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第二章 盾は何処へ。
まずは復旧と防備。
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森を守ると決めた翌日から我は早速行動に出た。
まずは被害にあったケット・シーの住み処を改善することにした。
この子達の住み処は草木を利用して造られているがそれでは心もとない強度しかない。
そこでミケラが教えてくれた魔空城の成れの果てもとい瓦礫の山を利用することにした。
(ふむ、どうやら天守閣のところだなこれは。)
山を見上げて我はすぐにそう思った。というのも瓦礫の量が少なかったからだ。
魔空城が丸々墜落したのならば今見える量の何十倍も多いはずだ。
どうやら墜落する中で城が崩壊し、自分がいた玉座の間がある部分だけがここに落ちてきたようだ。
その際に我の身体も瓦礫に埋もれ年月が経って劣化や天候の影響から兜が姿を見せたというのが事の始まりなのであろう。
ともかくこの瓦礫の山の石材はケット・シー達の家に利用してあげたい。
しかしこの子達には腕力がないので集落まで運ぶのは苦労するだろうから我の出番だ。
「大魔将軍様、ヒト族の死体をどうするのですか?」
一緒についてきてくれたケット・シーの一体が我にそう尋ねる。
今我の前にはこの前討ち取ったヒト族の遺体が下着のみの姿で積み重なっている。
こいつらはミケラをリーダーにしたケット・シー達が草木と石で作った荷車によって運ばせたものだ。
この荷車も我がミケラ達の祖先に教えてあげたものの1つでしっかり技術を受け継いでいたことは嬉しかった。
正直我1人でも七人いた遺体を運ぶことは出来るがあえて彼女らに運ぶよう指示したのは何でも出来る上司では部下は退屈を感じ怠惰を生むものだからだ。
部下に程よく頼ってこそ嫌われない上司でいられる。
これは我の前の人生から得た持論のようなものである。
「まあ離れて見ておれ。こいつらはこれからお前達の手足となるのだからな。」
我が意味深に告げるとミケラ達は案の定互いに顔を見合せては首を傾げて愛らしい姿をみせる。
彼女らの様子を堪能してから我は死体の山に近づくと右手を前に出し魔法を唱えた。
「【死霊術・生贄召還】!」
魔法を唱えると山を中心に黒い魔方陣が現れれば少ししてまるで底なし沼のようにズブズブと死体が沈んで消えてしまう。
【死霊術・生贄召還】とは死体を利用してアンデッド系モンスターを生み出す魔法だ。
召還されるモンスターは生け贄にした対象のステータスと量で変わる。
魔界時代に死霊術はすでにマスターしているので単純なアンデッド召還もお手のものだがこの魔法は魔方陣を生成するだけの魔力で済む。
それに遺棄して腐らせたり獣に食わせたり火葬して土に還すよりもきっと自然に優しい利用方法のはずだ。
死体の小山が完全に沈んでから魔方陣の外周の文字が時計回りに光り始める。
これは出来上がるアンデッドの時間を示しており長いほど高位のアンデッドが誕生する。
まあ倒した連中は合属魔法を使っていたので低くても中級以上の魔法使いのはずだ。
そいつらを素材に使ったのだから出てくるのは状態異常系を使えるゾンビメイジか良いもので魔法と念動力を扱えるスカルロードとかの魔法使い系アンデッドあたりだろう。
我は予想を立てながら文字が光る速さを測っていた。
感覚的に五秒ずつ進んでいるようなのでゾンビメイジではなくなったので予想を中の上くらいのアンデッド系に絞る。
そして外周の文字が全て光るとついに円の中心が真っ黒になりそこから這い出るようにして結果が姿を見せた。
「おおお……んん?」
我は首を傾げてしまった。
出てきたのは全身真っ黒の骸骨が三体。いずれも魔法使い系アンデッドにある外套や杖を身につけていないただの黒い骸骨であった。
(…何故だ?何故〈ブラックスケルトン〉が?しかも三体も?)
ブラックスケルトンとはスケルトン系の上位種で闇属性が蓄積されたことで色が黒くなったモンスターだ。
ただ黒くなっただけではなく闇属性によって強度やステータスが上がっており通常のスケルトンと比べればなんと約十倍も差があるのだ。
だから見た目に反して力もあり、おそらく一体でケット・シー十匹以上はあるだろう。
魔法使いは手に入らなかったが労働力は確保できた。
しかしここまでで疑問がある。
あれほど高位の魔法を使ってきた連中を生け贄にしたのに召還されたのは違うタイプになったことが我は気になった。
「うにゃあ!?スケルトンだ!」
「顔が怖いみゃあ!」
「襲ってこないよね!?」
しかしケット・シー達の動揺に我ははっと帰ると皆を静めた。
「心配するなお前達。こいつらは我の命令以外では動かん。これから始まる工事の為の労働力として使うのだ。」
ケット・シー達に告げてから証明する為に我はブラックスケルトンに整列を命令する。
命令を聞いたブラックスケルトンはケット・シー達の前で足踏みを揃えて横一列に並ぶと直立の態勢で止まる。
そこからほんのちょっとの遊び心でブラックスケルトン達に三回ほど組体操をしてみせケット・シー達から拍手をもらった。
動作をちゃんと確認したところでブラックスケルトン達にはケット・シーの指示に従い作業するよう命令した。
「余興はここまでだ。これよりここにある石材を集落まで運ぶ。各員の活躍と健闘を期待する!」
『にゃにゃあ!』
こうしてミケラ達とブラックスケルトンによる石材運搬が始まった。
大小ある石材をミケラ達が見事な連携プレーで荷車に積むとブラックスケルトン一体が向こうで降ろす為のケット・シー達も乗せて集落に戻るという作業が繰り返されるのを見越して我は先に集落へ移動することにした。
「【次元転移】。」
手の平を前に向けて唱えれば目の前に魔方陣が現れそれに向かって歩けば一瞬の暗転から集落が視界に見える。
【次元転移】は高位の魔族が使える魔法で事前に設置した魔方陣へと転移することが出来る。
転移した我は長老に掛け合いこれからやってくる者について説明してから別れると集落の片隅に移動する。
(さてと、次はこいつを調べるか。)
我の足元にはケット・シー達に集めてもらったヒト族が装備していた武具が並んでいる。
防具の形状と肩部分にある塔を描いたマークからしてこの大黒林と呼ばれるようになった森林から南にある小国ハコダンテの軍が使っていたものに似ている。
防具については半世紀前と変わらずだが武器に関して知らないものがいくつかあった。
調べると【簡易魔法装備】という初めて聞く名前と共に解説を読む。
この装備は杖の内部に魔方陣が刻み込まれており魔力を注ぐと自動的に魔法が発動出来るという半世紀前では考えつかない画期的な仕組みであった。
(そう、あいつ以外は無理だと決めつけていた設計であったな。)
しかし我はこの仕掛けを知っていた。
勇者の仲間の一人である魔法科学者が平民でも生活に小さな魔法を使えるようにと設計図まで書いていたし、勇者に見せて夢を語っていたのも知っている。
なんで知っているかについては追々話すとして、次に隊長格が背負っていた装置を調べた。
装置の名前は【合属魔法装置】と呼ばれるものでこれも難しい合属性魔法を簡易に発動させる為の装置だが、我は知らないものであった。
(半世紀の間に技術が進歩しているようだな。やつもきっとはみ出し科学者から教授にまで上り詰めているのであろう。)
そしてここで一つの仮説が浮かんだ。
この技術ならば低位の魔法使いでも簡単に中位の魔法が扱えるようになれる。
つまり先ほどの死霊術で何故結果がブラックスケルトンだったのかは生け贄にしたヒト族の魔力量が腕の立つ者ではなく通常の魔法使いかより低かったのではないかという仮説だ。
そう考えると魔法使い系アンデッドが生まれなかった理由についても納得がいく。
(ま、それは追々調査するとしよう。)
とりあえずこれは今後の為に保管しておこうと思い我は【異空間倉庫】と唱えれば空中に黒い楕円形が現れそこに装備をまとめて投げ入れるとすぐに消えた。
この魔法も名前の通り異空間にモノを収納できる便利な魔法の一つである。
鑑定を終えると我は再び集落の元長老の家に向かう。
ここでも現在工事が行われている。
緊急時の非難用の穴を拡張させ別の居住区を作る予定だ。
「長老、経過は順調か?」
「はい大魔将軍様。あなた様からいただいた道具のおかげで今までにないくらい進んでおります。」
一礼してから伝える長老の言葉通り穴の奥や穴の周囲ではケット・シー達が楽しげに作業していた。
彼らの手には金属製のスコップにツルハシがあり、さらには土木工事用の一輪車を押す者もいた。
これらは全て我の【異空間倉庫】から出したものだ。
改めて言わせてもらおう。我は彼らが好きだ。
前の人生でも猫が好きだったので魔界で初めてケット・シーに出会った時には会話できる猫に会えたことに感動したものだ。
しかし魔界ではケット・シーはゴブリンより知性がある程度の扱いを受けていたので貧しい思いをしていた。
だからこそ我はこの子達を保護してあげようと決め警護してあげた。
その結果が敵を倒し続けてダークジェネラルへと進化することになったのは我個人の秘密である。
というわけでケット・シー達用の道具は一通り量産して倉庫に入っている。
今のこの子達にとっては初めて見る道具だったらしく最初は不思議そうに見ていたが、軽く教えてあげると理解しその効率の良さに喜んでくれた。
ケット・シー達が拡張した穴に石材を使って補強しさらに穴の周囲も石を積んで建物を造ることで見た目には大きめの一軒家だが地下には蟻の巣みたいな居住区という安全な場所を造りたいものだ。
その為にはもっと石材がいると思い現場を任せて我はゆっくりと地面から足を離し空へと浮かんだ。
見上げる長老やケット・シー達に見送られながら地面からある程度距離を離すと一気に上昇し森を抜け出してから止まる。
自分の記憶よりさらに広大になっているように見える森林の中から墜落した魔空城を探すのは少し骨が折れそうだがケット・シー達の安全を確保する為にもと意気込んでとりあえず森林の端まで一直線に飛んでみることにした。
すると途中で森の中に木々がない開けた場所が視界の左に見えたので急カーブして確かめに向かった。
開けた場所の中心にはまた石の山がありこれもおそらく城の一部であろう。
これも利用する為にまずは絡まった蔦や生えた木を処理しよう。
「悪く思うなよ。【漆黒の火炎】!」
左手を前に出して唱えれば手の平から名前の通りの黒い炎が放射状に吹き出し石以外を数秒で焼き払う。
炎が消火してから我は大小の石を【異空間倉庫】へとポイポイ投げ入れた。
これは後で石積みが始まってからケット・シー達が回収した石の量が半分を切ったあたりからひっそり足してあげるとしよう。
一気に出して称賛をもらうのも悪くないがそれで頼られては意味がない。
この大黒林に守護神ありと周知させ外敵を寄らせないにするには時に我がケット・シー達と離れて行動する時も出てくるはずだ。
(ふむ、そう考えるとここはケット・シー達の絶対的なリーダーが必要になってくるか……。)
まずは被害にあったケット・シーの住み処を改善することにした。
この子達の住み処は草木を利用して造られているがそれでは心もとない強度しかない。
そこでミケラが教えてくれた魔空城の成れの果てもとい瓦礫の山を利用することにした。
(ふむ、どうやら天守閣のところだなこれは。)
山を見上げて我はすぐにそう思った。というのも瓦礫の量が少なかったからだ。
魔空城が丸々墜落したのならば今見える量の何十倍も多いはずだ。
どうやら墜落する中で城が崩壊し、自分がいた玉座の間がある部分だけがここに落ちてきたようだ。
その際に我の身体も瓦礫に埋もれ年月が経って劣化や天候の影響から兜が姿を見せたというのが事の始まりなのであろう。
ともかくこの瓦礫の山の石材はケット・シー達の家に利用してあげたい。
しかしこの子達には腕力がないので集落まで運ぶのは苦労するだろうから我の出番だ。
「大魔将軍様、ヒト族の死体をどうするのですか?」
一緒についてきてくれたケット・シーの一体が我にそう尋ねる。
今我の前にはこの前討ち取ったヒト族の遺体が下着のみの姿で積み重なっている。
こいつらはミケラをリーダーにしたケット・シー達が草木と石で作った荷車によって運ばせたものだ。
この荷車も我がミケラ達の祖先に教えてあげたものの1つでしっかり技術を受け継いでいたことは嬉しかった。
正直我1人でも七人いた遺体を運ぶことは出来るがあえて彼女らに運ぶよう指示したのは何でも出来る上司では部下は退屈を感じ怠惰を生むものだからだ。
部下に程よく頼ってこそ嫌われない上司でいられる。
これは我の前の人生から得た持論のようなものである。
「まあ離れて見ておれ。こいつらはこれからお前達の手足となるのだからな。」
我が意味深に告げるとミケラ達は案の定互いに顔を見合せては首を傾げて愛らしい姿をみせる。
彼女らの様子を堪能してから我は死体の山に近づくと右手を前に出し魔法を唱えた。
「【死霊術・生贄召還】!」
魔法を唱えると山を中心に黒い魔方陣が現れれば少ししてまるで底なし沼のようにズブズブと死体が沈んで消えてしまう。
【死霊術・生贄召還】とは死体を利用してアンデッド系モンスターを生み出す魔法だ。
召還されるモンスターは生け贄にした対象のステータスと量で変わる。
魔界時代に死霊術はすでにマスターしているので単純なアンデッド召還もお手のものだがこの魔法は魔方陣を生成するだけの魔力で済む。
それに遺棄して腐らせたり獣に食わせたり火葬して土に還すよりもきっと自然に優しい利用方法のはずだ。
死体の小山が完全に沈んでから魔方陣の外周の文字が時計回りに光り始める。
これは出来上がるアンデッドの時間を示しており長いほど高位のアンデッドが誕生する。
まあ倒した連中は合属魔法を使っていたので低くても中級以上の魔法使いのはずだ。
そいつらを素材に使ったのだから出てくるのは状態異常系を使えるゾンビメイジか良いもので魔法と念動力を扱えるスカルロードとかの魔法使い系アンデッドあたりだろう。
我は予想を立てながら文字が光る速さを測っていた。
感覚的に五秒ずつ進んでいるようなのでゾンビメイジではなくなったので予想を中の上くらいのアンデッド系に絞る。
そして外周の文字が全て光るとついに円の中心が真っ黒になりそこから這い出るようにして結果が姿を見せた。
「おおお……んん?」
我は首を傾げてしまった。
出てきたのは全身真っ黒の骸骨が三体。いずれも魔法使い系アンデッドにある外套や杖を身につけていないただの黒い骸骨であった。
(…何故だ?何故〈ブラックスケルトン〉が?しかも三体も?)
ブラックスケルトンとはスケルトン系の上位種で闇属性が蓄積されたことで色が黒くなったモンスターだ。
ただ黒くなっただけではなく闇属性によって強度やステータスが上がっており通常のスケルトンと比べればなんと約十倍も差があるのだ。
だから見た目に反して力もあり、おそらく一体でケット・シー十匹以上はあるだろう。
魔法使いは手に入らなかったが労働力は確保できた。
しかしここまでで疑問がある。
あれほど高位の魔法を使ってきた連中を生け贄にしたのに召還されたのは違うタイプになったことが我は気になった。
「うにゃあ!?スケルトンだ!」
「顔が怖いみゃあ!」
「襲ってこないよね!?」
しかしケット・シー達の動揺に我ははっと帰ると皆を静めた。
「心配するなお前達。こいつらは我の命令以外では動かん。これから始まる工事の為の労働力として使うのだ。」
ケット・シー達に告げてから証明する為に我はブラックスケルトンに整列を命令する。
命令を聞いたブラックスケルトンはケット・シー達の前で足踏みを揃えて横一列に並ぶと直立の態勢で止まる。
そこからほんのちょっとの遊び心でブラックスケルトン達に三回ほど組体操をしてみせケット・シー達から拍手をもらった。
動作をちゃんと確認したところでブラックスケルトン達にはケット・シーの指示に従い作業するよう命令した。
「余興はここまでだ。これよりここにある石材を集落まで運ぶ。各員の活躍と健闘を期待する!」
『にゃにゃあ!』
こうしてミケラ達とブラックスケルトンによる石材運搬が始まった。
大小ある石材をミケラ達が見事な連携プレーで荷車に積むとブラックスケルトン一体が向こうで降ろす為のケット・シー達も乗せて集落に戻るという作業が繰り返されるのを見越して我は先に集落へ移動することにした。
「【次元転移】。」
手の平を前に向けて唱えれば目の前に魔方陣が現れそれに向かって歩けば一瞬の暗転から集落が視界に見える。
【次元転移】は高位の魔族が使える魔法で事前に設置した魔方陣へと転移することが出来る。
転移した我は長老に掛け合いこれからやってくる者について説明してから別れると集落の片隅に移動する。
(さてと、次はこいつを調べるか。)
我の足元にはケット・シー達に集めてもらったヒト族が装備していた武具が並んでいる。
防具の形状と肩部分にある塔を描いたマークからしてこの大黒林と呼ばれるようになった森林から南にある小国ハコダンテの軍が使っていたものに似ている。
防具については半世紀前と変わらずだが武器に関して知らないものがいくつかあった。
調べると【簡易魔法装備】という初めて聞く名前と共に解説を読む。
この装備は杖の内部に魔方陣が刻み込まれており魔力を注ぐと自動的に魔法が発動出来るという半世紀前では考えつかない画期的な仕組みであった。
(そう、あいつ以外は無理だと決めつけていた設計であったな。)
しかし我はこの仕掛けを知っていた。
勇者の仲間の一人である魔法科学者が平民でも生活に小さな魔法を使えるようにと設計図まで書いていたし、勇者に見せて夢を語っていたのも知っている。
なんで知っているかについては追々話すとして、次に隊長格が背負っていた装置を調べた。
装置の名前は【合属魔法装置】と呼ばれるものでこれも難しい合属性魔法を簡易に発動させる為の装置だが、我は知らないものであった。
(半世紀の間に技術が進歩しているようだな。やつもきっとはみ出し科学者から教授にまで上り詰めているのであろう。)
そしてここで一つの仮説が浮かんだ。
この技術ならば低位の魔法使いでも簡単に中位の魔法が扱えるようになれる。
つまり先ほどの死霊術で何故結果がブラックスケルトンだったのかは生け贄にしたヒト族の魔力量が腕の立つ者ではなく通常の魔法使いかより低かったのではないかという仮説だ。
そう考えると魔法使い系アンデッドが生まれなかった理由についても納得がいく。
(ま、それは追々調査するとしよう。)
とりあえずこれは今後の為に保管しておこうと思い我は【異空間倉庫】と唱えれば空中に黒い楕円形が現れそこに装備をまとめて投げ入れるとすぐに消えた。
この魔法も名前の通り異空間にモノを収納できる便利な魔法の一つである。
鑑定を終えると我は再び集落の元長老の家に向かう。
ここでも現在工事が行われている。
緊急時の非難用の穴を拡張させ別の居住区を作る予定だ。
「長老、経過は順調か?」
「はい大魔将軍様。あなた様からいただいた道具のおかげで今までにないくらい進んでおります。」
一礼してから伝える長老の言葉通り穴の奥や穴の周囲ではケット・シー達が楽しげに作業していた。
彼らの手には金属製のスコップにツルハシがあり、さらには土木工事用の一輪車を押す者もいた。
これらは全て我の【異空間倉庫】から出したものだ。
改めて言わせてもらおう。我は彼らが好きだ。
前の人生でも猫が好きだったので魔界で初めてケット・シーに出会った時には会話できる猫に会えたことに感動したものだ。
しかし魔界ではケット・シーはゴブリンより知性がある程度の扱いを受けていたので貧しい思いをしていた。
だからこそ我はこの子達を保護してあげようと決め警護してあげた。
その結果が敵を倒し続けてダークジェネラルへと進化することになったのは我個人の秘密である。
というわけでケット・シー達用の道具は一通り量産して倉庫に入っている。
今のこの子達にとっては初めて見る道具だったらしく最初は不思議そうに見ていたが、軽く教えてあげると理解しその効率の良さに喜んでくれた。
ケット・シー達が拡張した穴に石材を使って補強しさらに穴の周囲も石を積んで建物を造ることで見た目には大きめの一軒家だが地下には蟻の巣みたいな居住区という安全な場所を造りたいものだ。
その為にはもっと石材がいると思い現場を任せて我はゆっくりと地面から足を離し空へと浮かんだ。
見上げる長老やケット・シー達に見送られながら地面からある程度距離を離すと一気に上昇し森を抜け出してから止まる。
自分の記憶よりさらに広大になっているように見える森林の中から墜落した魔空城を探すのは少し骨が折れそうだがケット・シー達の安全を確保する為にもと意気込んでとりあえず森林の端まで一直線に飛んでみることにした。
すると途中で森の中に木々がない開けた場所が視界の左に見えたので急カーブして確かめに向かった。
開けた場所の中心にはまた石の山がありこれもおそらく城の一部であろう。
これも利用する為にまずは絡まった蔦や生えた木を処理しよう。
「悪く思うなよ。【漆黒の火炎】!」
左手を前に出して唱えれば手の平から名前の通りの黒い炎が放射状に吹き出し石以外を数秒で焼き払う。
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これは後で石積みが始まってからケット・シー達が回収した石の量が半分を切ったあたりからひっそり足してあげるとしよう。
一気に出して称賛をもらうのも悪くないがそれで頼られては意味がない。
この大黒林に守護神ありと周知させ外敵を寄らせないにするには時に我がケット・シー達と離れて行動する時も出てくるはずだ。
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