鮮明な月

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間章 ちょっと合間の話

間話5.嫉妬に焦がれて

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気がつくと仁聖の手は既に解放されていて体液まみれ、しかも腕にはグッタリと気を失った恭平がキツく自分の体を抱き締めたまま仁聖の胸に頬を擦り付けてる。身動きしようにもグダグタと骨を抜かれたように全く力が入らない手足に、仁聖は溜め息をついてボォッと天井を眺め考え込む。

恭平の言いたいの最もだよな………。

あのポスターが恭平だったらと考えたら、当然自分は嫉妬で怒り狂うに違いない。もし、あの構図で誰か女の人と絡み合う恭平を思うだけで正直嫌だし、何より自分は合気道で男と組み合うのですら嫉妬した訳だ。恭平と鳥飼信哉があんな風にポスターを撮ったらさぞかし艶めかしいだろうが、そんなことをされたら即座に恭平をベットに押し込む自信がある。

恭平の縛ったりって……嫉妬……なのかな。

そう言われると前回の時は酔っていた訳だが、手だけでなく陰茎迄縛られた。ただし実はあの時の事は、恭平は翌日全く記憶になかったのだが、真希の妊娠の話で篠に巻き込まれて呼ばれたのだ。でも、仁聖が信哉と一緒の姿に嫉妬したのに、そんなこと考えるくらいならもっと独り占めすればいいと言ったのだった。独り占めしていいと言われたから仁聖は過分に恭平を独り占めしているが、恭平の方はどうなのか。最初から自分がアピール過多でスキンシップ過多だったから気がつかなかったが、恭平は我慢していないのだろうかと考えてしまう。

いや、我慢してくれてんだよな……俺、適当だったし。

しかも自分が学生だったから色々な面で、恭平は我慢してくれていたに違いない。それに卒業式のことだって、叔父に連絡を必死にとってくれていたとは知らなかった。恭平は自分がどうでもいいと思っていたことも、密かに気を使ってくれているのだ。その癖自分と来たら自分の事に手一杯で、あの時確認できた筈の事も適当に済ませたから、今日になって恭平を傷つけてしまった。

「恭平……ごめんね……。」

恭平は早く大人にならなくていいなんていってくれるけれど、こんな風に傷つけてしまう子供のままでは駄目だと思う。愛してるから、大事にしたいからこそ大人にならないと。

「愛してる……恭平。」
「ん、………あれ、……格好いい……な。」

起きてたのかと驚くけれど、呟かれた言葉に何の事?と覗きこむ。潤んだ瞳で上目遣いに仁聖を見上げた恭平は、少し恥ずかしそうに頬を染めて呟く。

「……あのポスター………、お前、急にあんな風に……格好いいと……狡い。」

少し拗ねたように囁く声にクラクラしてしまう。本当に仁聖の大切な人は、こんな風に仁聖に予期しない場面で不意に会心の一撃を食らわせるのだ。

「お前が……あんなに………格好良くなかったら……こんな、頭に来なかった……、と思う。」
「今回は格好いいから、駄目だってこと?」

前の自分だったら嫉妬してくれなかったということかと問いかけたのに、恭平は更に頬を染めて俯いたかと思うと恥ずかしいことを言うみたいに声を潜める。

「……そんなわけない………、こんなに格好いいから驚いたけど、そうでなくても……嫌に決まってる……馬鹿……。」

ああ、なんって可愛いこと言うんだろうと、思わず悶絶しそうになってしまう。どうせなら、あのポスターを彩花でなく恭平で撮ってくれたら、完全保存するために何でもするのに。そんなことを考え思わず顔を両手で覆ってしまう仁聖に、恭平は不思議そうに視線をあげた。

「あー………あのポスター………恭平と撮ったのだったら良かったのに……。」
「……なに馬鹿なこといってるんだ………、それで、…………お前、モデルはするのか?」
「興味ない………けど、バイト代高いって誘われた。」
「そんなに稼がないと駄目か?大学もあるんだし、家賃なら気にしなくても……。」

それは駄目と言い切ったのは仁聖で、家賃と光熱費の折半は折れる気はないらしい。別にいいのにという恭平に、それだけは絶対嫌と言いきるのは仁聖なりに決意や意地もあるのだろう。

「モデル……かぁ………よくわかんないけどなぁ……。」

内心恭平に格好いいと言われたのには少し気持ちが揺れもするし、金額的な話もあるのは事実。他のバイトを掛け持ちするよりは楽なのは確かだし、紹介があるのも大きい。

「……バイトでやるだけなら許してくれる?……恭平。」
「……やりたいならとめないけど……。」
「けど?」

少しだけ恭平は溜め息をつきながら仁聖の顔を見上げると、上目遣いにいいかと呟く。

「俺が嫉妬しないで済むように、少しは…配慮しろ……それだけは条件としてのんで貰うからな……?」

つまりはどんな写真を撮ったのか、何に使われるのか、誰と撮ったのか、そういうことは事前に説明してくれと恭平に言われて、仁聖はわかりましたと言いながらその体を抱き上げる。ギュウッと抱き締めて肌を擦り寄せながら、そういえばと恭平に声をかけた。

「ねぇ、そう言えば、何で了って人連絡寄越してんの?」
「………そう言われれば………何でかな……。」

あの人悪いことした意識ないの?と不満そうに仁聖が頬を膨らませるのに、いや悪いことをしたとは思ってるだろうけど多分今それどころではないんじゃないだろうかと恭平はボンヤリと考える。どうも、あの盲目の外崎宏太という人は成田了なんか目じゃないくらいの破天荒な人間のような気がするし、何となくだが名前に聞き覚えがある気がするのだ。

「知り合いなの?外崎って人。」
「いや、直接ではないけどな……昔、どこかで聞いた気がするんだ……何処だったかな………?」

ふうんと不思議そうに言いながらも仁聖は、それでも了って人と何でLINEしてるのさと不満そうに呟くと思い出したように恭平のスマホを手にすると、自分のポスター画像を送りつけてきた画面を開く。

《そっちから恭平に連絡すんな!恭平は俺の!》

そう止める間もなく仁聖が打ち込み送信していた。



※※※



ギシギシと恥ずかしい台に固定されてなぶられている成田了は、見えないと知りつつキッと上目遣いに目の前の男を睨み付ける。

何だってこういう物の完備のホテルを知ってるかな、こいつは。

恐らくは昔馴染みと言うことなのだろうが、目下赤いパイプの台に俯せに固定された了は好みじゃないと宏太も知っているし分かっている筈の玩具を散々に駆使されていた。

「ううっ!」

口には金具の輪を嵌められ口を閉じることも、言葉を発することも出来ない。手足は床に向かって伸ばすようにして固定されて、怒張には尿道プラグだけでなく亀頭を責めるための玩具が嵌められている。両方の乳首には吸引器をつけられ絞り出されている上に、その機械の中でイソギンチャクみたいな部分が激しく擦りたてているのだ。

「んううっあううっ!」

しかもご丁寧に後孔に蠢く玩具を咥え込ませ固定した上に、鬼畜で変態の最低男は延々と了の口に怒張をグポグポと擦り付け続けている。しかも、今までと違って了は目下とんでもなく感じさせられていて、さっきからドライで何度果てているか自分でも分からない。実はホテルに連れ込まれた時、宏太はこの台の存在に気がついていない様子だったのだ。了は宏太が目が見えてないから、知らないでこの部屋に入ったのかと思うくらいでそのままベットに押し倒された。ベットで乱暴に抱かれ完全にいかされてからが、この鬼畜の変態の本領発揮だったのだ。軽々と裸のまま担ぎ上げたかと思ったら、次の瞬間には台に固定されていた。しかもまるで見えてんのか?!と思うほどテキパキと玩具を装着され、一度いったばかりの体は快楽に抗えない。特に尻孔にバイブを入れられる前と、尿道プラグを捩じ込まれるのは最悪なのか最高なのかわからなかった。宏太が何度も口淫で愛撫するから、いきまくって腰がガクガク痙攣するほど気持ちいい。特に尻孔の方は散々奥まで舌を捩じ込まれ舐められて死ぬほど恥ずかしい上に、時々宏太がいきなり怒張を捩じ込んだりして感じさせるから快感から逃げようがないのだ。

「いい子だ、気持ち良くなってグチュグチュだな。」

囁くように笑いながら口に怒張を捩じ込みながら、固定されたバイブを出し入れされるのに宏太は悲鳴染みた声をあげながら仰け反る。ヌポヌポ音をたてて口を出し入れされる宏太の怒張は何時もより更に硬く熱くて、口を満たして宏太の雄の匂いでクラクラしていく。

「口もヌルヌルでいい具合だ、了。俺のは旨いか?ん?」

変態と叫びたいのに気持ちよくて仕方がない。全身を責め立てられドライで何度もいかされて、了の怒張の先からは精液が隙間を伝って糸をひき床に淫らな光景をさらしている。

「旨いなら、思い切り吸ってみな?了。」

言われるがまま強く飲み込むように吸い上げてやると、宏太の腰がビクリと震えるのがわかって宏太は満足げだ。やっと頭を撫でながら口枷を外された了は、切れ切れの声で宏太に向かって訴える。

「何……で、………拘束………すんだよ……、いらねぇ……だろ?」
「ん?」
「俺は……あんたの、…ものなんだ……ぞ?いらね………だろぉ!」

そうすると頭を撫でながら宏太はニヤリと口の端を上げて笑い、唇を指で撫でて乳首の吸引ポンプをギュポッと音をたてて外す。吸い出されて赤く膨れた乳首を指で弄びながら、宏太はもう片方のポンプも外した。

「仕方ねぇだろ?性癖なんだから。」
「なんだよ……ぉ、…それぇ……あんっ!」
「可愛い声でなく、お前が悪い。」

乳首を捏ね回しながら平然とそう言う宏太に、了は開いた口が塞がらない。もう傍にいると分かっていても、泣き声が聞きたいからこうやって責めると言われているのだ。呆然とする了の後ろのバイブを出し入れしながら、舌舐めずりした宏太が唇に怒張を押し当ててくる。

「さ、可愛い口で舐めてくれ、了。」
「最悪だぁ……あん、宏太の馬鹿ぁ……んんっ!あうんっ!」

口に捩じ込まれてまた腰を振られても、自分が嫌がっていないのも忌々しい。音をたてて吸いたててやりながら腰を痙攣させる了に、また目の前の最悪の男が了を酔わせる色気を出し始めている。

くそ、傷だらけの身体してて、そんな色気出すな!

興奮しきった最悪の男は了の口から怒張を引き出すと、するりと股間の方に回って尻に捩じ込んでいたバイブを抜き取ると息を荒げてのし掛かった。ヌブッと再び宏太の怒張が体内に押し込まれると、了の突きだした腰がガクガクと痙攣する。

「あううっ!ああっ!あああっ!」
「玩具より本物が、好きか?ん?」
「あ、たりまえ…っだろぉ!馬鹿あっ!あああっ!あううっ!」

グプグプと音をたてて体内を擦る感触に酩酊しながら腰を突きだし押し付ける了に、尿道のプラグも抜き取ってやりながら宏太は興奮しきって更に腰を激しく振り立てた。源川仁聖のポスターを見つけたことで不貞腐れた宏太に連れ込まれたラブホテルで散々激しく犯され続けて、実際は了はもう息も絶え絶えだ。

「んん……さと、る。」

不意にのし掛かった宏太の声が熱く蕩けたような気がして、了は意識を引き寄せられる。荒い息で熱く蕩けた声が耳を犯すように低く囁いてきて、了は快感に思わず背を仰け反らせた。

「さ、とる………いけ、そうだ……。」
「え……?こ、た?」
「いい、………いきそうだ………気持ちいい……。」

その色気を含んだ宏太の囁き声に、了は慌てて腰をくねらせ悲鳴染みた声をあげ始める。

「やぁ!やだっ!こうた!や!やだっ!」
「ああ?!何でやだだ?!素直に受け止めろ!」
「やだぁっ!やだっ!こうたっラブホでじゃやだぁっ!!」

突然暴れて泣き出した了の言葉に、のし掛かっていた宏太の方がギョッとしたように動きを中断した。宏太の感覚の鈍った男性器は了とセックス出来るようになってから、まだ一度も絶頂で射精をしたことがない。射精できるかどうかすら宏太自身も知らないのが本音なのだが、実は少しずつ勃起の感覚もするようになってきていたところなのだ。
初めて絶頂感に行き着きそうになったのを遮られたのは腹立たしいが、その理由が射精を受け止めたくない訳じゃなくてラブホじゃ嫌だなんて。

なんだ、そりゃ

そう思ったのは事実だが、本気で泣き出した了には敵わない。実は了は気がついていないが、本気で了に嫌がられたら宏太にだって出来ない事は沢山あるのだ。本気で了が拘束されたくないのを、宏太だって無理強いする気なんて一つもない。ただ嫌がりながらも感じてしまう了の声が恐ろしい程に可愛く色っぽくて、宏太の歪な性癖が止めようもなく興奮してしまうだけなのだ。とは言え本気で嫌がって泣かれては困る訳で、宏太はさっさと手足の拘束を外してやると了の体を抱き上げる。

「了、泣くな、やなのはやめたろ?ん?」
「ほ、んとに、いきそう?でそうなの?」

嘘ついてどうすんだよと呆れたようにいうと、抱き上げられた了が首に腕を絡めてくる。縋りつくくらいならさせろよと言いたいが、ラブホは嫌なら何処ならいいんだと考えてしまう。宏太はそう言うデリカシーなんてものが全く理解出来ないから、希和が自殺してもあのマンションで平然と暮らしていた。でも、本当なら了のように感じるのが普通なのは分かる。その普通の感覚の了は、射精出来そうな宏太にこんな場所では嫌だと訴えているのだ。

「出そうだからよ?何処でなら最後までさせんだ?ん?ちゃんと嫌がったから止めただろ?」

その言葉に了は息を飲んだみたいに一瞬黙りこんで、まるで顔から熱を発しているみたいな体温で宏太に擦り寄ってきた。目の見えない宏太でも、了が今顔を真っ赤にしているのがよく分かる。そう考えていると首に絡んだ腕が更に力を込めて、了が耳元で可愛い声で囁く。

「う、………家が、いい……、家で、しよ……。」
「新しい方か?」
「で、出来れば………。」

新居になる家を今朝見に行ったばかりで、後は仕事の機材を持ち込む算段がつけば自分達が引っ越しするだけ。実は今の家具はマンションから持ち出さず処分して、新しい家には持ち込まないつもりなのだ。服を運ぶだけにしたいと何となく宏太がそう了に言ったからで、その理由は宏太自身もよく分からない。でも、その新しい場所で初めてが欲しいという了の言葉は、何でか宏太の腹の奥にグッときた。

「……ごめん、したい、よな、宏太。」

折角性感が高ぶっていけそうだというのを引き留めてしまったのに気がついて、思わずシュンとした了の頭を撫でて宏太はニヤリと笑う。本当はそんなのたいした問題ではないような気がするが、了がそう願うならきっとその願いを叶えた方がきっと宏太も気持ちよくなる気がする。

「よし。さっさと引っ越すか?ん?」
「宏太……。」
「悪いと思うんならよ?宏太が好きって言え、そしたら許してやる。ほら。」

頭を撫でながら言ってやると、了はまた恥ずかしいのか熱を発しているみたいに赤くなってしまう。何でか了は言わせようとすると恥ずかしがって赤くなるんだが、それがまた実は宏太にはグッとくるものがある。

「宏太……。」
「ん。」
「宏太、愛してる……。」

思わぬ方面で小さく耳元で囁かれて、それが甘くズンッと腹に響く。了は全く分かっていないが、こんな風に可愛い甘えかたを何かにつけて宏太にしてくるのだ。これを今まで付き合った男にもしてたのかと思うと、正直相手の男をドライでしかいけないように極限まで追い込んでおきたくなる。というか了が仕込んだ相手は大概今では男相手に雌イキするようになって、男漁りをしているのは承知の上なのたが。こんなことを調べてあると教えたらきっと了にはまた、変態だの鬼畜だの最悪だのと可愛い声で散々言われるに違いない。

「宏太?」
「ん?」
「どうした?……まだ、駄目?もっかい、言う?」

まだ許してもらえないのかと思ったらしい了が戸惑いながら問いかけてくるのに迷わずもう一回というと、これまた恥ずかしそうにしながら同じ台詞を更に可愛い声で繰り返す。人を鬼畜だの最悪だのと何だかんだ言う前に、その可愛らしさ何とかしろと宏太は本当は思う。そんな可愛い声を無意識に出すのに、了が他の男の話なんかするから悪いのだ。最悪の男に惚れられたと分かってるなら、それなりのつもりでいてもらいたい。

「おし、服着ろ、帰って今日にも引っ越す。」
「今日って……仕事は?マンションだって、どうすんだよ?」
「暫く休んだって問題ねぇ。あすこはどうせ売れねぇから中継局二号だ。」

昔経営していた自分のバーは事故物件なので、今の仕事に使う耳の中継局に変わった。今のマンションも状況は同じようなものだから、売れないのは分かってるし中継局にするには高い階だし都合もいい。平然とそう言う宏太に了の方が暫しポカーンとしていたが、やがて可笑しそうに笑う。

「あんたって本当に変なとこで有能なんだよな。」
「ああ?褒めてんのか貶してんのかわかんねぇぞ?了。」
「褒めてる、俺の男は有能だって褒めてるよ。」

そう言われると腑に落ちないものはあるが、悪い気もしない。宏太が早く服着ろというと、シャワーくらい使わせろと不貞腐れた了の声がする。そうか、一回してるしなと素直に納得する宏太に何やってんだよと、了が風呂場の扉を開いて声を上げた。

「早く来いって、宏太。」
「あ?」

訝しげな宏太の声に、恥ずかしげで同時に呆れたように了が言う。

「一緒に入ろうって、宏太。早く来いってば。」
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