった自分が言うのもなんだが、ただ演武をするだけで維持できる筋肉では到底ない。
「嘘ですよね?」
体を見て言われているのに、信哉は苦笑いをしながら自嘲ぎみに呟く。
「…………身に付けたものがものだからな、普段は対人はしない。」
それでもその信念を曲げて信哉が今回は対人戦でするとなったのは、結局自分が逃げに入ったからなのだと恭平も気がついてしまう。仁聖のように迷いもなく答えられたら、悌順の不況を買う事はなかった。それは自分が甘えて、また引き籠ろうとしたようなものだ。
「お前が伴侶を選んだのは建前か?恭平。」
「…………いいえ、自分で選びました……、あいつの人生ごと……欲しかったんです……俺は。」
素直にそう答えながら服を脱ぐ。まさかこんな事態になるとは考えもしなかったが、確かに選んだのは自分でそれをハッキリ口にできなかったのを見咎められたのは分かっている。あの時口にできなかったのは自分が仁聖に甘えたせいで、それを重ね続けていったら自分はただ仁聖の重荷に成りかねない気がした。そう何気なく言うと信哉は少し安堵を匂わせた笑いを溢す。
「それ、悌の前で言えてれば、投げられる事なかったぞ?恭平。」
「…………分かってます、だから素直に着替えてます。」
※※※
あの時の会話のことか?と一瞬戸惑う恭平の顔を、仁聖が不安気に見上げている。何も仁聖が心配するような内容ではないと思うが、何で一ヶ月も経ってから気にし始めたのだと首を傾げてしまう。また子供だからなんて考えているのだろうが、実際にはある意味子供だったのは恭平の方で仁聖は問題なかった。しかし、あの話を改めて説明しろと言われても、
「たいした話じゃない。気にしなくても……。」
「気になるよ!」
思わずそう言い放つ仁聖に、恭平は驚いたように目を丸くした。自分でもそんな声を出すつもりじゃ無かったのか仁聖が、ハッと我に返ってごめんと呟く。
「……ごめん、大声だして…………。」
もう一度繰り返した仁聖が項垂れて膝に顔を埋めたのに、恭平は戸惑いながら頭を撫でる。もしかしたら母校で何かあったのかもしれないなと、恭平は心の中で呟く。普段ない感傷に気になっていたことを納めきれないのかもしれないと気がついて、優しく頭を撫でて口を開く。
「ただ……俺がいつも逃げてばかりで、お前に甘えてばかりだって話をしただけだ。それだけだよ?仁聖。」
「甘えて……?」
ふと視線を上げた仁聖の髪を優しくすきながら、恭平は少し目を伏せて先を続ける。
「あの時、お前は迷わなかったろ?俺は言葉にするのに迷ってしまったんだ。」
「どうして……迷ったの……?」
それは素直な疑問だろう。同じ気持ちなら言える筈だと考えるのは当然で、言えないなら同じ気持ちではないのかと思ってしまうのも当然だ。だけど、言えなかった理由は本当は違う。
「その……言えなかったのは……。」
見る間に赤くなっていく恭平の顔を見上げ、仁聖は不思議そうにその様子に瞬きする。
「………その、………だから……。」
「恭平……?」
「俺は………、お前の、人生……全部欲しいなんて……思ってしまってて。そういうのは……自分勝手だなと……思ったら言葉に詰まったんだ…。」
相手に完全に甘えきっていてて、自分勝手な思いで相手の全てを欲しがっている自分に気がついたら、これじゃ相手に失礼じゃないかと思ってしまった。こんな勝手な感情で大事な人を振り回すのは幼稚な愛情と変わらないと思ったら、答えを出せなくて押し黙ってしまったのだ。ちゃんと伴侶として寄り添う気持ちでいる仁聖に、こんな思いでいいのかなんて戸惑ってしまった。
「ちゃんと……お前の事を欲しいと思って、自分で選んだと言えばよかっただけなんだ……でも、それを迷わず言えなかった。……情けないな。」
それを指摘されて自分でも恥ずかしくなったし、情けないとも思った。こんなに好きで愛しているのに、それで選んだと言えないなんて。
「自分で決めたのに、お前みたいに素直に言えないし、お前みたいに直ぐ言葉にもできない。」
それが全部とは言えないけど大事な時には、ちゃんと言葉にしないと駄目だと釘をさされたのだ。ちゃんと説明しておけばよかったのだけど、それをしなかったのも俺が恥ずかしかったからと教える。
「だから俺が情けないというだけだけど、少しずつ前に進むから。お前は気にしなくていいってことなんだ。分かったか?」
そう言われているのに見上げている仁聖の青味がかった瞳が、何でかまん丸になってウルウルとしている気がする。真っ赤になりながら辿々しく説明する自分が可笑しかっただろうかなんて考えながら、頭を撫でると仁聖が膝に縋りつくようにして身を大きく乗り出す。
「恭平……俺の事全部、欲しいって…………とこ、もう一回。」
「は?」
キラキラしたオーラを放ちながら輝く瞳で強請られる仁聖の言葉の意味がわからず恭平が問い返すと、もう一回言ってと繰り返して身を乗り出してくる。う、と思わず詰まるが最近の訳のわからないキラキラした色気を振り撒きながら、膝に縋って強請る仁聖の甘えた低い耳を擽るような声。
「お願い!もう一回!please!Can you say that again!」
何が一体そう何度も言わせたいんだと恭平は呆れ果ててしまいそうなのに、その無駄なキラキラがどうにも理性を邪魔をしている気がする。期待感満々で自分を見上げている瞳に、どうしたものかと恭平は再び赤面していた。
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「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
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