11 / 21
寂滅への第一歩
しおりを挟む
これまでの悪天候が嘘のように、空は青々と輝いている。
「あの惣兵衛とかいう若人は無事に京都に帰り着けるかな?やはり、少しは銭を持たせればよかったな。まぁ…、仕方ないか」
化け妖怪の源之進は惣兵衛を化かした時とは異なる容姿であった。年齢は同じくらいだが顔を変えている。よっぽど遊郭に急いでいるようで、飛脚も顔負けの走力で山間を走り続け、峠の下り道では役人の馬と並走しているほどであり、周りの通行人が目を丸くして驚いている。
「懐が暖かいと力が沸いてくるな」
ご機嫌な源之進は肉体の衰えとは裏腹に、茶屋娘に銭を恵む程に優雅な心持ちだった。
惣兵衛に話したとおり、彼は在りし日に水軍に属していた。昔の仲間が皆死んでしまってからは心の隙間を埋めるために、世の為になる生業を営みたかったが、彼にとって群れるという事はすなわち、いつかの別れである。
それを避けたくて一人で馴染みを作らない生活を選んだのであった。
それでも人の温かみを覚えた妖怪は感情的には人間そのもので、海賊あらため水軍時代の欲深い生活の依存症になっている。せっかくの霊験を弱めると分かっていても、それを完全に振り切る英断は難しかった。
東海道の三河の辺りで海で行き交う船を見ると昔を思い出す。
「あいつらの血筋の中にわしの知る者が居るかな?それにしても、わしならもっと 船を上手に動かすのだがな…」
こう思いつつ走るけれど、多少の疲労を覚えてきている。
実は惣兵衛を刀の鞘で殴り倒した時、かなり危ない命の瀬戸際であった。意図せずに殺しかけていたのだ。危うい所で修行によって体得した肉体を癒す霊験によって、治癒に漕ぎつけたのだが、そのせいで源之進の力は弱まっている。
「一刻も早く遊郭で豪遊するのだ」
しかし、俗物の塊その一心で走っている。
「せめて日暮れまでに気賀宿きがまでは辿り着きたいところだな」
森に囲まれた街道には他にも通行人が多数いるが、誰も源之進の脚力に仰天している。
その時、不意に源之進は足取りを止めた。山中の奥から何かが、こちらを見ている気配がする。
「この妖気は…」
源之進は気配を追ってキョロキョロと辺りを見渡す。
人間では捉える事は望めない程に暗く遠い山中に、集中して目を凝らすと四足歩行の生き物がこちらを睨みつけていた。
「おのれ、匂いを嗅ぎつけて来たのか?」
それは気が遠くなるほど過去の事である。
あれは四百年以上前、お堂での小坊主としての修行も終わって、源之進は住職であった父の代わりを担いだしていた。あの日、突発的に目覚めた神通力によって、限られた範囲ではあるが千里眼の力を持っていた源之進は、霊体の姿で崖下にある父の思念を追って、あの狼を発見したのであった。
凄まじい妖気を放っており、異界の口から来た存在だと分かる。
それは普通の狼ではなかった。深い森の中でこちらの存在に気付くと人間が近づいて来たと思ったかのように警戒し、しかし、それが仮の姿である事にすぐに気付いたようだ。
本来は見えるはずのない源之進を、感情の読めない複雑な眼で凝視している。
「人間に化けているとは珍妙なる奴だ。霊体なれど貴殿は異界の住人だな」
深淵から響くような声で狼は話した。
「ふむ…、同じく人語を解する主こそ本当に狼なのか?」
源之進の返答に狼は笑みを浮かべながら答える。
「どうしようもないほど人間の匂いがする。もはや眷属けんぞくとしての資質は無いだろうが、そうであっても霊験を授かっておる。我々の森に入って行者殿は本当に余計な行いを…」
「眷属…、お主は神の一族なのか?」
狼は少し地面の匂いを嗅いだ後で「人間共が妖怪と呼ぶか、神と呼ぶかはその時々だろう」はぐらかすように言った。
「それでは何なのだ…?」
「さりとて腹は減る」
そう言って少し狼は源之進に近づいて来た。
「貴殿と同じだろう…?」
八の字を描くように歩き回り、妖気を強めながら狼は更に近づいて来た。
「わわ…わしを食う気か?」
「人間のままなら食いでもあろう、我も力を持って長生きをして来たからな。この力のおかげで飯を食うのが少々と遅れても安生だ」
「そうか、ならばこれでお暇しよう」
狼は実体を伴っており、霊体姿の源之進に触れられるかは判然としない。それでも、半身を翻して、背中を向けながら後退しようとした時に狼は続けて言った。
「だから、そろそろ食いたいと思っておったぞ」
その瞬間に狼の体は信じられない跳躍を見せ、全速力で源之進に襲いかかる。対する源之進も突発的に逃げの態勢となって、霊体としても走りづらい人間の姿で、崖上に飛び去ろうとしている。
この時の源之進はあくまで霊体であって、単なる意識体ではない。自力で自分の体に戻らなければならない。
しかし、それも狼相手では不利と見て、咄嗟に同じ狼に化けて、全速力で逃げ去ったのだった。
こうして過去の思念世界から命からがら逃げ伸びたのである。
「この嫌な気配は、あの狼に間違いないな」
以来、その場所には近づかなかった。あれからは一度も遭遇する事なく、源之進はお堂で住職として過ごしたので、この窮地に一生も忘れていた。しかし、山を下りてからというもの、あの狼は数十年に一度、源之進の前に現れて不吉な視線を向けるのだった。
「そこの牢人、邪魔だよ!」
立ち止まっていると後ろから旅人に怒られてしまった。一言「すまん」と謝れば、また歩を進めて行く。
(この人混みの中では例え奴でも襲えはしないだろう)
そう思い直して進む源之進を、追いかけている存在が一匹と、もう一人いる。
この先の気賀宿では関所を通過しなければ渡し船に乗れない。いつもなら関所をくぐるつもりはさらさらないが、どうしても関所破りをするには山間の村落を経由しなければならず、それでは遠くて料理屋もないので、ここばかりはしょうがない。
少し早く着いたとしても船に乗れるかは不明だったけれど、料理屋と酒は逃げたりしない。
「わしの遊郭への道は誰にも邪魔させはしないぞ」
余りにも人界で暮らす時間が長かった。人間を化かすのは妖怪の特技だが、これまで人間界にあって力を維持できたのは、山での修行で覚醒した霊験の賜物だ。この力が続く限り命も長らえるのだが、ここ数年の弱体化は激しい。
折も悪く惣兵衛に霊験を分け与えたので浪費もひとしおだ。ここらで一度、修験の道に舞い戻って、名のある霊山で霊験を改める必要がある。
しかし、そんな厳しい暮らしに戻るには先立つ物がいる。つまりはそれが酒と女であり、どうせならば江戸の遊郭が良いのだった。
「寂滅への第一歩だ!」
周囲の目をはばかることなく、源之進は一人で叫んだ。
「あの惣兵衛とかいう若人は無事に京都に帰り着けるかな?やはり、少しは銭を持たせればよかったな。まぁ…、仕方ないか」
化け妖怪の源之進は惣兵衛を化かした時とは異なる容姿であった。年齢は同じくらいだが顔を変えている。よっぽど遊郭に急いでいるようで、飛脚も顔負けの走力で山間を走り続け、峠の下り道では役人の馬と並走しているほどであり、周りの通行人が目を丸くして驚いている。
「懐が暖かいと力が沸いてくるな」
ご機嫌な源之進は肉体の衰えとは裏腹に、茶屋娘に銭を恵む程に優雅な心持ちだった。
惣兵衛に話したとおり、彼は在りし日に水軍に属していた。昔の仲間が皆死んでしまってからは心の隙間を埋めるために、世の為になる生業を営みたかったが、彼にとって群れるという事はすなわち、いつかの別れである。
それを避けたくて一人で馴染みを作らない生活を選んだのであった。
それでも人の温かみを覚えた妖怪は感情的には人間そのもので、海賊あらため水軍時代の欲深い生活の依存症になっている。せっかくの霊験を弱めると分かっていても、それを完全に振り切る英断は難しかった。
東海道の三河の辺りで海で行き交う船を見ると昔を思い出す。
「あいつらの血筋の中にわしの知る者が居るかな?それにしても、わしならもっと 船を上手に動かすのだがな…」
こう思いつつ走るけれど、多少の疲労を覚えてきている。
実は惣兵衛を刀の鞘で殴り倒した時、かなり危ない命の瀬戸際であった。意図せずに殺しかけていたのだ。危うい所で修行によって体得した肉体を癒す霊験によって、治癒に漕ぎつけたのだが、そのせいで源之進の力は弱まっている。
「一刻も早く遊郭で豪遊するのだ」
しかし、俗物の塊その一心で走っている。
「せめて日暮れまでに気賀宿きがまでは辿り着きたいところだな」
森に囲まれた街道には他にも通行人が多数いるが、誰も源之進の脚力に仰天している。
その時、不意に源之進は足取りを止めた。山中の奥から何かが、こちらを見ている気配がする。
「この妖気は…」
源之進は気配を追ってキョロキョロと辺りを見渡す。
人間では捉える事は望めない程に暗く遠い山中に、集中して目を凝らすと四足歩行の生き物がこちらを睨みつけていた。
「おのれ、匂いを嗅ぎつけて来たのか?」
それは気が遠くなるほど過去の事である。
あれは四百年以上前、お堂での小坊主としての修行も終わって、源之進は住職であった父の代わりを担いだしていた。あの日、突発的に目覚めた神通力によって、限られた範囲ではあるが千里眼の力を持っていた源之進は、霊体の姿で崖下にある父の思念を追って、あの狼を発見したのであった。
凄まじい妖気を放っており、異界の口から来た存在だと分かる。
それは普通の狼ではなかった。深い森の中でこちらの存在に気付くと人間が近づいて来たと思ったかのように警戒し、しかし、それが仮の姿である事にすぐに気付いたようだ。
本来は見えるはずのない源之進を、感情の読めない複雑な眼で凝視している。
「人間に化けているとは珍妙なる奴だ。霊体なれど貴殿は異界の住人だな」
深淵から響くような声で狼は話した。
「ふむ…、同じく人語を解する主こそ本当に狼なのか?」
源之進の返答に狼は笑みを浮かべながら答える。
「どうしようもないほど人間の匂いがする。もはや眷属けんぞくとしての資質は無いだろうが、そうであっても霊験を授かっておる。我々の森に入って行者殿は本当に余計な行いを…」
「眷属…、お主は神の一族なのか?」
狼は少し地面の匂いを嗅いだ後で「人間共が妖怪と呼ぶか、神と呼ぶかはその時々だろう」はぐらかすように言った。
「それでは何なのだ…?」
「さりとて腹は減る」
そう言って少し狼は源之進に近づいて来た。
「貴殿と同じだろう…?」
八の字を描くように歩き回り、妖気を強めながら狼は更に近づいて来た。
「わわ…わしを食う気か?」
「人間のままなら食いでもあろう、我も力を持って長生きをして来たからな。この力のおかげで飯を食うのが少々と遅れても安生だ」
「そうか、ならばこれでお暇しよう」
狼は実体を伴っており、霊体姿の源之進に触れられるかは判然としない。それでも、半身を翻して、背中を向けながら後退しようとした時に狼は続けて言った。
「だから、そろそろ食いたいと思っておったぞ」
その瞬間に狼の体は信じられない跳躍を見せ、全速力で源之進に襲いかかる。対する源之進も突発的に逃げの態勢となって、霊体としても走りづらい人間の姿で、崖上に飛び去ろうとしている。
この時の源之進はあくまで霊体であって、単なる意識体ではない。自力で自分の体に戻らなければならない。
しかし、それも狼相手では不利と見て、咄嗟に同じ狼に化けて、全速力で逃げ去ったのだった。
こうして過去の思念世界から命からがら逃げ伸びたのである。
「この嫌な気配は、あの狼に間違いないな」
以来、その場所には近づかなかった。あれからは一度も遭遇する事なく、源之進はお堂で住職として過ごしたので、この窮地に一生も忘れていた。しかし、山を下りてからというもの、あの狼は数十年に一度、源之進の前に現れて不吉な視線を向けるのだった。
「そこの牢人、邪魔だよ!」
立ち止まっていると後ろから旅人に怒られてしまった。一言「すまん」と謝れば、また歩を進めて行く。
(この人混みの中では例え奴でも襲えはしないだろう)
そう思い直して進む源之進を、追いかけている存在が一匹と、もう一人いる。
この先の気賀宿では関所を通過しなければ渡し船に乗れない。いつもなら関所をくぐるつもりはさらさらないが、どうしても関所破りをするには山間の村落を経由しなければならず、それでは遠くて料理屋もないので、ここばかりはしょうがない。
少し早く着いたとしても船に乗れるかは不明だったけれど、料理屋と酒は逃げたりしない。
「わしの遊郭への道は誰にも邪魔させはしないぞ」
余りにも人界で暮らす時間が長かった。人間を化かすのは妖怪の特技だが、これまで人間界にあって力を維持できたのは、山での修行で覚醒した霊験の賜物だ。この力が続く限り命も長らえるのだが、ここ数年の弱体化は激しい。
折も悪く惣兵衛に霊験を分け与えたので浪費もひとしおだ。ここらで一度、修験の道に舞い戻って、名のある霊山で霊験を改める必要がある。
しかし、そんな厳しい暮らしに戻るには先立つ物がいる。つまりはそれが酒と女であり、どうせならば江戸の遊郭が良いのだった。
「寂滅への第一歩だ!」
周囲の目をはばかることなく、源之進は一人で叫んだ。
0
あなたにおすすめの小説
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
花嫁
一ノ瀬亮太郎
歴史・時代
征之進は小さい頃から市松人形が欲しかった。しかし大身旗本の嫡男が女の子のように人形遊びをするなど許されるはずもない。他人からも自分からもそんな気持を隠すように征之進は武芸に励み、今では道場の師範代を務めるまでになっていた。そんな征之進に結婚話が持ち込まれる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末
松風勇水(松 勇)
歴史・時代
旧題:剣客居酒屋 草間の陰
第9回歴史・時代小説大賞「読めばお腹がすく江戸グルメ賞」受賞作。
本作は『剣客居酒屋 草間の陰』から『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』と改題いたしました。
2025年11月28書籍刊行。
なお、レンタル部分は修正した書籍と同様のものとなっておりますが、一部の描写が割愛されたため、後続の話とは繋がりが悪くなっております。ご了承ください。
酒と肴と剣と闇
江戸情緒を添えて
江戸は本所にある居酒屋『草間』。
美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。
自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。
多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。
その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。
店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。
【完結】ふたつ星、輝いて 〜あやし兄弟と町娘の江戸捕物抄〜
上杉
歴史・時代
■歴史小説大賞奨励賞受賞しました!■
おりんは江戸のとある武家屋敷で下女として働く14歳の少女。ある日、突然屋敷で母の急死を告げられ、自分が花街へ売られることを知った彼女はその場から逃げだした。
母は殺されたのかもしれない――そんな絶望のどん底にいたおりんに声をかけたのは、奉行所で同心として働く有島惣次郎だった。
今も刺客の手が迫る彼女を守るため、彼の屋敷で住み込みで働くことが決まる。そこで彼の兄――有島清之進とともに生活を始めるのだが、病弱という噂とはかけ離れた腕っぷしのよさに、おりんは驚きを隠せない。
そうしてともに生活しながら少しづつ心を開いていった――その矢先のことだった。
母の命を奪った犯人が発覚すると同時に、何故か兄清之進に凶刃が迫り――。
とある秘密を抱えた兄弟と町娘おりんの紡ぐ江戸捕物抄です!お楽しみください!
※フィクションです。
※周辺の歴史事件などは、史実を踏んでいます。
皆さまご評価頂きありがとうございました。大変嬉しいです!
今後も精進してまいります!
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
『五感の調べ〜女按摩師異聞帖〜』
月影 朔
歴史・時代
江戸。盲目の女按摩師・市には、音、匂い、感触、全てが真実を語りかける。
失われた視覚と引き換えに得た、驚異の五感。
その力が、江戸の闇に起きた難事件の扉をこじ開ける。
裏社会に潜む謎の敵、視覚を欺く巧妙な罠。
市は「聴く」「嗅ぐ」「触れる」独自の捜査で、事件の核心に迫る。
癒やしの薬膳、そして人情の機微も鮮やかに、『この五感が、江戸を変える』
――新感覚時代ミステリー開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる