鮮明な月

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間章 ちょっと合間の話

間話3.白袴

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ソファーの上に押し倒されたまま、グンっと仁聖の腰が強く動き体内に熱い怒張を一気に奥深く捩じ込む。奥まで貫かれる強い衝撃に、恭平が鋭い悲鳴に似た喘ぎをあげ仰け反った。

「んんんっ!あっふあっ!ふかぁ………ああっ!」

恭平の淫らに着崩した道着と帯が絡む細い腰としなやかな脚。高く片足だけ抱えあげられ体を捻るようにして、ズンズンと深く注挿される仁聖の怒張の力強さ。先端から根本までの大きな注挿を受け入れる程に思わず腰が撓り、恭平は大きく甘い声で快感に喘いでしまう。

「うんっ!あっ!ああっ!あんっ!ああっ!」
「恭平……、愛してる…。」
「こ……れ、やぁ!あ、ああ!仁せっ…ああっ!ううんっ!」

脚を大きく広げ酷く羞恥心を煽る淫らな体勢なのに恭平は、仁聖にされると快感で全く抵抗することも抵抗を考えることもできない。必死で溢れる声を堪えようとするのに衝撃が強すぎてソファー座面にしがみつくのが精一杯で、今や口を押さえることもできないでいる。

「あうっううっ!ううんっ!あっ!はげし…っ!あっ!」
「熱くて…うねってるっ…よ…恭平っ、いい?」

リビングのまだ明るい光が射し込むなかで、自分にのし掛かり身体を揺らす仁聖。その姿が酷く淫らで男らしいのに、思わず恭平は息が詰まりそうになってしまう。仁聖は自分で気がついていないけれど、恭平の目には急に男になりすぎて正直戸惑ってしまう。しなやかで力強くて呑み込まれてしまいそうな男の艶。抱き締められその瞳で見つめられるだけで、芯が熱くなるほどの色気を持ち始めた仁聖に恭平は少し戸惑ってしまう。それが仁聖が大人になり始めた証拠だと思うし、同時にそれに呑み込まれてしまいそうなのが怖くなる。仁聖は強くて眩すぎて、自分はグズグズに蕩けてしまいそうなのだ。

「んうぅっやあ!あっあっ、あうっ!これ、や、あっ!」
「やだ?そうは見えないけど……恭平、や?」

少し意地悪く仁聖が低い声で囁きかけてくる。快感にビクビクと足が震えて宙に痙攣しながらの延び上がるのを知りながら、仁聖は音をたてて白い抱き抱える脚に口付ける。強く何度も太股に口付けの跡を刻み込まれて、激しくパンッと破裂音で腰を叩きつけられ思わず甲高く甘い声が溢れてしまう。

「ホントにや?ね?恭平、やだ?」
「んんっあっあっああっ!あああっ!だ、めぇっ!あああっ!あーっ!」

中を擦られ達してしまいそうになると、それを見抜いた仁聖が意地悪く腰の動きを緩めてくる。そうして暫くして少し落ち着いたと思うと激しい腰の動きが再開されるのに、恭平は顎を上げながらヒクヒクと何時までも喘がされてしまう。ふと視線を細めた仁聖が淫靡に唇を舐めたかと思うと、動きを完全に止めて怒張を半分のところで留める。焦れて腰を蠢かす恭平の腰を仁聖は覆い被さるようにして、自分の体と片手で押さえ込んでしまう。

「恭平、ね?前と後ろ、どっちして欲しい?」
「ふ、…ぇ?…………な、……に?ン………っ。」
「前もパンパンだよ?……こっちも苦しそう……。」
「あううっ!!ひあっ!」

唐突にヌルンと張り詰めた怒張をキツく片手で握り込まれ、更に腰を一度ズプンと注挿され全身が快感に震える。そうして握り込まれた怒張はそのまま、後孔を埋める怒張も半分程抜かれどちらも快感に満たない刺激をジリジリと蓄積させていく。何時までたってもどちらもそれ以上の動きを見せず、快感を欲しがる身体をもて余して潤んだ瞳で恭平は戸惑うように仁聖を見上げる。仁聖はその視線に酷く淫らで熱っぽい瞳を向けて、恭平以上に欲情した顔を浮かべた。

「前と後ろ……どっちが欲しい?」
「な、んで……んくっ……んっ、あ。」
「言ってくれたら、片っ方たっぷりしてあげる。」

魅惑的な仁聖の誘惑の声に、恭平は自分でも腰を動かしたくてしかたがない。それなのにのし掛かられ片手で押さえ込まれ、ピクリとも動かせないもどかしさに体内の奥がひくつく。体内で膨れ上がる仁聖の硬いものが無意識にピクピクと動く感触に、体内が勝手に蕩けて吸い付き反応してしまう。しかも握り込まれた怒張も直に触れる手の熱さで、快感で蕩けてしまいそうになっている。弱く頭を振りながら恭平は、思わず欲情しきって甘えた声を上げていた。

「じ、んせ……やぁ。」
「や?どっちも、やだ?やめる?」
「ち、が……やめるの、やぁ。」
「じゃ、どっち?前?後ろ?」

意地悪く再度どちらかを強請るように促されて、恭平は羞恥心に頬を染めながら頭を弱く振った。もう分かっているくせにと弱く囁く恭平の声に、何故か仁聖は全く折れてくれない。

「………し……。」

真っ赤になりながら俯いた恭平が呟くのに、仁聖は意地悪くもう一度どっち?と囁きかける。羞恥心に真っ赤に頬を染めた恭平が震える荒い吐息を溢しながら、悩ましげに眉をしかめて懇願の声を呟く。

「う、しろ……を………して……。」

恭平の言葉と同時にグプンと深々と捩じ込まれた怒張に、一瞬喉に声が張り付いて息が詰まる。

「んううぅっ!…………う、あ………あぁあ!あぁ……。」

その後の恭平の声が、甘い蕩けた声に色を変えていく。視界に揺れるしなやかな身体に恭平は必死に縋りつく。仁聖が更に激しく奥を突き上げてきて、無意識にその腰に恭平の脚が絡んでしまう。自分から更に奥深くまで求めるその仕草に、仁聖の動きがなおのこと激しさを増していく。リビング中にパチュバチュという淫らな繋がる音が響き渡り、恭平のしがみつく指がその背中に赤く傷をつける。

「んんっ!あ!ああ!も、あああっ!」
「ふっ!うっ!きょ、うへ!お、れも!いくっ!」

ゴツゴツと奥を突かれる激しさに絶頂に痙攣する恭平を抱き締めて、仁聖もその奥にドプッと勢いよく大量の歓喜を放っていた。陰茎を抜き取られた体内から溢れ出す体液と恭平自身の体液が混ざり、肌を伝ってトロトロと滴り落ちてシワだらけの袴や下着に淫らな痕を刻み込む。

「ああ……スッゴい、……いっちゃった……俺。」

ハアハアと荒げた息で自分を抱き寄せる仁聖に身を寄せながら、同じように息を上げて恭平が少し拗ねたように呟く。

「馬鹿……これじゃ、袴………信哉さんに返せないだろ……。」
「ごめん……。」

流石に淫らな事をしてしまった物を、幾ら洗濯したとしても返すのは些か心苦しい。しょうがない買って返さなきゃと苦笑する恭平に、仁聖は改めてしっかりと抱き寄せた。

「ごめん、恭平……俺…嫉妬して……。」
「嫉妬?」
「恭平、だってあの人と二人っきりで着替えするし、あの人の道着を躊躇わずに着てるし……。」

その言葉に恭平は思わず目を丸くする。
確かに真見塚道場の更衣室で、鳥飼信哉と着替えたのは事実だし道着は信哉のものを借りた。何しろ男子更衣室はひとつだし、どうやら密かに修練を続けている節のある信哉と違って恭平は完全に合気道から離れていたから道着も処分してしまっているからだ。それにしてもそんな風に感じていたとは、全く道場では感じなかったのに。

「それに……。」
「それに?何だ?」

仁聖が少し悲しげに見える顔をあげると、恭平の事を真正面から見下ろす。

「……俺が投げられる話に……一つもなんなかった……。」

そう言うと仁聖は初めて見せる表情で恭平の事を慎重に抱き起こして、強く自分の腕の中に抱き締める。
それは自分よりはるかに分別もあり完全な大人の男性である鳥飼信哉への強い嫉妬。恭平の隣に立っても全く見劣りもしない強靭さも穏やかな包容力も、仁聖にはまだ欲しくても得られない。しかも鳥飼信哉は恭平よりも年上で、自分が今すぐ欲しいものを持ちすぎている。自分とは違う少し躊躇いがちに彼の名前を呼ぶ恭平の声に、そう呼ばれる彼が羨ましくて仕方がないのだ。
それに土志田悌順も鳥飼信哉も、仁聖の意図や決心は聞いてきたけれど自分に責任を求めようとはしなかった。仁聖が合気道をやってないとか、柔道をやってないとかそんなことは関係ない。結局責任を求められたのは恭平だけで、それは仁聖がまだ子供だと彼ら二人が完全にみなしているからだ。それが酷く悔しくて仕方がない。

「俺……早く、大人になりたい………。」

こんなことを言ってしまうのが子供なんだと分かっていても、そう呟かずにはいられない。思わず顔を伏せてしまいながら、仁聖は悔しさに呻くように呟く。抱き締めた腕の中の人を守りたいのに、自分はまだ子供過ぎて恭平と対等にすら扱ってもらえないのだと証明されるのがこんなにも辛くて悔しい。

「仁聖…。」
「ごめん、こんなこと言って、でも俺、悔しい……。」

そう本音を吐露してしまうと、正直泣きたくなってしまう。子供としてしか見られないのが悔しいのは事実だが、本当に悔しくて腹立たしいのは年なんか関係なく対等に見られるよう振る舞えない自分。子供染みた嫉妬に狂って、それを恭平にぶつけてしまう自分の弱さだ。本当ならあの二週間前の事件の事もあるし恭平を労って大事にしないとならないのに、嫉妬で意地悪く責め立ててしまう脆くて我が儘な自分が一番ムカつく。

「早く、恭平と対等になりたい……。」
「仁聖……。」

抱き寄せ肩に埋めた顔を上げることなく呟く仁聖が泣き出しそうなのに気がついているのか、恭平は優しくその栗毛を撫でながら笑う。暫くそうしていた恭平が、チョンと仁聖の耳朶に触れて囁きかけてくる。

「仁聖、顔上げろ。」

素直に従うには少し今の自分は格好が悪すぎて、思わず仁聖の口から出たのは拒否の言葉だった。

「やだ。」
「キスしたい、から、顔上げろって。」

それでも柔らかな声で恭平からそんな風に強請られて、つい顔をあげてしまう。そんな仁聖に少しおかしそうに微笑んだ恭平が、顎を指で持ち上げると柔らかく甘い口付けを落とす。そんな甘いキスの後にまた仁聖の頭を撫でながら、恭平が拗ねたように言う。

「ゆっくりでいいから……な?……大人になるの。」
「やだよ…、早く大人になりたい。」

不貞腐れて不機嫌そうにそう答える仁聖に、今度は恭平が甘えるように仁聖の肩に頭をのせてくる。

「俺が……困るから、ゆっくり大人になって欲しいんだ…。」
「なんで、こまんの?もう、気を使わなくていいってば……。」

更に不貞腐されたようにそう言う仁聖の顔を、肩に頭をのせたまま間近に見上げていた恭平が少し恥ずかしそうに微笑みながら耳元に囁きかけてくる。

「……急に大人びると……見てて困る。」

その言葉は少し切なげで、しかもトロリと蕩けて甘い。予想外の言葉に訝しげに仁聖は目を細めて、首を傾げてしまう。

「どういうこと?」

肩にのせられたままの恭平の頭の重さを直に感じとりながら、その表情の濃艶に見せられて仁聖は息を飲んでしまう。ドキリとするほど艶のある潤んだ視線が、すぐ間近で仁聖の事を見ている。

「俺は……目が……引き寄せられて、離せなくて………。」

そぅっと囁きかける声は、まるで褥の最中のようにトロリと甘く少し艶を含んでいて吐息混じりで耳に熱い。それが今更のように不貞腐された仁聖に気を使っているだけでなく、恭平の本心なのだと感じさせる。

「…………男っぽくて、…………恥ずかしくて困る。」
「恥ずかしい?」
「惚れてるって……お前に全部引き寄せられて、呑まれてしまうから……。」

思わぬ言葉に見る間に仁聖の顔が赤くなるのが分かって、恭平は流石に照れるように顔を逆に向けながらそっと腕を仁聖の首に回す。そうして恥ずかしさを含んで小さな声で強請るように、仁聖に囁きかける。

「風呂に入りたい……。」
「う、うん。」

お互いの体液でグショグショになっている上に、激しい運動で汗だくにもなっている。その上で恭平は仁聖に縋りつき、耳元で誘うように囁きかける。

「俺は今……自分で動けないから、お前に全部任せる。」
「……え?」

恭平の言葉の意図が掴めず仁聖が戸惑うのがわかる。意識が朦朧としてやむを得ず委ねられることはあったが、こんな風に恭平から請われたのは初めてだ。恭平は頬を染めて耳迄真っ赤になっているのが、顔を見なくてもわかるくらい。

「全部任せるから、お前が全部やって。」

ゴックンと妙な音を仁聖の喉がたてたのに、恭平はおかしそうに小さく笑いながら早くしろと強請って身体を委ねていた。



※※※



何でか当然のように外に出ると外崎宏太と成田了は手を繋いで歩いているが、実際この手の繋ぎ方はただの恋人であって盲人介護のための繋ぎ方では全くない。傍目には気がつかれてないかどうかも謎だが、結局外崎宏太が繋ぎたいだけなのである。繋がなくても宏太は殆ど街中でも駅前なら問題なく歩けているのに、宏太は手を離すと了が逃げるとでも思っているのかもしれない。と了は一応思うことにしているが、恐ろしい結論だが本当はただ繋ぎたいだけなのだと気がついてもいる。

「あれ?これ。」

駅前を宏太の手を取り歩いていた了の脚がふと止まり、その巨大な駅貼りのポスターを眺める。黒を主体にした艶やかなドレスを纏う女性と寄り添う、異国めいた風貌の上半身を晒す男。化粧品のポスターなのだが、艶やかな女性より存在感を放つのは一際色気を放つ男の背中の方だ。

「あ?なんだよ。了。」

巨大な駅張りポスターは恐らくは一畳以上。女性の色の白さが鮮やかに生えるが、華やかさでは上半身裸なだけの男の方が上回っている。普段と全く髪型も違うし何時ものヘラヘラした感じとは違う、憂いに似た眼差しに色気が漂う。

「………これ、源川?」
「あ?何だよ。他の男の事か?ん?」

何枚もある駅貼りポスターに二人だけでなく、惹き付けられた人間が思わず立ち止まるのがわかる。とは言え手を繋いでいる男の剣呑な気配に、了は慌てて状況を説明し始めた。何せちゃんと釈明しておかないと、街中でこの鬼畜の変態は無体な行動に走りかねない。

「ちがう、ポスターの話だ、馬鹿。」
「ポスターでも、他の男だろうが。」

思わずあんたホントに嫉妬深いなと呆れたように言いながらあいつモデルでもやる気なのか?と呟く了に、完全に不貞腐れた顔の宏太が手を引く。一応微妙だが交流を再開した恭平に写メをLINEしてやったが、お陰で了がラブホテルに引きずり込まれたのはここだけの話だった。



※※※



LINEを見た恭平は一瞬ポカーンとしてしまった。
成田了が朝っぱらから送ってきたLINEに《モデルやんのか?》と書かれていてこいつは何を言ってんだ?と思ったら、その後に流れてきた鮮明な画像。
駅に貼られる大きなポスターには絡み合う男女。

うねる長い髪を肩に垂らす女性は艷やかな光沢のある黒のビロードのドレスで、縁取りのレースが艶かしく白い肌が際立つ。その相手の男はしなやかで力強い裸の背中を晒し、サイドを撫で付けた栗色の髪に憂いた色気の漂う深い青の瞳。女性を伏し目がちに見つめる色気に、寄り添う女性がウットリしてその裸の逞しい肩にしなだれかかっている。
思わず隣でヘニャッとした顔で恭平の腰に手を回して、未だに熟睡中の仁聖を見下ろす。

そう言えばこんな髪型………して帰ってきた時あったな……。

何時だったか…と思わず考え込んでしまうが、確かにこんな風に髪を整えて着たくしたことが一度あった。その髪型に一瞬ドキリとしたから覚えているが、こんな写真を撮った話は聞いていない。

「んぅ…………きょぉ………へ?……。」

ホニャッとした顔で甘え声を出して来る仁聖に、これは怒るべきなのか追求すべきなのか恭平は戸惑いながら見下ろす。幸せそうに恭平の腰に手を回して顔を擦り寄せている仁聖に、何でか少しムッとしてしまう。
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