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しおりを挟むモモトセとお付き合いを始めて数ヶ月経った。モモトセと同棲を始めたのが暑くなりかけていた頃だったので、今はもうかなり暑くて太陽が登っている時間も長くなっていた。
関係はかなり順調であるといえる。私は変わらず、午後に施設の子供達に勉強を教えている以外は勉強の時間に当てていた。モモトセとは一緒に行動しなくなり、時折芸能区へ行ってはパーツモデルをして帰ってきていた。寂しく思いつつもアテニャンさんの新作アクセサリーの広告を見ては喜んでいた。時折顔を隠してファッションのモデルをしていることもあるようだが、モモトセはあまり好きではなさそうだった。
最近は私がロストテクノロジーの話を延々としているとたまーにその設計図を作ってくれて2人で意見を言い合いミニチュアロストテクノロジーを作るのがもっぱら楽しい時間だった。この前は“エレベーター“というものを作った。昔は上の階に上がる時はこの箱型の昇降機に乗っていたのだ~と感慨深い気持ちになった。今は重力操作機があるのでそれを使用して昇ったり降りたりしているのだ。
次回は何作ろうか~と話している時間がすごく好きだ。趣味は合わなくてもいいと思っていたが、こんな形で協力出来るのであれば良かったのかなと思った。
いつもロストテクノロジーの話をしても話半分で流されてしまうからただ聞いてくれるだけで嬉しいのにその上模型まで作れるのだ。楽しい以外の何ものでもなかった。
「お見合い一歩進んでおめでとう!ツヅリ」
今日は久しぶりにエミリーに会いにきていた。エミリーは2人目を妊娠中であるが、安定期に入ったためもうあっても良いだろうということできていた。1人目の子供もお部屋で大人しく遊んでいた。
以前お見合い相手を濁してしまっていたが、買い物で会ったときに簡単に挨拶したのでモモトセが元アイドルだったということは知っている。
「ありがとう。お付き合いを始めて毎日が楽しいよ」
「で、どこまで進んだの~?」
「どこまで?とは?」
「もう!子どもじゃ無いんだから!キスとかメイクラブとかそういうの!」
「えっと…」
「もしやこれは最後まで…♡きゃー!羨ましい…元アイドルの下で…」
「してない」
「えっ」
「付き合ってからキスしてないよ。それどころか最初のハグ以降は何もしてないよ」
「ん?ちょっと詳しく教えて?誰にも言わないから」
そう言われたので、これまでのモモトセのやり取りと、お付き合いを始めてから一切触って来なくなったことを話した。思い出しながらかなり恥ずかしくなっていた。
「なるほどな~意外とウブな感じなのか。面白いな~Momo。でもそれはすごく好感度高い…アイドル時代は本当にアイドルしかしてなかったんだ。神…」
エミリーはキラキラした顔で喜んでいた。言っていることはたしかにわかる気がする。モモトセが他の女性に触れてたかと思うとそれだけで黒い感情が生まれてどうにかなりそうだった。
「それならゆっくりでいいかもね。焦る必要なんてないよ。だって結婚するんでしょ?それならこれから嫌ってほどしないといけなくなるからね」
経験者は語るである。嫌ってほどするっていうのは語弊がある気がするが黙っておいた。
実は私の中で小さな願望があったが、どの程度まで許されて順序の中のどの辺りまで触っていいのか気になっていた。
「…手を繋いだり、抱きしめたりはしてもいいかな」
「ん?相手が嫌がってないならいいよいいよ。施設の子たちにだってしてるじゃないの」
「そうだね。なんか順序って言われたから何をどのように順序があるのか分からなくて…今付き合って数ヶ月経ったしそれくらいなら許してくれるかな?」
「全然オッケーだよ!そういえばMomoの誕生日ってアイドル時代の時に公表していたので間違い無かったりする?」
「ん?あ、どうなんだろ」
仮にも付き合っている人なのに誕生日を知らないなんて、なんて出来ない彼女なんだ。完全に失念していた。
「じゃあさ、これあげるから行ってきたら?来週が確かMomoの誕生日のはずだから」
そう言って目の前には商業区の複合施設の宿泊チケットだった。
「ここならお買い物でもいいし、目立ちたく無いなら個室で温泉でもいいし、貸し切り温水プールなんかもあったから、どこかの施設が空いてたらそこを予約してみてもいいかもね」
「え、こんなの貰ってもいいの?旦那さんと子どもちゃんと行ってきたら…」
「いいのいいの!実はその日うちでパーティの予定になっちゃって行けなくなっちゃったんだ。だから捨てるだけになっちゃうから、助けると思って使ってくれない?」
「ありがとう!デート楽しみ…。プレゼントも用意しなきゃ」
好きな人が生まれた日はなんて特別なんだろう。私まで嬉しくなってしまう。ウキウキしながら帰ってモモトセと予定を立てようと思った。
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