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第九章 悪役とは。
堂々と、効率的に、一方的に。
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『ーー…メディア、見事な狙撃であったぞ。』
『ありがとうございますご主人様。すぐに合流いたします。』
【念間話術】でメディアと通話しながら我は砂漠の上の歩く。
右に砂漠地帯の旅装姿のエイムとシャッテン、左にオガコとラオブ。
更に上空には雲を消してくれたゾドラ、後方にはエルフェンとプルパ率いる大地の守り人軍がいる。
ただエルフェンらは今回戦うことはない。
ざっと一万はありそうな軍勢を相手にこちらは後で合流するメディアを含め総勢七体で相手することになっている。
最後に復活してからこれまでにないくらいの大勢力を相手にするので申し訳ないがミケラはオサカの街で留守番している。
「くくく、今までにないくらいオモチャの山じゃの。あれなら妾の製作途中の芸術品が完成出来そうじゃ。」
「はいはい、ゴーレムに関しては好きにしろ。もっとも、残せればの話だがな。」
意気揚々としているシャッテンにそう告げれば我は改めて正面を見る。
先頭を量産型ゴーレムでガチガチに固めているつもりでいる連中の考えはわかる。
大方こちらがけしかけるだろう大軍を防いでみせる自信の表れだろう。
それが向こうにとっての最初の失敗だ。
中途半端な大きさで動きの遅いゴーレムを先頭に出したことで歩兵は視界を遮られているはず。
さらに探知機は大破したはずなのでより我々の動きを予想するのは難しいことだろう。
「では作戦を開始する。始めよラオブ。」
「承知しました。」
指示を伝えてあげたラオブは早速自身の前に風属性の魔方陣を展開させつむじ風を発動させる。
つむじ風は徐々に渦となり砂漠なので砂も巻き込んで成長していけば巨大な砂嵐となって敵前線へと襲いかかる。
無論この程度では結界等で大した被害は出せない。
砂嵐はあくまでも前線の敵への目潰しだ。
「お待たせしました御主人様。」
砂嵐が敵前線を襲っている間にメディアが到着してくれたので更にエイムとオガコを呼ぶと再び【念間話術】を使う。
『エイム、オガコ、ゾドラ、メディア。久しぶりにやるぞ!フォーメーション〔MMID〕だ。』
「オッケー!」
「よっしゃあ!久しぶりに粉砕してやるぜ!」
『旦那様の仰せのままに。』
「我が主を阻む者に無慈悲を…。」
ザザッ!とすぐ近くにきて意気込みを見せるエイムとオガコ、冷静に返し魔銃槍を構えるメディアと上空から返してくるゾドラ。
こういうやり取りとこの作戦をこの世界で使うのも十年と復活までの五十年を足して六十年ぶりになるかもな。
あの時も数ばかりの軍勢に時間と兵を使いたくなかったからと遠距離攻撃を得意とする眷属二十名を集め一気に全滅してみせたものだ。
今回はこちらの数は少ないが全員が最上位級なので大差はない結果となることを願う。
「え?え?何をするのだ大魔将軍?」
「お前も大技を用意しとけシャッテン。【鎧変形・一斉射撃】!」
スキルで鎧を変形させれば両肩に大型二門、両上腕とふくらはぎあたりに中型それぞれ二門、左右の腰に小型三門の計十六門。
そして漆黒の大盾を固定式重機関砲に変形させたのを持った出で立ちになった我は砂地に両足を足首まで埋める。
エイムは空へ両手を上げ左右に開くように動かすと火、風、土属性の魔方陣を展開し合属魔法の準備に入る。
オガコは先に支援魔法を使いこちらの魔法攻撃力を上昇させると自身の得物を肩に乗せ二段階目へと変形させて魔力を練り始める。
メディアは下半身でとぐろを巻いて安定させると魔銃槍を構え射撃の準備に入る。
ゾドラも空で火属性と闇属性の魔方陣を六つも展開させ複合する。
そしてシャッテンも全て理解はしていないが闇属性の魔方陣を自身の真上に展開した。
「総員!我の合図で放て!」
魔力を砲身へと充填させていきながら言えば各々もスキルを放つ準備を始める。
そして全ての火器に魔力の充填を終えた我は言った。
「消し飛べ!【漆黒の弾嵐】!!」
我の全砲による一斉掃射を合図に他の者らも後に続く。
「いっけー!【メテオレイン】!」
「おお!【蒼鬼炎斬】!!」
エイムは合属魔法で生み出した大量の燃え盛る岩を山なりに放って降らしてやり、オガコは青く燃え上がる斧を横一線に振って円盤状の斬撃を放つ。
「塵になりなさい、【邪龍の息吹き】。」
「外さない、【眼銃・炸裂】。」
空にいるゾドラは邪炎の火球を連射し、メディアは素早く引き金を数回引いて射撃する。
「ぬぬぬ【シャドウバースト】!」
そして回りに遅れて最後にシャッテンは影魔法の中級範囲魔法である簡単に言うなら影の花火玉を飛ばしてみせた。
こちら側の攻撃がラオブの作った砂嵐を貫通して敵陣営へと届いた数秒後に砂漠地帯で大爆発…というか映画で言うところ複数の爆発からの核爆発みたいなのが起きキノコ雲が上がった。
爆発による爆風で逆にこちらへと砂塵が舞ってきたので回りを含めて障壁を展開させ防いであげながら形態を戻して向こうの様子を見る。
さすがは我を含めた大ボス達による一斉攻撃。ここまでの大大爆発を見れるとは爽快である。
しかも場所が砂漠地帯なので自然破壊とか気にしないで済むから全く心が痛まない。
爆発の中で結界が割れる音も聞こえてきたので間違いなく敵前線に大ダメージを与えられたことだろう。
「メディア、被害の程は?」
「はい御主人様。確認したところ敵陣営の約三割の生命反応が消失しました。」
爆煙と砂塵で視認できない中でも偵察可能なメディアに尋ね成果を聞く。
三割も削れたならば今頃前線は大混乱であろう。
ちなみにフォーメーションMMIDとは[マジで面倒くさいから一気にデストロイ]の略称である。
だがここで手を止めるつもりはない。
何故ならこちらは悪役なのだからである。
『ゾドラ、上から何が見える?』
『はい、工場が強力な結界によって無事なのが見えます。』
まずは【念間話術】で上空にいるゾドラに工場の様子を尋ねて聞けば工場全体は無事なのだと返事が返ってくる。
さすがは戦う場所に選んだだけあって防衛力だけは立派なものらしい。
ならば結界を出している間に前に出るだけだ。
「ちょっとちょっと大魔将軍や!あれじゃあ妾のおもちゃが残らないではないどすか!?」
「そう怒るなシャッテン。消し飛んだのは前線のゴーレムだけだし、工場全体は無傷のようだぞ。」
爆発の規模を見て不満を口に出してきたシャッテンを宥めながら前に出ることを決め皆に指示を伝える。
「エイム、向こうまで我々の足になってくれ。ゾドラは引き続き上空から援護を。」
指示に二体が返事すればエイムは姿形を変化させて前世で言うところのコンテナハウス並の大きなサソリに成ってみせる。
そのエイムに我とオガコとメディア、呼び掛けにすぐ来てくれたラオブはすぐに飛び乗った。
我々が乗ったところで尋ねる前に自力で行くと言って先に向かったシャッテンを追いかけるようにエイムは前進を始めた。
工場へと向かっている間に我はオガコとメディアに指示する。
「よいか?オガコとラオブは前線近くにいたはずの雑魚狩りを。メディアは我とエイムでパーティーを組みロサリオ騎士団の生き残りを叩く。奴らの戦法は覚えているな?」
「おう!もちろんだぜ親分!」
「ぬかりはありません。敵の装備に関してもしっかり記憶しております。」
「うむ、ならば必ず組んで行動せよ。戦果を期待している。」
短めに話を済ませるとエイムから砂塵の中に入るよと言われたので我は二体と一緒に入れるくらいのドーム状の結界を展開させる。
少しの間砂塵を防いでから抜けると視界いっぱいにゴーレムの残骸と人間族の死骸が砂地の上に転がっていた。
すると前方からシャッテンのうひゃあっ!?という悲鳴っぽい声が聞こえてきたので見ればオガコと一緒に声を漏らす。
何故ならシャッテンの頭上を遥かに越えて光属性を発する網がしかも三つ展開されており今にも彼女を捕らえようとしていた。
「拘束魔法かあれは?」
「そのようです。装置が砂の中にあります。」
さながら投網に掛かる魚になってしまおうとするシャッテンを前方に装置を見つけたメディアには狙撃を、エイムには救出を命令した。
命令にすぐにメディアは魔銃槍を構えて引き金を三回引いて射撃する。
放たれた三つの弾丸は飛んで砂の中に消えると三つの小さな爆発が起きて光属性の網が消滅した。
その前にエイムはサソリの左手のハサミをロープが付いたロケットパンチみたいに真っ直ぐ伸ばしてみせる。
伸びたハサミは背後からシャッテンを捕らえると伸縮してその場から脱出させてあげてみせる。
「はぐぅっ!?何すんでありんすかバカスライム!妾を挟むなんて無礼な!」
「うるさいなぁ。引っ張ってあげなきゃ罠に嵌まるところだったじゃん。大人しく乗っててよ。」
挟まれたまま文句を言うシャッテンに呆れるようにエイムは返すと我の隣へと降ろした。
まあ罠に掛かる前にメディアが装置を破壊してくれたのだが、口には出さないでおこう。
正直言ってあれほど大型の拘束魔法に捕らえられたらいくらシャッテンでも抜け出すのに十数分くらいはかかりそうだったからな。
「おいエイム、砲撃が来てるぜ。」
そこでオガコが右手で軽く空を指差して教えてくれたので見れば色とりどりの砲弾が飛んできていた。
前回のような無属性のみというわけではないのでさすがに【魔法反射壁】では全てを防ぎきれない。
「ゾドラ、撃ち落とせ。」
『はい旦那様。』
なのでゾドラに指示すると少しして上から砲弾を正確に何かが貫くと昼間に花火が咲いた。
轟音が響く中、花火の下を通り抜けてからエイムに止めてもらうと皆と一緒に砂地へ降り立つ。
視界にはゴーレムの残骸や歩兵の死骸が転がっており、かろうじて生きている者は何が起きたわからないという感じで場は大混乱していた。
「では、行動を開始せよ。」
そんな者らへとこちらは一方的に討ち取りを始める。
意気揚々とオガコは両手斧を振るって粉砕と両断を繰り返し、ラオブは魔法で、シャッテンはゴーレムの残骸を使ったりして歩兵を倒していく。
その光景を横目に我は元に戻ったエイムとメディアを連れて散歩するように前進する。
ここまでくると砲弾も外壁にあるガトリングも誤射を恐れて使いずらいことだろう。
ならばどうするかと言えばとても簡単な話だ。
「…御主人様。右側に十人、左側に十四人です。」
「お出まし、ということだな。」
メディアが小さく伝えてくれたので我はそこで足を止める。
次の瞬間、ゴーレムの残骸の中から飛び出す形で十人の騎士が剣や槍等の武器を振りかぶって現れ、立ち上がる形から七人の魔法使いが光属性の魔方陣を展開させる。
「【眼銃】・円射…。」
「そおれ【グラビティプレッシャー】。」
しかしメディアが神眼を開きくるりと回りながら細く散らばる光線を放つと受けた騎士や魔法使いは麻痺の状態異常に陥り、すかさずエイムが闇属性魔法による重力波をドーナツ状に発動させて地面に敵を押さえつける。
そこをすかさず我とメディアは射撃で魔法使いから先に討ち取り次にエイムが雷撃で騎士らを感電死させる。
こちらが言う前に対応してくれるなんて本当に頼りになる眷属らよ。
それにしてもロサリオ騎士団も質が落ちたものだ。
数と道具に任せて無闇に攻めようなんてちゃんと訓練しているのか?
まあ他よりちょっとレベルが上程度のしかも人間族だけの騎士団では我々と大差があるのは仕方ないか。
「すぅ…どうしたぁ!お前達の身に付けているものは飾りかぁ!?遠慮なくかかってくるがいい!」
我は声を大にして周囲にまだいるであろうロサリオ騎士団を煽る。
すると向こうは少しして先ほどの数倍の数が姿を見せて自分の武器をこちらへと向けて構える。
まるでコンサートに集まった観客のように騎士も兵士も混じった集団を前にこちらも雑魚狩りはシャッテンに任せてオガコ、ラオブそしてゾドラを呼んで六体パーティーを作れば腕を組んで堂々としながら我は言ってやった。
「せいぜい我々を楽しませろ。抗え、踊れ、そして敗北を実感しながら散るがよい!震えて眠るではなく、枯れ木のように砕け散れ!我は大魔将軍!貴様らの敵である!」
さあやろうではないか!
ここからがやっと闘争のスタートなのだからな!
『ありがとうございますご主人様。すぐに合流いたします。』
【念間話術】でメディアと通話しながら我は砂漠の上の歩く。
右に砂漠地帯の旅装姿のエイムとシャッテン、左にオガコとラオブ。
更に上空には雲を消してくれたゾドラ、後方にはエルフェンとプルパ率いる大地の守り人軍がいる。
ただエルフェンらは今回戦うことはない。
ざっと一万はありそうな軍勢を相手にこちらは後で合流するメディアを含め総勢七体で相手することになっている。
最後に復活してからこれまでにないくらいの大勢力を相手にするので申し訳ないがミケラはオサカの街で留守番している。
「くくく、今までにないくらいオモチャの山じゃの。あれなら妾の製作途中の芸術品が完成出来そうじゃ。」
「はいはい、ゴーレムに関しては好きにしろ。もっとも、残せればの話だがな。」
意気揚々としているシャッテンにそう告げれば我は改めて正面を見る。
先頭を量産型ゴーレムでガチガチに固めているつもりでいる連中の考えはわかる。
大方こちらがけしかけるだろう大軍を防いでみせる自信の表れだろう。
それが向こうにとっての最初の失敗だ。
中途半端な大きさで動きの遅いゴーレムを先頭に出したことで歩兵は視界を遮られているはず。
さらに探知機は大破したはずなのでより我々の動きを予想するのは難しいことだろう。
「では作戦を開始する。始めよラオブ。」
「承知しました。」
指示を伝えてあげたラオブは早速自身の前に風属性の魔方陣を展開させつむじ風を発動させる。
つむじ風は徐々に渦となり砂漠なので砂も巻き込んで成長していけば巨大な砂嵐となって敵前線へと襲いかかる。
無論この程度では結界等で大した被害は出せない。
砂嵐はあくまでも前線の敵への目潰しだ。
「お待たせしました御主人様。」
砂嵐が敵前線を襲っている間にメディアが到着してくれたので更にエイムとオガコを呼ぶと再び【念間話術】を使う。
『エイム、オガコ、ゾドラ、メディア。久しぶりにやるぞ!フォーメーション〔MMID〕だ。』
「オッケー!」
「よっしゃあ!久しぶりに粉砕してやるぜ!」
『旦那様の仰せのままに。』
「我が主を阻む者に無慈悲を…。」
ザザッ!とすぐ近くにきて意気込みを見せるエイムとオガコ、冷静に返し魔銃槍を構えるメディアと上空から返してくるゾドラ。
こういうやり取りとこの作戦をこの世界で使うのも十年と復活までの五十年を足して六十年ぶりになるかもな。
あの時も数ばかりの軍勢に時間と兵を使いたくなかったからと遠距離攻撃を得意とする眷属二十名を集め一気に全滅してみせたものだ。
今回はこちらの数は少ないが全員が最上位級なので大差はない結果となることを願う。
「え?え?何をするのだ大魔将軍?」
「お前も大技を用意しとけシャッテン。【鎧変形・一斉射撃】!」
スキルで鎧を変形させれば両肩に大型二門、両上腕とふくらはぎあたりに中型それぞれ二門、左右の腰に小型三門の計十六門。
そして漆黒の大盾を固定式重機関砲に変形させたのを持った出で立ちになった我は砂地に両足を足首まで埋める。
エイムは空へ両手を上げ左右に開くように動かすと火、風、土属性の魔方陣を展開し合属魔法の準備に入る。
オガコは先に支援魔法を使いこちらの魔法攻撃力を上昇させると自身の得物を肩に乗せ二段階目へと変形させて魔力を練り始める。
メディアは下半身でとぐろを巻いて安定させると魔銃槍を構え射撃の準備に入る。
ゾドラも空で火属性と闇属性の魔方陣を六つも展開させ複合する。
そしてシャッテンも全て理解はしていないが闇属性の魔方陣を自身の真上に展開した。
「総員!我の合図で放て!」
魔力を砲身へと充填させていきながら言えば各々もスキルを放つ準備を始める。
そして全ての火器に魔力の充填を終えた我は言った。
「消し飛べ!【漆黒の弾嵐】!!」
我の全砲による一斉掃射を合図に他の者らも後に続く。
「いっけー!【メテオレイン】!」
「おお!【蒼鬼炎斬】!!」
エイムは合属魔法で生み出した大量の燃え盛る岩を山なりに放って降らしてやり、オガコは青く燃え上がる斧を横一線に振って円盤状の斬撃を放つ。
「塵になりなさい、【邪龍の息吹き】。」
「外さない、【眼銃・炸裂】。」
空にいるゾドラは邪炎の火球を連射し、メディアは素早く引き金を数回引いて射撃する。
「ぬぬぬ【シャドウバースト】!」
そして回りに遅れて最後にシャッテンは影魔法の中級範囲魔法である簡単に言うなら影の花火玉を飛ばしてみせた。
こちら側の攻撃がラオブの作った砂嵐を貫通して敵陣営へと届いた数秒後に砂漠地帯で大爆発…というか映画で言うところ複数の爆発からの核爆発みたいなのが起きキノコ雲が上がった。
爆発による爆風で逆にこちらへと砂塵が舞ってきたので回りを含めて障壁を展開させ防いであげながら形態を戻して向こうの様子を見る。
さすがは我を含めた大ボス達による一斉攻撃。ここまでの大大爆発を見れるとは爽快である。
しかも場所が砂漠地帯なので自然破壊とか気にしないで済むから全く心が痛まない。
爆発の中で結界が割れる音も聞こえてきたので間違いなく敵前線に大ダメージを与えられたことだろう。
「メディア、被害の程は?」
「はい御主人様。確認したところ敵陣営の約三割の生命反応が消失しました。」
爆煙と砂塵で視認できない中でも偵察可能なメディアに尋ね成果を聞く。
三割も削れたならば今頃前線は大混乱であろう。
ちなみにフォーメーションMMIDとは[マジで面倒くさいから一気にデストロイ]の略称である。
だがここで手を止めるつもりはない。
何故ならこちらは悪役なのだからである。
『ゾドラ、上から何が見える?』
『はい、工場が強力な結界によって無事なのが見えます。』
まずは【念間話術】で上空にいるゾドラに工場の様子を尋ねて聞けば工場全体は無事なのだと返事が返ってくる。
さすがは戦う場所に選んだだけあって防衛力だけは立派なものらしい。
ならば結界を出している間に前に出るだけだ。
「ちょっとちょっと大魔将軍や!あれじゃあ妾のおもちゃが残らないではないどすか!?」
「そう怒るなシャッテン。消し飛んだのは前線のゴーレムだけだし、工場全体は無傷のようだぞ。」
爆発の規模を見て不満を口に出してきたシャッテンを宥めながら前に出ることを決め皆に指示を伝える。
「エイム、向こうまで我々の足になってくれ。ゾドラは引き続き上空から援護を。」
指示に二体が返事すればエイムは姿形を変化させて前世で言うところのコンテナハウス並の大きなサソリに成ってみせる。
そのエイムに我とオガコとメディア、呼び掛けにすぐ来てくれたラオブはすぐに飛び乗った。
我々が乗ったところで尋ねる前に自力で行くと言って先に向かったシャッテンを追いかけるようにエイムは前進を始めた。
工場へと向かっている間に我はオガコとメディアに指示する。
「よいか?オガコとラオブは前線近くにいたはずの雑魚狩りを。メディアは我とエイムでパーティーを組みロサリオ騎士団の生き残りを叩く。奴らの戦法は覚えているな?」
「おう!もちろんだぜ親分!」
「ぬかりはありません。敵の装備に関してもしっかり記憶しております。」
「うむ、ならば必ず組んで行動せよ。戦果を期待している。」
短めに話を済ませるとエイムから砂塵の中に入るよと言われたので我は二体と一緒に入れるくらいのドーム状の結界を展開させる。
少しの間砂塵を防いでから抜けると視界いっぱいにゴーレムの残骸と人間族の死骸が砂地の上に転がっていた。
すると前方からシャッテンのうひゃあっ!?という悲鳴っぽい声が聞こえてきたので見ればオガコと一緒に声を漏らす。
何故ならシャッテンの頭上を遥かに越えて光属性を発する網がしかも三つ展開されており今にも彼女を捕らえようとしていた。
「拘束魔法かあれは?」
「そのようです。装置が砂の中にあります。」
さながら投網に掛かる魚になってしまおうとするシャッテンを前方に装置を見つけたメディアには狙撃を、エイムには救出を命令した。
命令にすぐにメディアは魔銃槍を構えて引き金を三回引いて射撃する。
放たれた三つの弾丸は飛んで砂の中に消えると三つの小さな爆発が起きて光属性の網が消滅した。
その前にエイムはサソリの左手のハサミをロープが付いたロケットパンチみたいに真っ直ぐ伸ばしてみせる。
伸びたハサミは背後からシャッテンを捕らえると伸縮してその場から脱出させてあげてみせる。
「はぐぅっ!?何すんでありんすかバカスライム!妾を挟むなんて無礼な!」
「うるさいなぁ。引っ張ってあげなきゃ罠に嵌まるところだったじゃん。大人しく乗っててよ。」
挟まれたまま文句を言うシャッテンに呆れるようにエイムは返すと我の隣へと降ろした。
まあ罠に掛かる前にメディアが装置を破壊してくれたのだが、口には出さないでおこう。
正直言ってあれほど大型の拘束魔法に捕らえられたらいくらシャッテンでも抜け出すのに十数分くらいはかかりそうだったからな。
「おいエイム、砲撃が来てるぜ。」
そこでオガコが右手で軽く空を指差して教えてくれたので見れば色とりどりの砲弾が飛んできていた。
前回のような無属性のみというわけではないのでさすがに【魔法反射壁】では全てを防ぎきれない。
「ゾドラ、撃ち落とせ。」
『はい旦那様。』
なのでゾドラに指示すると少しして上から砲弾を正確に何かが貫くと昼間に花火が咲いた。
轟音が響く中、花火の下を通り抜けてからエイムに止めてもらうと皆と一緒に砂地へ降り立つ。
視界にはゴーレムの残骸や歩兵の死骸が転がっており、かろうじて生きている者は何が起きたわからないという感じで場は大混乱していた。
「では、行動を開始せよ。」
そんな者らへとこちらは一方的に討ち取りを始める。
意気揚々とオガコは両手斧を振るって粉砕と両断を繰り返し、ラオブは魔法で、シャッテンはゴーレムの残骸を使ったりして歩兵を倒していく。
その光景を横目に我は元に戻ったエイムとメディアを連れて散歩するように前進する。
ここまでくると砲弾も外壁にあるガトリングも誤射を恐れて使いずらいことだろう。
ならばどうするかと言えばとても簡単な話だ。
「…御主人様。右側に十人、左側に十四人です。」
「お出まし、ということだな。」
メディアが小さく伝えてくれたので我はそこで足を止める。
次の瞬間、ゴーレムの残骸の中から飛び出す形で十人の騎士が剣や槍等の武器を振りかぶって現れ、立ち上がる形から七人の魔法使いが光属性の魔方陣を展開させる。
「【眼銃】・円射…。」
「そおれ【グラビティプレッシャー】。」
しかしメディアが神眼を開きくるりと回りながら細く散らばる光線を放つと受けた騎士や魔法使いは麻痺の状態異常に陥り、すかさずエイムが闇属性魔法による重力波をドーナツ状に発動させて地面に敵を押さえつける。
そこをすかさず我とメディアは射撃で魔法使いから先に討ち取り次にエイムが雷撃で騎士らを感電死させる。
こちらが言う前に対応してくれるなんて本当に頼りになる眷属らよ。
それにしてもロサリオ騎士団も質が落ちたものだ。
数と道具に任せて無闇に攻めようなんてちゃんと訓練しているのか?
まあ他よりちょっとレベルが上程度のしかも人間族だけの騎士団では我々と大差があるのは仕方ないか。
「すぅ…どうしたぁ!お前達の身に付けているものは飾りかぁ!?遠慮なくかかってくるがいい!」
我は声を大にして周囲にまだいるであろうロサリオ騎士団を煽る。
すると向こうは少しして先ほどの数倍の数が姿を見せて自分の武器をこちらへと向けて構える。
まるでコンサートに集まった観客のように騎士も兵士も混じった集団を前にこちらも雑魚狩りはシャッテンに任せてオガコ、ラオブそしてゾドラを呼んで六体パーティーを作れば腕を組んで堂々としながら我は言ってやった。
「せいぜい我々を楽しませろ。抗え、踊れ、そして敗北を実感しながら散るがよい!震えて眠るではなく、枯れ木のように砕け散れ!我は大魔将軍!貴様らの敵である!」
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