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間章 狂宴・成田了の事象
間話2.鬼畜で変態で最愛の男
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現実として陰茎の切断と言うものは、残った部分がどれくらいかで、その後の結果は異なるのだという。医療の専門的な事はよく分からないが、根本からの切断は生殖機能どころか排尿も困難になるそうだ。と言うのも陰茎の根本に排泄のための神経が走っているからで、根本から切断をされたら諦めてカテーテルという管を使って排尿するしかない。
因みに切断された陰茎が手元に残っている場合は、即丁寧に再建術と言うやつで繋ぐことは可能なんだという。上手く神経が繋がれば生殖も可能にはなるらしいが、そこら辺は何せ排泄の器官でもあるから感染症とかなんとか色々と大きな問題はあるようだ。
外崎宏太の場合は平然と教えてくれたのだが、切られた方の物は残念なことに細切れにされてゴミ箱に投げられていたそうだ。でも切断されたのが途中からだったので、根本は無事だった。お陰で切断面を綺麗に縫合しただけで、排泄という面では問題がなかったのだ。それに三浦の使ったナイフの先端が既に血糊で切れ味が悪かったのと太股を先に大きく抉ったせいで、陰嚢も半分しか切断されなかったのが幸を然して性的なホルモンの分泌なども維持されたようだ。恐らく喉を先に切られ倒れた後で服から取り出した陰茎を切断したからで、出血と衣類で確認ができなかったんだろうと宏太はいう。これが全裸なら後から襲われた奴と自分も変わらなかった筈だと聞かされて、正直ゾッとしてしまう。
そうして半分に切断され繋がれた皮膚の接合部があるため、新しい先端の感覚が鈍ったのだとは思う。勿論亀頭があるわけではないから普通の感覚とは全く違うだろうし、陰嚢も半分無くしているからどこまで残りが活動しているか分からない。何より本人ですら視覚的にどんな状態なのか確認できない上に、耳が良すぎて看護師達の若いのにあんなグロいという心ない言葉に早々に諦観の気持ちになったのは分かる。
それでも今は確かに完全に勃起しているとは言いがたいが、宏太のものは了の中に硬く突き刺さってた。そうして宏太の陰茎に体内を満たされる激しい快感に、了は完全に蕩けてしまい酩酊している。押し付けられ揺すりも動かしもしなくても、何度も達しているような電撃めいた激しい満たされる快感。僅かにでも動かされれば、その快感は更に激しく了を貫いて骨抜きにしてしまう。
「も、だめ……こ、うたぁ、おれぇ……」
「ん?どうした?…了。」
もう呂律の回らなくなる程の快感に、完全に呑まれている自分は腰を押さえられグッタリとベットに四肢を弛緩させたまま。ピクリとも体を動かすこともできないのに、宏太の陰茎に満たされるだけで頭が快感でおかしくなったみたいだ。
「いっ、てる、の……とまんな、おかし………。こう、たぁ……おれぇ……へん、に、なってる……ぅ。」
「なんだよ……可愛いこと、言いやがって……。」
震える了が喘ぎながら必死に首に腕を絡めると、宏太は心底嬉しそうにユックリと腰を押し付ける。押し付けられる腰がグリグリと回され中をうねらせて擦りたてて、ヒクヒクと脈打ち中で擦りつけられる宏太の陰茎が熱くて焼けてしまいそうに気持ちいい。半開きの口で喘ぎながら絶頂を訴える了の甘い声に、宏太は酷く幸せそうに了の体に体重を乗せてのし掛かる。
「そんなに……いい、のか?」
「いい、……凄い、いい……おれぇ……こんなの、初めて……。」
何度もセックスで達した事はある。それなのにこんな蕩けてしまいそうな激しい快感は産まれて初めてで、自分の後孔が勝手にキュウキュウと宏太のものに絡んでいるのが分かる。何度も強請るように中を蠢かす腰が、繋がった場所から淫らなクチュクチュという注挿音を勝手に溢れさせ始めた。
「あうっ…こうたぁっ……ああっすごい、いいっ……こうたぁ。」
トロンとした声で了が、少し余裕の無さそうに自分の体にのし掛かっている宏太の腕を必死に探る。気がついた宏太が了の頬に触れさせた手を、了は甘く喘ぎながら強く握った。
「さ、わっ…てぇ、………こう、た。」
「前をか?」
「馬鹿、ちが、あんっ、……こっ、ち、触ってっ……ああんっ。」
了が宏太の手を導いた先は、宏太の陰茎を咥え込んだ了の後孔。ひくつきながらビッチリと伸びて、陰茎を咥え込んでいる了の孔の縁に手を添える。互いの指の触れる感触にすら甘く喘ぎながら、了が切れ切れの声で囁く。
「ほら……?こうたの、俺の中……入ってる、だろ……?ちゃんと、全部入ってる……凄い……いい。」
見えないと嘆く宏太の手を態々手を添わせ触れさせる感触に、思わずあんっと了が可愛く喘ぐ。そんな了の様子に、のし掛かっている宏太の喉がゴクリと鳴るのが聞こえる。了が足を淫らに大きく広げて宏太を体内に受け入れながら、宏太の陰茎を互いの指で挟む淫靡な姿。それを今まさに宏太も触れながら、頭で想像していて興奮しているのだと了にも分かった。
「ああ……ほんとだ……お前ん中に、入ってる、な……信じらんねぇ、けど。」
「こうたぁ……このまま、触ったまま……ユックリ動かして……、こうた。」
感覚が鈍くなっているという陰茎にお互いの手を添えたまま、ユックリとズプッズプッと前後に宏太が陰茎を動かし始める。互いの指の間で滑る陰茎を後孔に注挿される目の眩むような快感に、了が悲鳴を上げて仰け反った。
「こう、たぁ、……またいっちゃう…おれ…いくぅ…ううんっ。」
「いいぞ、……何回…いっても。」
「やぁ、一緒に……よくなってくれないと、や、だぁ…。」
そんな可愛い事言うなよと宏太は笑いながら、了を空いた片手で抱き寄せ更にグイッグイッと強く腰を前後し押し付けてくる。その雄めいた動きに何度も痙攣しながら絶頂に達して震える了に、宏太が耳元で酷く優しい声で囁く。
「……まだ、な、感覚が鈍いから、俺はいけねぇ……。だから、今はこれで許せ…な?」
柔らかく甘い声にまで激しく責め上げられて、了の体が再び仰け反って後孔をギッチリと締め上げる。互いの指の合間で繋がりながら、注挿される絶頂に了の口から更に甘い悲鳴が溢れ落ちていた。
※※※
料理を盛り付ける間も腰に絡んだ宏太の腕は離そうともしないし、次第にまあ仕方がないと諦め始めた自分に了は苦笑する。絆されて、しかもちょっとそれが嬉しい何て思ってしまうようでは、了自身も大分宏太に毒され始めているのかもしれない。
「ほら、飯出来たから離せ。」
「了。」
「なんだよ。」
スリと擦り付けような動きで抱き寄せた体を、更に強く深く抱き締める宏太に呆れたように了はされるままになる。今までこんな風に誰かに甘えるような宏太を見たことがないから戸惑いはするが、四十路の癖になんだか可愛いくすら感じてしまう自分も大概だ。
「後で………リハビリ……な?いいか?」
リハビリと言うと凄く聞こえはいいが、結局宏太は了とエッチがしたいと言っているだけ。まだ感覚が鈍く射精するほどの快感を得られないでいる宏太は、それでも男性としての機能が戻るかもしれないからリハビリと称して了に自分の陰茎を刺激しろと言っている訳だ。まあそれに関しては了の方も指で気を失うまで始終責められるよりは、宏太の怒張で満たされる方が格段に気持ちいい。もしかしたら何時かは射精できるまで回復するかもと思えば、了としてはフェラだろうとセックスだろうと手伝うのはやぶさかではないし。
それにしてもあの怪我の後、宏太は誰にも傷を見せてなかったから、陰茎にどれくらい機能が残っているかどうか誰も知らなかったわけで。
「宏太さぁ、山ほどセフレいただろ?もっと早く試しときゃよかったんじゃねぇの?」
そうしたらきっと今の宏太と自分の状況はなかったと、心の中では分かってはいる。でも流石に宏太の目茶苦茶なやり方に嫌味混じりにそう言ってやると、宏太が何でか一瞬ポカーンとするのが分かる。あれ?この嫌味通じなかったのかと思っていると、宏太は訝しげに了の顔を覗き込むように動く。
「セフレ?」
「いただろ?昔言ってたじゃん……セフレの中では一番にしてやるとか、そんなの。」
「………ほんと、お前、鈍いんだな。」
呆れたようにそう言われて唐突に腰から手を離されて、了はえ?と逆に驚いてしまう。何故かいきなり不機嫌になった様子の宏太はさっさとリビングのソファーに向かってどっかり座り込んでしまって、慌てて了は後を追いかける。ソファーに座り込んだ宏太と言えば、肘掛けに腕をのせ頬杖をついて不機嫌そうに口をつぐみ押し黙ってしまった。
「宏太?……なんで、怒ってんの?」
恐る恐る膝の前に屈んで問いかけると、どうみても不機嫌な顔で宏太はそっぽを向く。こんな風に宏太が怒る姿も今まで見たことがなくて、その怒りがなんなのかも分からない。膝に了が手を乗せてもそっぽを向くだけで、口を開こうとしないのに了は困ったように見上げる。
「……宏太?」
「お前、俺のことどうみてんだ。取っ替え引っ替えやりまくってると思ってんだろ、どうせ。」
え?だって自分でそう言ってたじゃんと了が思わず呟くと、宏太は更に不貞腐れたようにお前何時何処で俺のセフレと会ったことがあるんだよと吐き捨てるように呟かれた。そう言われればここに来て、確かに一度もセフレとかち合ったことがないなぁと以前思ったことがあったのは事実だ。それと今の宏太の不機嫌と、そこから出てきた答えはただ一つ。
外崎宏太には、実はセフレなんかいない?
「え?セフレいないの?嘘だろ?」
「嘘ってなんだ、会ったことねぇ癖にいると確信してんのは何でだよ。」
「いや、だって宏太……自分で言ってたから……男でも女でもって……。」
「お前………俺がバイかゲイだって思ってんだろ。言っとくが俺は完全なヘテロだからな。素面で男なんかとやるか、気持ち悪い。」
はい?ヘテロってヘテロセクシャルってことだよな?ヘテロって異性愛ってことだよな?おかしくね?だって、あんた調教師で男も女も調教してたんだよね?ってことは男も女もあのデカイチンポ突っ込んでるんだよね?っていうか俺の目の前で右京とやってたよね?
混乱しながら見上げていると溜め息混じりに宏太が口を開く。
「商売女にちょっと抜かせるくらいなら兎も角、そんなに誰彼構わずやりまくる訳ねぇだろ。」
「だって、………右京とやってたよな?」
その言葉に心底呆れ果てたように、宏太は眉を僅かに上げた。
「お前なぁ……話聞いてないのか?右京は希和とおんなじ顔だったから興味があったって言ったろ……そうでもなきゃ男なんか抱かねぇよ。」
「……それは確かに聞いたけど。」
自殺した妻に良く似た面差しの右京がどんな風に泣くのか見たかったから、右京が抱けと言ったのを抱いてやった。確かにそうは聞いている。だけど、確かにそれ以外の男で個人的に抱く抱かないの話は聞いたことがない。とは言え調教師としては一流で、三浦和希だって躾ていたと話したのは宏太だ。
「じゃ、……調教は?男も女もしてたろ?」
「そりゃ仕事だろうが………商品に男も女も関係あるか、依頼されりゃどっちでも躾んのが俺の仕事だ。」
「でも、突っ込んでんだよね?全部。」
「アホか。突っ込んで出されるのが良くなるように躾ろって注文なら、突っ込んで躾るに決まってんだろ。それがなきゃ突っ込まないで躾るに決まってんだろ。」
予想外だ。全部すべからく自分のように前も後ろも快感責めで堕とされるものなんだと考えていた。陰茎挿入なしで躾ってどんなことなのか、ちっともサッパリ想像も出来ない。そう言うとものを知らねぇなぁと不貞腐れたままの宏太が呟く。
「縛られただけで気持ちよくなったり鞭で打たれるだけって躾もあんだよ、SMなんだからな。モノはご主人様のしか受け入れない奴隷ってのもあんだよ。」
そうなんだと呆然としながら話を理解しようとはするが、了はハッとしたようにちょっと待てと口を開く。
「でも、右京と一緒に高校生のガキ泣かせて返してたって。」
「右京がな。俺はあの辺りは基本、場所提供だけだ。」
亀頭責めで二度ほど泣かせて追い返していたのは片倉右京で、宏太は責めやすいあの環境を提供しただけ。そう言われれば確かにと納得できなくもない。
「じゃ………なんで俺の時………。」
「だからあの時も言ったろうが、お前を気に入ったって。」
あの時自覚はしてなかったけど、既に了の事が気に入っていたから加わって抱いた?しかも、あの時そう言えば右京に手を出したら許さないとも言った?確かに右京は一度してもらっていたけど、了の方はあの後朝まで抱き潰され、しかも朝起き抜けで再び捩じ込まれ。しかも、右京がいなくなってから改めて宏太とだけ散々抱き合った。それなのに、自分はヘテロ?男なんて抱く気にすらならない、生粋のヘテロセクシャルだと言い張る?
逆にポカーンとしてしまう了にもう諦めたというように、宏太の手が伸びてきて膝の上に抱き上げるとギュウッと強く抱き締めてくる。ちょっとまって、今の話はどういう事?と未だに考え込んでいる了の唇を激しく奪いながら、不貞腐れたままの宏太が呟く。
「好きでもなきゃ……男にキスなんかするか。好きでもなきゃ、女でもねぇまっ平らな硬い乳舐めたりなんかして何が楽しいんだよ。」
不貞腐れた宏太の言葉に、了はやっと理解が追い付いてきて見る間に顔が熱くなるのを感じる。
宏太がキスしたり舐めてきたりするのに、了が初めてで驚いたのは当然なのだ。何しろ他の人間・右京にすら、確かにキスもしたのを見たこともなければ、何処かを舐める姿も見たことがない。させることはあってもする事は、何せ本人がしたことがないというのだ。倫理観はなくても嘘だけはつかない男は、何しろ妻だって好きなんだか分からないと平然とぬかした。つまりこの性格ってことは、自分から妻にキスすらしたことがないということなのか。となると、ここに来て恋をしたから突然了にだけキスしたり、舐め回したりして興奮していると言っているも同然なのだ。
「………いや、宏太………って。」
「なんだよ。」
目の前で再び不貞腐れてしまった宏太が、可愛く見えるはもうしょうがないのではないだろうか。そもそもギャップ萌えとかよく言うが、了はここまで来てこんなあからさまな宏太のデレを聞かされるとは思わなかった。正直そのデレッぷりは悶絶ものの事ばかりで、了は思わず宏太の膝の上で顔を覆ってしまう。
「……なんだって、言うんだよ。おい。」
了の顔が見えない宏太は、膝の上の了の気配に訝しげだ。
人を人と思わない調教をする鬼畜で変態で最悪の男の癖に、男の自分に初めて恋をした男。恋した途端人が変わったみたいに抱き締めたり、キスしてきたり、丹念な愛撫をしてきたり。しかも、そんな行動事態を起こす相手の了は男で、了が好きじゃなきゃ出来ないと確かな自覚まであって。その上顔が見えないからって不安で何回も確認しながら抱いてきたりするし、傷を見られて気持ち悪がられるのが嫌だからっていじらしく傷を隠してみたり。なんなのその初々しい初恋してます、みたいな行動のオンパレードは、四十路男がすることなの?
「あんた………反則だろ……それ。」
「なにが?」
そこまで好きだってんだったらもっと早く直接言ってくれれば、了だって何もかも投げ出してあんたに尽くしてやったのにと心の中では思う。でも、彼が自分の恋を自覚するのには、今の姿になる事が必要だったかもしれないのだ。あまりに恥ずかしくて真っ赤になってしまうが、了は諦めたように口を開く。
「もーいい、さっさと飯食え。」
「なんだよ。俺はハッキリ言われねぇとわかんねぇって言ってんだろ?不安になるから、中途半端にそう言うのやめろ。」
子供のような言葉に思わず笑い出しそうになる了を抱き締めたままの宏太の顔が、不貞腐れたように眉をしかめている。ふふと笑いながら了は宏太の首に手を回すと、耳元に突然音をたててキスをした。
「食ったら、たっぷりリハビリすっからな?覚悟しとけよ、射精するまで、あんたの………アレ…よくしてやる。」
そう耳元で囁きながら了が言うと、まだ納得できずに不貞腐れたままの顔で宏太がいるのに了は苦笑いしながら唇を重ねる。
「宏太。な、早く飯食おう?で、やろ?沢山。」
「………淫乱。」
不貞腐れた宏太の的外れな抵抗が大人げなくて可愛い。そんなところをこうして見せるのが、自分だけなのだと思うと更に可愛く見える。こう言うのが恋っていうか愛って言うのかも知れないと、了はうっすら考えてしまう。
「……リハビリっつったろ?大体な、早く射精出来るようになってもらわねぇと……俺、やなんだけど。」
「何でだよ……。」
「……愛してるから。」
そう耳元で頬をうっすら染めて低く囁くと、了は少し熱を落としたように宏太の耳を擽るように呟く。
「俺の中で……宏太の…アレ………気持ちよく、してやりたいんだよ……な?だから、練習しよ?……いいだろ?」
強請るような了の声に、何でか宏太の耳が一気に赤くなるのが分かる。案外全うな誘いには宏太も弱いのかもと、チュと耳朶をねぶりながら考えたり。
「んだよ……責任とって、ちゃんとお前が主体でリハビリしろよ?……いいな。」
「ん、いいよ。宏太のアレ、沢山舐めて、嵌めてやる。」
すんなり了が承諾してやると溜め息混じりに宏太が、了の肩に甘えるように顔を寄せる。新居に引っ越すまでに何とかなんねぇかなと呟く宏太に、了は可笑しそうにまた笑いながら宏太と唇を重ねた。
新居に引っ越す前までに回復したら確かに嬉しいけれど、本当はそうならなくても実は構わない。宏太と抱き合って宏太が気持ち良さそうに喘ぐ姿が見られれば、了としては自分だけいかされて喘ぎまくるのよりずっといいだけなのだ。
「……お前、俺を鬼畜の変態呼ばわりしやがるけど、出ねぇもん散々舐めて嵌めて扱こうってお前の方が鬼畜で変態じゃねぇか。」
ブチブチと不貞腐れながら文句をいう宏太に、了は男なんだからグタグダ言わねぇで嫁だっていう俺の事たっぷり幸せにしろと言ってやる。手を引かれて食卓に連れ出された宏太が、更に文句の口を開く前に一口スプーンに掬ったオムライスを突っ込んでやると妙に宏太は大人しくなってしまう。
「旨い?ちょっと冷めたか?」
「旨い………。これなんだ?」
「オムライスだよ、卵とチキンライス。」
昔からの味覚障害のせいなのか、味では何か判断出来てないところが少し可哀想でもある。味が想定できない風で黙々と食べ始める宏太が可愛いなんて事は、暫く了だけの楽しみにしておこうと考えながら了もスプーンを手に取った。食後に食器を片付け振り返ると、考え込むように宏太が黙りこんでいて了は不思議そうに歩み寄る。不味かった訳ではなさそうだがと覗き込んだ口元に残った米粒を笑いながら舌で舐めとってやると宏太の腕が了を引き寄せた。
「了、愛してる……。」
「なんだよ、唐突に。」
「触ってくれ……なんか、今、起ちそうな感じだ……。」
食欲の次は性欲かよと笑いながらヤワヤワと服の上から宏太の股間を撫で回すが、直に障ってくれと懇願されて取り出すと、既に少し硬くなり始めた宏太の陰茎が愛しい。
チュチュと吸い上げながら陰茎を了が咥え愛撫している最中に、不意に電話が鳴り出すのが聞こえる。本当なら出ないで無視してくれればいいのに了の頭を押さえて陰茎を根本まで飲み込ませながら、鬼畜で変態の倫理観0の男は無造作に電話に出てしまう。
「ん、……久しぶりだな……おお?なんだよ?随分慌ててんな?あ?…………ん…も少し強く吸え……いや、こっちの話。」
電話しながらさせんなよと思うが言われた通り強く吸ってやると、ピクピクと陰茎が口の中で膨らみ震えるのが淫らだ。
「あ?……人探し?…………どうしたよ?おい、ちょっと落ち着け、雪。」
雪?電話の相手女?そう思ったら少し意地悪な気分になって音をたてて、陰茎を強くキツく喉の方まで吸い上げてやる。思わずうっと快感に詰まるような声を漏らした宏太が、無意識に了の頭をグッと陰茎に押し付けた。快感にグイグイと頭を上下に動かすのがその手の動きで分かって、密かに意地の悪い優越感を感じながら舌を絡ませてやる。
その電話は宏太の友人の一人である宇野智雪からの連絡。口淫の後そのままベットに雪崩れ込むのかと思っていた了と宏太をある意味事件に巻き込んだのだった。
因みに切断された陰茎が手元に残っている場合は、即丁寧に再建術と言うやつで繋ぐことは可能なんだという。上手く神経が繋がれば生殖も可能にはなるらしいが、そこら辺は何せ排泄の器官でもあるから感染症とかなんとか色々と大きな問題はあるようだ。
外崎宏太の場合は平然と教えてくれたのだが、切られた方の物は残念なことに細切れにされてゴミ箱に投げられていたそうだ。でも切断されたのが途中からだったので、根本は無事だった。お陰で切断面を綺麗に縫合しただけで、排泄という面では問題がなかったのだ。それに三浦の使ったナイフの先端が既に血糊で切れ味が悪かったのと太股を先に大きく抉ったせいで、陰嚢も半分しか切断されなかったのが幸を然して性的なホルモンの分泌なども維持されたようだ。恐らく喉を先に切られ倒れた後で服から取り出した陰茎を切断したからで、出血と衣類で確認ができなかったんだろうと宏太はいう。これが全裸なら後から襲われた奴と自分も変わらなかった筈だと聞かされて、正直ゾッとしてしまう。
そうして半分に切断され繋がれた皮膚の接合部があるため、新しい先端の感覚が鈍ったのだとは思う。勿論亀頭があるわけではないから普通の感覚とは全く違うだろうし、陰嚢も半分無くしているからどこまで残りが活動しているか分からない。何より本人ですら視覚的にどんな状態なのか確認できない上に、耳が良すぎて看護師達の若いのにあんなグロいという心ない言葉に早々に諦観の気持ちになったのは分かる。
それでも今は確かに完全に勃起しているとは言いがたいが、宏太のものは了の中に硬く突き刺さってた。そうして宏太の陰茎に体内を満たされる激しい快感に、了は完全に蕩けてしまい酩酊している。押し付けられ揺すりも動かしもしなくても、何度も達しているような電撃めいた激しい満たされる快感。僅かにでも動かされれば、その快感は更に激しく了を貫いて骨抜きにしてしまう。
「も、だめ……こ、うたぁ、おれぇ……」
「ん?どうした?…了。」
もう呂律の回らなくなる程の快感に、完全に呑まれている自分は腰を押さえられグッタリとベットに四肢を弛緩させたまま。ピクリとも体を動かすこともできないのに、宏太の陰茎に満たされるだけで頭が快感でおかしくなったみたいだ。
「いっ、てる、の……とまんな、おかし………。こう、たぁ……おれぇ……へん、に、なってる……ぅ。」
「なんだよ……可愛いこと、言いやがって……。」
震える了が喘ぎながら必死に首に腕を絡めると、宏太は心底嬉しそうにユックリと腰を押し付ける。押し付けられる腰がグリグリと回され中をうねらせて擦りたてて、ヒクヒクと脈打ち中で擦りつけられる宏太の陰茎が熱くて焼けてしまいそうに気持ちいい。半開きの口で喘ぎながら絶頂を訴える了の甘い声に、宏太は酷く幸せそうに了の体に体重を乗せてのし掛かる。
「そんなに……いい、のか?」
「いい、……凄い、いい……おれぇ……こんなの、初めて……。」
何度もセックスで達した事はある。それなのにこんな蕩けてしまいそうな激しい快感は産まれて初めてで、自分の後孔が勝手にキュウキュウと宏太のものに絡んでいるのが分かる。何度も強請るように中を蠢かす腰が、繋がった場所から淫らなクチュクチュという注挿音を勝手に溢れさせ始めた。
「あうっ…こうたぁっ……ああっすごい、いいっ……こうたぁ。」
トロンとした声で了が、少し余裕の無さそうに自分の体にのし掛かっている宏太の腕を必死に探る。気がついた宏太が了の頬に触れさせた手を、了は甘く喘ぎながら強く握った。
「さ、わっ…てぇ、………こう、た。」
「前をか?」
「馬鹿、ちが、あんっ、……こっ、ち、触ってっ……ああんっ。」
了が宏太の手を導いた先は、宏太の陰茎を咥え込んだ了の後孔。ひくつきながらビッチリと伸びて、陰茎を咥え込んでいる了の孔の縁に手を添える。互いの指の触れる感触にすら甘く喘ぎながら、了が切れ切れの声で囁く。
「ほら……?こうたの、俺の中……入ってる、だろ……?ちゃんと、全部入ってる……凄い……いい。」
見えないと嘆く宏太の手を態々手を添わせ触れさせる感触に、思わずあんっと了が可愛く喘ぐ。そんな了の様子に、のし掛かっている宏太の喉がゴクリと鳴るのが聞こえる。了が足を淫らに大きく広げて宏太を体内に受け入れながら、宏太の陰茎を互いの指で挟む淫靡な姿。それを今まさに宏太も触れながら、頭で想像していて興奮しているのだと了にも分かった。
「ああ……ほんとだ……お前ん中に、入ってる、な……信じらんねぇ、けど。」
「こうたぁ……このまま、触ったまま……ユックリ動かして……、こうた。」
感覚が鈍くなっているという陰茎にお互いの手を添えたまま、ユックリとズプッズプッと前後に宏太が陰茎を動かし始める。互いの指の間で滑る陰茎を後孔に注挿される目の眩むような快感に、了が悲鳴を上げて仰け反った。
「こう、たぁ、……またいっちゃう…おれ…いくぅ…ううんっ。」
「いいぞ、……何回…いっても。」
「やぁ、一緒に……よくなってくれないと、や、だぁ…。」
そんな可愛い事言うなよと宏太は笑いながら、了を空いた片手で抱き寄せ更にグイッグイッと強く腰を前後し押し付けてくる。その雄めいた動きに何度も痙攣しながら絶頂に達して震える了に、宏太が耳元で酷く優しい声で囁く。
「……まだ、な、感覚が鈍いから、俺はいけねぇ……。だから、今はこれで許せ…な?」
柔らかく甘い声にまで激しく責め上げられて、了の体が再び仰け反って後孔をギッチリと締め上げる。互いの指の合間で繋がりながら、注挿される絶頂に了の口から更に甘い悲鳴が溢れ落ちていた。
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料理を盛り付ける間も腰に絡んだ宏太の腕は離そうともしないし、次第にまあ仕方がないと諦め始めた自分に了は苦笑する。絆されて、しかもちょっとそれが嬉しい何て思ってしまうようでは、了自身も大分宏太に毒され始めているのかもしれない。
「ほら、飯出来たから離せ。」
「了。」
「なんだよ。」
スリと擦り付けような動きで抱き寄せた体を、更に強く深く抱き締める宏太に呆れたように了はされるままになる。今までこんな風に誰かに甘えるような宏太を見たことがないから戸惑いはするが、四十路の癖になんだか可愛いくすら感じてしまう自分も大概だ。
「後で………リハビリ……な?いいか?」
リハビリと言うと凄く聞こえはいいが、結局宏太は了とエッチがしたいと言っているだけ。まだ感覚が鈍く射精するほどの快感を得られないでいる宏太は、それでも男性としての機能が戻るかもしれないからリハビリと称して了に自分の陰茎を刺激しろと言っている訳だ。まあそれに関しては了の方も指で気を失うまで始終責められるよりは、宏太の怒張で満たされる方が格段に気持ちいい。もしかしたら何時かは射精できるまで回復するかもと思えば、了としてはフェラだろうとセックスだろうと手伝うのはやぶさかではないし。
それにしてもあの怪我の後、宏太は誰にも傷を見せてなかったから、陰茎にどれくらい機能が残っているかどうか誰も知らなかったわけで。
「宏太さぁ、山ほどセフレいただろ?もっと早く試しときゃよかったんじゃねぇの?」
そうしたらきっと今の宏太と自分の状況はなかったと、心の中では分かってはいる。でも流石に宏太の目茶苦茶なやり方に嫌味混じりにそう言ってやると、宏太が何でか一瞬ポカーンとするのが分かる。あれ?この嫌味通じなかったのかと思っていると、宏太は訝しげに了の顔を覗き込むように動く。
「セフレ?」
「いただろ?昔言ってたじゃん……セフレの中では一番にしてやるとか、そんなの。」
「………ほんと、お前、鈍いんだな。」
呆れたようにそう言われて唐突に腰から手を離されて、了はえ?と逆に驚いてしまう。何故かいきなり不機嫌になった様子の宏太はさっさとリビングのソファーに向かってどっかり座り込んでしまって、慌てて了は後を追いかける。ソファーに座り込んだ宏太と言えば、肘掛けに腕をのせ頬杖をついて不機嫌そうに口をつぐみ押し黙ってしまった。
「宏太?……なんで、怒ってんの?」
恐る恐る膝の前に屈んで問いかけると、どうみても不機嫌な顔で宏太はそっぽを向く。こんな風に宏太が怒る姿も今まで見たことがなくて、その怒りがなんなのかも分からない。膝に了が手を乗せてもそっぽを向くだけで、口を開こうとしないのに了は困ったように見上げる。
「……宏太?」
「お前、俺のことどうみてんだ。取っ替え引っ替えやりまくってると思ってんだろ、どうせ。」
え?だって自分でそう言ってたじゃんと了が思わず呟くと、宏太は更に不貞腐れたようにお前何時何処で俺のセフレと会ったことがあるんだよと吐き捨てるように呟かれた。そう言われればここに来て、確かに一度もセフレとかち合ったことがないなぁと以前思ったことがあったのは事実だ。それと今の宏太の不機嫌と、そこから出てきた答えはただ一つ。
外崎宏太には、実はセフレなんかいない?
「え?セフレいないの?嘘だろ?」
「嘘ってなんだ、会ったことねぇ癖にいると確信してんのは何でだよ。」
「いや、だって宏太……自分で言ってたから……男でも女でもって……。」
「お前………俺がバイかゲイだって思ってんだろ。言っとくが俺は完全なヘテロだからな。素面で男なんかとやるか、気持ち悪い。」
はい?ヘテロってヘテロセクシャルってことだよな?ヘテロって異性愛ってことだよな?おかしくね?だって、あんた調教師で男も女も調教してたんだよね?ってことは男も女もあのデカイチンポ突っ込んでるんだよね?っていうか俺の目の前で右京とやってたよね?
混乱しながら見上げていると溜め息混じりに宏太が口を開く。
「商売女にちょっと抜かせるくらいなら兎も角、そんなに誰彼構わずやりまくる訳ねぇだろ。」
「だって、………右京とやってたよな?」
その言葉に心底呆れ果てたように、宏太は眉を僅かに上げた。
「お前なぁ……話聞いてないのか?右京は希和とおんなじ顔だったから興味があったって言ったろ……そうでもなきゃ男なんか抱かねぇよ。」
「……それは確かに聞いたけど。」
自殺した妻に良く似た面差しの右京がどんな風に泣くのか見たかったから、右京が抱けと言ったのを抱いてやった。確かにそうは聞いている。だけど、確かにそれ以外の男で個人的に抱く抱かないの話は聞いたことがない。とは言え調教師としては一流で、三浦和希だって躾ていたと話したのは宏太だ。
「じゃ、……調教は?男も女もしてたろ?」
「そりゃ仕事だろうが………商品に男も女も関係あるか、依頼されりゃどっちでも躾んのが俺の仕事だ。」
「でも、突っ込んでんだよね?全部。」
「アホか。突っ込んで出されるのが良くなるように躾ろって注文なら、突っ込んで躾るに決まってんだろ。それがなきゃ突っ込まないで躾るに決まってんだろ。」
予想外だ。全部すべからく自分のように前も後ろも快感責めで堕とされるものなんだと考えていた。陰茎挿入なしで躾ってどんなことなのか、ちっともサッパリ想像も出来ない。そう言うとものを知らねぇなぁと不貞腐れたままの宏太が呟く。
「縛られただけで気持ちよくなったり鞭で打たれるだけって躾もあんだよ、SMなんだからな。モノはご主人様のしか受け入れない奴隷ってのもあんだよ。」
そうなんだと呆然としながら話を理解しようとはするが、了はハッとしたようにちょっと待てと口を開く。
「でも、右京と一緒に高校生のガキ泣かせて返してたって。」
「右京がな。俺はあの辺りは基本、場所提供だけだ。」
亀頭責めで二度ほど泣かせて追い返していたのは片倉右京で、宏太は責めやすいあの環境を提供しただけ。そう言われれば確かにと納得できなくもない。
「じゃ………なんで俺の時………。」
「だからあの時も言ったろうが、お前を気に入ったって。」
あの時自覚はしてなかったけど、既に了の事が気に入っていたから加わって抱いた?しかも、あの時そう言えば右京に手を出したら許さないとも言った?確かに右京は一度してもらっていたけど、了の方はあの後朝まで抱き潰され、しかも朝起き抜けで再び捩じ込まれ。しかも、右京がいなくなってから改めて宏太とだけ散々抱き合った。それなのに、自分はヘテロ?男なんて抱く気にすらならない、生粋のヘテロセクシャルだと言い張る?
逆にポカーンとしてしまう了にもう諦めたというように、宏太の手が伸びてきて膝の上に抱き上げるとギュウッと強く抱き締めてくる。ちょっとまって、今の話はどういう事?と未だに考え込んでいる了の唇を激しく奪いながら、不貞腐れたままの宏太が呟く。
「好きでもなきゃ……男にキスなんかするか。好きでもなきゃ、女でもねぇまっ平らな硬い乳舐めたりなんかして何が楽しいんだよ。」
不貞腐れた宏太の言葉に、了はやっと理解が追い付いてきて見る間に顔が熱くなるのを感じる。
宏太がキスしたり舐めてきたりするのに、了が初めてで驚いたのは当然なのだ。何しろ他の人間・右京にすら、確かにキスもしたのを見たこともなければ、何処かを舐める姿も見たことがない。させることはあってもする事は、何せ本人がしたことがないというのだ。倫理観はなくても嘘だけはつかない男は、何しろ妻だって好きなんだか分からないと平然とぬかした。つまりこの性格ってことは、自分から妻にキスすらしたことがないということなのか。となると、ここに来て恋をしたから突然了にだけキスしたり、舐め回したりして興奮していると言っているも同然なのだ。
「………いや、宏太………って。」
「なんだよ。」
目の前で再び不貞腐れてしまった宏太が、可愛く見えるはもうしょうがないのではないだろうか。そもそもギャップ萌えとかよく言うが、了はここまで来てこんなあからさまな宏太のデレを聞かされるとは思わなかった。正直そのデレッぷりは悶絶ものの事ばかりで、了は思わず宏太の膝の上で顔を覆ってしまう。
「……なんだって、言うんだよ。おい。」
了の顔が見えない宏太は、膝の上の了の気配に訝しげだ。
人を人と思わない調教をする鬼畜で変態で最悪の男の癖に、男の自分に初めて恋をした男。恋した途端人が変わったみたいに抱き締めたり、キスしてきたり、丹念な愛撫をしてきたり。しかも、そんな行動事態を起こす相手の了は男で、了が好きじゃなきゃ出来ないと確かな自覚まであって。その上顔が見えないからって不安で何回も確認しながら抱いてきたりするし、傷を見られて気持ち悪がられるのが嫌だからっていじらしく傷を隠してみたり。なんなのその初々しい初恋してます、みたいな行動のオンパレードは、四十路男がすることなの?
「あんた………反則だろ……それ。」
「なにが?」
そこまで好きだってんだったらもっと早く直接言ってくれれば、了だって何もかも投げ出してあんたに尽くしてやったのにと心の中では思う。でも、彼が自分の恋を自覚するのには、今の姿になる事が必要だったかもしれないのだ。あまりに恥ずかしくて真っ赤になってしまうが、了は諦めたように口を開く。
「もーいい、さっさと飯食え。」
「なんだよ。俺はハッキリ言われねぇとわかんねぇって言ってんだろ?不安になるから、中途半端にそう言うのやめろ。」
子供のような言葉に思わず笑い出しそうになる了を抱き締めたままの宏太の顔が、不貞腐れたように眉をしかめている。ふふと笑いながら了は宏太の首に手を回すと、耳元に突然音をたててキスをした。
「食ったら、たっぷりリハビリすっからな?覚悟しとけよ、射精するまで、あんたの………アレ…よくしてやる。」
そう耳元で囁きながら了が言うと、まだ納得できずに不貞腐れたままの顔で宏太がいるのに了は苦笑いしながら唇を重ねる。
「宏太。な、早く飯食おう?で、やろ?沢山。」
「………淫乱。」
不貞腐れた宏太の的外れな抵抗が大人げなくて可愛い。そんなところをこうして見せるのが、自分だけなのだと思うと更に可愛く見える。こう言うのが恋っていうか愛って言うのかも知れないと、了はうっすら考えてしまう。
「……リハビリっつったろ?大体な、早く射精出来るようになってもらわねぇと……俺、やなんだけど。」
「何でだよ……。」
「……愛してるから。」
そう耳元で頬をうっすら染めて低く囁くと、了は少し熱を落としたように宏太の耳を擽るように呟く。
「俺の中で……宏太の…アレ………気持ちよく、してやりたいんだよ……な?だから、練習しよ?……いいだろ?」
強請るような了の声に、何でか宏太の耳が一気に赤くなるのが分かる。案外全うな誘いには宏太も弱いのかもと、チュと耳朶をねぶりながら考えたり。
「んだよ……責任とって、ちゃんとお前が主体でリハビリしろよ?……いいな。」
「ん、いいよ。宏太のアレ、沢山舐めて、嵌めてやる。」
すんなり了が承諾してやると溜め息混じりに宏太が、了の肩に甘えるように顔を寄せる。新居に引っ越すまでに何とかなんねぇかなと呟く宏太に、了は可笑しそうにまた笑いながら宏太と唇を重ねた。
新居に引っ越す前までに回復したら確かに嬉しいけれど、本当はそうならなくても実は構わない。宏太と抱き合って宏太が気持ち良さそうに喘ぐ姿が見られれば、了としては自分だけいかされて喘ぎまくるのよりずっといいだけなのだ。
「……お前、俺を鬼畜の変態呼ばわりしやがるけど、出ねぇもん散々舐めて嵌めて扱こうってお前の方が鬼畜で変態じゃねぇか。」
ブチブチと不貞腐れながら文句をいう宏太に、了は男なんだからグタグダ言わねぇで嫁だっていう俺の事たっぷり幸せにしろと言ってやる。手を引かれて食卓に連れ出された宏太が、更に文句の口を開く前に一口スプーンに掬ったオムライスを突っ込んでやると妙に宏太は大人しくなってしまう。
「旨い?ちょっと冷めたか?」
「旨い………。これなんだ?」
「オムライスだよ、卵とチキンライス。」
昔からの味覚障害のせいなのか、味では何か判断出来てないところが少し可哀想でもある。味が想定できない風で黙々と食べ始める宏太が可愛いなんて事は、暫く了だけの楽しみにしておこうと考えながら了もスプーンを手に取った。食後に食器を片付け振り返ると、考え込むように宏太が黙りこんでいて了は不思議そうに歩み寄る。不味かった訳ではなさそうだがと覗き込んだ口元に残った米粒を笑いながら舌で舐めとってやると宏太の腕が了を引き寄せた。
「了、愛してる……。」
「なんだよ、唐突に。」
「触ってくれ……なんか、今、起ちそうな感じだ……。」
食欲の次は性欲かよと笑いながらヤワヤワと服の上から宏太の股間を撫で回すが、直に障ってくれと懇願されて取り出すと、既に少し硬くなり始めた宏太の陰茎が愛しい。
チュチュと吸い上げながら陰茎を了が咥え愛撫している最中に、不意に電話が鳴り出すのが聞こえる。本当なら出ないで無視してくれればいいのに了の頭を押さえて陰茎を根本まで飲み込ませながら、鬼畜で変態の倫理観0の男は無造作に電話に出てしまう。
「ん、……久しぶりだな……おお?なんだよ?随分慌ててんな?あ?…………ん…も少し強く吸え……いや、こっちの話。」
電話しながらさせんなよと思うが言われた通り強く吸ってやると、ピクピクと陰茎が口の中で膨らみ震えるのが淫らだ。
「あ?……人探し?…………どうしたよ?おい、ちょっと落ち着け、雪。」
雪?電話の相手女?そう思ったら少し意地悪な気分になって音をたてて、陰茎を強くキツく喉の方まで吸い上げてやる。思わずうっと快感に詰まるような声を漏らした宏太が、無意識に了の頭をグッと陰茎に押し付けた。快感にグイグイと頭を上下に動かすのがその手の動きで分かって、密かに意地の悪い優越感を感じながら舌を絡ませてやる。
その電話は宏太の友人の一人である宇野智雪からの連絡。口淫の後そのままベットに雪崩れ込むのかと思っていた了と宏太をある意味事件に巻き込んだのだった。
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