転生魔法使い令嬢はラスボス悪役令嬢になります

こと葉揺

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1.ラスボス城へのやっかいな来客者

魔法を使っての日常

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 まーちゃんが寝初めてから起きたことを全て話した。
 するとまーちゃんは終始興奮していて、本当に聞いているのか不安になるほどだった。

『なんて面白い展開なんだー!天才すぎる…偽マツリカのが話書く才能あるわ、まじで』

「今はそれで謙虚にならないで!まーちゃんのおかけで優しい話に優しいキャラなんだから、そこは自信を持たないと…」


 私は胸にまーちゃんを抱っこして魔法を使って掃除をしていた。前は少しずつ自分の手でやっていたので魔法でやると簡単かつ早い。
 しかし自分の疲労も早く、あのアネモネの花畑に行って休憩しては日々魔法での生活を頑張っていた。

『それにしてもすごいね、マジで物語の中の人じゃん』

「でしょ、てかまーちゃんもじゃん。こんなかわいい見た目になって~」

 思いっきりぐりぐりしておいた。

『さっきの話に戻るけどとにかく聖典がその状態ならしばらく安心ですな』

「そうなの、だからとりあえずその間に魔力上げて、何かあった時に備えておかないと…」

『ラスボス悪役令嬢…取り入れれば良かった』

「あんまり詰め込むと読みにくいしね」

 やはり聖典はまーちゃんに持っていて物語を書いてもらった方が平和になりそうだ。





 概ね部屋の掃除は終わったので休憩するためにお茶セットを持って花畑に来た。
 まーちゃんが起きて嬉しいが、ルカがいないのは寂しかった。


「はぁ…癒される……」

『ここに来なくても話せるようになったのはありがたいな。ここ全体が魔力で覆われているからかな』

「おそらくそうだろうね」

 2人で休憩しているとノエさんが来た。まーちゃんは分かりやすく怯えていた。…自分で作ったキャラなのに。

「そのうさぎさんはどうして人みたいに話せるのかな?」

「……」

 なんと言えばいいのか分からなかった。変に誤魔化すのもどうかと思うし、かと言って正直にいうのもどうなのだ。

『それは私が優秀だからです』

「いくら優秀でも小動物は小動物の限界があるよ。でも君は人並みだ」

 少し強気に出たまーちゃんはまた萎縮していた。……何度も言うがどうして苦手なキャラを作った。

『だって守ってくれるし…』

 なるほど、小説の中のマツリカはいじめられてもヒーロー、ここではシャルルが助けてくれるということね。
 では、ありがたくその役を買って出ましょう。

「あの、本当に昨日言った通り友人なんです。どうしてこの姿になったのかはわからないけど…」

「なるほど…そんなことできるのか?」

 ノエさんは色々考え始めた。魂の移動はこの世界の魔法理論上は無理だ。死者蘇生も無理なように、命の有無に関する魔法は全くもってできないことになっている。

「……聖女なら出来るのかも」

「それはどういう…」

「だって聖女って異世界から召喚されたんでしょ?てことは、ここの論理から大きく外れた存在だ。ならそれも可能かもしれない」

 なるほど。いやしかし本来聖女として転生したのはこのまーちゃんの方なのだ。なら、あの別の転生者はなんの力を使って…。

「聖典…」

「?…いま、なんて」

『ちょっと!あっちの方から黒い煙が』

 この黒い煙は火が燃えて出てきているものではなく、闇の魔力がボヤとなっているものだ。

 慌ててその現場に駆けつけるとここに集まった闇の精霊たちが作った野菜を食べ尽くしているところだった。

「あちゃー…ビニールとか必要だったかぁ…」

「何事も失敗して学ぶんだよ。大丈夫。シェリア嬢。ここ数日にしてはかなり優秀だと思うよ、僕は」

 私たちが来ると食い散らかしたまま精霊たちは逃げていった。このまだ食べごろとは言えない野菜たちが無残な姿になっていた。

「次はもう少し小さめに畑を作って、成長速度に加えてビニールハウス代わりになるものを考えないと…」

 私が失敗を反省して次にどうするかを考えているとノエさんによしよしと頭を撫でられた。

「シェリア嬢は真面目だね」

「ノエさんが諦めずに教えてくれますし、失敗を否定されないのは割と心が楽です」

 転生前は社会人になってから失敗するとしこたま叱られた。仕事なので同然なのだがやはりへこむ。
 過ぎたことを責めずに次どうしたらいいのか、ヒントをくれながら成長できるように導いてくれる。

「ノエ先生と呼んでくれていいよ」

「ノエ大先生様!!」

『ノエ大先生様~~!』

「じゃあさ、今日はお湯作るのやってみる?」

 ノエさんから新たな課題を出された。ここは温泉が引かれているのでわざわざたかなくても温かいお風呂には入れるのだ。

「今日はシェリア嬢がたいたお湯につかりたいなぁ~」

 私はお願いされると弱いのだ。それにきっと火の魔法や風の魔法を使うのだろう。別に無駄にはならないだろうし、チャレンジしてみることにした。





「お~初めてにしては上出来だね。やはりシェリア嬢は優秀だね。ルカと契約しているのもあるだろうけど」

 ノエさんはどこからかドラム缶的なものを持ってきてお風呂をセットしていた。異世界のドラム缶風呂……。

「不思議な光景だ」

『ちょっと!シェリア助けてよ!イケメンの裸に抱きしめられて、しかもお風呂一緒に入ってるなんてウチ死んでしまう!!!』

 まーちゃんはノエさんと一緒にお風呂に入っていた。

「ん~?まーちゃんは僕と入るの嫌なの?」

『光栄です!!!このことは来世になっても、いえ来世以降も受け継がれていくべきうれしき事です!!!!』

 興奮し過ぎておかしくなっている。

「なんでそんな護衛騎士みたいになってんの。しかも僕は姫か」

 ツッコミが的確すぎて笑った。まーちゃんのこういうところが面白くて好きだ。

「シェリア嬢も一緒に入る?」

「いや、さすがに無理ですね」

 年頃の親しくない男女が同じお風呂に入るのは良くないことです。
 それに今は火の加減の調整に必死だった。

「僕の裸見たがる女の子ばっかりなのに、シェリア嬢は興味ない?」

「あの、今の状況見てわざと言ってますか?無理なんですよ。火の加減に必死です」

「だよね~。僕は君の裸見たかったな~~」

 思わず顔を歪めてしまった。イケメン無罪というやつだ。無罪なわけない。

「その調子で女の子口説いてるんですね」

「逆に元婚約者にここまで冷たくするのもすごいよ…僕と婚約できるなんて世界中の中でも5本の指に入るレベルで幸せだよ!」

「そうですか」

 火の加減を見るのも疲れてきたので風を弱めた。このやりとりがとてつもなく疲れる。

「ん?なんかわざと熱くしてない?」

「気のせいじゃないですか??」

 色んな意味でのぼせたまーちゃんを助けて、風を強くした。
 温泉の湯に甘えていたが、故郷の魔法国や王国はないからみんなこうやってお風呂を準備してくれていたんだなぁとしみじみ感じていた。
 自然の力は偉大だ。そして魔法を使えることにおごってはいけないと思ったのだ。

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