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第六章
56.
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ハッキリとその掠れる様に響く言葉を耳にした瞬間、今まで欲しがっていた言葉に自分が酷く狼狽しているのに恭平は気がついた。好きと言う言葉を口にしたこともあるし耳に入れたこともある。自分自身が目の前の真っ直ぐな目をした恋人に向かって愛を誓ったのだって、自分に彼への強い思いがあったからだ。それなのに仁聖にそのたった一言を口にされて、その言葉を受けただけでそんなにも自分が狼狽するとは考えも及ばなかった。
真っ直ぐな視線がゆっくりと瞬きしながら自分を見つめ肌を更に寄せてくる。
「…恭平…。」
掠れて魅惑的に囁く声に、耳も体も全てが熱を持ったような気がしていく。思わず顔を両手で覆い隠してしまった恭平に、仁聖が驚いたように目を丸くする。
「恭平…?」
抱き寄せられる仁聖の手の熱さよりも、自分の体の方がはるかに熱を持っていて恭平は動揺しながら両手で顔を覆ったまま。
「愛してる……恭平。」
繰り返される言葉に、動揺では表しきれない熱が高まっていく。覆い隠した手に仁聖がチュと軽い音をたてて口づけるのに、その手がビクッと震えるのが分かる。何度も何度も手に口づけられる音が耳に入り、堪えきれない熱さに泣きたくなってしまう。
「ちょ……、仁…せ、止め…。」
「愛してる、恭平。」
制止の声すら飲み込まれて、甘く掠れた声を耳元に落とされると腰が溶けるように力が抜け落ちてしまう。指の隙間から熱っぽく潤んだ甘い視線を浮かべて、藍色に輝く瞳が透ける。自分を見つめる視線に射竦められ息を呑んだ恭平に、仁聖はその体に覆い被さり掠れる甘い声で名前を囁く。その声に自分の中にある狂おしいほどの熱を持った感情をはっきりと自覚させられ、ゆるりと覆い被さった肩の下で指先が服の裾から滑り込んでくる。熱い指が滑らかに腹部を撫でるのに、恭平は息を詰めて身を竦ませる。
「…愛してる………、恭平。」
「ん…っ…あ……っ。」
仁聖の甘い声に煽られたか感情に反応して、肌が不意に倍にも敏感になったかのように粟立つ。耳元を擽る甘い声に、触れる全てに甘い吐息を含んだ小さな声が思わず溢れ落ちた。仁聖の声に自分のほうが、とっくに先に陥落させられていて全て受け入れてしまっている。そう自覚しながら誘うように指先を追う視線を、仁聖がふっと微笑みながら耳元に顔を埋め犬のように鼻を擦りつける。
「……恭平?そんな顔したら………駄目だって…。」
「え…?な…何…?」
溜め息を溢すようにホウ…ッと甘い吐息が耳元に落ちる。
「すっごい…可愛い…。たまんない……。」
ずっと言いたかった言葉を恭平に向けて形にしただけで、自分の内面がこの瞬間にもどんどん変わっていくのを感じている。そう自覚しながら、仁聖は服を探り白磁の肌を晒していく。愛おしくて恋焦れて自分の今までの在り方すらも覆してしまう。仁聖の全てを作り変えてしまうほどの感情を産み出す存在に、指を触れさせ見つめるだけで体の芯が痺れるような満ち足りた幸福を感じる。綺麗で艶やかに色づいて染まっていく肌に触れながら、何度も何度も愛おしそうに口付け所有の証を刻み込むように花弁を肌に散らしていく。その度に小さな甘い声を上げる恭平に、仁聖が少し視線を上げ陶然とした視線を向けた。
「歯止め…利かなくなっちゃう…俺。…もう…すっごい、やばいくらい…。」
「……仁聖…?」
「しないでいようとしたけど……我慢できない。……して…いいよね?……恭平。」
懇願するような表情でその顔を見下ろす仁聖の首に腕をまわし項に手を滑らせながら、恭平が微かに淡く香る様な頬笑みを浮かべる。恭平の表情が恥ずかしそうに、それでいて満ち足りるような色を漂わせた。その表情に嬉しそうに微笑みながら仁聖がもう一度、名前とともに愛を囁きそっと掬い上げるように前髪に触れ甘いキスを落とす。
抱きかかえるようにしながらその肌に身を寄せる仁聖の肌の重みに、もう一度柔らかく息を弾ませて恭平はまるで漂う月の様にフワリとその言葉に答える囁きを零していた。
ギシリとベットの軋む音が闇の中に響く。甘い吐息が触れられる度に口から絶え間なく溢れ落ちるのを感じながら、恭平は覆い被さりのし掛かる重みに眉をよせる。奥に仁聖の熱を感じれば感じるほど、苦痛めいた表情が浮かぶのに声は甘えるように蕩けていく。
「んんっ!あ、ああっ、仁聖っ!」
グッと押し込まれていく圧迫感が、中を擦る感触に体の奥が受け入れて蕩ける快感に満たされる。自分の肉茎に直に触れられなくても体内の快感に飲まれて震える体に、仁聖の甘い掠れ声が更に追い立てていく。
「可愛い声出すね、恭平…んっ…中ひくついてる…よ?」
「い……うなっ…あっ駄目…だ、そこ、や…。」
音をたてて擦りたてられる中の何処かを、硬い先が抉る度に腰が跳ねてきつく食い絞め余計に体内に埋められたモノの存在を自覚する。声が迸りそうになるのに手で口を塞ごうとした恭平の手を、仁聖の熱い手が絡めとり指を絡めてベットに押し付け縫い付けてしまう。
「や、はな……あうんっ!や…だぁっ!ああ!あぁっ!」
「声聞かせて…?恭平、愛してる。」
「んぅ!も、あぁっ!あああっ!」
掠れた仁聖の声が媚薬のように耳に落ちると、全身が反応して快感に喘ぎ声をあげるしか出来なくなっていく。ギシギシと体の奥まで捩じ込まれ掻き回され、苦痛な筈なのにそれが全て快感に変わってしまっている。両手をそれぞれに指を絡めて押さえられたまま、腰を突き上げる仁聖の動きに自分も次第に腰を揺らめかせて快感を貪っていく。
「んんっ!あ、あうっ、ふあっ!も、い、いく…っ!」
「んうっ!お、れも!いきそうっ!一緒に、いこ?!」
ズッズッと淫らな腰の動きにあわせて、恭平は腰を揺らめかせながら細い足をその腰に絡ませる。押し付け擦り合わせるようにくねらせる動きで、堪えようのない蕩ける快感に上り詰めていく。二人がそれぞれに感極まって声を枯らして精を迸らせるまで、そう時間はかからなかった。
※※※
柔らかい陽射しがカーテンの隙間から落ち始め、陽を感じ始めた仁聖がもぞりと毛布の下で身を動かす。
週が明けて学校に行かなくてはいけないと理解している理性に、横でスヤスヤと吐息を溢し穏やかに眠っている綺麗な寝顔から離れたくない感情が抵抗する。俺ってこんなに律儀だったっけと一人内心に思いながらそっとベットから滑りだし安堵したように眠っている姿を見下ろした。
穏やかに熟睡しているその姿に後始末を完全にはしていなかった事に気がつくが、起こす事には大きな躊躇いもあるし綺麗な寝顔を見ている自分がまた熱を持ち始めたのに気がつく。もう一度抱きしめてその体に触れ、一緒にトロリとした快感に耽りたいと考えながら小さな溜息をついてペタペタと音を立ててバスルームに向かっていた。
初めて口にした言葉に自分の想いが後押しされるような気がして仁聖は、満ち足りた想いに微笑む。同時に綺麗な恋人の寝姿に直ぐ様欲情してしまう自分に、少し反省しながらバスルームから滑り出す。ふっと濡れた髪を掻き揚げて躊躇いがちに寝室のほうに視線を投げ、もう一度ベットの恭平に触れて囁いて口付けて…そんな気持ちで傍に行ったら最後絶対ベットから出られなくなると理解する理性の合間で暫し佇む。
こういう時…恭平の常識って重い…。
今まで付き合ってきた女の子達だったら、ベットで触れるそんな行為を喜んで受け入れてくれる。しかし、恭平は絶対にそうはいかないと分かっている。だからこそ抱きたいという欲望を押しこめて必死に理性的になろうとしているのだ。仁聖は溜め息をつきながら、思い切ったように簡単に身支度を整えると玄関に向かっていた。
靴に無造作に足を入れて後ろ髪を引かれるような想いでドアノブに手をかけた瞬間、背後で不意にリビングの境界のドアが開く音が響く。
「……仁聖?」
振り返った先にいるしなやかな姿態に眩暈を感じながら仁聖が苦笑を浮かべる。
気だるげな行為の痕が滲む白い肌に薄いシャツと下着だけ。後ろ髪を引かれている自分には目に毒としか言いようのないその扇情的な姿は、仁聖がベットに寄らずに出て行こうとしたのに気がついて慌ててベットから滑り出し手近な服を羽織ったのが分かる。一瞬そのまま抱き寄せてその体に触れてしまおうかと心が呻く様に言うのを感じながら仁聖は、その姿を見つめた。
「………早いな?…もう行く時間か?」
「少し早いけどね、一端帰って着替えるし…それにこのままだと…。」
言葉の先でフワリとした足取りで歩み寄ってくる姿に、鼓動が跳ね上がるのを感じながら仁聖が微笑みかける。と、不意に少しだけ残念そうな気配を滲ませて恭平の視線が俯く。今まで見せた事のないその酷く悩ましい仕草に仁聖は深々と溜め息をついて、その様子に気がついた不思議そうな視線を恭平が浮かべる。
「あぁぁ…もう…俺さぁ?……必死に我慢してるんだよ?恭平分かってる?」
「え……?あ…でも学校は……仕方ない…だろ?」
「そこじゃないってば。」
まだ濡れたままの仁聖の髪に気がついて少し心配げに手を伸ばす恭平の仕草に、仁聖は少し擽ったそうに肩を竦めながらドアにかけていた手を離し恭平の腰に回す。
「寝てる恭平を抱きしめてもう1回シタかったけど、我慢して自分で抜いてまで……。」
「ば……何いってるんだ…それに何でそんな…一人でシャワー浴びて…抜いてって………。」
「一緒に入りたかった?一緒に浴びたら…絶対しちゃうけど…?」
「……そんなこと言ってない………。」
言葉に詰まりながら少し拗ねるように頬を染めるその姿に胸の内が疼く様な熱を感じながら、仁聖が扇情的な笑顔でその顔を覗き込む。腰に回した手がスルリと恭平の下着越しの尻に降りる。
「…すっごく可愛い色っぽい顔で寝てたよ?恭平ってば。それに、まだ・俺の…残ってるでしょ?中に。」
「…っ?!!な………何………言って……っ。」
「そう思ったら・もうムラムラとさ?……仕方なく、一人で抜きました。」
思わずベチンと頭を叩く手に、仁聖が冗談めかして声を立てて笑う。その表情がふっと真面目な色を滲ませたのに気がつき、恭平が目を細めながら少し気だるげな色香の漂う視線で見つめる。朝日の中で眩いその姿に仁聖は、少し大人びて見える笑みを敷く。
「真面目に初めてだったんだよ?愛の告白……、本当なら今日一日ベットに二人でいたい。」
「っ……馬鹿っ……そんなこと言ってるなら、さっさと学校行け!」
薔薇色に頬を染めて薄いシャツ越しの細い腰に手を回されたまま身を捩る恭平の綺麗な表情を見つめながら、仁聖は酷く満ち足りた気分で微笑んだ。その表情に思わず押し黙りながら恭平が、気遣わしげにまた髪に触れるのに仁聖は目を細めた。
「……せめて髪くらい乾かしていけばいいのに…。」
「だーいじょうぶだってば、そんなに心配?俺、本当に凄く愛されちゃってるよね?」
「っ…この間インフルエンザにかかったばかりだからだ!馬鹿!!」
照れ隠しのように真っ赤になるその表情を見つめながら、酷く名残惜しそうに仁聖が肌を寄せスリ…と擦らせたかと思うとそれ以上の行為をする前に腕を放す。
「それじゃまた夜・来るね?恭平。」
スルリと離れたその体温に少し寂しげな気配を漂わせた恭平に、仁聖はドアを開きながら思い出したように振り返る。真っ直ぐにキラキラとしたその瞳が自分を見つめるのに、一瞬恭平は自分が言葉もなく手を上げかけるのに気がついて更に薔薇色に頬を染めた。柄にもないと思いながらその手を引っ込めようとする姿に、少し可笑しそうに仁聖は嬉しそうに笑いかける。
「いってきます、愛してるよ、信弥。」
何気なく・それでも酷く嬉しそうにそう口にした仁聖がドアの先に身を翻そうとしたのに気がついて、思わず恭平は自分の足が無意識に上り框に動いたのを自覚していた。何をしようとした訳でないのに咄嗟に動いた体と声が仁聖を呼び止め、半分体をドアの先からのり出すようにして腕を引く。
不思議そうに自分を見た瞳を視界に入れながら、自分が思わぬ行動に出ようとしているのを自覚して恭平は自分自身でも驚きを隠せない。
薄く翻るシャツがフワリとドアからのり出して、唐突に柔らかく甘い唇が重なるのに仁聖は目を丸くする。ただ触れて重ねられるだけのその優しい唇の感触は、自分がした行為に自分自身が驚いたような視線を浮かべながら直ぐ様ドアの中に身を引っ込めてしまう。
「き……恭平?」
「さ……さっさと行ってこい。」
今まで大分強請ってから、それも渋々してくれた事のあるだけだったはずの≪行ってらっしゃいのキス≫が、唐突に強請るわけでもなく与えられていた。それに仁聖が目を丸くしながらも満面の笑みを浮かべて頷く。
元気な足音を立てて姿を消した仁聖を送りながら、自分でもした事がよく分からないという表情で恭平は気恥ずかしげに頭をかかえていた。
真っ直ぐな視線がゆっくりと瞬きしながら自分を見つめ肌を更に寄せてくる。
「…恭平…。」
掠れて魅惑的に囁く声に、耳も体も全てが熱を持ったような気がしていく。思わず顔を両手で覆い隠してしまった恭平に、仁聖が驚いたように目を丸くする。
「恭平…?」
抱き寄せられる仁聖の手の熱さよりも、自分の体の方がはるかに熱を持っていて恭平は動揺しながら両手で顔を覆ったまま。
「愛してる……恭平。」
繰り返される言葉に、動揺では表しきれない熱が高まっていく。覆い隠した手に仁聖がチュと軽い音をたてて口づけるのに、その手がビクッと震えるのが分かる。何度も何度も手に口づけられる音が耳に入り、堪えきれない熱さに泣きたくなってしまう。
「ちょ……、仁…せ、止め…。」
「愛してる、恭平。」
制止の声すら飲み込まれて、甘く掠れた声を耳元に落とされると腰が溶けるように力が抜け落ちてしまう。指の隙間から熱っぽく潤んだ甘い視線を浮かべて、藍色に輝く瞳が透ける。自分を見つめる視線に射竦められ息を呑んだ恭平に、仁聖はその体に覆い被さり掠れる甘い声で名前を囁く。その声に自分の中にある狂おしいほどの熱を持った感情をはっきりと自覚させられ、ゆるりと覆い被さった肩の下で指先が服の裾から滑り込んでくる。熱い指が滑らかに腹部を撫でるのに、恭平は息を詰めて身を竦ませる。
「…愛してる………、恭平。」
「ん…っ…あ……っ。」
仁聖の甘い声に煽られたか感情に反応して、肌が不意に倍にも敏感になったかのように粟立つ。耳元を擽る甘い声に、触れる全てに甘い吐息を含んだ小さな声が思わず溢れ落ちた。仁聖の声に自分のほうが、とっくに先に陥落させられていて全て受け入れてしまっている。そう自覚しながら誘うように指先を追う視線を、仁聖がふっと微笑みながら耳元に顔を埋め犬のように鼻を擦りつける。
「……恭平?そんな顔したら………駄目だって…。」
「え…?な…何…?」
溜め息を溢すようにホウ…ッと甘い吐息が耳元に落ちる。
「すっごい…可愛い…。たまんない……。」
ずっと言いたかった言葉を恭平に向けて形にしただけで、自分の内面がこの瞬間にもどんどん変わっていくのを感じている。そう自覚しながら、仁聖は服を探り白磁の肌を晒していく。愛おしくて恋焦れて自分の今までの在り方すらも覆してしまう。仁聖の全てを作り変えてしまうほどの感情を産み出す存在に、指を触れさせ見つめるだけで体の芯が痺れるような満ち足りた幸福を感じる。綺麗で艶やかに色づいて染まっていく肌に触れながら、何度も何度も愛おしそうに口付け所有の証を刻み込むように花弁を肌に散らしていく。その度に小さな甘い声を上げる恭平に、仁聖が少し視線を上げ陶然とした視線を向けた。
「歯止め…利かなくなっちゃう…俺。…もう…すっごい、やばいくらい…。」
「……仁聖…?」
「しないでいようとしたけど……我慢できない。……して…いいよね?……恭平。」
懇願するような表情でその顔を見下ろす仁聖の首に腕をまわし項に手を滑らせながら、恭平が微かに淡く香る様な頬笑みを浮かべる。恭平の表情が恥ずかしそうに、それでいて満ち足りるような色を漂わせた。その表情に嬉しそうに微笑みながら仁聖がもう一度、名前とともに愛を囁きそっと掬い上げるように前髪に触れ甘いキスを落とす。
抱きかかえるようにしながらその肌に身を寄せる仁聖の肌の重みに、もう一度柔らかく息を弾ませて恭平はまるで漂う月の様にフワリとその言葉に答える囁きを零していた。
ギシリとベットの軋む音が闇の中に響く。甘い吐息が触れられる度に口から絶え間なく溢れ落ちるのを感じながら、恭平は覆い被さりのし掛かる重みに眉をよせる。奥に仁聖の熱を感じれば感じるほど、苦痛めいた表情が浮かぶのに声は甘えるように蕩けていく。
「んんっ!あ、ああっ、仁聖っ!」
グッと押し込まれていく圧迫感が、中を擦る感触に体の奥が受け入れて蕩ける快感に満たされる。自分の肉茎に直に触れられなくても体内の快感に飲まれて震える体に、仁聖の甘い掠れ声が更に追い立てていく。
「可愛い声出すね、恭平…んっ…中ひくついてる…よ?」
「い……うなっ…あっ駄目…だ、そこ、や…。」
音をたてて擦りたてられる中の何処かを、硬い先が抉る度に腰が跳ねてきつく食い絞め余計に体内に埋められたモノの存在を自覚する。声が迸りそうになるのに手で口を塞ごうとした恭平の手を、仁聖の熱い手が絡めとり指を絡めてベットに押し付け縫い付けてしまう。
「や、はな……あうんっ!や…だぁっ!ああ!あぁっ!」
「声聞かせて…?恭平、愛してる。」
「んぅ!も、あぁっ!あああっ!」
掠れた仁聖の声が媚薬のように耳に落ちると、全身が反応して快感に喘ぎ声をあげるしか出来なくなっていく。ギシギシと体の奥まで捩じ込まれ掻き回され、苦痛な筈なのにそれが全て快感に変わってしまっている。両手をそれぞれに指を絡めて押さえられたまま、腰を突き上げる仁聖の動きに自分も次第に腰を揺らめかせて快感を貪っていく。
「んんっ!あ、あうっ、ふあっ!も、い、いく…っ!」
「んうっ!お、れも!いきそうっ!一緒に、いこ?!」
ズッズッと淫らな腰の動きにあわせて、恭平は腰を揺らめかせながら細い足をその腰に絡ませる。押し付け擦り合わせるようにくねらせる動きで、堪えようのない蕩ける快感に上り詰めていく。二人がそれぞれに感極まって声を枯らして精を迸らせるまで、そう時間はかからなかった。
※※※
柔らかい陽射しがカーテンの隙間から落ち始め、陽を感じ始めた仁聖がもぞりと毛布の下で身を動かす。
週が明けて学校に行かなくてはいけないと理解している理性に、横でスヤスヤと吐息を溢し穏やかに眠っている綺麗な寝顔から離れたくない感情が抵抗する。俺ってこんなに律儀だったっけと一人内心に思いながらそっとベットから滑りだし安堵したように眠っている姿を見下ろした。
穏やかに熟睡しているその姿に後始末を完全にはしていなかった事に気がつくが、起こす事には大きな躊躇いもあるし綺麗な寝顔を見ている自分がまた熱を持ち始めたのに気がつく。もう一度抱きしめてその体に触れ、一緒にトロリとした快感に耽りたいと考えながら小さな溜息をついてペタペタと音を立ててバスルームに向かっていた。
初めて口にした言葉に自分の想いが後押しされるような気がして仁聖は、満ち足りた想いに微笑む。同時に綺麗な恋人の寝姿に直ぐ様欲情してしまう自分に、少し反省しながらバスルームから滑り出す。ふっと濡れた髪を掻き揚げて躊躇いがちに寝室のほうに視線を投げ、もう一度ベットの恭平に触れて囁いて口付けて…そんな気持ちで傍に行ったら最後絶対ベットから出られなくなると理解する理性の合間で暫し佇む。
こういう時…恭平の常識って重い…。
今まで付き合ってきた女の子達だったら、ベットで触れるそんな行為を喜んで受け入れてくれる。しかし、恭平は絶対にそうはいかないと分かっている。だからこそ抱きたいという欲望を押しこめて必死に理性的になろうとしているのだ。仁聖は溜め息をつきながら、思い切ったように簡単に身支度を整えると玄関に向かっていた。
靴に無造作に足を入れて後ろ髪を引かれるような想いでドアノブに手をかけた瞬間、背後で不意にリビングの境界のドアが開く音が響く。
「……仁聖?」
振り返った先にいるしなやかな姿態に眩暈を感じながら仁聖が苦笑を浮かべる。
気だるげな行為の痕が滲む白い肌に薄いシャツと下着だけ。後ろ髪を引かれている自分には目に毒としか言いようのないその扇情的な姿は、仁聖がベットに寄らずに出て行こうとしたのに気がついて慌ててベットから滑り出し手近な服を羽織ったのが分かる。一瞬そのまま抱き寄せてその体に触れてしまおうかと心が呻く様に言うのを感じながら仁聖は、その姿を見つめた。
「………早いな?…もう行く時間か?」
「少し早いけどね、一端帰って着替えるし…それにこのままだと…。」
言葉の先でフワリとした足取りで歩み寄ってくる姿に、鼓動が跳ね上がるのを感じながら仁聖が微笑みかける。と、不意に少しだけ残念そうな気配を滲ませて恭平の視線が俯く。今まで見せた事のないその酷く悩ましい仕草に仁聖は深々と溜め息をついて、その様子に気がついた不思議そうな視線を恭平が浮かべる。
「あぁぁ…もう…俺さぁ?……必死に我慢してるんだよ?恭平分かってる?」
「え……?あ…でも学校は……仕方ない…だろ?」
「そこじゃないってば。」
まだ濡れたままの仁聖の髪に気がついて少し心配げに手を伸ばす恭平の仕草に、仁聖は少し擽ったそうに肩を竦めながらドアにかけていた手を離し恭平の腰に回す。
「寝てる恭平を抱きしめてもう1回シタかったけど、我慢して自分で抜いてまで……。」
「ば……何いってるんだ…それに何でそんな…一人でシャワー浴びて…抜いてって………。」
「一緒に入りたかった?一緒に浴びたら…絶対しちゃうけど…?」
「……そんなこと言ってない………。」
言葉に詰まりながら少し拗ねるように頬を染めるその姿に胸の内が疼く様な熱を感じながら、仁聖が扇情的な笑顔でその顔を覗き込む。腰に回した手がスルリと恭平の下着越しの尻に降りる。
「…すっごく可愛い色っぽい顔で寝てたよ?恭平ってば。それに、まだ・俺の…残ってるでしょ?中に。」
「…っ?!!な………何………言って……っ。」
「そう思ったら・もうムラムラとさ?……仕方なく、一人で抜きました。」
思わずベチンと頭を叩く手に、仁聖が冗談めかして声を立てて笑う。その表情がふっと真面目な色を滲ませたのに気がつき、恭平が目を細めながら少し気だるげな色香の漂う視線で見つめる。朝日の中で眩いその姿に仁聖は、少し大人びて見える笑みを敷く。
「真面目に初めてだったんだよ?愛の告白……、本当なら今日一日ベットに二人でいたい。」
「っ……馬鹿っ……そんなこと言ってるなら、さっさと学校行け!」
薔薇色に頬を染めて薄いシャツ越しの細い腰に手を回されたまま身を捩る恭平の綺麗な表情を見つめながら、仁聖は酷く満ち足りた気分で微笑んだ。その表情に思わず押し黙りながら恭平が、気遣わしげにまた髪に触れるのに仁聖は目を細めた。
「……せめて髪くらい乾かしていけばいいのに…。」
「だーいじょうぶだってば、そんなに心配?俺、本当に凄く愛されちゃってるよね?」
「っ…この間インフルエンザにかかったばかりだからだ!馬鹿!!」
照れ隠しのように真っ赤になるその表情を見つめながら、酷く名残惜しそうに仁聖が肌を寄せスリ…と擦らせたかと思うとそれ以上の行為をする前に腕を放す。
「それじゃまた夜・来るね?恭平。」
スルリと離れたその体温に少し寂しげな気配を漂わせた恭平に、仁聖はドアを開きながら思い出したように振り返る。真っ直ぐにキラキラとしたその瞳が自分を見つめるのに、一瞬恭平は自分が言葉もなく手を上げかけるのに気がついて更に薔薇色に頬を染めた。柄にもないと思いながらその手を引っ込めようとする姿に、少し可笑しそうに仁聖は嬉しそうに笑いかける。
「いってきます、愛してるよ、信弥。」
何気なく・それでも酷く嬉しそうにそう口にした仁聖がドアの先に身を翻そうとしたのに気がついて、思わず恭平は自分の足が無意識に上り框に動いたのを自覚していた。何をしようとした訳でないのに咄嗟に動いた体と声が仁聖を呼び止め、半分体をドアの先からのり出すようにして腕を引く。
不思議そうに自分を見た瞳を視界に入れながら、自分が思わぬ行動に出ようとしているのを自覚して恭平は自分自身でも驚きを隠せない。
薄く翻るシャツがフワリとドアからのり出して、唐突に柔らかく甘い唇が重なるのに仁聖は目を丸くする。ただ触れて重ねられるだけのその優しい唇の感触は、自分がした行為に自分自身が驚いたような視線を浮かべながら直ぐ様ドアの中に身を引っ込めてしまう。
「き……恭平?」
「さ……さっさと行ってこい。」
今まで大分強請ってから、それも渋々してくれた事のあるだけだったはずの≪行ってらっしゃいのキス≫が、唐突に強請るわけでもなく与えられていた。それに仁聖が目を丸くしながらも満面の笑みを浮かべて頷く。
元気な足音を立てて姿を消した仁聖を送りながら、自分でもした事がよく分からないという表情で恭平は気恥ずかしげに頭をかかえていた。
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