転生魔法使い令嬢はラスボス悪役令嬢になります

こと葉揺

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3.王子様の救出

ハーレム大作戦

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 困った時は原作者まーちゃんに助けを求めるのが1番ということで家にアポを取っておき、夜に3人でまーちゃんに会いに行った。

『な、なんと!それはそれは面白いことになっている…。やっぱり天才なのでは……』

 まーちゃんは相変わらずニセ聖女を褒めていた。やはりこういうところが好きだ。
 シャルル(リオン王子の体)はまーちゃんを見てどうやらときめいている様子を見せていた。

「もしや、貴女がマツリカか?」

『シャルル様…』

 2人の間に薔薇が舞っていた。やはりこの2人は運命なのだろう。

「感動の再会のところ悪いんだけど、まーちゃん的にはどう?」

 これまでのことを説明して、原作者の何か回答を得られればと思い聞いてみた。

『聖典に書かれていたことなんだけど、あれは誰がどうとか名前を書いていなければ誰が達成しても叶うことになるよ。だから、代償がいろんな人に出てるんだと思う。なので必ずいまの聖女様が恋愛しなくてもラ・フォア王国の王子と誰かが恋愛すれば達成できると思う』

 まーちゃんはシャルルにもふもふされながら話していた。


「まーちゃんがこの物語の真の主人公だからまーちゃんがやるべきだね」

 ルカも私の言葉に大きくうなづいていた。シャルルも満更でもなさそうだったのでうまくいきそうだ。

「私はうさぎでもマツリカを好きになる自信はあるが、リオンに戻った時にどうするべきか…だってリオンはシェリアのことが好きなのだ」

 どうやら気づかれていたらしい。まぁあんなにあからさまな態度だとバレるだろう。

『そこは大丈夫。リオンはドMキャラだからキツそうなわがままお嬢さまに振りまわされるのを好んでるんだ。シェリアは真面目で純粋なんだけど見た目がわがままお嬢様に見えるってキャラだから単純に見た目だけで気になってるだけだから、ホンモノのわがままお嬢様に会えば一瞬よ』


 さすが原作者…。これ以上の味方はいない。

「リオンはそのようなものが好きだったのか…なんと…」

 シャルルはそれこそ清楚で可憐な人がタイプだったはずだ。小説でよく出ていたキャラなのでなんだか面白みが出てきた。当然だがそのままなのだ。

「とりあえず、まーちゃんにこっちきてもらう?それで愛を深めていけばいいよね」

 満場一致のため、城に帰ることにした。






 次の日の早朝。ベットサイドにルカが座っていた。私は眠たい目を開けて体も起こした。

「おはよう、ルカ。何か用?」

「おはよう、シェリア。魔力の補給にきた」

 そういうと私を優しく抱き締めてキスしてきた。久しぶりにキスをしたからか心臓がドクンと大きくなってその後全身が熱くなる感じがした。

 触れた唇の感触が以前よりも後を引いているような心地になる。

 …どうしてだろう。


「シェリア…ん……」

 久しぶりだからかゆっくりと確かめるように唇を合わせてきて嬉しいようなこそばゆいようなそんな心地だった。

「…ありがとう。今日も少し遠出をするから少しもらいたくて」

 優しく微笑んだルカは目の下のクマも取れ、いつものかっこいい顔に戻っていた。

「ん…いってらっしゃい」

 お互い好き同士と明確にわかったわけではないのにこうしているのがすごく自然に感じた。

 
 でもどこかドキドキもする。おかしい。ルカといると落ち着かないし落ち着くのだ。難しい。


 彼はそのまま窓からこっそりと出て行っていた。

 …よし、今日も一日メイドの仕事を頑張りますか!






 目の前にはイケメン執事たちを侍らせてイチャイチャしている聖女の姿を目撃した。
 少し闇魔法で包み、見えにくくして通り過ぎようとすると大変聞こえてはいけない声や、見ては行けないことが行われていた。

 まーちゃんの体で好きかってされるのは怒りでおかしくなりそうだったが、お戯程度なので深くは突っ込まないことにした。

 ……魔法を使っても変に思われる。今、優先すべきはこれじゃないとグッと堪えた。

 畑に来て思わず「あれはたしかに男漁りしてる言われても仕方ないですわ」と思ってしまった。
 あの儚い見た目で誘われたらついつい寄って行ってしまうだろう。わかる。

「あら、新入りさん。野菜作るの上手ね」

 メイド仲間の1人が話しかけてきた。
 今はトマトやキュウリの世話をしていたが、ここは水も綺麗だし、風…空気も調整できて、あとは少し土魔法などを加えながらノエさんに学んだことを駆使して野菜作りをしていた。

「私、ちょっと前まで農業をかじったもんで…。褒めていただけて光栄です」

「このままだとお付きの人じゃなくて畑専門になっちゃうかもしれないね」


 …それはそれで嬉しいかもしれない。意外と楽しいのだ。愛情を注いだ分だけ育つのでやりがいがある。

 そんなこんなをしていると、シモンと貴族たちと歩いているのが見えた。

「あぁ、やっぱりシモン様は優秀よね」

 メイド仲間はうっとりしていた。シモンもシャルルやリオンに外見はよく似ていた。魔法使いとしてここにいる時はかなり冷たい態度をされていたものだ。

「シモン様は貴族様たちと仲がよろしいの?」

「そうね、外交とか経済とかは元々シモン様が担当だったわ。それでかもしれないけど割と社交的なタイプだし私たちの
ような下々のものにもとっても優しいの。魔法使い様には厳しそうだけどね」

 なるほど。現実主義なのかもしれない。たしかにユグドラシルとの貿易の関係も割とウィンウィンというか、対等な感じで交渉してきていたはずだ。割と敏腕なのかも。

「まってシモン~」

 2人で噂話をしていると聖女がシモンにまとわりついていた。

「…なんでしょう。聖女様」

 張り付いた笑顔で対応していた。やはり胡散臭い存在は好きではないのだろう。

「今日こそは一緒にお茶してくださいません?」

 ベタベタと体をくっつけて甘ったるい声を出していた。

「そんなよその男の匂いをさせてくる人とお茶なんてしたくありません。お風呂でも行かれては?」

 意外だ。冷たくあしらわれていた。
 少し変だと思ったのはシモンを見つめる聖女が完全に恋する乙女であったことだった。


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