41 / 44
40.
しおりを挟む「モモトセ、大変。もう来てる」
私はアースィムから来たメッセージをモモトセに見せた。
ハッカイさんは自分の準備が整ったのかツムギさんとカタリさんを殺そうとしているのだ。しかもこの島に来ているということは私たちもともに始末しようとしているということだ。
「おとうさん…おかあさん」
気づくと涙が溢れていた。何とも言えなかった。客観的な自分が泣くことを責めてくる。しかしこれはもうどうしようもなかった。
「ツヅリ、大丈夫。絶対俺が守ったる」
モモトセは力強く私を抱きしめて担いでしまった。いつもの重装備をしてコテージから出た。
「今はアンドロイドどのあたりにおる?」
「もうすぐこの島に着く」
アンドロイドの電波に干渉できるくらいの距離になってきた。
「そうやな。とりあえず1回信号送ってみて」
ボタンを押すとどうやら成功したようだった。アンドロイドの動きが止まった。遠くにアンドロイド数体と抱えられているツムギさんが見えた。
「ツムギさん!!!!」
ツムギさんはハッとこちらに視線を向けた。
「こちらに来るな!ここはもう…もう」
気づいたら私たちの後ろにカタリさんがいた。いつ此処に来たのかわからず驚きを隠せなかった。
「ヤッホーツヅリちゃん」
さっきまで泳いでいたのかびしょ濡れだった。
「約束の日にはまだ早いけど、なんか事が凄い進んじゃってるね?」
思わずモモトセは私を背に庇ったがカタリさんはニコニコ笑いながら手を挙げた。
「殺さない殺さない。今はまずめんどくさいハッカイを殺してから私がやりたいことするんだもん」
船が船着場に近づくとカタリさんは跳躍しアンドロイドを次々に壊していった。後ろに立っていたハッカイさんは嘲笑を浮かべていた。
「ツムギさん、お願いしますわ」
「カタリ、こっちに来なさい」
「ツムギ~♡会いたかった」
カタリさんは完全に恋する乙女の顔をしてツムギさんに擦り寄って行った。ツムギさんはアンドロイドから下ろされて2人で向き合っていた。
「カタリ、自分のしたことは分かっているのか」
「どれの話をしているのかはわかんないけど、私は最初から最後まで目的は1つだよ?」
「…ナナミは殺したのか」
「ナナミ?さぁ、確かになんかムカつくこと言われたから首絞めた気がするけど、死んだの?」
その言葉を聞いてハッカイさんは嫌悪感を露わにしていた。私もツムギさんも顔が青くなった。彼女は反省などしていないのだ。
「…じゃあなんで学長を操っていた」
「それは前にツムギが言ったじゃない。世界に2人きりになったらセックスしてあげるって」
「そんなことで…」
「そんなことじゃないもん!アタシにとっては1番大切なことだもん」
すると銃声が聞こえた。どうやらハッカイさんがカタリさんに向かって打ったみたいだ。カタリさんの肩に銃弾がめり込んでいて血が噴き出ていたが、そこに指を突っ込み銃弾取り出すと傷はみるみるうちに治った。
「ホンマにお前は化け物やな」
「ハッカイうるさい、静かにして」
カタリさんはハッカイさんにチャームを使用したが効いていなかった。
「…ツムギが手を貸したの?なんで?ナナミの弟だから?」
カタリさんはツムギさんの肩をつかんでなんでなんでと繰り返していた。
「そうだ。ツムギ、ここでセックスしてくれたら、人を殺すのやめる。あ、でもツムギはナナミに いけないんだよね?じゃあモモトセくんを代わりにして しよ?」
モモトセが口元に手を当てた吐き気を催していた。私も自分の母親が何を言っているのか全くわからなかった。
「だってこの前アタシとツムギがした時ナナミの を すぐに もんなぁ~。それも悔しい!けどすき♡」
「ホンマに気色悪い女やな」
ハッカイさんはどうしようもないのか一定の距離を空けてただ悔しそうにカタリさんを見つめるのみだった。
「あははは!童貞で子どもたくさん作ってるハッカイのがキモいから~」
聞くに耐えれなかった。思わずカタリさんの口を塞いでしまった。
「これ以上はやめてください…」
モモトセが慌てて私を止めに来た。しかしカタリさんは素知らぬ顔をしてツムギさんに向き合った。
「やっぱりほしいな」
ツムギさんはモモトセの方に視線を向けていた。今までとは違う恍惚な表情で見つめていた。
「モモトセ君ってツヅリと1番相性がいいんだろ?ってことはボクとナナミもそうだったってことだ。ボクは男だしナナミはもう死んでるけど、君たち2人がいたら、ボクの望みは叶う」
「いやだ!いやだいやだなんでまたそんなこと言うの」
ツムギさんは1人でぶつぶつ言っていたがカタリさんは駄々をこねはじめた。
「僕の意識をツヅリの体に移して、モモトセ君にナナミの記憶を上書きすれば可能か?いずれにせよ、研究が必要だな」
ツムギさんは目の前に縋るカタリさんを突き飛ばしてハッカイさんの前にきた。
「ハッカイ。ごめん、ボクやりたいことできたから約束は必ず守るけど待ってほしい。君が望んでたナナミの血液返してあげるからさ」
ハッカイさんは体を震えさせて拳を強く握っていた。
「ほんまアンタら兄妹はどうしようもないな。最後の最後に侮辱してきやがって…」
ハッカイさんは私の方へ走ってきたが、モモトセがそれを阻止した。
「何するねん」
「どけ、その女をここで殺す。そしてそのあとあの2つのゴミの処理する」
「ツヅリは関係ないやろ」
「でも血を引いている子や。長生きすると何をするかわからへん」
「それこそ関係ないわ!どこをどう見たらこの2人とツヅリは似てるんや?ツヅリはツヅリや。お父さんの都合で殺していい人間なんておらん」
こちらにきたハッカイさんを容赦なく峰打ちし気絶させていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
羽村美海
恋愛
古式ゆかしき華道の家元のお嬢様である美桜は、ある事情から、家をもりたてる駒となれるよう厳しく育てられてきた。
とうとうその日を迎え、見合いのため格式高い高級料亭の一室に赴いていた美桜は貞操の危機に見舞われる。
そこに現れた男により救われた美桜だったが、それがきっかけで思いがけない展開にーー
住む世界が違い、交わることのなかったはずの尊の不器用な優しさに触れ惹かれていく美桜の行き着く先は……?
✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦
✧天澤美桜•20歳✧
古式ゆかしき華道の家元の世間知らずな鳥籠のお嬢様
✧九條 尊•30歳✧
誰もが知るIT企業の経営者だが、実は裏社会の皇帝として畏れられている日本最大の極道組織泣く子も黙る極心会の若頭
✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦
*西雲ササメ様より素敵な表紙をご提供頂きました✨
※TL小説です。設定上強引な展開もあるので閲覧にはご注意ください。
※設定や登場する人物、団体、グループの名称等全てフィクションです。
※随時概要含め本文の改稿や修正等をしています。
✧
✧連載期間22.4.29〜22.7.7 ✧
✧22.3.14 エブリスタ様にて先行公開✧
【第15回らぶドロップス恋愛小説コンテスト一次選考通過作品です。コンテストの結果が出たので再公開しました。※エブリスタ様限定でヤス視点のSS公開中】
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる
奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。
両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。
それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。
夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
女性執事は公爵に一夜の思い出を希う
石里 唯
恋愛
ある日の深夜、フォンド公爵家で女性でありながら執事を務めるアマリーは、涙を堪えながら10年以上暮らした屋敷から出ていこうとしていた。
けれども、たどり着いた出口には立ち塞がるように佇む人影があった。
それは、アマリーが逃げ出したかった相手、フォンド公爵リチャードその人だった。
本編4話、結婚式編10話です。
ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。
イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。
きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。
そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……?
※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。
※他サイトにも掲載しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる