転生魔法使い令嬢はラスボス悪役令嬢になります

こと葉揺

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4.悪役魔法使い令嬢

好き

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 あれから、私は非常に困っていた。何故かものすごい数の求婚の申し込みが来ていた。

 …いや、それはとりあえず置いておいて、ことの顛末を話しよう。





 土の壁封鎖事件は土の魔法使い君が犯人として裁かれたが、聖典のことやマリーの件を含めて議論した結果、魔法使いの資格の剥奪の刑となった。

 そのあたりは仕方ない。人を傷つけるのに魔法を使った場合はそうなると最初に誓うのだ。

 マリーに関しては今回の騒動の主犯として結構な罰を受けることとなった。
 軽い気持ちとはいえ聖典に書いたことは現実となるため私的に利用したのはかなり罪が深かった。

 マリーは修道院へ行くこととなり、結局ツッチー君ともシモン王子とも結ばれることなくなってしまった。

 聖典もユグドラシルの管理となり、誰も触れないところへ封印された。これまで書かれたことは実行されてしまうためそれの対策のみとることにして、それ以降は大丈夫とのことで、ラストを飾る「マツリカとシャルルが結婚して幸せになる」を早く実行して、聖典の効果をなくしてしまおうとつい先日結婚式をあげていた。

 だが、何故か聖典の「見た目が変わっても愛すること」の効果が残っていたらしく、私はルカのドラゴンの姿も好きだと思った矢先ハーレムの如くめちゃくちゃモテていた。

 さまざまな国の貴族はもちろん、リオン王子、シモン王子あたりも求婚してきていた。完全に誰?となるくらい別人だった。

 求婚してくる度にルカがボコボコにやり返していたし、私は悪役令嬢ごっこでケタンケタンに振っていたので、だいぶ数は減ってきたが、王子たちはしつこかった。特にリオン王子は。


「シェリア!今日も来てやったぞ」

 噂をすればなんとやらだ。リオンはドMだそうで、冷たくすると喜び、優しくすると勘違いされ非常に扱いに困っていた。

「リオン王子、諦めてください…」

 ルカが怒りをあらわにして客間にやってきた。この間はリオン王子に私たちがキスしているところを見せつけた(その後私はルカに怒ったが)喜んでいた。もうどうしようもない。

「幸いなことはノエにこの効果がなかったことだな。アイツ何するかわからんし」

 それはいえてる。決して好きにはなってくれなさそうだけど。

「なんでなんで?僕も結構シェリ嬢のことは気に入っているよ。特に外見」

 こちらもまあ噂をすれば、だ。ルカとノエさんは以前よりはケンカは減っていたが決して仲は良くなかった。

「シェリア嬢の悪役っぷり、感服いたします。それにここの別荘地もすこし領土を広げて行き場のない人たちを受け入れてるらしいじゃないですか。とても悪役とは思えませんねぇ」

 それはそうなのだ。マナの修復に出かける度にどうしようもない人たちがいる。ほっておけばいいのだけど、ちょうど野菜を管理する人や、闇の精霊の世話をしてくれる人を探していたのだ。私は家を開けることが増えている。

「利害の一致ってやつですわ。たすけてないですし、むしろこき使ってやってますの」

「ふーん。じゃあさそろそろ、君たち結婚しなよ」

「「えっっ」」


「だって、結婚してないから未だに求婚されるんでしょう?ならもう決めちゃいなよ。付き合ってるんだろうし、婚約者でしょ?」

「そうだけど….」

 チラリとルカの方を見ると考え込んでおる顔をしていた。好きだとは思ったけど、はっきりと気持ちを口にしたことはなかった。

 確かに決着をつけなければ。いつまでも待たせているとマリーのように心変わりしてしまうかもしれない。

 そう決心し私は告白する事を決意した。







 場所もととのえて、と思い夜に紫のアネモネの花畑に来ていた。

 いつもより少しおしゃれしてルカを呼び出した。

「おまたせ、シェリア。どうかしたか?」

 ルカはいつものように黒くて長い髪をなびかせていた。月に照らされたルカはとても美しかった。

「あの、私ルカに言いたいことがあるの」


「…なに?」

 ルカは少し身構えていた。この顔は悪い事を予感してる時の顔だ。


「あの、私…わたし……」

 好きという言葉をいうだけなのに、どうしてこうも緊張するのだろうか。ルカの顔を見ると恥ずかしくていたたまれなくなるので、思わず顔を伏せてしまった。

「シェリア。好きな人ができた?」

「……」

 好きな人はできた。合ってるけど私が思っているのと、ルカが思っている意味は違う。

「好きな人できた」

「…じゃあ別れの話か」

「違う!!!」

 私は勢いに任せてルカにキスをした。ルカは驚いた顔をしてされるがままになっていた。

「私はっルカのことが好きなの……」


「…シェリア」

 ルカはいつもより余裕のなさそうな顔でキスをしてきた。最初は触れるだけだったが、角度を変えたり深くなったりしてきた。

「シェ……リアッ…」

「んっ……」


「好きだ…   。俺だけの   」

 胸がドキンと大きく跳ねてその後きゅーっと締め付けるような痛みがあった。何故彼は私自身をこんなにも見てくれるのだろう。
 嬉しい。こんなの好きになってしまう。

「…このまま続けると最後までしそうだから、ここで一旦やめとく」

 最初の頃は遠慮なくベタベタ触られていたが、告白されてからはルカは大切にしてくれていた。

「ありがとう、シェリア。俺も渡したい物がある」

 ルカは服の中から何かを取り出して私の左薬指にはめた。


「俺と結婚してくれますか?」

「…もちろん。喜んでっ」

 ルカと抱きしめ合った。なんと幸せなんだろう。いつまでも飽きるまで2人で抱きしめ合っていた。


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