わたしの竜胆

こと葉揺

文字の大きさ
上 下
7 / 13

呪縛

しおりを挟む


 学校にいる時はよく颯と過ごした。私の兄と婚約したことは周知の事実で、それで仲良くしていると思っているようだ。

「菫は意外と人気あるの知ってた?」

 今日もいつものように校庭の隅の方で昼食をとっていた。なんの脈絡もない会話に首を傾げるしか無かった。


「菫は女性の中でも背が高い方でしょ?それにあまり表情も変わらない、でもスマートに親切にしてくれる。そんなところにあこがれをって人多いみたい」

 それはありがたかった。好かれて迷惑に思うことなんてない。あまり親密に話してくれる人が居なかったので、周りの評価は興味なしか悪い方だと思っていた。女性社会でグループに所属できないのは欠点だと思っていた。

 颯は私の髪の先を掴みくるくる弄り始めた。

「この色って地毛?すみれのお父さんもこの色だったね」

 私の髪は父に似て赤茶色っぽいのだ。目も茶色で外が人よりは眩しく感じる。

「菫って名前なのにちょっと不思議」

「たしかに、私たち名前だけは色がよく似てるね」

 竜胆に菫。どちらも紫色の花だ。他にも種類はあるのだけれど。
 この言葉に何故か颯は喜んでいた。

 あの家族との食事の後、わかりやすく私にべったりするようになった。以前から夜は部屋に来て抱いてから自室に帰ってはいたが今はもう自室に帰ることも無くなった。

 だが、以前のようにエッチをする回数は減っていた。いや、するのだがとにかく優しかった。探るように労わるように少しずつゆっくりと体を暴かれていき、欲を放つ行為ではなく、愛を伝える行為かのように触られていた。



ガンッーーーー



 食事を置いてある机にボールが当たった。後ろを振り向いても誰もいなかった。
 最近こういうことが時折あった。物が無くなってないだけマシだと思うしか無かった。

 颯は遠くの一点をじっと見つめていた。怒りの表情をそこに宿しながら。






✴︎✴︎✴︎



 今日は珍しく颯が私の部屋に来ることは無さそうだった。もう23時なのに、いつもなら21時頃には来ていた。

 そんな日もあるか、と床につこうと思っていたら颯が入ってきた。
 あの凪さんの葬儀の後のように薄暗い表情をしていた。



 そうか…今日は49日か。寝ている時に颯は苦しそうにしていることもあった。普段はなんともないように振る舞っているが、やはり姉を無くした苦しみは大きいのだろう。


 その日は久しぶりに乱暴に抱かれた。





「ほら、歯を立てないで」

 口の中に大きくなった颯のモノを咥えされられていた。
 最初は舐めていたがあまりにもぎこちないからか、色々指示を受けてその通りにしていた。
 苦しい…マジマジと見ることもなかったがやはり大きい気がする。こんなものが挿っているのか…とゾッとした。

「何考えてんの?凄いエロい顔してるけど」

 そんなことを言う颯の顔も赤く染まり息も浅くて、とても扇情的だった。触りたいって思うのはこういう表情を見たいと思うからなのかもしれない。

 すると頭をガッツリ掴まれて喉の奥の方に押し進められた。思わず嗚咽が出そうになったが我慢した。少し彼のモノが大きくなり、喉に彼の精液が放たれた。

「ゴホッ…ゴッ…う……」

 精液を吐き出そうとすると口を押されられた。

「飲んで。中に出したいけどいつもはゴム越しだし、たまには俺の精液飲んでよ」


 たまにはと言われても初めてのことだし、正直吐き出したくてたまらなかったが、その瞳が怖くて我慢して飲み込んだ。何とも言えない香りや味だったが、そこまでの嫌悪感は無かった。


「じゃあ次は僕の番。いっぱい舐めていっぱいイカしてあげるからさ、また前みたいに潮ふきなよ。それも飲んであげる」

 足を大きく開かれて颯は恥部に顔を埋めた。



✴︎✴︎✴︎


 あの後本当に潮を吹くまで舐められたあげく…………。
 体がピリピリと痺れている感覚がなんとなく抜けてないようで、横で苦しみながら寝ている颯を見てなんとも言えない気持ちになっていた。

 酷いことをされている自覚はある。しかし体を繋げることは嫌いじゃ無かった。彼の言う通り淫乱なのだろう。
 こうしている時間が好きだった。本当は好き同士でやりたかったが、どう頑張ったって私の片思いだ…。



 片思い?私はなんでそんなことを…。


 寝ている颯が私の腕を掴んでいた。無意識のことなのだろう。いつもは離れて寝ているが今日は抱きしめて寝よう。
 颯を包み込み頭や背中を撫でながらもう一度眠りについた。





✴︎✴︎✴︎




 今日は颯は生徒会の選挙に推薦されたとのことでそこに駆り出されていた。1人でご飯を食べていると前から妖艶な姿の女性が歩いていた。
 誰かの保護者なのか、浮世離れした美しさと今すぐ消えてしまいそうな儚さがあった。

「あの、理事長室はどちらかしら」

 鈴が鳴っているような声だった。とても耳触りがいい。少し見惚れてしまったがすぐに返事をした。

「こちらです。案内いたしますわ」

「ありがとう」

 この控えめな笑みをどこかで見たことがあったが、嫌な予感しかしなかったので考えるのをやめた。


「貴方もしかして高橋さんのお家の子どもさんだったりしない?」

 突然そのように質問されて驚いた。家族の誰かと知り合いなのだろうか。

「確かに私の名前は高橋ですけど…よくある名前ですし、どうでしょうか」


 するとカバンから父の名刺を出してきた。その名刺を見てもしかすると予感がした。

「その名刺はうちの父です」

「やっぱり!うちの凪さんの婚約をしたのって貴方のお兄さんかしら?男前で驚いたの」

 やはり、竜胆さんの母だった。この浮世離れした美しさをどこかで感じ取っていた。


「よろしくね。凪さんって破天荒でわがままだけど、勉強も運動も得意だしきっといいお嫁さんになるわ。貴女とも歳が近いし仲良くして頂戴ね」

 竜胆さんのお母さんに優しく手を握られた。とても綺麗な手で所帯染みているなんて言葉は縁遠い人だなと思った。



「…母さん」

 後ろから颯の声が聞こえた。何かに怯えている声だった。

「あら、凪さん。ちょうど探していたのよ。凪さん生徒会の選挙に出るんでしょう?それで理事長に絶対マリア様にして頂戴ってお願いにきたの。お告げも聞いたことだし」

「そうですか」

 颯は強張った顔で返事をしていた。生徒会の選挙などほとんど通るようなものだ。大体マリア様の妹がなる。凪さんがそうだったからわざわざ母が根回しをしなくてもいい話だ。
 それに選挙の話が出ているがまだ半年先である。その前に文化祭がある。その時に根回しすれば良い。


 それにしても本当に颯のことを認識していないのか、私という他人の前だからそうなのか。颯という存在はどこにあるのだ。

「あの、理事長室への案内がまだでしたが、いかがでしょう?」

「あら、そうでしたわね。では高橋さんにお願いしようかしら」


 できるだけ早くこの2人を離したかった。颯の顔が「ありがとう」と言っている気がした。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

俺の彼女はちょっと変

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 俺の彼女、アンナはちょっと変わっている。他人には言えない性癖があるのだ。 今日も俺はその変な要望に応えることになる。 さて、今日のアンナの要望は。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

甘々に

緋燭
恋愛
初めてなので優しく、時に意地悪されながらゆっくり愛されます。 ハードでアブノーマルだと思います、。 子宮貫通等、リアルでは有り得ない部分も含まれているので、閲覧される場合は自己責任でお願いします。 苦手な方はブラウザバックを。 初投稿です。 小説自体初めて書きましたので、見づらい部分があるかと思いますが、温かい目で見てくださると嬉しいです。 また書きたい話があれば書こうと思いますが、とりあえずはこの作品を一旦完結にしようと思います。 ご覧頂きありがとうございます。

お見合い相手はお医者さん!ゆっくり触れる指先は私を狂わせる。

すずなり。
恋愛
母に仕組まれた『お見合い』。非の打ち所がない相手には言えない秘密が私にはあった。「俺なら・・・守れる。」終わらせてくれる気のない相手に・・私は折れるしかない!? 「こんな溢れさせて・・・期待した・・?」 (こんなの・・・初めてっ・・!) ぐずぐずに溶かされる夜。 焦らされ・・焦らされ・・・早く欲しくてたまらない気持ちにさせられる。 「うぁ・・・気持ちイイっ・・!」 「いぁぁっ!・・あぁっ・・!」 何度登りつめても終わらない。 終わるのは・・・私が気を失う時だった。 ーーーーーーーーーー 「・・・赤ちゃん・・?」 「堕ろすよな?」 「私は産みたい。」 「医者として許可はできない・・!」 食い違う想い。    「でも・・・」 ※お話はすべて想像の世界です。出てくる病名、治療法、薬など、現実世界とはなんら関係ありません。 ※ただただ楽しんでいただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 それでは、お楽しみください。 【初回完結日2020.05.25】 【修正開始2023.05.08】

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

俺様カメラマンは私を捉えて離さない

玖羽 望月
恋愛
【もう誰も私の心の中に近づかないで。そう思っていた。なのに……出会ってしまった。あの人に】 家と職場を往復する毎日。そんなつまらない日常。傷つくくらいなら、ずっと殻に閉じこもっていればいい。そう思っていた。 なのに、私はあの男に出会ってしまった。 体から始まった関係に愛などいらない。ただ、身体だけ満たして。 *長森 瑤子(ながもり ようこ) 35歳 マネジメント事務所で働く。 *長門 司(ながと つかさ) 39歳 ニューヨーク帰りのファッションカメラマン 自作品「One night stand after」(アルファ版にはこの作品と同じタイトルを付けていましたが別サイトと同名に統一しました)を大幅変更した改稿版です。最初からまた書き直しております。 別シリーズとは繋がっていないパラレルワールドの話だと思ってください。 すでにOne nightをお読みいただいた方も楽しんでいただけたら嬉しいです。 (同じエピソードが出てくる可能性はあります) ※作品中に登場する企業、団体等は全て架空です。フィクションとしてお楽しみください。

処理中です...