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4 エルツ視点
しおりを挟む旦那様に『二人とも一緒に食べよう』と言われて私は断ろうとしたが、ブラウさんが私より先に返事をしてしまったため、私達は旦那様と一緒に昼食をとる事になった。
昼食の用意を終えた私達が椅子に座ると、旦那様は話し始めた。
「いきなり掃除の手伝いをさせてしまって申し訳ないな」
「いえ」
「あの部屋には妻が使っていた物や思い出の物が置いてあるんだ」
「……そうでしたか」
「今日サフィーロとグラナートが出かけると聞いて、二人がいないうちに掃除をして帰ってきたらあの部屋を見せてあげたいと思ったんだよ」
「お二人は部屋の事を知らないのですか?」
「ああ。……妻が亡くなった後に家の改装をしたんだが、二人ともその時に妻の思い出の物は全て処分したと思っているんだ」
改装……
そういえば、さっきの部屋の家具は他の部屋の家具よりも明るい色で、装飾品の雰囲気も違っていた。
「たまにブラウと二人で掃除をしにいっていたんだが、あの部屋にいると泣きそうになってしまってね……サフィーロとグラナートにはあの部屋の事は教えない方がいいと思っていたんだが、今の二人なら大丈夫だろうと思ったんだ」
私達は昼食を食べ終わると部屋に戻った。
旦那様はブラウさんと二人で机の上の布を捲ると、そこには額縁に入った肖像画がたくさん置いてあった。
「……これを飾りたくてね」
旦那様と奥様とサフィーロ様の三人が描かれているものもあれば、奥様が赤ちゃんを抱いていて四人のものもあった。
旦那様は一つずつ丁寧に拭きながらその時の思い出を話してくれた。
コンコン、とドアを叩く音が聞こえた。
「サフィーロ様とグラナート様がお帰りになりました」
「ああ、わかった。すぐに行くよ」
掃除が終わり肖像画を飾る場所を悩んでいた旦那様は「このまま机に並べた状態で二人に見せて一緒に決める事にしよう」と言って部屋を出た。
サフィーロ様とグラナート様は玄関ホールで旦那様の事を待っていた。
「今日、衝撃的な事を耳にしまして……」
サフィーロ様はそう言うとチラッと私を見た。
「ベリル嬢の婚約相手はゴルトのようなんです」
「……何を言っているんだ? ゴルトには息子がいるだろう」
「ええ、ですがベリル嬢と婚約したという事は、ゴルトはこの国では一度も結婚をしていないのでしょう。……詳しい事はわかりませんが、ベリル嬢とゴルトはまだ結婚はしていなくて、近々婚約祝いのパーティーを開くらしく……」
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でも……
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しかも、二人は親子以上の歳の差がある。
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「…………エルツ?」
旦那様に呼ばれて私は返事をした。
「大丈夫か? ぼーっとしていて、何度か声をかけても気がついていないようだったが…….」
「申し訳ございません。考え事をしていました」
「いや、ならいいんだが……」
そう言うと、旦那様はサフィーロ様とグラナート様を連れて一階の廊下を進んでいった。
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