サブスクを止めるー闘病短歌

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二十、~3/29

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 楽しみにしていた旅行から帰ると、力が抜けてしまう。日常をしっかり生きなければ、と意識してみても、なかなか気分は上がらない。
 息子の母校で、読み聞かせを続けてきた小学校の卒業式に、来賓として出席する。読み聞かせをした子どもたちの門出は祝ってあげたい。ここ数年は感染症対策で来賓はなし、祝電だけだったから尚のこと。
 桜の季節が、やや遅れ気味でやってくる。花見酒の趣味も体力もないが、桜は好きだ。まだ開花していないと承知で近所の植物園に散歩。そこで見る鈴懸の老木の立ち姿に感じ入る。何故だか癌になって以来、物の立ち姿に心が揺れるのだ。歩めずともまだここに立っている、という在り方に自分に重ねているのか。


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 何となく 虚ろな感じ 
 旅の後
 生き延びるため 過ごす日常


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 流されて 無為に過ごした 一日は
 取り戻せない
 さぁ 生きなければ

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 旅立ちの 子等を見送る
 行方には 雲厚くとも
 陽はその上に

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 爺さんが 読んで聞かせた 本の言葉
 誰かが明日に 連れて行くかな

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 蒼天に 白骨晒し 凛と立つ
 鈴懸の木に 早春の風


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 そしてまた 抗癌剤に 苦しんで
 削られながら 命を護る


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