82 / 693
第九章 可愛い人
79.
しおりを挟む
「おい、慶太郎。泊まるのはいいから自分の事は自分でしろよ?布団出すの手伝え。」
「……あ、うん。」
ここ暫く険悪な様子でしか見たことのなかった二人が連れ立って和室に足を向けたのを、恭平は少し微笑みながら穏やかな表情で眺めていた。
結局和室に慶太郎が泊まることになって直前の行為の内容を慶太郎にあからさまにした訳ではないが、その体を労わる気色で頑として恭平を仁聖はキッチンに立たせない。仁聖に当然のように促されて慶太郎は、横に並びその夕食の準備を手伝っていた。しかし、予想以上に覚束無い慶太郎の手つきに、逆に慶太郎の予想以上に手際のいい仁聖が呆れた声を上げる。
「お前…ほんとお坊ちゃまだな。……人参も剥けないとは思わなかった。」
「わ…悪かったな…やったことないんだから仕方ないだろ?」
ピーラーで人参が剥けないのをやったことがないから仕方がないとは言いたくないなぁと流石の仁聖も考える。下味や下拵え云々は兎も角、この調子では包丁どころか米も研げないのではなかろうか。手際よく調理を進める仁聖の手際を興味深そうに眺める慶太郎が、関心の声をあげる。
「…お前って凄いな、器用なんだな。」
思わず手際よくフライパンを動かす仁聖の手つきを眺め、そう言った慶太郎にこれくらい当然だろと言いたげに同時に横の鍋を覗き込む。カウンター越しに少し心配げに眺めている恭平の視線に気がついた様に手馴れた動作で調理を進めながら仁聖は、ふっと横で興味深げに覗きこむ慶太郎に視線を投げた。
母親だけでなく家政婦がいるような家で育った上に・道場を開いているほど古風な育ちをしている慶太郎が、厨房どころか家事などした事があるはずも無いのだろうと理解はできる。同時に自分や恭平の育った環境のせいとは言わないまでも、最低限は出来るべきだよなと内心呟く仁聖が思い出したように口を開く。
「お前。泊まるって家に電話しておけよ?心配してるぞ、きっと。」
「う…だけど……。」
「甘えんな。お前はどうなってもいいけど、恭平まで巻き込むな。恭平を困らせるような事すんなよな。」
そうリビングには届かないほどの声でヒソヒソと語り合う二人の姿に、声の内容を知らないソファーの恭平が不思議そうに首を傾げていた。
※※※
「そろそろ寝よっ?……テレビつまんないしさ?」
年末年始の特番体勢のテレビ番組表に辟易しながら仁聖が、振り返りながら言うと同じく大分飽きてた恭平も何気なく同意を示す。横にいた慶太郎も先程自宅に電話をして恭平の家に居ることを母親に告げ明日の昼には帰ると話していた。それから暫く考え込む様子を浮かばせていたが、仁聖のトレーナを借りることにして着替えると寛いだ様子を見せていた。それぞれ腰を上げながらリビングから寝室と、和室に足を向けた仕草に慶太郎が思わず訝しげに声を上げた。
「…仁聖…お前……、…まさか……一緒に?」
その声の意味に気が付いたように手馴れた様子でリビングの電気を消した仁聖が、あからさまに恭平の腰に手を回しながら呆れたように口を開く。
「だから…俺と恭平は新婚なんだから少しは気を使えよ!!お前はっ!」
「じ…仁聖!!!お・お前・何慶太郎にッ…馬鹿っ!!」
「もー・いいから寝よ!恭平。」
慌てて声を上げる恭平を半ば無理やり室内に押し込み、呆然としている慶太郎の視線を背中に感じながら仁聖はサッサと寝室のドアを後ろ手に閉める。
少し批難の視線を見せる恭平を無造作に抱き寄せながら、拗ねた表情を浮かばせた仁聖が上目遣いにその綺麗な顔を睨み付けた。
「…もう…恭平が優しいのは分かってるけど、今夜だけにしてよ?」
不貞腐れた顔の仁聖に気がついて、恭平は思わず黙りこんでしまう。
「初めての年越しは絶対二人っきりで過ごしたいんだよ?俺、初めてだからすっごい大事にしてるんだからね?分かってる?」
拗ねたその声に罪悪感を感じたのか、批難の声を飲み込んだ恭平が思わず素直に腕の中で「分かってる」と囁き視線を落とす。拗ねた視線を緩ませてその表情をみつめながら、「それに…」と仁聖が小さく声を繋ぎ抱き寄せた耳元で低く鼓膜を擽る声を溢す。
「夕方ほんとは凄いその気だったんだよ?……我慢するの大変なんだから……。」
抱き寄せられる腕に手をつきながら、思わずその言葉の示す事に恭平も頬を染める。不意に抱き寄せた体が何気なく下肢を押し付けるのを感じて恭平は戸惑いがちの視線で、すぐ目の前の仁聖の悪戯めいた表情を見つめると分かってますと言いたげな気色がその瞳に浮かぶ。
「しないよ…?分かってるから。だけど……。」
言葉に続けて耳元に更に唇が近づくと、まるで熱を落とす様な吐息が耳朶を擽り身を震えさせる。
「少しスキンシップくらいはいいでしょ?ね?」
縺れる様にして夜具の中に体を押し込まれ、抱き締められたまま柔らかく甘い愛撫に似たキスをする。そんな仁聖の仕草を制止でき無いどころか、自分が喜んでいることに気がついて恭平は思わず頬を紅潮させる。
唇だけでなく瞼や頬、額にもまるで撫でるように甘く熱を落とすキスの心地よさにうっとりしている。そんな自分に、恭平は視線を俯かせながら唇を噛んだ。その思いつめるような仕草に気がついた仁聖が、今までとは違って酷く気遣わしげな視線を夜の闇の中に浮かばせて仕草を止めてその表情を覗き込む。
「……ごめん、もしかして…こういうの嫌?」
「ん……違う……。」
予想とは違う小さなその囁きに眉を顰めて、仁聖が恭平の言葉の先を促す。甘いキスに自分の体がチリチリとした感情を感じ、それがあっという間に広がって内面を炙るのを感じながら恭平は困惑に満ちた表情で呟く。
「…どうして…だろうな…?」
「何が?」
「………もともと…そんなにセックスが好きだった訳でもないし男同士の経験も無いのに…。」
ぽつんと闇の中で呟く声が、ホンノリと頬を染めて色気を漂わせながら酷く甘く解けるような響きを窺わせる。
「凄く……、その…。」
いいよどむ声の恥じらうような声に、仁聖の全身が震えるように熱を放つ。こんな風に自分にはまるで隠すこともなく話すようになった恭平の姿に、仁聖は胸が一杯になってしまうのを恭平は気がついているのだろうか。
「仁聖にされるの………気持ち……いいんだ。…少し…困る。」
「こ、困るって…?何で?」
困ると言う言葉に驚きながら声を返すと、ベットの中で抱き締められたままの恭平が仁聖の体に手を伸ばしオズオズと胸元を握る。そして、少しだけ視線を伏せ気味にしながら、恥ずかしそうに呟く。
「…凄く…、…お前が……欲しくなるんだ………。」
「っ………。」
悩殺するにも程がある。仁聖が思わずその体にのし掛かり真っ赤になった顔を首元に埋めるのに、恭平は全く意図が掴めていないのかキョトンとした顔だ。
「……は、反則……。」
「え?」
「そんな可愛いこといったら、理性なんて木っ端微塵だってば、恭平。」
「な、なに?俺が何言った?」
自覚の全くない恭平の言葉に、悶絶しそうになる。こんなこと前付き合っていた女性にも言っていたんだろうか?いや、言っていたんなら、相手の女だって別れるはずはなさそうだ。と言うことはつまりは、この言葉は全て自分が初めて囁かれているわけで、しかも彼が想うままの本心な訳で。こんな可愛いことを当然みたいに言う恭平が、いるなんて正直なところ反則技としか思えない。
絶句した仁聖の体が不意に重石のように自分の体に圧し掛かったかと思うと、ベットの中の手がもぞもぞと腰の辺りを探る感触に恭平が目を見開く。制止の声を小さく上げた恭平の本の数センチしか離れていない場所で仁聖が耐え切れないという視線を投げつけた。
「…………っ恭平…っ、そんなこと言われたら俺、我慢できないよ…っ。」
「な…何?…駄目だって…っさっき自分で…ッ…!!」
毛布の中でスルンとボトムを引き抜かれて、太腿の隙間からぴったりと肌についたボクサーショーツの中に指が滑り込み恭平は慌ててその肩を抑えようともがく。しかし制止しきれないその指先が熱を持つような蕾に触れた瞬間、その体に電気が走ったように肌が粟立ちながら腰が撓った。必死に声を押し殺しながら制止しようと吐息を堪える恭平の悩ましい表情に、逆に煽られた仁聖の指先が更に激しくそこを探り上げ掻き乱す。
「そんな…めちゃくちゃ可愛いこと、さらっと言うなんて……っ…反則だってば……!」
「な…何言って…俺は…ッ…んっ…んんっ…!」
「だって…それ俺だから欲しいっていってるじゃない……っ…俺だって…恭平が欲しいよ…ッ!」
直に耳元でそう囁きかけながら夜具の下で足を持ち上げられ、仁聖の熱が隙間から捩じ込まれ押し当てられた。その感触に、思わず恭平が甘い声を上げる。下肢の片方を更にグイと持ち上げるように腕に抱えあげた仁聖の動作を引き止めようとした瞬間。微かにクプリと濡れた音を立てて、疼く様な熱さをもった強張りが体内に衝き込まれ恭平の白い頤が仰け反った。
「う…っ…う……くっ……っ!!」
ギチ…と軋むような熱が鋭い痛みと、同時にもたららされる体内で爆ぜる快感。恭平が必死に声を堪える艶かしい表情が、更に仁聖を昂ぶらせていく。下着の隙間から捻じ込む卑猥な状況とあいまって強く蕩ける悦楽に内側が擦りあげられる。必死に声を殺しながら背筋を這い上がる快感に耐え切れず吐息を荒げ、頬を染めながら恭平の指先が、その肩を掴み顔を押し当てると体を震わせた。
「ば…か…ッ……、下着……っ…あ…っ……あん……!」
「脱いでたら…慶太郎、来たら困るでしょ?……それに…声…我慢して…っ……。」
「ん、……そ、……んな、…………あっ。」
更に腰を押し進める感触に思わず悲鳴の様な掠れた吐息が弾ける。シィっと小さく声を囁きかけながら肌を密着させて揺すりあげる動作を起こした仁聖の首に、思わず恭平の縋る腕が引き寄せるように絡んだ。肌触りのいいはずの下着の感触が纏わりつくように自分自身を絡めとって恭平の腰が引き攣るように痙攣じみた震えを起こす。それが直にその下肢を抱きかかえた仁聖の指先にも伝わっていく。
「んん、………あ、……ああ………。」
堪えきれずに甘い喘ぎが、耳元で掠れて溢れ落ちる。
「……あ、うん。」
ここ暫く険悪な様子でしか見たことのなかった二人が連れ立って和室に足を向けたのを、恭平は少し微笑みながら穏やかな表情で眺めていた。
結局和室に慶太郎が泊まることになって直前の行為の内容を慶太郎にあからさまにした訳ではないが、その体を労わる気色で頑として恭平を仁聖はキッチンに立たせない。仁聖に当然のように促されて慶太郎は、横に並びその夕食の準備を手伝っていた。しかし、予想以上に覚束無い慶太郎の手つきに、逆に慶太郎の予想以上に手際のいい仁聖が呆れた声を上げる。
「お前…ほんとお坊ちゃまだな。……人参も剥けないとは思わなかった。」
「わ…悪かったな…やったことないんだから仕方ないだろ?」
ピーラーで人参が剥けないのをやったことがないから仕方がないとは言いたくないなぁと流石の仁聖も考える。下味や下拵え云々は兎も角、この調子では包丁どころか米も研げないのではなかろうか。手際よく調理を進める仁聖の手際を興味深そうに眺める慶太郎が、関心の声をあげる。
「…お前って凄いな、器用なんだな。」
思わず手際よくフライパンを動かす仁聖の手つきを眺め、そう言った慶太郎にこれくらい当然だろと言いたげに同時に横の鍋を覗き込む。カウンター越しに少し心配げに眺めている恭平の視線に気がついた様に手馴れた動作で調理を進めながら仁聖は、ふっと横で興味深げに覗きこむ慶太郎に視線を投げた。
母親だけでなく家政婦がいるような家で育った上に・道場を開いているほど古風な育ちをしている慶太郎が、厨房どころか家事などした事があるはずも無いのだろうと理解はできる。同時に自分や恭平の育った環境のせいとは言わないまでも、最低限は出来るべきだよなと内心呟く仁聖が思い出したように口を開く。
「お前。泊まるって家に電話しておけよ?心配してるぞ、きっと。」
「う…だけど……。」
「甘えんな。お前はどうなってもいいけど、恭平まで巻き込むな。恭平を困らせるような事すんなよな。」
そうリビングには届かないほどの声でヒソヒソと語り合う二人の姿に、声の内容を知らないソファーの恭平が不思議そうに首を傾げていた。
※※※
「そろそろ寝よっ?……テレビつまんないしさ?」
年末年始の特番体勢のテレビ番組表に辟易しながら仁聖が、振り返りながら言うと同じく大分飽きてた恭平も何気なく同意を示す。横にいた慶太郎も先程自宅に電話をして恭平の家に居ることを母親に告げ明日の昼には帰ると話していた。それから暫く考え込む様子を浮かばせていたが、仁聖のトレーナを借りることにして着替えると寛いだ様子を見せていた。それぞれ腰を上げながらリビングから寝室と、和室に足を向けた仕草に慶太郎が思わず訝しげに声を上げた。
「…仁聖…お前……、…まさか……一緒に?」
その声の意味に気が付いたように手馴れた様子でリビングの電気を消した仁聖が、あからさまに恭平の腰に手を回しながら呆れたように口を開く。
「だから…俺と恭平は新婚なんだから少しは気を使えよ!!お前はっ!」
「じ…仁聖!!!お・お前・何慶太郎にッ…馬鹿っ!!」
「もー・いいから寝よ!恭平。」
慌てて声を上げる恭平を半ば無理やり室内に押し込み、呆然としている慶太郎の視線を背中に感じながら仁聖はサッサと寝室のドアを後ろ手に閉める。
少し批難の視線を見せる恭平を無造作に抱き寄せながら、拗ねた表情を浮かばせた仁聖が上目遣いにその綺麗な顔を睨み付けた。
「…もう…恭平が優しいのは分かってるけど、今夜だけにしてよ?」
不貞腐れた顔の仁聖に気がついて、恭平は思わず黙りこんでしまう。
「初めての年越しは絶対二人っきりで過ごしたいんだよ?俺、初めてだからすっごい大事にしてるんだからね?分かってる?」
拗ねたその声に罪悪感を感じたのか、批難の声を飲み込んだ恭平が思わず素直に腕の中で「分かってる」と囁き視線を落とす。拗ねた視線を緩ませてその表情をみつめながら、「それに…」と仁聖が小さく声を繋ぎ抱き寄せた耳元で低く鼓膜を擽る声を溢す。
「夕方ほんとは凄いその気だったんだよ?……我慢するの大変なんだから……。」
抱き寄せられる腕に手をつきながら、思わずその言葉の示す事に恭平も頬を染める。不意に抱き寄せた体が何気なく下肢を押し付けるのを感じて恭平は戸惑いがちの視線で、すぐ目の前の仁聖の悪戯めいた表情を見つめると分かってますと言いたげな気色がその瞳に浮かぶ。
「しないよ…?分かってるから。だけど……。」
言葉に続けて耳元に更に唇が近づくと、まるで熱を落とす様な吐息が耳朶を擽り身を震えさせる。
「少しスキンシップくらいはいいでしょ?ね?」
縺れる様にして夜具の中に体を押し込まれ、抱き締められたまま柔らかく甘い愛撫に似たキスをする。そんな仁聖の仕草を制止でき無いどころか、自分が喜んでいることに気がついて恭平は思わず頬を紅潮させる。
唇だけでなく瞼や頬、額にもまるで撫でるように甘く熱を落とすキスの心地よさにうっとりしている。そんな自分に、恭平は視線を俯かせながら唇を噛んだ。その思いつめるような仕草に気がついた仁聖が、今までとは違って酷く気遣わしげな視線を夜の闇の中に浮かばせて仕草を止めてその表情を覗き込む。
「……ごめん、もしかして…こういうの嫌?」
「ん……違う……。」
予想とは違う小さなその囁きに眉を顰めて、仁聖が恭平の言葉の先を促す。甘いキスに自分の体がチリチリとした感情を感じ、それがあっという間に広がって内面を炙るのを感じながら恭平は困惑に満ちた表情で呟く。
「…どうして…だろうな…?」
「何が?」
「………もともと…そんなにセックスが好きだった訳でもないし男同士の経験も無いのに…。」
ぽつんと闇の中で呟く声が、ホンノリと頬を染めて色気を漂わせながら酷く甘く解けるような響きを窺わせる。
「凄く……、その…。」
いいよどむ声の恥じらうような声に、仁聖の全身が震えるように熱を放つ。こんな風に自分にはまるで隠すこともなく話すようになった恭平の姿に、仁聖は胸が一杯になってしまうのを恭平は気がついているのだろうか。
「仁聖にされるの………気持ち……いいんだ。…少し…困る。」
「こ、困るって…?何で?」
困ると言う言葉に驚きながら声を返すと、ベットの中で抱き締められたままの恭平が仁聖の体に手を伸ばしオズオズと胸元を握る。そして、少しだけ視線を伏せ気味にしながら、恥ずかしそうに呟く。
「…凄く…、…お前が……欲しくなるんだ………。」
「っ………。」
悩殺するにも程がある。仁聖が思わずその体にのし掛かり真っ赤になった顔を首元に埋めるのに、恭平は全く意図が掴めていないのかキョトンとした顔だ。
「……は、反則……。」
「え?」
「そんな可愛いこといったら、理性なんて木っ端微塵だってば、恭平。」
「な、なに?俺が何言った?」
自覚の全くない恭平の言葉に、悶絶しそうになる。こんなこと前付き合っていた女性にも言っていたんだろうか?いや、言っていたんなら、相手の女だって別れるはずはなさそうだ。と言うことはつまりは、この言葉は全て自分が初めて囁かれているわけで、しかも彼が想うままの本心な訳で。こんな可愛いことを当然みたいに言う恭平が、いるなんて正直なところ反則技としか思えない。
絶句した仁聖の体が不意に重石のように自分の体に圧し掛かったかと思うと、ベットの中の手がもぞもぞと腰の辺りを探る感触に恭平が目を見開く。制止の声を小さく上げた恭平の本の数センチしか離れていない場所で仁聖が耐え切れないという視線を投げつけた。
「…………っ恭平…っ、そんなこと言われたら俺、我慢できないよ…っ。」
「な…何?…駄目だって…っさっき自分で…ッ…!!」
毛布の中でスルンとボトムを引き抜かれて、太腿の隙間からぴったりと肌についたボクサーショーツの中に指が滑り込み恭平は慌ててその肩を抑えようともがく。しかし制止しきれないその指先が熱を持つような蕾に触れた瞬間、その体に電気が走ったように肌が粟立ちながら腰が撓った。必死に声を押し殺しながら制止しようと吐息を堪える恭平の悩ましい表情に、逆に煽られた仁聖の指先が更に激しくそこを探り上げ掻き乱す。
「そんな…めちゃくちゃ可愛いこと、さらっと言うなんて……っ…反則だってば……!」
「な…何言って…俺は…ッ…んっ…んんっ…!」
「だって…それ俺だから欲しいっていってるじゃない……っ…俺だって…恭平が欲しいよ…ッ!」
直に耳元でそう囁きかけながら夜具の下で足を持ち上げられ、仁聖の熱が隙間から捩じ込まれ押し当てられた。その感触に、思わず恭平が甘い声を上げる。下肢の片方を更にグイと持ち上げるように腕に抱えあげた仁聖の動作を引き止めようとした瞬間。微かにクプリと濡れた音を立てて、疼く様な熱さをもった強張りが体内に衝き込まれ恭平の白い頤が仰け反った。
「う…っ…う……くっ……っ!!」
ギチ…と軋むような熱が鋭い痛みと、同時にもたららされる体内で爆ぜる快感。恭平が必死に声を堪える艶かしい表情が、更に仁聖を昂ぶらせていく。下着の隙間から捻じ込む卑猥な状況とあいまって強く蕩ける悦楽に内側が擦りあげられる。必死に声を殺しながら背筋を這い上がる快感に耐え切れず吐息を荒げ、頬を染めながら恭平の指先が、その肩を掴み顔を押し当てると体を震わせた。
「ば…か…ッ……、下着……っ…あ…っ……あん……!」
「脱いでたら…慶太郎、来たら困るでしょ?……それに…声…我慢して…っ……。」
「ん、……そ、……んな、…………あっ。」
更に腰を押し進める感触に思わず悲鳴の様な掠れた吐息が弾ける。シィっと小さく声を囁きかけながら肌を密着させて揺すりあげる動作を起こした仁聖の首に、思わず恭平の縋る腕が引き寄せるように絡んだ。肌触りのいいはずの下着の感触が纏わりつくように自分自身を絡めとって恭平の腰が引き攣るように痙攣じみた震えを起こす。それが直にその下肢を抱きかかえた仁聖の指先にも伝わっていく。
「んん、………あ、……ああ………。」
堪えきれずに甘い喘ぎが、耳元で掠れて溢れ落ちる。
0
お気に入りに追加
249
あなたにおすすめの小説



塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる