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彼の望む愛の行方

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「……あれ」

「起きたっ…平気か?」


 目が覚めると見覚えのない景色だった。目の前にはルカと呼ばれていた男性がいた。

「ここは…」

「オルタ・モンドラゴン帝国のノエの部屋だ。…お前はノエの何だ?」

「何と言われても…。契約者」

 この関係をあえて言葉に表すならドラゴンとの契約者だった。どんなに身体を合わせていてもそれ以上ではない。

「ノエ様はいったい何をしているんですか?国取がどうとか言ってたのってもしかして戦争をして領土を広げていますか?」

「…そうだ」

 止めなければ。そう思いベットから出ようとすると思ったように力が入らず床にペタリと座り込んでしまった。

「おい、無理はするな。ここで休んでいけ。お前が傷つくとノエが困る」

 でも今は淫紋の効果は発動していない。魔力も十分ある。止めないと。

 私は魔力で体を浮かせてノエ様のところへ飛ぶように願った。





「ひっ…」

 飛んだ先はラ・フォア王国だったかも目の前にはシャルル王子はじめとする王族が血塗れで倒れていた。
 腕や足を切り離されて、口や目も潰されている人もいた。

「シェリア?あれ、どうしておうちでおとなしくしてないの?」

 マツリカ様は居ない。いや、もしかしてあの闇の魔力に包まれた人がそうなのか。

「こいつらさぁ、シェリアのことばかにしすぎでしょ?どうぐじゃないんだよなぁ…。それにぼくには向けてくれないこいごころまでもらってるくせにこいつはさぁ…」

 ノエ様はニコニコといつもの笑顔で私を抱きしめた。言葉を失っているとノエ様は1人で話始めた。

「あいつ?あいつはねマツリカだよ。淫紋の魔法をシャルルに使うように仕向けたらまんまと引っかかって闇の魔力が強くなっちゃった!まぁシェリアに使ったのは想定外だけど…。あはは!もはや魔女だね」

 私の体に刻まれているコレもノエ様の仕業ということなのか。いや、間違って私に刻まれたのだ。

「ノエ様。私はこんなふうになってしまいましたが一応魔法使いとしての矜持は持ち合わせているんです」

 自分の中の魔力を最大限に使っていつもの繭の中にノエ様だけを引きずり込んだ。

 もう2度と出られないように。










「もしかしてデートのお誘いかな?あいにくだけど、やる事がまだ終わってないんだ」

 いつものようにニコニコ笑っていたがやりたいことを邪魔されて怒っていた。
 ノエ様はいつものように繭から出ようとしたが出来なかった。


「…先にやられちゃったね。最後は2人でここに籠ろうと思ってたけど」

 ノエ様は諦めたのかそこに座った。

「どうしてラ・フォア王国の人を殺したのですか」

「どうして?そんなの簡単、シェリアを傷つけたから。国をとったりするのはついで。ドラゴンとして覚醒したのは力が必要だったから」

 立っている私の腕を引っ張り目線を合わせるように座らせた。

「他国に単身でやってきて仕事をして、婚約の話になり、周りに親しい人がいない中よく頑張ってたよ。不安があったけど、シャルル王子がいたから頑張れたんでしょ?でもそれもマツリカが現れてシェリアを粗末に扱うようになった。婚約も破棄した。それがどれほど辛いかなんて容易に想像できる」


 いつものように頭を優しく撫でてくれた。そうだ、この手にこの言葉にいつも安心していた。

「1人で偉かったね。どんなに辛くても自分に出来ることを頑張っているシェリアが可愛かった。他の女に構っていても一途に想っている君が眩しかった。優しくしたい、笑顔になってほしい。それが僕の願いだよ」

 思わず涙が溢れそうになったがハッと我に戻った。でも彼はやり過ぎている。

「でも、人を殺すのは良くないです」

「……どうして?シェリアは死にたいって言ったんだよ?実際自死一歩手前だったじゃない。彼らだってシェリアを殺したようなものじゃないか。それの報いだ。シェリアが罰を下さないから代わりに僕がやった」 

 目元の涙を舌で舐め取られた。慰めるように目元や頬にキスをされた。

「可哀想なシェリア。シェリアは幸せになるべき人だ。だから傷つけるものはすべて殺す。そうすることで僕は嫌われてしまうのはわかっているけど、もう僕の中には黒い感情が生まれてしまったんだ。許さない…。許せない」

「それならずっとここに2人で…いたい」

 ノエ様は目を大きく開自分の胸に手を置いた。

「…それは、マツリカを片付けてからだ…よ」

 胸に手を押さえたまま下を向いてしまった。少し息が上がっているようだ。

「そんなのどうでもいい。私は、本当はノエ様のこと好きだった」

 勢いよく顔を上げたノエ様はわたしを凝視した。目がキラキラと光っていた。

「最初はシャルル様を好きだった。結婚したいと言われて嬉しかった。けど、マツリカ様が来て蔑ろにされて辛くて気持ちがスッと冷めてた。でも、ここで頑張ると決めた以上無責任に投げ出せないと思って頑張ってた。でも報われなかった。そんな辛い時にいつも助けてくれたのがノエ様だった」

 私はノエ様の胸に置いてある手を取り指先にキスをした。

「ノエ様に優しくされるのが嬉しかった。側にいて魔法のこと勉強するのが楽しかった。好きなんだろうと思ったけど、私はシャルル様に側室になるために頑張っているし、それにノエ様は色んな女の子と……」

「違う、あれは」

「いいっもうここにさえいれば独り占めできる…んっ」

 気がつくとキスされていた。いつもの戯れるようなキスではなく激しいものだった。

「ね、抱いてもいい?淫紋で発情していない時に一度シェリアを抱きたい。僕をちゃんと感じて…?」


 お腹の淫紋にアンチ魔法をかけられた。私の答えは「やっと」だった。

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