鮮明な月

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間章 狂宴・成田了の事象

7.

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それから別段大きな出来事もなく時は流れていく。了は相変わらず《random face》にやって来て常々宏太にセックスを強請るし、噂の美人の王子様とは友人になったようで話題の中で呼び方が榊から恭平に変わった程度。了が大学を卒業して一流企業に就職し二年目になる辺りには、宏太は四十五の脂が乗りきった男前になっていて、右京は三十五にして部長に昇進したとかで少し身辺的にかなり忙しそうだ。カウンターで一人で飲みながら了が、いつも右京が座る場所を眺める。

「右京に最近会わないね、宏太、寂しくないの?」
「忙しいんだろ?結構なことじゃねぇか。」

最近の《random face》はあの松下が連れ込んでいた奴等が、奥のパーティールームを頻繁にご利用なのだという。松下はあの後一年留年して去年卒業したが、就職もせずにフラフラしていて質の悪い仲間と遊び歩いているようだ。
本日も奥の部屋でお楽しみとか言うが、どうもそれも宜しくない方向性で盛り上がっている気配。女を連れ込んで来るのは前からだが、準備してある媚薬入りのローションだけでない代物を使っている風でもある。

「宏太、あれ危ないんじゃない?」
「まぁな、とは言え持ち込みだ。俺は無関係。」

殺す前には警察でも呼ぶさと言う宏太に、了は苦笑いしながら以前よりずっと大人びた顔を浮かべた。その顔に浮かんだ今までにない感情に、宏太は目を細めて少しだけ口角を上げて笑いかける。

「誰か好きな奴でも出来たか?ん?」
「まさか。俺が好きなのは宏太だって言ってんだろ?」
「おお、俺もセフレでは一番にしといてやるよ。」

茶化したような返答に了は少し苦笑いを深め、セフレかよと不満そうに言う。今まで六年もの付き合いの中で、同じ名前が何度も了の話題に出たのはたった一人なのに宏太は気がついている。恐らく了自身は無自覚なのだろうが、榊恭平という人間が了の中に何かを呼び起こしているのだろう。

高嶺の花じゃねぇといいがな、その恭平君がよ。

大きな進展もないただの友人なだけであれば、別に問題もないだろう。そう考えながら宏太は眺めているのである。そうして、時はユックリと進んでいく。
正直なところ最近の《random face》は了にとって少し居心地が悪い。そう了は無意識に感じていたのは事実だ。
松下が連れ込んだ同じ年頃の連中の中に杉浦建設の息子がいて、そいつが三浦不動産の息子を連れてきた辺りから店の空気が変わった。了より二つ下の三浦和希という男は店でスレ違った時に見たが明るい金髪の人懐っこい笑顔の男だった。ところが、何故か奥の部屋では暴君になる。宏太がどんなに気を付けていても、一瞬でも目を離すと女が色狂いに堕ちてボロボロになると呆れたように言う。どうやら三浦和希という人間も、性的には何か宏太や了のように歪な面があるのかもしれない。

「……全く後始末する方の身にもなれっての、最近の若造はよ。」
「はは、おっさん臭いよ、宏太。」
「そりゃ四十路だもんね、宏太も年取ったんだよ、了。」

その言葉に珍しく宏太が、眉を上げて顔をしかめる。流石におやじ扱いは心外だったらしい。久々に店を訪れ三人で話している右京も、実は大分以前と比べると顔色が悪く痩せたように見える。仕事が凄く忙しいと話しているが、こうして右京を眺めていると了にはそれだけでもない気がするのだ。右京の場合窶れ顔も色気ではあるが、その顔色は不安にもなる。

「右京、疲れてんじゃない?顔色悪いよ。」
「そりゃ二年目のルーキーと違って部長は忙しいの。性欲だって残んない、忙しいんだよ。」

カウンターで顔を伏せて言う右京の頭を撫でて慰めると、カウンターの向こうの宏太がここぞとばかりに嫌味な笑みを浮かべた。

「ふん、そっちこそ年で性欲が落ちたんだろ?」
「はぁ?悪いけど四十路よりは落ちてませんけど?試してみる?」

こうして三人で話している分には何時もと何もかわりない、了はそうどこかで過信していたような気がする。それを打ち崩したのはそれから、ほんの数週内もしない辺りのことだった。
一瞬背後に流れていた朝のニュースに聞きなれた名前が告げられたのに、了は凍りつき振り返る。淡々と事件を告げる男性の声に呆然として立ち尽くしたまま、了は無意識にネクタイを締めながら自分が見ているものを理解しようとした。画面には見慣れた筈の中性的にも見える瞳。左の目元の小さな黒子、整えられた黒髪。

なんで?

片倉右京の名前の前に無造作に書かれた『死亡』の文字。見て聞いているのに、何一つ頭の中に内容は入ってこない。



※※※



止めてください右京がそう悲鳴をあげることすら、相手にとっては媚薬のようなものだったに違いない。

片倉右京の調教を外崎宏太に依頼してきたのは、片倉右京の会社の社長に当たる男だった。謂れのない失態の責任を取るための代償として、今後の自分の先行きを守るため、理由なんてどんなものだったかは知りもしない。ただ片倉右京は何をされるかは承知で、頭を垂れることもなく真っ直ぐに睨むようにして宏太を見据える。言われて来たが自分はそんなことには屈しないし、出来るものならやってみろと言いたげな強い視線に宏太の方が興味を持ったのだ。
宏太は酷く優しく丁寧に時間をかけて、残酷な程に男の部分を残したまま右京を堕としていった。何しろ会社もグルなのだから右京は調教されている間は、気の休まる場所がなかったに違いない。

……こんなことして、何が楽しいんですか?

キツい視線で拘束され涙を浮かべながら睨み付けてくる右京を躾るのは、中々に宏太にとっても楽しかった。右京は仕込まれているうちに胸の方が強く感じるようになっていったから、スーツの下で腫れて赤くなった乳首は日々さぞかし淫らに擦れて苦悩したことだろう。
毎日の日課のように仕事帰り調教されに宏太の元に寄ることを、仕事に組み込まれ日々様々な方法で悶えさせられる。仕事が終わると宏太に先ず腸内を丁寧に洗浄され、様々な事を体に刻み込まれていく。次第に慣らされる快感に戸惑い、やがて少しずつ綻ばされていく菊門に、苦悩する右京は日を追う毎に悩ましい色気を放ち出す。ドライでいくことを教え込まれ、乳首でも前立腺でもいけるように完全に仕込まれてしまっていく。ついには下着を着けずにベルトで固定されたプラグだけを肛門にいれただけで仕事に行くように宏太に命令され、流石にそれには激しく右京も抵抗した。したはいいが右京の調教は、会社自体が進めているのだ。トイレがと抵抗したが丁寧に洗浄されているし毎日ここにくるんだから、プラグくらい入れて生活しても何も問題ないと宏太に嗤われる。結果として右京はベルトを鍵で固定され、悩ましい表情を浮かべながら頬を染め帰っていった。

……あの……部屋であなたが…僕にやってることは、上司も知ってるんですか……?

ある時頬を染めながら息を微かに荒げ、仕事からやって来た右京が怯えたようにそう問いかけてきた。それはベルトをつけ初めて直ぐのことだ。宏太がお前は依頼品なんだから当然だろと答えると、右京は目を見開いて唇を噛む。
なんだ?触られたか?とわざとらしく問いかけてやると、頬を染めて視線を反らす。右京が仕事をする筈の場所で何をされたかは、実は宏太の方でも把握済みだった。何しろ下手なことをされて、ここまでの調教が駄目になるのは本職としては避けたい。だから、ここまでならしても良いと待ちきれない先方に、時には飴を与えるのも必要なことなのだ。

その日の日中に右京は仕事中に会議室に連れ込まれ、机に上半身を這いつくばらせて押さえ込まれていた。上司のイヤらしい手が、スラックスの上から右京のベルトでくびりだされた丸い尻を撫で回した。

や、やめてください!

驚き上げた悲鳴のような制止の声が堪らなかったと言う。薄いスラックス越しに触れる肉感的な柔らかな尻の感触。割れ目をなぞり容易く探りだしたアナルプラグを、嵌め込まれた体内にゴリゴリと押し付け捏ね回してやる。

やめて、あっ!ううっ!うっ!

尻を突きだしたまはま右京は必死に声を堪えていたが、次第に嫌がりながらも刺激に感じてブルブルと震え始めたという。会議室という場所で人気に怯え上気しながら声を耐える肌が艶かしく、依頼主は随分興奮したようだ。最終的に会議室で右京は、依頼主の怒張を咥えされられ口内で射精を受け止めさせられた。そして、そのまま放たれた精液を全て飲み干す事を強要されたのだ。
ジリジリと作り替えられていく体と、自分がそういう対象として見られ扱われている事に気がついた右京は、自分の調教を相手が知っているのではとやっと合点がいったのだろう。

……なんで…こんなこと……

そうなると知ってて来たんだろうと言うと、右京は視線を伏せて唇を噛む。実際にはその通り右京は自分は屈しないと信じて、やれるものならやってみろと考えていたのだ。これがたいした相手じゃなければ右京の信念の方が勝ったかもしれないが、何しろ宏太が相手では部が悪かった。そして右京は一度あの男の言うことを聞いてしまったら、ここからあの男は職場で何度も同じことを強いるに違いないのも分かりきっている。

いや、あっ!ああっ!こんな……おかしいっ!ああっ!はいるぅ!

それでも悲鳴に似た声を上げて腰を撓らせながら右京は更に一回り大きなプラグを嵌め込まれ、恨みがましい視線で宏太を睨むようにして項垂れて帰っていく。
それはソロソロ躾も終盤に差し掛かった辺りの事だ。我慢できないとごねる依頼主に渋々そこまでならしても良いが電話でしている音声を聞かせろといった宏太に、依頼主は二つ返事で右京をなぶっている最中に電話を繋げた。

『毎日そんな淫らな姿で仕事をしているのかい?片倉君は。』

依頼主の興奮した声の前で、きっと苦悩に俯いているのだろう右京は言葉もでないでいる。直前右京は相手に命令され自らの膝に手を置き尻をつき出すはしたない姿勢で、スラックス越しに延々と尻を弄られ続けていた。今日の右京の体内には本物の怒張程は太くはないが、本物よりはかなり長めのディルドとプラグの良いとこどりといったものが固定されている。しかも長い分ベルトに余裕があり、今までと違って前後に動かす余裕があったことが右京を更に苦しめた。延々とグプグプと前後に出し入れされ結腸の奥底を掻き回される刺激に、右京は限界とばかりに陥落させられた。上司の部屋の中で四つん這いで奥を突かれ潮を吹いて、スラックスの前を濡らすはしたない姿を遂に曝したのだ。そこから言葉で散々なぶられスラックスを脱がされた右京は、相手の言うがまま身体を椅子にのせ両足を肘掛けに上げて手首と一緒に固定された。粗相を見られ心が折れたのだろう右京は、上司に力なく何度も懇願の言葉を溢す。足を淫らに広げて固定されたまま隠すための手も固定され、ワイシャツのボタンだけをはずされ前をはだけられていく。淫らなベルトを下半身に着け後孔に玩具を嵌めただけの全身を観察されながらの懇願は、さぞかし男の加虐心を煽る恥態だろう。

『お願い…です、許してください……見ないで。』
『なんてイヤらしい乳首だろうね、手首を縛られてこんなに赤く硬くして。』
『ああ!嫌だっ!触らないっうううっ!』

上司の欲望のままに乳首を捏ねられ身悶え、ギシギシと椅子が軋む音が響く。可哀想な右京は可愛い声で喘ぎながら、その後何時間もその部屋でなぶられ続けた。やがて依頼主は息を荒くして、右京のディルドの嵌まっている尻の孔の縁を弄び始め熟れつつある孔の縁を舐める音に悲鳴が重なる。

『ひぃ!いやっ!そこはっ!ああっ!』
『なんて、イヤらしい孔だ……こんな、シワの伸びきるほど太いものを咥えたまま、……ああ、綺麗な孔だ、淫らで、旨そうに……玩具は美味しいかい?片倉君。』
『やめて!あっ!ああっ!!』

舐められながら再びベルトの隙間を使って注挿させる刺激に悲鳴が啜り泣きに変わっていく。懇願の啜り泣きに依頼主の息が、更に荒くなっていくのが聞こえる。

『お、ねがぁ……いやだ、入れないでっ………ああっ!』
『ああ、こんなに入り口は柔らかだ、こんな太いものを咥えてるのに横から私の指が入るよ?楽しみだ……早くこの穴に私のものを奥まで咥えさせたいよ、片倉君。』
『ひいぃっ!』

固定されたディルドの隙間から捩じ込まれたのだろう男の太い指が、ディルドには擦られない前立腺を押し潰す。悲鳴を上げて椅子を軋ませる右京の喘ぎに、涎を溢さんばかりの男の姿が目に浮かぶ。

『ああ、前立腺をゴリゴリに膨れさせているね、射精も管理されてるのかな?』
『ひぃ!ああ!やだ、やっ!やめて!あ!裂けるっ!』
『裂けるどころか指にヤワヤワと絡み付いてもっと欲しがってるよ?早くここに私の逸物が欲しいだろ?私も早く君のオマンコを味わいたいね。ほら、もう一本いけそうだ。』

卑猥な音をさせて指が更に増やされたのが、右京の悲鳴で分かる。ディルドの横から男の指が二本捩じ込まれ、掻き回され擦られて右京は子供のように声をあげて泣き出す。

『ううっいや、やぁ!こすら、はぅっ!あっ!ううっ!』
『ああ、早く捩じ込みたい、君もここで逸物を受け止めて私の女になりたいだろう?女になりたいですといってごらん?右京。』
『い、いやぁっ!やあっ!あああっ!』
『私のはもっと太くて硬いだろう?右京。ほら、可愛いお口マンコでご主人様の逸物に奉仕だ。』

中年特有のネチコイ責めに右京は弱く啜り泣き続け、懇願の声をいつまでもあげていた。
その日の帰り何時ものように調教に訪れた右京は目元を泣き腫らしたように真っ赤に染めて、睨み付けるようにして宏太を真っ直ぐに見据える。あそこまでされてもまだ心が折れないその視線は、宏太にとってはゾクゾクするほど綺麗に見えた。

後、どれくらい?

なにがだと宏太が問い返すと、右京は初めて視線を反らし言いにくそうに口を開く。

あいつに、やられるようになるまで……。

上司に捩じ込みたいと言われて、その日が近づいていたこと改めてに気がつかされたのがその表情からも分かる。普通の男根に近いものまで尻の孔に咥え込めるようになって、しかも今日はそれと一緒に男の指までねじ込まれた。つまりはその気なら大概の男のものだって挿入可能な状態なのだ。ソロソロだろうなと言い放つと右京は一瞬傷ついたような顔をして、全く否定もせずに言い放った宏太を見つめる。

………頼み………がある。

右京は再び俯くと躊躇いがちに口を開く。その姿は酷く打ちのめされ、同時に男を誘う色気を全身から放つ。

あいつが……初めてなんて……嫌なんだ……。……初めての、男は、あんたが………いい……外崎さん。

その強い光を浮かべた右京を宏太は見下ろす。
その晩右京は初めて宏太の自宅に連れ込まれ依頼主には熱を出したとかなんとかで報告もソコソコに、ベットに突き飛ばされ服を剥ぎ取られ何度も宏太の怒張に貫かれた。右京は自分から宏太に股を開いて望んで征服され快感に喘ぎながら、右京は無意識に泣きながら譫言のように繰り返して言う。

あんなやつに堕とされるくらいなら、僕は自分から堕ちてやる……自分から……僕が望んで、あんたのものになってやるんだ……

すっかり作り替えられてしまった身体は元には戻らないし、逃げることも出来ないから自分から宏太のものになってやると泣きながら言う右京は酷く綺麗だった。翌日も散々に抱き潰され宏太のものを体で覚え込んだ右京は、陽射しの中で再び泣きながら呟く。

ざまぁみろ、あいつはあんたの使い古しを初めてだと思って抱くんだ。

頭を撫でながら俺のに慣れちまったらお前んとこの社長の逸物じゃ満足できねぇなと笑ってやると、右京は初めて陽射しの中で宏太を見上げ笑い出す。

外崎さんって、最低だな。

その後片倉右京は当人の勤める会社の社長・片倉雄蔵に、依頼通り仕上がったとして納品された。血を分けた実の息子を女に落として自ら犯したかった男の理由なんか、宏太はちっとも知りもしない。納品された右京が密かにどんな目に合わされていたかは知る気もないが、依頼主の方が手玉にとられているとも知らず右京を抱き続けた。抱かれている方が密かに復讐を図っているとも、右京は宏太と密かにずっと繋がっていたとも知らずに。



※※※



何が起きたのかは了には分からなかった。ただ、片倉右京は自分の会社のブラックボックスを警察やマスコミに暴露して、それがバレて社長自らに絞殺されたのだと言う。大手の企業は不正を露呈しあっという間に倒産、男は人殺しとして破滅。その程度しか了には分からなかったが、宏太はもっと詳しく右京がしていた事を知っていたのではないかと思う。暫く警察に呼び出されていると言葉少なに話していたし、時には警察らしい男がバーに姿を見せたことがある。

「………ここは来ない方がいいんじゃねぇのか?喜一。」
「は、プライベートまでグダグダいわれたかねぇ。しかも宏太に言われたら俺も御仕舞いだな。」

スーツ姿とはいえ警察官だと言う男は、草臥れたベージュのトレンチコートを着て仕事でなくバーに姿を表していた。宏太が名前で呼びあうところを見れば昨日今日の間柄では無さそうだ、そう考えながら了が男を眺めていると、相手はどことなく宏太に似た笑いかたで了を見た。

「兄ちゃんもウキの友達だろ?」
「そいつは了だ、右京のお気に入りの彼氏だよ。」
「そうか、少しは楽しく生きてたんだな、ウキも。」

右京とも知り合いのようすの男はウキにと囁きながらグラスをあげ宏太も同じく右京にと呟く。何故か悲しいとか寂しいとかそんな感覚すら感じないまま、了は隣の空っぽのスツールを眺めながらそれに習っていた。

後々その警察官・遠坂喜一という男に話を聞く機会ができたが片倉右京は調教されても、それを平気で受け入れるような柔な人間ではなかったのだという。右京は自分の会社の社長に画策され調教を受けるしかない立場に追い込まれた。そうして調教された後に十年もの時間をかけてユックリと相手を取り込み地位を手にして情報を集めていたのだ。右京の目的は地位や金ではなく、自分を奴隷に貶めた男の会社もろとも叩き潰す復讐を仕掛けることだった。そして、最終的にそいつに自分を閨の最中に殺させることで、男の築いてきた社会的地位までも完全に破滅に追い込んだ。
それを聞いて普段見ていた飄々とした右京や妖艶に自分と交わる右京しかしらない了は絶句する。同時に右京がそんなにも激しい内面を、全く表に出さなかったことに驚く。
遠坂が言うには右京は全て計画を宏太に伝えていたし、宏太は宏太で警察やマスコミへの情報のリークの手伝いもしていた。宏太は元々そちらの方面に滅法強いのは、パソコン三台を同時に扱ったりしているのは知っていたが了は全く知らない。なんで宏太がそこまでとも思ったが、宏太が調教師を辞める切っ掛けを作ったのは誰でもない片倉右京だったのだと言う。

私的な感情で商品に手を出すんじゃ、俺も終わりだよ。

そう調教師を辞めてバーを始めたばかりの宏太はいったと言う。そんな風に宏太に言って貰える右京が羨ましかったし、そんな激しい思いを表に出すこともない右京と友人の榊恭平が何故か重なるような気がした理由は了にも分からなかった。
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