転生魔法使い令嬢はラスボス悪役令嬢になります

こと葉揺

文字の大きさ
上 下
13 / 27
2.囚われの人を探しに

ルカと婚約?

しおりを挟む


 魔力を均等にする作業をしたが、本来の目的はまーちゃん探しだ。
 ここで私の作った野菜を売り捌き、お金を手に入れて宿代の足しにするのだ。
 ゆっくり休めばまーちゃんのところへ一っ飛びできるかもしれない。

「野菜いりませんか~?」


 声をかけるが返事がない。私たち2人ではきっと怪しいのだ。
 見た目もこんなに真面目で人の良さそうな感じに仕上げてきたのに…!!

「あの時魔法使ってるの見られちゃったからな。警戒されてるな」

「親切心が仇となる…」

 別の問題だが、干魃のことは概ね解決しそうだった。日照りも落ち着き、なんならあちらから雲がやってきた。雨が降りそうだ。
 ここで野菜販売するのは諦めて、宿を取るか、野宿先を決めてしまわなれけばもうすぐ日が落ちそうだった。

「…前からラ・フォア王国の騎士団が来ている」

 ルカは私をそっとマントで隠し、抱きしめて木の上に登った。
 すごい、こんな飛べたっけ?

「あいつは…ラ・フォア王国第3王子のリオンだな」

「リオンって名前なんだ」

「…失礼だな。仮にもそこで仕事してたことあるんだろ?」

「騎士様なんて関わりないし」

 それに嫌いだしシャルルからリオンまで全部の王子。あの無駄に高いプライドをなんとかしてへし折りたい。絶対する。なにがなんでも。

「顔が怖いぞ」

「目の下にクマがあるルカにいわれたくなーいでーす」

 冷静に私たちを客観視すると怪しい二人組だ。たとえ今は真面目勤勉超絶優等生風に姿を変えていても。

 王国の騎士団は数名で視察に来ているようだった。私の残された野菜は危ないから捨てろとの命令だった。
 マジでキレそうだ。


「……ここに金髪の派手目な女は来なかったか?」

 リオンが街の人に尋ねていた。やばい…やっぱり探し回っているんだ…。

「騎士団長、もうやめましょう。あの者はもう魔王城に引きこもってますよ」

 騎士団の団員らしき男性が探すのをやめようと提案していた。そうだ!いけいけ!やめさせてくれ。

「だが…ここにいる気がするんだ。匂いがする」

 匂いだ…と。

「え?ルカ、私くさい?」

「臭くないな。薔薇のいい香りはするけど」

「……逃げよう」


 私たちはここで宿を取るのを諦めて一旦外に出ることにした。






「このあたりにいい感じに洞窟があってよかった」

「魔物いそうだけど」

「大丈夫。私結界はれるから」

 ラ・フォア王国は光のマナが多いのでオルタ・モンドラゴン帝国に比べて魔法は使いやすかった。

 小スペースのみ結界を張り、そこで今晩は休むことにした。




「お嬢様はこんなとこで寝るの初めてなんじゃないのか?」

「そうね…」

 そもそもふかふかベッドのあるお屋敷に住んでたシェリアだし、前世もこんな固いとこで寝るということはなかった。


「では、僭越せんえつながら俺の胸の中で寝てください」

 ルカは大きく手を広げておいでという仕草をした。

「……お言葉に甘えます」

 ここで変に意地を張ったとしても良いことはないので素直に従うことにした。

「少し火の魔法で暖めておこうかな」

 そう言って何本か小枝を持ってきて少しだけ火を焚いた。光の結界の中なのでそれなりには過ごせるが、やはり肌寒い。

「シェリアはノエと婚約するって話をどこまで知ってた?」

 唐突になんの話をし出すのだろうと思ったが、手持ち無沙汰だし付き合うことにした。

「全くもって知らなかった」

「あれ、最初はシャルル第1王子と婚約の予定だったらしいな」

「えーおぇぇ、きしょいきしょいむり」

 私の暴言にルカは引いていたが話を続けた。

「いや、でも私なんて無理だと思う。釣り合わないし…それに」

 シャルルの相手はマツリカと決まっているのだ。その他に心が奪われることなんてない。

「そんなことはないだろ。シェリアが1番適任だ。年も近い、家柄も容姿もいい。成績優秀。でも、うちの姉…帝国の第1王子がシェリアを気に入っていたんだ」

「女王候補のあの方ね」

 正直なところ嬉しい。私はオルタ・モンドラゴン帝国の第1王子のことが好きだ。それはシェリアの人格の時からだ。

 帝国は男女どちらが王になってもよく、次代の王を決めるときは今の王が1番国に貢献している王子を指名するのだそうだ。

 完全実力主義かつ公平で、国が廃れないのはこれのおかげだろう。

 そんな帝国での第1王子は特に活躍しており、ものすごく好感を持っていた。

「姉様は魔法使いと結婚してるから余計理解があるのかもしれないが、シェリアはかなり優秀だと言っていた。うちに招きたいからと恋愛にまだ興味がありそうなノエが上がっていたんだ。王国から君を奪おうとしていたみたいだな」

「なんと光栄な」

「…なんの話がしたいかというと、俺この前出かけた時にシェリアの親に会ってきた」

「ん???」

 今何と言ったのだろうか…。あんなに血まみれでしたけども…。

「罪悪感があったんだ。未婚の女性に魔力をコントロールするためとはいえずっとキスするの。例えば将来恋人や結婚相手ができたとする。そこにこんなコブつきなら相手は嫌がるだろう?それなら俺が貰おうかなって」


「ん?」

 話が見えないぞ。というか見たくない。

「シェリアの親には結婚の許しを貰ってきた。だからとりあえずは婚約者ってことでいいか?絶対キス以上は手を出さないし、シェリアに好きな人ができたら応援する」


「つまり、免罪符が欲しいと」

「……」


 沈黙は肯定とみなす。私の意見は聞かずに勝手に決められてしまった。
 しかしルカは私の目をじっと見つめて何かを言いたげだった。熱のこもった目であったが、知らないふりをした。


「…事前に相談はして欲しかったけど、とにかくその件に関しては受け入れる」

 たしかにその方が都合がいいのだ。どうせこの身体じゃ貰ってくれる人なんて居ない。白い結婚で愛がなければもしかしたら…というところであるが、そんな者好きもこんな大魔女になってしまえばいないだろう。

 両親もそれを理解した上で了承したのだ。


「血まみれになるまで魔法のこと鍛えられたけど、粘ってよかった」


 めちゃくちゃ反対されたのかもしれない。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したけど、前世の記憶いる?

護茶丸夫
ファンタジー
ファンタジーな世界に転生したぜ、やっほう? お約束な神様にも会えず、チートもなく。文明レベルははテンプレより上ですか。 ゲームか何かの世界ですか?特に記憶に無いので、どうしたらいいんでしょうね? とりあえず家族は優しいので、のんびり暮らすことにします。 追記:投稿仕様は手探りで試しております。手際が悪くても「やれやれこれだから初心者は」と、流していただけると幸いです。 追記2:完結まで予約投稿終了しました。全12話 幼少期のみの物語です。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

少女漫画の当て馬女キャラに転生したけど、原作通りにはしません!

菜花
ファンタジー
亡くなったと思ったら、直前まで読んでいた漫画の中に転生した主人公。とあるキャラに成り代わっていることに気づくが、そのキャラは物凄く不遇なキャラだった……。カクヨム様でも投稿しています。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

処理中です...