4 / 4
父を殺したい青年
3話
しおりを挟む
「単刀直入に言う。俺は父親を殺したい」
青年が話すまでに時間はかからなかった。
相当の覚悟を持ってきたのだろう一字一句ハッキリ聞き取りやすく告げてきた。
視界の端に入った琥珀が死人のように真っ青な顔をして小刻みに肩を震わせている。
琥珀にとってはかなりショッキングな言葉だったのだろうか。
「琥珀、部屋の奥に行ってていいよ?」
優しく促すも琥珀は無言で何度も首を横に振った。
本人がいたいなら止める義務はないが相当辛そうになったら部屋の奥にやろう。
僕は本棚に寄りかかり腕を組んだ。
「なんで君は父親を殺したいと?」
「あいつ、急にボケ始めたんだよ。それで今はもう身体もまともに動かない。母親もとっくに他界しててさ、頼れる親戚もいないから自由な時間がなくなっちまった」
かなり身勝手な願いだと思う。
でも、老人は足でまとい。
それは昔からある事だ。だから、姥捨山なんてものが存在する。
僕は同情をするように何回か頷き目に付いた本を取った。
「それじゃあ、この本を……」
「ダメっ!」
いつものように本を勧めようとすると、琥珀が声を荒らげて僕と青年の間に入る。
顔が真っ青なのは変わらないし、何かを伝えようにもそれ以上声が出ないのか口をパクパクさせるだけ。
だけど、琥珀は必死にそこにとどまっている。
琥珀……
僕は琥珀の行動を無下にしないよう本を元に戻した。
琥珀がそこまでするのなら仕方がない。久々にお節介でも焼きますか。
「あの、とても勝手なお願いなのですが1度君の家に連れてっては貰えませんか?」
「はぁ? なんでだよ」
明らかに不服そうな青年。
でも、一度言ったら通すまで引き下がらないのがこの僕。周りからは我が強いって言われるけど、褒め言葉として受け止めている。
「お願いします」
真剣な表情で先程の覚悟を持った青年のように一語一句ハッキリ告げると青年は目線を逸らし、またこちらに向けた。
「ーー嫌だ」
「なんで!? 普通そこは『いいよ』って言うところじゃないですか!?」
「なんでも感動的に事が進むと思うなよ」
青年は舌を出して中指を立ててくる。
なんて野蛮な……
僕は咄嗟に琥珀の目を両手で覆った。
中指を立てるなんて教育に悪い。
青年が訝しげな目で見てくるが気にせずにそのままいると再び青年が口を開いた。
「あいつは俺の恥だ。人に合わせたくねぇんだよ」
「恥……か……」
人間は自分の弱みを隠そうとする。
これは、人間の本能なのだろうか? でも、だからこそ人間の書く本は言葉では言い難い気持ちと抑えきれなくなった弱い部分がたくさん綴られていて面白い。強いて文句を言うならかなり美化されて綴られているのが気に食わないけど。
だけど、この人はまさにこの人自身の美化も何もされていない天然な本(弱み)を持っている。
リアルな物語を見れるチャンスなのに、この僕が易々と見逃すことができるだろうか? いや、できない。
僕はふっと不敵に笑うと青年はわかりやすく身構えた。
見せてくれないなら意地でも見せてもらう迄だ。
琥珀から手を離し青年の前にたちはだかる。
それから大きく息を吸うと光の速さで地面に手と頭をついて土下座した。
「ーーお願いします! 連れてってください!」
いつだかヒトからこうすれば大概の人間は断れないと聞いたことがある。そのため、僕はよく使ってる。これを目の当たりにした人達は決まって初めは引いたような表情をする。
チラッと少しだけ顔を上げると予想通り青年はドン引きの表情をら浮かべていた。
でも、僕は絶対屈しない! 連れてってもらうまでこうしてる!
それから青年は面倒くさそうに首の後ろをかくと口をもごもごさせてしゃがみ込んだ。
「わかった。連れてってやるよ。だから、顔上げろ」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
嬉しさのあまり青年に抱きつくと頭から隕石のようなゲンコツが降ってきたためすぐさま離れた。
もう。そんなに強く殴られると蓄えた知識が無くなっちゃうじゃないか。
青年が話すまでに時間はかからなかった。
相当の覚悟を持ってきたのだろう一字一句ハッキリ聞き取りやすく告げてきた。
視界の端に入った琥珀が死人のように真っ青な顔をして小刻みに肩を震わせている。
琥珀にとってはかなりショッキングな言葉だったのだろうか。
「琥珀、部屋の奥に行ってていいよ?」
優しく促すも琥珀は無言で何度も首を横に振った。
本人がいたいなら止める義務はないが相当辛そうになったら部屋の奥にやろう。
僕は本棚に寄りかかり腕を組んだ。
「なんで君は父親を殺したいと?」
「あいつ、急にボケ始めたんだよ。それで今はもう身体もまともに動かない。母親もとっくに他界しててさ、頼れる親戚もいないから自由な時間がなくなっちまった」
かなり身勝手な願いだと思う。
でも、老人は足でまとい。
それは昔からある事だ。だから、姥捨山なんてものが存在する。
僕は同情をするように何回か頷き目に付いた本を取った。
「それじゃあ、この本を……」
「ダメっ!」
いつものように本を勧めようとすると、琥珀が声を荒らげて僕と青年の間に入る。
顔が真っ青なのは変わらないし、何かを伝えようにもそれ以上声が出ないのか口をパクパクさせるだけ。
だけど、琥珀は必死にそこにとどまっている。
琥珀……
僕は琥珀の行動を無下にしないよう本を元に戻した。
琥珀がそこまでするのなら仕方がない。久々にお節介でも焼きますか。
「あの、とても勝手なお願いなのですが1度君の家に連れてっては貰えませんか?」
「はぁ? なんでだよ」
明らかに不服そうな青年。
でも、一度言ったら通すまで引き下がらないのがこの僕。周りからは我が強いって言われるけど、褒め言葉として受け止めている。
「お願いします」
真剣な表情で先程の覚悟を持った青年のように一語一句ハッキリ告げると青年は目線を逸らし、またこちらに向けた。
「ーー嫌だ」
「なんで!? 普通そこは『いいよ』って言うところじゃないですか!?」
「なんでも感動的に事が進むと思うなよ」
青年は舌を出して中指を立ててくる。
なんて野蛮な……
僕は咄嗟に琥珀の目を両手で覆った。
中指を立てるなんて教育に悪い。
青年が訝しげな目で見てくるが気にせずにそのままいると再び青年が口を開いた。
「あいつは俺の恥だ。人に合わせたくねぇんだよ」
「恥……か……」
人間は自分の弱みを隠そうとする。
これは、人間の本能なのだろうか? でも、だからこそ人間の書く本は言葉では言い難い気持ちと抑えきれなくなった弱い部分がたくさん綴られていて面白い。強いて文句を言うならかなり美化されて綴られているのが気に食わないけど。
だけど、この人はまさにこの人自身の美化も何もされていない天然な本(弱み)を持っている。
リアルな物語を見れるチャンスなのに、この僕が易々と見逃すことができるだろうか? いや、できない。
僕はふっと不敵に笑うと青年はわかりやすく身構えた。
見せてくれないなら意地でも見せてもらう迄だ。
琥珀から手を離し青年の前にたちはだかる。
それから大きく息を吸うと光の速さで地面に手と頭をついて土下座した。
「ーーお願いします! 連れてってください!」
いつだかヒトからこうすれば大概の人間は断れないと聞いたことがある。そのため、僕はよく使ってる。これを目の当たりにした人達は決まって初めは引いたような表情をする。
チラッと少しだけ顔を上げると予想通り青年はドン引きの表情をら浮かべていた。
でも、僕は絶対屈しない! 連れてってもらうまでこうしてる!
それから青年は面倒くさそうに首の後ろをかくと口をもごもごさせてしゃがみ込んだ。
「わかった。連れてってやるよ。だから、顔上げろ」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
嬉しさのあまり青年に抱きつくと頭から隕石のようなゲンコツが降ってきたためすぐさま離れた。
もう。そんなに強く殴られると蓄えた知識が無くなっちゃうじゃないか。
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
私の周りの裏表
愛’茶
キャラ文芸
市立桜ノ小路女学園生徒会の会長は、品行方正、眉目秀麗、文武両道、学園切っての才女だった。誰もが憧れ、一目を置く存在。しかしそんな彼女には誰にも言えない秘密があった。
不思議な妖カフェ『アカシヤ』
さぶれ@5作コミカライズ配信・原作家
キャラ文芸
京都盆地のはずれのとある町に、存在する『アカシヤ』。
緩やかな坂を上がり、その先の森の社の傍にある、モダンでアンティークな雰囲気のその店は、美しい男女三人で切り盛りをしている、不思議なカフェ。
カフェマスターの焼くケーキは絶品で、コーヒーソムリエの淹れたての薫り高い珈琲と一緒に頂く。そしてそれを運ぶ、人気のウェイター。
一見普通だが、実はこのカフェにはある噂があった。
『このカフェには幻のメニューがあり、そのメニューを頼んだ者は、ひとつだけ願いが叶う』
それがもし本当だったら、あなたは何を願いますか――?
願いが叶った時、傍にいる人をとても大切にしたくなる。
心がほっこりする、そんなお話。
皇右京(すめらぎうきょう)――カフェマスター
悠杉牡丹(ゆうすぎぼたん)――コーヒーソムリエ
鳳凰寺脩(ほうおうじしゅう)――ウェイター
つくもむすめは公務員-法律違反は見逃して♡-
halsan
キャラ文芸
超限界集落の村役場に一人務める木野虚(キノコ)玄墨(ゲンボク)は、ある夏の日に、宇宙から飛来した地球外生命体を股間に受けてしまった。
その結果、彼は地球外生命体が惑星を支配するための「胞子力エネルギー」を三つ目の「きんたま」として宿してしまう。
その能力は「無から有」
最初に現れたのは、ゲンボク愛用のお人形さんから生まれた「アリス」
さあ限界集落から発信だ!
オシャレのススメ!
Kano
キャラ文芸
20XX年、アニメが史上最高に栄え、オタク人口が急増。オタクが市民権を確立し始める。
それにより人々はアニメグッズに金を費やし、段々とオシャレをしなくなっていく。
オシャレ文化を存続すべく、政府は日本初オシャレ推進校として、緒紗嶺高校を創立。
「オシャレ」を守るために日々奮闘するススメを始めとした生徒会の物語である。
魔法カフェ「コルボ」へようこそ!
ぼんげ
キャラ文芸
「火炎魔法」のカリン、「水流魔法」のアオイ、「重力魔法」のノア。
普段はとあるカフェで働く三人の魔法少女たち。
そんな彼女たちの前に立ちはだかる相手とは……?
魔法少女たちの戦いを描いたドタバタコメディ開幕!?
故郷の祠を破壊してふたりで器物破損罪よりすごいことしちゃおっか?
八億児
キャラ文芸
村の祠を壊したら祟られて、色眼鏡+タトゥー+柄シャツ+ニップルチェーンの怪しいヤカラ風の青年に脅迫されて、村をムチャクチャにする手伝いをすることになったオニーサン(おじさん)の話。オカルトはあってもホラーではない、伝奇風コメディです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる