漆黒の大魔将軍は勇者に倒されたはずでした!?

武家桜鷹丸

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第一章 勇者に倒されたはずだった。

自分の人生と我が人生。

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 ーー…勇者に敗れた自分は長い夢を見ていた。
 かつて自分が人間であった頃の夢をだ…。
 自分は平凡な家庭の末っ子に生まれ兄や姉は才能があった。
 しかし自分には全ての才能が中途半端だった。
 何故なら何事も一つを乗り越えるとすぐにやる気を失くしてしまう燃え尽き症候群というやつが出やすい人間だった。
 そんな自分に唯一あった才能。
 それはきっとなことだけであろう。
 いろんな病気やウイルスの話題が出ても、学校で感染が広まっても自分だけは何もなかった。
 だからこそ高校を卒業して転職を繰り返し行き着いた職業で活躍出来ていたのかもしれない。
 最後に勤めていたのはスーパーの店員だった。
 四時間勤務のパートから始めたのだが周りが中高年で大半が女性ばかりなので自分は力仕事が大半だった。
 腕や足腰が辛くなることもあったがそれでも嬉しかったことがある。
 誰かを助ける度、手伝う度に名前と一緒にされることだ。
 当たり前のことかもしれないが、今までこんなに簡単なことでお礼を言われることに自分は経験がなかった。
 何気ない一言であろうともそれが何故か嬉しかった。
 だから自分は頑張った。唯一の取り柄であろう丈夫な身体でやれる仕事はたくさんやったしほぼ皆勤した。
 すると上層部にパートから社員にしてもらい、数年後には部門のリーダーに選ばれた。
 パート時代以上に忙しくなったが、おかげで燃え尽き症候群が全くやってこなくなった。
 いい歳になった頃、今度は店長をやってみないかと話がきて自分は承諾した。
 就任したスーパーは労働環境が悪くて改善しなければならないところが山盛りだった。
 だから自ら率先して改善していった。
 労働時間、作業場、在庫管理などを少しずつ改善していったことで店員の皆のやる気を取り戻し、活気ある店に変えることに年月をかけて成功させた。
 しかし、お店の絶頂期とも言うべき時に自分は店員の皆と急遽お別れすることになった。
 ある日突然、胸のあたりが苦しくなり倒れてしまったからだ。
 医者から告げられたのは心臓の病で余命宣告をされた。
 健康と丈夫さに自信があった自分はショックを受けた。
 だが当然のことなのだ。どれだけ健康に気をつけていようとも、生き物は歳を取り身体が老いて保てるものも保てなくなる。
 だから自分は入院による延命治療は断った。
 最後の時まで家族と一緒に過ごしたかったからだ。
 さらに時が経ち最後を迎える時間がきた日。
 家族に見守られながら薄れる意識の中、ここで終わるのかやこんなに頑張ったのにとかいろいろ思ったが、最後に浮かんだのはすごく単純なことだった。
 生まれ変わったらもっともっと丈夫な身体で才能がある者になりたいなであった。
 ここまでの場面がワンシーンごとに流れていくような夢を見ていた。
 その後で今の人生、大魔将軍の人生の夢を見せられた。



 我は最初ダークアーマー族と呼ばれる中身のない黒い甲冑の魔物だった。
 しかし前世の記憶があった我は驚いた。
 まさか己がファンタジー世界のモンスターになってしまったのだから。
 我がいた魔界はまさに戦国時代と言っていい情勢だった。
 強き者が弱き者達を支配しまた別の強き者に挑む。そうして最後まで勝ち残った者が最終的に魔王となるという世界だった。
 もっと複雑なものだろうと思うだろうが魔界の住人達の仕組みが単純にさせるのだ。
 我を含めこの世界にはなんと〈レベル〉が存在する。
 つまり敵を倒せば倒すほどレベルが上がり大差があれば勝てる見込みすら無くなるのだ。
 我は最初、争いは何もメリットがないと日陰の中を生きる道を選んだ。
 この身体は飲食を必要としないし睡眠もいらない。
 だからはっきり言って疲れ知らずなのだ。
 ただ当時唯一気をつけなければいけなかったのは魔力であった。
 ダークアーマー族は頭にあるコアから魔力を流して甲冑を動かす言うなれば電池式なのだ。
 その魔力が無くなると休眠のような状態に入って動かなくなってしまう。
 この無防備な状態にならないように気をつけながら我は勝手に襲ってくる敵のみを倒していった。
 その期間は人間の年数に変換すると実に百十一年はあったであろう。
 倒した敵ももはや万を越え我は種族の最上位であるダークジェネラルと呼ばれる存在になっていた。
 そこまでくると率いる部下も出来てすっかり名前通りの軍団が構築されていた。
 もはや中小級の魔物にも楽勝な存在となったのだが、それでも我はひっそり生きたかったから自分から攻めるようなことは一切行わなかった。。
 そんな我の前に仕えるべき魔王が現れたのはさらに約三十年後のことだった。
 というところまでで我の夢が終わる。



 ここが死後の世界なのかわからないまま我は多分光の球体でまるで風に乗る綿毛のように浮遊しながら走馬灯を繰り返し見せられていた。
 そして一体いつになったら我という存在が無くなるのだろうと不思議に思ってしまっていた頃だった。
 聞こえてきたのは猫の声だった。しかし我には聞き覚えのある声だった。
 我の僕にして実はお気に入りのケット・シーの声だった。
 どこからともなくケット・シー達のいろんな声と会話が聞こえてきた。
 喜ぶ声、喧嘩して威嚇する声、寂しさを伝える声が聞こえると元気にやっているだろうかと我はしみじみと感じてしまう。
 しかし突然一転として悲鳴一色に変わった。
 何故悲鳴ばかりになったのかわからず、助けを求める声に我は悔しいと思った。
 助けにいけるなら助けたい、しかしもはや自分には助ける力すらないことが悔しくて仕方なかった。
 すると次の瞬間、赤紫色の光が上から自分へと降り注ぐ。

『…大魔将軍……こっちです…』

 光の方から女性の声が聞こえた。
 我はこの声を知っていた。知っていたからこそ意思の力で光に向かって移動しようと試みた。
 そしたらむしろ光の方へと吸い込まれるようにして球体が動いてくれた。
 我はそのまま光の中に 入り視界が薄紫一色になってから少ししてぱっと視界が変わった。
 崩れた家、燃える草木、そして蛮行をやったであろうヒト族の連中が最初に見えた。
 これもまた夢かと思った。
 まるで時間が逆戻りでもして愚かにも侵略してきたヒト族の掃討をする場面を見せられているのかと。
 しかし後ろで我の名を呼び懸命に助けを求めるケット・シーの言葉が聞こえた時、一旦考えるのをやめた。
 これが過去にあった記憶の一場面であろうとも弱者を虐げるしか出来ないこの愚か者共にまずは裁きの鉄槌を下してやろうと気持ちを切り替えた。

「な、何の冗談だ…お前は、一体何者だぁ!?」

 無礼にも我を指差して聞いてくるヒト族。
 どうやらまだ認知度が低かった頃の記憶なのだと推理しながらここは一つ相手を威圧する為に言い放ってやろう。

「我は、我は漆黒の大魔将軍なり!弱き者達の声に応え、愚か者を屠る者である!」
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