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第十章 once in a blue moon
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手の中の綺麗な小さな箱を見下ろして、もう一度先程見たおっとりした風の女性の姿を思い浮かべる。仁聖が考えるには年は恐らく恭平よりも年上で、仁聖の叔父よりは少し年下だと思われた女性。彼女が二人のことを知っても表面上は、何の変化もなく帰途についていたことを思い出す。
真希といい意外と女性の中には、恋愛の許容範囲が広い人がいるものなのだろうか。それとも恭平や仁聖に接していて、二人ならそれもありかと考えてくれたのだろうか。ボンヤリとそんなことを考えていると、仁聖の様子に安堵したのか恭平が溜め息交じりの吐息を溢す。恭平の膝の上の仁聖が、無造作にペリペリと包装を剥がし中の小箱を取り出し始める。中身はそれほど特別ではない、よくある三粒のトリュフチョコレート。
「ん~…あま……、恭平、はい。」
仁聖が一粒を口に入れ苦笑いを浮かべると、もう一つを取り出して恭平に促す。仁聖を抱きかかえた腕をそのままにして、促されて口を開けた恭平の舌の上にトリュフの一粒を落とす。そのままそれを大人しく口に含んだ恭平の表情を、仁聖は悪戯めいた瞳で覗き込んだ。
「美味しい?」
「ん…。」
「じゃ…それ、頂戴?」
悪戯っ子のような仁聖の微笑みを見上げて、恭平は呆れたように一瞬眉をそばだてる。両手がそっと頬を包み込み唇を重ねてくると、恭平はされるままに重ねられた唇に甘く溶けたチョコレートに滑る舌を絡める。それをじっくりと味わうように執拗に絡みつく舌を感じながら、やがてチョコレートの味が蕩けて口の中から消え去っても甘い口付けが続く。
恭平は押し付けられたようにソファーに背を預け、何度も口腔内をねぶる舌に従う。トロリと蕩けたチョコレートだけの甘さではない味に、次第に吐息が上がり甘く熱を持っていく。
「ン…甘くて……美味しい…。」
チュ…チュ…と何度も音をさせて、やっと舌が口腔内を探るのを終える。少し淫らに見える仕草で自分の唇を舐める舌が動くのを見つめてると、体の奥底に欲望の炎が燃え上がるを感じた。それを誤魔化すように、恭平はそう言えばと気がついたように少し頬を染めたまま目を細める。
「お前、今迄のバレンタインどうしてたんだ…?」
元々仁聖が甘いものがそれほど得意でない事は、恭平は随分前から知っている。甘いものが食べられない訳ではないが、それほど好んで食べたがる訳ではないのだ。とは言え、それとバレンタインは別ものだろう。気がついた様にそう口にする恭平に、仁聖は小さく肩を竦めてまあ適当にねと悪びれた風でもなく呟く。恐らく適当に他の同級生や友人に、まわしたりしていたに違いない。不意にふぅんと冷ややかに表情を変えた恭平を不思議そうに眺めながら、促され膝から降りた仁聖にその声の主はしなやかな動作で踵を返す。
「え?あれ?恭平?どうしたの?」
予想外に言葉もなく置き去りにされ、室外に姿を消した恭平を戸惑いながら仁聖が追いかける。スタスタと廊下を進んだ恭平が、無言のまま書斎に置いていた自分の鞄を探っている背中に恐る恐る声をかける。
「ど…どうしたの?ね?恭平…何か怒らせる事言った?俺。」
書斎の中で鞄の中からひょいと小さな箱を取り出した恭平が、肩越しに冷ややかな視線で仁聖を見つめ口を開く。
「適当にされるんなら自分で食べる方がましだ。」
「え……えぇぇえっ??!!」
咄嗟にその綺麗な包装を施された小箱を持つ手に、仁聖が飛びつく。冷ややかな視線で見下ろされて必死に懇願の潤んだ瞳を返した仁聖に、思わず噴き出した恭平の手が緩んで小さな箱が仁聖の手の中に滑り落ちてくる。手の中には少しシックな茶色の色合いの包装に包まれた有名なパティシエのいる店の名前。
「……って…ほんとに?恭平。」
手に滑り落ちてきた贈り物にポカンとしながら目を丸くしている仁聖に、思わず見下ろしていた恭平まで呆気にとられる。
「何が?」
「……これ恭平から俺に?」
「あまり甘くないから大丈夫だと思うけどな?」
お前はビターだったら結構好きだしなと呟く恭平の笑顔に、仁聖は見たこともないほどキラキラと光輝く瞳で手の中をじっと見つめる。
本当に……子供か大型犬……
思わず仁聖の尻にブンブンと激しく振られる尻尾が、今にも見えそうだと内心そう思うほど。
値段の差はあるにしても既製品である筈のその物自体が、全く違って見える。それが贈る人と贈られるものの気持の差なんだと改めて感じながら仁聖は、こそばゆい様な気持で大切そうにその箱を手で包み込む。子供のように素直に嬉しそうに満面の頬笑みを浮かべた仁聖の様子を、可笑しそうに恭平は眺める。
「すっご…く、嬉しい…。チョコ貰ってこんな嬉しいの、俺初めて…。」
「………恥ずかしい思いして買ったんだから、少しは喜んでもらわないとな。」
その言葉にわざわざ店に買いに行ってくれた恭平の姿を想像して、仁聖は思わず笑みを浮かべた。その視線に自分の恥ずかしい様子を想像していると分かって、恭平は少し拗ねたように頬を染める。バレンタイン前の女の子に溢れる店内でも、恭平は一際綺麗でさぞかし目立ったんだろうと思う。どうせならその姿を眺めて起きたかったが、こんなサプライズには到底勝てない。
「じゃ、俺もお返ししないと。」
ニッコリと微笑みかける仁聖にホワイトデーでか?と茶化す様に呟いた恭平を、腰に腕を回して促す様にリビングに向かう。さっきまで座っていたソファのクッションの陰に隠すようにして置かれていた小さな紙袋の姿。一端部屋に戻っていた仁聖がわざわざそこに座っていた意味に気がついて、恭平が微かに苦笑を浮かべた。
「結局、同じような事考えてるんだな。」
「愛し合ってる証拠でしょ?はい。」
華美でないその小さな袋を差し出されて恭平が受け取ると、嬉しそうな微笑みを浮かべた仁聖がそっとその体を抱き寄せる。抱き締められ肌を擦り寄せながら恭平は、触れた場所からジワリと熱を滲ませた仁聖の体に気がつく。
「ねぇ、恭平?」
「ん?」
「したい……、駄目?」
誘うように強請る仁聖の声に、思案する気配を滲ませて恭平は苦笑いを浮かべながら呟く。
「……駄目。」
予想外の返答にええ?と言いたげな瞳が、潤んだように恭平の顔を見上げた。言葉にしていないのにどう見てもお願いお願いと、目の前の瞳が声高に強請っている。切実に訴えかけ強請る光がその瞳に浮かんでいるのに、恭平は思わず笑いだしそうになりその頭を撫でた。ヨシヨシと撫でられる恭平の手の心地よさに、思わず仁聖はホッコリしてしまう。
「きょうへぇ………。」
頭を撫でられて嬉しくなるが、気がつけば結果うんとは言って貰えていない。欲しいのにお預けをされている状況に、正直焦れて襲い掛かってしまいそうになる。強請る甘く低い声に少しだけ悪戯めいた光が相手の瞳にも浮かぶのを見つけて、仁聖はその手を腰に滑らせた。
「こら、まだ……。」
いいとは言っていないという言葉を恭平が放つ前に、シャツの裾を引き出した指が背筋をなぞる。肌をなぞりながら口付けして膝まづく姿に、ホンノリと頬を染めた恭平が甘く唇を舐めるのが見えた。指だけでなく口を使い恭平の前をはだけ、熱を帯びたそこを寛げる。
「ん………、ふぅ……。」
スルリと頭を撫でる指先を感じとりながら、布地の上から肉茎の昂りにネットリと舌を這わせるとヒクリと体が震えた。ボトムを下げながら、残された下着の上から何度も形を確かめるように舐め続ける。淫らに濡れて布越しに透けて見える恭平の昂りに、熱い吐息を吐きながら顔を埋める仁聖に恭平の吐息が更に熱く甘く溢れ落ちた。
「う……ん、ふぅ……。」
「気持ち、い?」
「も、どかし……い、こんなの……。」
モゾと腰を揺らめかせる恭平に、微笑みながら潤んだ瞳が見上げてくる。舌は変わらず肉茎を布越しに丹念に舐め回し、熱い両手で柔らかに双球を包み込む。尻を手で揉まれながら肉茎を舐め回す遠回しな快感に、震えるような吐息を溢しながら腰がピクピクと前後に揺れる。
「脱ぎたい?これ?」
「ん……。」
細い腰に張り付くような下着の縁を仁聖が噛みクンッと引っ張ると、濡れて張り付いた布が剥がされる感触に腰が震えた。ピンッと先から滴を垂らしながら跳ね上がった肉棒に、仁聖がうっとりとした目を向ける。両手でその下着を引き下ろしながら、亀頭を舌で舐め回すと恭平の手が探るように頭を撫でた。
「ん、うっ、んふぅっ!」
硬く立ち上がった肉茎が、ジュプッと淫らな音をたてて仁聖の口の中に飲み込まれていく。口の中で舌に愛撫を施されて、直に両手が尻を揉みながら腰を引き寄せ更に奥まで肉棒を飲み込む。甘く喘ぎながら思わず頭を引き寄せる恭平の手に、全く逆らうこともなく仁聖が深く飲み込み愛撫する。
「んあっ!ああっ!あ、駄目……。」
ジュプジュプと音をたてて飲み込む音に、恭平の頬が赤く染まり吐息が高まっていく。弾けてしまいそうな快感に腰が震えるのを感じながら、達しかけて恭平は仁聖の口から肉茎をジュルンと淫らな音と共に抜き取った。亀頭の先と仁聖の唇の間に繋がる透明な唾液の糸に、恭平は眩暈のような欲情を感じる。
「ん、もっと……舐めさせて………恭平ぇ…。」
はぁっと息をついて床に座り込んだまま上目使いに強請る仁聖の声に、思わずよろめくように恭平はソファーに座り込む。その足の間にウットリした表情で仁聖がにじりより、唾液で濡れそぼった肉棒に吐息を吹き付けた。
「……ねぇ、………舐めて、いい?…恭平ぇ……。」
まるで犬のように舌で亀頭だけを執拗に舐め回す仁聖の姿に、恭平は仁聖の頭を両手で探り甘く喘ぎ頤を仰け反らせる。続いて亀頭だけでなく肉棒もその下も後孔まで全てに舌を這わされると、ヒクヒクと体内迄響く快感の強さに腰が跳ねた。
スッと一度その感触が離れ空気が流れたと思うと、カサリと何か乾いた音が響く。ハァッと息を溢して頤を仰け反らせたままの恭平が、引き戻される前に足の間に挟まるようにした仁聖の指がヌルリと何かを肉棒に塗りつけた。
「え、ふぁっ!な、に?!」
「動かないでね?いい?」
不意に両足を高く上げさせられ仁聖の肩に担ぎ上げられながら、強請る声が口付けと一緒に太股の内側を這う。しかも、その指がヌルリとしたものを、擦り付けるように恭平の片方の乳首にも塗りつける。
「ふぁっ!ひゃぅっ!」
肉棒に塗りつけられたものが熱にトロリと溶けて滴る感触に、甘ったるい声が溢れ落ちた。驚いて下を確認する前に残った乳首にも滑りが擦り付けられるのと同時に、先に擦り付けられた乳首の方が仁聖の唇に咥え込まれる。
「やぁっ、なん、あっ!」
反対の乳首を捏ね回しながら、舌でねぶられ吸い上げられる感触に腰に快感が響く。震えながら見下ろすと茶色く染まった反対の乳首をチョコレート色の指が捏ね回し、股間も同じ色に蜜を垂らしている。
「なにや、っ……て、ば、かぁっ!あっ!あうっ!」
乳首を弄くられベロリと舐め回される快感に、塗りつけられ溶けたチョコに蜜が溢れた。丹念に舐め回す舌の動きに、淫らな姿で腰をひくつかせる恭平の声が甘く蕩けていく。何でそんな場所を舐められて、こんな甘ったるい声が出るようになってしまったのか。そう考えても声が止められるわけでもなく、耐えきれずに足が宙で突っ張るように伸びる。
「や、あ!あ、ああっ!あ!」
身体中をべとつかせながら、舐められる快感に声が跳ね上がっていく。ピチャッピチャと塗りつけられたチョコレートを丹念に拭いとるように、舌が這っていく。ヌルリとした指が身体をチョコで飾られ、それを舐めとる舌に官能が昂りとめどない喘ぎに変わる。
「も、やぁっ、なめ、あぅん!ふぁあっ!」
股間に埋められた頭が再び肉棒を舐め始めたのに、恭平の口から甘い声が迸り腰がビクビクと跳ねた。それを押さえつけるようにして、執拗に舌を絡ませ舐め回される。再び恭平が昂り上り詰めるまで、それほどの時間はかからなかった。
「んっ!!くうっ!ふっうう!」
腰を突き上げるように痙攣させた恭平のモノを音をたてて飲み干しながら、それでもまだ舐め始めるのに恭平が弱く制止の声をあげる。上り詰めたばかりの体にその刺激は過剰すぎて、呼吸すらままならない。
「も、や、…なめ、んんっ…ひうっ……。」
弱く頭を振りながら仁聖の髪を探る手に、それでも止める気がない舌が音をたてる。ヌルヌルと先端を舐める刺激に、吐精したばかりの体が戦慄き歓喜の声に変わる。
「やぁ、これ、や、あぅんんんっ!」
奥を擦りたてられるのと同じように透明な滴を吹き出し、再び痙攣した体が一瞬仰け反ったかと思うとソファーに崩れるようにドサリと落ちた。
真希といい意外と女性の中には、恋愛の許容範囲が広い人がいるものなのだろうか。それとも恭平や仁聖に接していて、二人ならそれもありかと考えてくれたのだろうか。ボンヤリとそんなことを考えていると、仁聖の様子に安堵したのか恭平が溜め息交じりの吐息を溢す。恭平の膝の上の仁聖が、無造作にペリペリと包装を剥がし中の小箱を取り出し始める。中身はそれほど特別ではない、よくある三粒のトリュフチョコレート。
「ん~…あま……、恭平、はい。」
仁聖が一粒を口に入れ苦笑いを浮かべると、もう一つを取り出して恭平に促す。仁聖を抱きかかえた腕をそのままにして、促されて口を開けた恭平の舌の上にトリュフの一粒を落とす。そのままそれを大人しく口に含んだ恭平の表情を、仁聖は悪戯めいた瞳で覗き込んだ。
「美味しい?」
「ん…。」
「じゃ…それ、頂戴?」
悪戯っ子のような仁聖の微笑みを見上げて、恭平は呆れたように一瞬眉をそばだてる。両手がそっと頬を包み込み唇を重ねてくると、恭平はされるままに重ねられた唇に甘く溶けたチョコレートに滑る舌を絡める。それをじっくりと味わうように執拗に絡みつく舌を感じながら、やがてチョコレートの味が蕩けて口の中から消え去っても甘い口付けが続く。
恭平は押し付けられたようにソファーに背を預け、何度も口腔内をねぶる舌に従う。トロリと蕩けたチョコレートだけの甘さではない味に、次第に吐息が上がり甘く熱を持っていく。
「ン…甘くて……美味しい…。」
チュ…チュ…と何度も音をさせて、やっと舌が口腔内を探るのを終える。少し淫らに見える仕草で自分の唇を舐める舌が動くのを見つめてると、体の奥底に欲望の炎が燃え上がるを感じた。それを誤魔化すように、恭平はそう言えばと気がついたように少し頬を染めたまま目を細める。
「お前、今迄のバレンタインどうしてたんだ…?」
元々仁聖が甘いものがそれほど得意でない事は、恭平は随分前から知っている。甘いものが食べられない訳ではないが、それほど好んで食べたがる訳ではないのだ。とは言え、それとバレンタインは別ものだろう。気がついた様にそう口にする恭平に、仁聖は小さく肩を竦めてまあ適当にねと悪びれた風でもなく呟く。恐らく適当に他の同級生や友人に、まわしたりしていたに違いない。不意にふぅんと冷ややかに表情を変えた恭平を不思議そうに眺めながら、促され膝から降りた仁聖にその声の主はしなやかな動作で踵を返す。
「え?あれ?恭平?どうしたの?」
予想外に言葉もなく置き去りにされ、室外に姿を消した恭平を戸惑いながら仁聖が追いかける。スタスタと廊下を進んだ恭平が、無言のまま書斎に置いていた自分の鞄を探っている背中に恐る恐る声をかける。
「ど…どうしたの?ね?恭平…何か怒らせる事言った?俺。」
書斎の中で鞄の中からひょいと小さな箱を取り出した恭平が、肩越しに冷ややかな視線で仁聖を見つめ口を開く。
「適当にされるんなら自分で食べる方がましだ。」
「え……えぇぇえっ??!!」
咄嗟にその綺麗な包装を施された小箱を持つ手に、仁聖が飛びつく。冷ややかな視線で見下ろされて必死に懇願の潤んだ瞳を返した仁聖に、思わず噴き出した恭平の手が緩んで小さな箱が仁聖の手の中に滑り落ちてくる。手の中には少しシックな茶色の色合いの包装に包まれた有名なパティシエのいる店の名前。
「……って…ほんとに?恭平。」
手に滑り落ちてきた贈り物にポカンとしながら目を丸くしている仁聖に、思わず見下ろしていた恭平まで呆気にとられる。
「何が?」
「……これ恭平から俺に?」
「あまり甘くないから大丈夫だと思うけどな?」
お前はビターだったら結構好きだしなと呟く恭平の笑顔に、仁聖は見たこともないほどキラキラと光輝く瞳で手の中をじっと見つめる。
本当に……子供か大型犬……
思わず仁聖の尻にブンブンと激しく振られる尻尾が、今にも見えそうだと内心そう思うほど。
値段の差はあるにしても既製品である筈のその物自体が、全く違って見える。それが贈る人と贈られるものの気持の差なんだと改めて感じながら仁聖は、こそばゆい様な気持で大切そうにその箱を手で包み込む。子供のように素直に嬉しそうに満面の頬笑みを浮かべた仁聖の様子を、可笑しそうに恭平は眺める。
「すっご…く、嬉しい…。チョコ貰ってこんな嬉しいの、俺初めて…。」
「………恥ずかしい思いして買ったんだから、少しは喜んでもらわないとな。」
その言葉にわざわざ店に買いに行ってくれた恭平の姿を想像して、仁聖は思わず笑みを浮かべた。その視線に自分の恥ずかしい様子を想像していると分かって、恭平は少し拗ねたように頬を染める。バレンタイン前の女の子に溢れる店内でも、恭平は一際綺麗でさぞかし目立ったんだろうと思う。どうせならその姿を眺めて起きたかったが、こんなサプライズには到底勝てない。
「じゃ、俺もお返ししないと。」
ニッコリと微笑みかける仁聖にホワイトデーでか?と茶化す様に呟いた恭平を、腰に腕を回して促す様にリビングに向かう。さっきまで座っていたソファのクッションの陰に隠すようにして置かれていた小さな紙袋の姿。一端部屋に戻っていた仁聖がわざわざそこに座っていた意味に気がついて、恭平が微かに苦笑を浮かべた。
「結局、同じような事考えてるんだな。」
「愛し合ってる証拠でしょ?はい。」
華美でないその小さな袋を差し出されて恭平が受け取ると、嬉しそうな微笑みを浮かべた仁聖がそっとその体を抱き寄せる。抱き締められ肌を擦り寄せながら恭平は、触れた場所からジワリと熱を滲ませた仁聖の体に気がつく。
「ねぇ、恭平?」
「ん?」
「したい……、駄目?」
誘うように強請る仁聖の声に、思案する気配を滲ませて恭平は苦笑いを浮かべながら呟く。
「……駄目。」
予想外の返答にええ?と言いたげな瞳が、潤んだように恭平の顔を見上げた。言葉にしていないのにどう見てもお願いお願いと、目の前の瞳が声高に強請っている。切実に訴えかけ強請る光がその瞳に浮かんでいるのに、恭平は思わず笑いだしそうになりその頭を撫でた。ヨシヨシと撫でられる恭平の手の心地よさに、思わず仁聖はホッコリしてしまう。
「きょうへぇ………。」
頭を撫でられて嬉しくなるが、気がつけば結果うんとは言って貰えていない。欲しいのにお預けをされている状況に、正直焦れて襲い掛かってしまいそうになる。強請る甘く低い声に少しだけ悪戯めいた光が相手の瞳にも浮かぶのを見つけて、仁聖はその手を腰に滑らせた。
「こら、まだ……。」
いいとは言っていないという言葉を恭平が放つ前に、シャツの裾を引き出した指が背筋をなぞる。肌をなぞりながら口付けして膝まづく姿に、ホンノリと頬を染めた恭平が甘く唇を舐めるのが見えた。指だけでなく口を使い恭平の前をはだけ、熱を帯びたそこを寛げる。
「ん………、ふぅ……。」
スルリと頭を撫でる指先を感じとりながら、布地の上から肉茎の昂りにネットリと舌を這わせるとヒクリと体が震えた。ボトムを下げながら、残された下着の上から何度も形を確かめるように舐め続ける。淫らに濡れて布越しに透けて見える恭平の昂りに、熱い吐息を吐きながら顔を埋める仁聖に恭平の吐息が更に熱く甘く溢れ落ちた。
「う……ん、ふぅ……。」
「気持ち、い?」
「も、どかし……い、こんなの……。」
モゾと腰を揺らめかせる恭平に、微笑みながら潤んだ瞳が見上げてくる。舌は変わらず肉茎を布越しに丹念に舐め回し、熱い両手で柔らかに双球を包み込む。尻を手で揉まれながら肉茎を舐め回す遠回しな快感に、震えるような吐息を溢しながら腰がピクピクと前後に揺れる。
「脱ぎたい?これ?」
「ん……。」
細い腰に張り付くような下着の縁を仁聖が噛みクンッと引っ張ると、濡れて張り付いた布が剥がされる感触に腰が震えた。ピンッと先から滴を垂らしながら跳ね上がった肉棒に、仁聖がうっとりとした目を向ける。両手でその下着を引き下ろしながら、亀頭を舌で舐め回すと恭平の手が探るように頭を撫でた。
「ん、うっ、んふぅっ!」
硬く立ち上がった肉茎が、ジュプッと淫らな音をたてて仁聖の口の中に飲み込まれていく。口の中で舌に愛撫を施されて、直に両手が尻を揉みながら腰を引き寄せ更に奥まで肉棒を飲み込む。甘く喘ぎながら思わず頭を引き寄せる恭平の手に、全く逆らうこともなく仁聖が深く飲み込み愛撫する。
「んあっ!ああっ!あ、駄目……。」
ジュプジュプと音をたてて飲み込む音に、恭平の頬が赤く染まり吐息が高まっていく。弾けてしまいそうな快感に腰が震えるのを感じながら、達しかけて恭平は仁聖の口から肉茎をジュルンと淫らな音と共に抜き取った。亀頭の先と仁聖の唇の間に繋がる透明な唾液の糸に、恭平は眩暈のような欲情を感じる。
「ん、もっと……舐めさせて………恭平ぇ…。」
はぁっと息をついて床に座り込んだまま上目使いに強請る仁聖の声に、思わずよろめくように恭平はソファーに座り込む。その足の間にウットリした表情で仁聖がにじりより、唾液で濡れそぼった肉棒に吐息を吹き付けた。
「……ねぇ、………舐めて、いい?…恭平ぇ……。」
まるで犬のように舌で亀頭だけを執拗に舐め回す仁聖の姿に、恭平は仁聖の頭を両手で探り甘く喘ぎ頤を仰け反らせる。続いて亀頭だけでなく肉棒もその下も後孔まで全てに舌を這わされると、ヒクヒクと体内迄響く快感の強さに腰が跳ねた。
スッと一度その感触が離れ空気が流れたと思うと、カサリと何か乾いた音が響く。ハァッと息を溢して頤を仰け反らせたままの恭平が、引き戻される前に足の間に挟まるようにした仁聖の指がヌルリと何かを肉棒に塗りつけた。
「え、ふぁっ!な、に?!」
「動かないでね?いい?」
不意に両足を高く上げさせられ仁聖の肩に担ぎ上げられながら、強請る声が口付けと一緒に太股の内側を這う。しかも、その指がヌルリとしたものを、擦り付けるように恭平の片方の乳首にも塗りつける。
「ふぁっ!ひゃぅっ!」
肉棒に塗りつけられたものが熱にトロリと溶けて滴る感触に、甘ったるい声が溢れ落ちた。驚いて下を確認する前に残った乳首にも滑りが擦り付けられるのと同時に、先に擦り付けられた乳首の方が仁聖の唇に咥え込まれる。
「やぁっ、なん、あっ!」
反対の乳首を捏ね回しながら、舌でねぶられ吸い上げられる感触に腰に快感が響く。震えながら見下ろすと茶色く染まった反対の乳首をチョコレート色の指が捏ね回し、股間も同じ色に蜜を垂らしている。
「なにや、っ……て、ば、かぁっ!あっ!あうっ!」
乳首を弄くられベロリと舐め回される快感に、塗りつけられ溶けたチョコに蜜が溢れた。丹念に舐め回す舌の動きに、淫らな姿で腰をひくつかせる恭平の声が甘く蕩けていく。何でそんな場所を舐められて、こんな甘ったるい声が出るようになってしまったのか。そう考えても声が止められるわけでもなく、耐えきれずに足が宙で突っ張るように伸びる。
「や、あ!あ、ああっ!あ!」
身体中をべとつかせながら、舐められる快感に声が跳ね上がっていく。ピチャッピチャと塗りつけられたチョコレートを丹念に拭いとるように、舌が這っていく。ヌルリとした指が身体をチョコで飾られ、それを舐めとる舌に官能が昂りとめどない喘ぎに変わる。
「も、やぁっ、なめ、あぅん!ふぁあっ!」
股間に埋められた頭が再び肉棒を舐め始めたのに、恭平の口から甘い声が迸り腰がビクビクと跳ねた。それを押さえつけるようにして、執拗に舌を絡ませ舐め回される。再び恭平が昂り上り詰めるまで、それほどの時間はかからなかった。
「んっ!!くうっ!ふっうう!」
腰を突き上げるように痙攣させた恭平のモノを音をたてて飲み干しながら、それでもまだ舐め始めるのに恭平が弱く制止の声をあげる。上り詰めたばかりの体にその刺激は過剰すぎて、呼吸すらままならない。
「も、や、…なめ、んんっ…ひうっ……。」
弱く頭を振りながら仁聖の髪を探る手に、それでも止める気がない舌が音をたてる。ヌルヌルと先端を舐める刺激に、吐精したばかりの体が戦慄き歓喜の声に変わる。
「やぁ、これ、や、あぅんんんっ!」
奥を擦りたてられるのと同じように透明な滴を吹き出し、再び痙攣した体が一瞬仰け反ったかと思うとソファーに崩れるようにドサリと落ちた。
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