転生魔法使い令嬢はラスボス悪役令嬢になります

こと葉揺

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1.ラスボス城へのやっかいな来客者

かつてのドラゴン達は

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 客間に案内し、私は飲み物などの準備をした。ノエさんはお嬢様がそんなことするの?とか嫌味を言われたので苦目の紅茶を出しておいた。
 ノエさんは話し始めた。




 昔々、この世界は光のドラゴンと闇のドラゴンが居て、その2つの龍がこの世界の魔力の均衡を測っていた。光のドラゴンが光、水、風。闇のドラゴンが闇、火、土を持っていたので魔力のバランスは保たれ、マナもたくさんあり豊かな大地だった。
 ドラゴンはどの国にもおらずマナのバランスを取るため空を漂っていた。そんな時に人間たちはドラゴンの奪い合いを始めた。
 主に今のラ・フォア王国と魔法国・ユグドラシルだ。昔はそこの2つが大きな国だった。

 傷だらけになったドラゴン達が行き着いたのはマナで満ち溢れた小さな国オルタ・モン国だ。
 ドラゴン達はそこに逃げ込み手当を受けて匿ってもらった。その後心を通じ合わせて、そこの国の王族と婚姻を結び子孫が生まれるようになった。

 しかし、それに気づいた他の国がオルタ・モン国に戦争を仕掛けて焼け野原となり、大勢いた精霊やマナが失われた。
 加えて光のドラゴンがラ・フォア王国に捕らわれてしまったのだ。

 結局のところドラゴンは高位精霊のためマナが不足した場所でそこのマナとしての材料にされてしまうのだ。
 オルタ・モン国は闇のドラゴンによって火山と土壌の良い土を。
 ラ・フォア王国は光のドラゴンによって清らかな水と美しい風を与えられた。

 そして今のオルタ・モンドラゴン帝国となった。
 帝國は火山を利用した温泉リゾートの開発と豊かな土壌を利用した野菜づくりを盛んに行なっていた。都市部は金属加工が盛んであり発展していた。




「さっきの話からするとマナが溢れすぎて精霊になるってことなんでしょうか。そして、足りなくなったら精霊がマナに帰るって感じでしょうか」

「そうだね。その理解であっているよ」

「帝国には闇のドラゴンの末裔が生まれているのはやはりドラゴンの血を引いていることが条件なんでしょうか?」

「それはそうだと思うな。実際光のドラゴンのマナはラ・フォア王国にあるけど、あちらにはドラゴンの先祖返りは生まれてない。だから、僕はあっちに行って覚醒しないといけないんだよね~」

 なるほど。なかなか難しいんだ。ちなみにあまり理解はできていなかった。ふんわりそういうものだと理解した。

「闇のドラゴンのみを覚醒させたところで、人の暗い感情が表に出やすくなったり、夜が長くなったりとアンバランスだからいままで放置されてきたけど、僕が生まれたから2人が覚醒するのかと思いきや!なんとルカのみ覚醒して僕の魔力がほとんど搾り取られてしまったんだ」

「お、てことはこれから理不尽にノエに使いっぱしりにされないってことか」

「そこはなかなか腹が立つけど…。これで王様への道は途絶えたかぁ~」

 ノエさんはがっくり肩を落としていた。後継者問題でもあるのだろう。
 でも色々知識がありそうだ。手を借りてみたい。

「あの、ノエさん。無理は承知で頼むのですが私に魔法を教えてくれませんか?」

「僕が?優秀な魔法使い様に?何で?」

 嫌味っぽく返されたがこれは仕方ない。魔法使いは割とプライドが高いひとが多い。シェリアもそうだった。
 シェリアとして学んできたこと以上に精霊のことや他の属性のことを身につける必要があると感じた。

「私に必要だからです。絶対に後悔させません。ノエさんにはメリットはないかもしれませんが、できることは返します。私の小さい許容範囲内で」

 ノエさんは私の手を握って目をキラキラさせた。

「シェリア嬢と婚約破棄しなければ良かったなぁ~。まさかこんなに面白い子だなんて思いもしなかった」

「おい、ノエ。お前の女ったらし出てるぞ」

「え~?シェリア嬢はこんなに美人なんだから口説かないと逆に失礼というか…それに慣れてるでしょ…?あれ?顔真っ赤」

「いや、こいつは想像以上に子どもだぞ」

「えー!こんなに綺麗で男知ってそうなのに?」

 頭が痛い。女の人が特に好きなのは本当そうだ。握った手をスリスリと撫でられていた。

「知りません…。でもノエさんにはわずかに光の魔法の痕跡がありますよ」

「え?本当?前みたいに上手く使えないからもうなくなってるものだと思ってた」

「それこそ光の魔力を補えば以前のように使えるかもしれませんね」

「うーんどうなんだろうか。前みたいなたくさんは使えない気がするな」

「どうしてですか?」


「だって魔力は均衡を保とうとするんだ。聖女が呼ばれたからきっとルカの方が覚醒して力がルカの方に集まったんだ。それなら概ね均衡は取れているはず。聖女が例え異端輸入品であっても世界は一旦そのようにバランスをとるはずだ」

「てことはいつかノエさんも覚醒できるかもしれないということですね」

「そうかもね。でも覚醒することにはもう興味ないな」

 私のクセのついた毛先を指先でくるくるともてあそびはじめた。

「わかった。聖女と渡り合えるように魔法のこと鍛えてあげるよ」

 ノエさんは私のことをぎゅと抱きしめた。


「だからしばらく僕のこと、ここにおいてくれる?」

 ルカはゲッという顔をして私たちから顔を逸らした。


「部屋は別でしかもかなり離れたとこでよろしく。それと食事も別。基本俺とノエは接触しないようによろしく」



 ものすごく嫌そうなルカであったが、きっと魔法に関しての知識はたくさんあるのだろう。だから私の提案を受けてくれたことに対しては一旦ルカの中でも受け入れてくれたのだ。
 うさぎのマツリカが起きない以上、私たちだけでは限界があるので、ノエさんの協力を得ることにした。



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