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4.悪役魔法使い令嬢
魔法使いの意地
しおりを挟むあれから魔法陣を概ね壊し壁自体は壊れていっていたが、このに土の魔力が溜まりに溜まってこのままでは土砂災害などが起きそうな事態になっていた。
「マナを集めて、土人形……」
私はひたすら散らばった魔力を一度土人形にしてそれを違う国へ移動魔法で飛ばして魔力を分散させていた。
ルカも手伝ってくれてはいたがいかんせん数が多くてフラフラしてきた。
「マナを…あつ…めて………」
意識が遠くなっていく……。
†
「シェリア!シェリア!」
目が覚めると外からものすごい音が鳴り響いていた。
「あれは…」
重たい体を無理やり起こして外を見るとまるで私が作成した感じのやばい見た目の土の巨人と黒いドラゴンが戦っていた。
「結局ルカを犠牲にしてしまった……」
体もフラフラだ。きっとオドが枯渇しているのだろう。うまくできなかった。
「シェリア嬢」
この声はノエさんだ。声がする方を見ると手には聖典があった。
「マリーがおかしいと思ってこれを聖女に借りてきたんだけど、この土の結界やら各国のマナの枯渇、魂の移動はやはりここに書かれていたようだ」
「そんな、私が見た時はマナの枯渇のことのみでした」
「シェリアには読めないようにしてあったね。きっと見に来る事を分かっていたんだよ」
「どうやらマリーは最初は土の魔法使い君が好きだったようだが、聖女にされて途方に暮れてた時に優しくしてもらったのがラ・フォア王国第二王子のシモン王子だったみたいだね。それで心変わりしたみたいで国益のためにわざと災害などを起こしていたみたいだ」
「意味も理解せずに無差別にやったという事ですか」
「そういうこと。あの土の魔法の壁はいわゆる代償だよ」
そんなわがままのために私たちはこんなにあくせくして、ルカはドラゴンにまでなってしまって戦うことになってしまったのか…。
「悔しいです」
「そうだねぇ。マリーは恋に生きる子だったんだ。恋して、好きな人の役に立ちたかったけど、それを余計なお世話だと邪険にされて不貞腐れて、あぁして不特定多数の男性に寂しさを埋めてもらってたんだ」
「それこそツッチー君が可哀想ですよ」
ノエさんにツッチー君?と聞かれたので土の魔法使い君の略称ですと説明した。
「なんにせようちの国の者がやった事だから、責任を取ろう」
「1つ気をつけて欲しいことがある。精霊の力は契約者が居なくなるとなくなる。だから、ユグドラシルの王様はシェリアを殺してドラゴンを止めようとしている」
「えっ」
「だから、それをするとルカは怒り狂って前よりひどい鬼になってしまうだろうから、それは僕が責任をもって止めるよ」
「そんな、どうやって」
「教えたら君は止めるだろう?たから言わない」
ノエさんは何を考えているのかわからない顔で笑って部屋を飛び出していった。
「シェリア嬢には動けなくなる魔法かけておいたから大人しくしておいて~」
「そんな!待ってっ連れて行って…」
ルカを失いたくないの。でも誰かを犠牲にしてじゃなくて、みんなが助かって欲しい。
そんなわがままな気持ちを持っていた。いや、私は悪役令嬢。絶対に諦めない。やられるのは私の役目だもの。
†
「ちょっと待ったーーーーー!!!」
少し崩れた土の巨人と傷ついたドラゴンが戦いをしていた。そこにノエさんが様子を見ているような感じだった。
「それ、未完成品ですの、ルカ、退きなさい」
『シェリア…どうして』
声の感じはドラゴンの声になっていたのでいつもと違ったが、私のことをわかっているのでどうやら意識はあるようだ。
私は渾身の闇の魔力を蓄えて土の巨人の腕や足あたりを攻撃した。
壁の時は聖典の代償があったため、順序を踏まなければ解除できなかった魔法も、この巨人は私がバラバラにした土の魔力の未完成な塊なのですぐに砕けた。
「私、こうみえて美術1でしたの。なので、もう一度作り直して差し上げないと、不恰好でたまりませんわ!」
着々と崩していってるとルカが悲しそうにしていた。
『巨匠の作品が……崩れていく』
まさかそれであんまり積極的に攻撃していなかったのか。随分と余裕があるように思えた。
バラバラにしたところで巨人は動きを止めたので、落ちた腕のところや足のところへ行き、人々へ被害がないかを確認しにいった。
幸いな事に誰もどうにもなっていなかった。そういえば人の気配がしない。すでに避難させてくれていたのかもしれない。
「おわっ…た」
少し気を抜いているとドラゴンのままの姿でルカが私の元へ降りてきた。
「ごめんね、ルカ。ドラゴンの姿にさせちゃった」
『いいよ。俺は自分で望んだんだ。一度ドラゴンになって完全に覚醒しないと力も安定しないだろうと言われていたから、ちょうどよかった』
「元に戻れるの?」
『…わからない。もしかしたらこのままかも』
「そっか。戻りたい?」
『できれば。でないとシェリアとキスできない』
「ふふっ」
かわいい。姿がドラゴンで声もいつもと違うのに、こうして話しているとルカなのだ。
「ドラゴンでもキスできるよ……ちゅ」
ドラゴンの大きな口元にそっと唇を寄せた。このまま丸呑みされるのではないかというくらいおおきな口だった。
『シェリア…』
「ほら、魔力の供給して欲しいな」
私はまたドラゴンの口元にキスをした。
私はルカが好きだ。シェリアとしても、本当の私としても大切にしてくれるルカが大切だ。
こうしてキスできるのが嬉しい。たとえ姿がドラゴンでも。彼が彼であることに変わりはないのだ。
魔力の入れ替えを終えたからかルカの姿はパァッと強い光を放った後、元の人間の姿に戻っていた。
「まさに愛の力ってやつだねぇ」
どうやら近くで見学していたノエさんが出てきた。
「そうです。愛の力です」
私は否定しなかった。だって好きなんだ。ルカのことが。
「シェリア、ありがとう」
人の姿でと優しくほほにキスをしてくれた。それで気が抜けたのか、また気を失ってしまった。
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