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しおりを挟むそれからはカタリとナナミが知り合いだということがわかりそこから3人で会うようになった。ご飯に行ったり遊びに行ったりした。ボクは楽しいと思ったのは約500年生きていて初めてだった。
それからは研究や仕事を疎かにすることが多かった。もうナナミを追いかけることが生きがいになっていた。ボクはいつものようにナナミの写真を見て楽しんでいた。そこにカタリがいつものようにしなだれていた。
「何?ナナミってツムギの神様なの?」
「そうかも」
「好き?」
「うん」
「恋愛的な意味で?」
「違うよ」
「じゃあどういう気持ち?」
「ずっと見てたい」
カタリはボクの唇にキスをした。ボクはふふと笑ってカタリさんの頭を撫でた。いつものスキンシップだ。
「ツムギは恋した事ないの?」
「ないかも」
「アタシのことは好き?」
「もちろん」
「ナナミと私はどっちが好き?」
「同じように好きだよ」
カタリはその言葉を聞いて目を見て大きく見開いて身体をプルプルさせていた。
「て、ことはアタシとセックス出来る?」
「…え?」
カタリに押し倒されていた。同じように好きとは言ったが性愛的な意味ではなかった。家族愛に近いものを感じていた。
「アタシずっとずっとずっとツムギが好きだった。生まれた時からずっと…」
「…カタリはボクの妹だ。大切だけど、それは家族愛だよ」
上に乗ってきたカタリをそっと押し返した。500年生きてきてそんなふうに言われたのは初めてだった。
「でもナナミのことはきっと恋愛的に好きだよ。絶対絶対…」
「違うよ。好きだけど、家族のような友だちのような親愛は持ってる。性的な目では見てないよ。第一ボクの性の対象は女性だ」
「じゃあ証明して」
その時カタリは全てのチャームをボクに使った。そこから完全に意識が無くなった。
目が覚めた時は完全に情事の後だった。横には縛られていたナナミがいた。
「ナナミ…あれ、ボクは一体」
ナナミの口に貼られたガムテープを剥がした。すると涙が溢れていた。
「ごめん…ごめんなぁツムギ。ごめんごめん」
何に対して謝っているのかわからなかった。謝るのはこっちの方だと思った。見たくもない他人の情事を見せてしまったのだろう。
「ごめん、ごめんごめん。俺らちょっと距離おこ」
ナナミさんは紐を解かれると絶望した顔でその場を去った。
「嫌われた…?」
ボクも同時に絶望していた。そうしているとカタリが戻ってきた。
「あれ、ナナミは?」
「…帰ったよ」
「ウソ、あははははは。せっかく願い叶えてあげたのになぁ。…ツムギ、気持ちよかったね」
「残念ながら覚えてない」
カタリはケタケタと笑い抱きついたが、優しくその手を退かして身なりを整えていた。
「そんなにいいもの?セックスって」
「うん、とくにツムギとするのが最高だったよ」
「ふーん。なんで今までしなかったんだろう、ボク。でもよくわかんないし次はいいかな」
「えーまたアタシとしよーよ」
「倫理的におかしいからしない。生物学的にも遺伝子が近すぎて非効率だ」
「ケチ!好きな人とやるのが気持ちいいんじゃない。兄妹の前に男と女でしょ?」
「世界中に2人だけになったらまたしてあげる。そんなことよりなんでナナミがここにいたんだ?」
「知りたい?でもナナミは知られたくないと思うよ?」
知りたいとは思ったが、あのナナミの様子を見るにあまり深入りしない方がいいかと思いカタリに聞くのをやめた。ただ後日改めて謝罪しようと思っていた。
しかしナナミはボクを避けていた。話す機会もなく数ヶ月すぎた。完全に嫌われてしまったのかも。あの時の事が原因かと思いながら何もできずにいた。そもそもナナミは芸能人なので会うこと自体ラッキーなことだったのだと思い影で応援することに決めていた。
そんなある日カタリから妊娠したと報告があった。どうやらあの時の子どもらしい。何があったか覚えていないが、1つの命ができたことに喜びを感じた。胸にほんのりと明かりが灯った気がした。…初めて遺伝子組み換えに成功した時のような気持ちかもしれない。
血が近いので弱い子かもしれないが、一生懸命育ててあげようと心に誓った。カタリがもうすぐ出産という頃にナナミが訪ねてきた。嫌われたと思っていたので会いにきてくれて嬉しかった。
「ナナミ!久しぶり!会いたかった…。あの時は身内の騒動に巻き込んでごめんな」
そういうとナナミは少し絶望した顔で言葉を発した。
「ツムギは、あの時のこと何も覚えてないの?本当に?惚けてるんじゃなくて?」
「うん。ごめんね、カタリのチャームは自我が無くなるから覚えてないんだ。ボクらの性行為を見せられたんだろ?申し訳なかった」
「……俺、あの時一生で1番勇気を振り絞ったんだ。でも覚えてないんだ…。……いや、今日はその事を言いにきたんじゃないんだ。ツムギ、おめでとう。お父さんになるんだね」
少しナナミが気になる態度を取っていたが話が切り替わったのでそちらの返事をすることにした。
「ありがとう。なんだか実感はないけど嬉しいよ。恋とか愛とかはよくわからないけど、子どもは欲しいと思っていたんだ」
「…そっか。それなら良かったね」
ナナミはそれからずっと下を向いて佇んでいた。おかしい…。そう思いナナミの肩に手をおくと思いっきりはねのけられた。
「あ、ごめん。気持ち悪いよな」
「そんな事…ないよ。ごめん、さようなら」
悲しい顔をして去ろうとするナナミを引き止めた。そうしないといけない気がした。
「待って、おかしい。ボクと一緒にいよう。ナナミのことはボク大切で大好きだよ。力になりたい」
ナナミは顔を歪ませたかと思うと押し倒された。その顔はなによりも悲しい顔をしていた。
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