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進展
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あれから、婚約者と関わらずにのんびり過ごす日々が幸せすぎて……決断した自分を本気で褒め讃えたい。
ーー私、えらい!
ちなみに、そろそろ婚約者の顔もぼんやりとして思い出せない感じになってきつつあるのは、内緒だ。
シャリィの情報によると、第二王子殿下のところには、私との不仲がさらに広まったせいか、令嬢や令嬢の親が集まっているとか。
ま、今迄何だかんだ言って第二王子殿下が出席する会には、私が必ずいたもんね。……私が居ても、殿下はいないことが多……うん、いや、まあ。
このままってわけにはいかないのも、わかってるんだけど……。
「召集令状?」
執事から渡された封筒は、第二王子殿下からのもの。
「お嬢様……。気持ちはわかりますが、招待状です」
こほん、と咳払いで非難された。
「……お茶会?」
開いた招待状には婚約者のお堅い文字が簡潔に綴られていた。
今更、二人でお茶会?
「何のために?」
思わず口からこぼれてしまったかと思ったけど、呟いたのはロボスだった。
「もしかして、今更、焦りだしたんですかね~?それとも、色んな所に一人で参加してお嬢様のありがたみがわかった、とか?」
それこそ本当に『今更』よね?
お誘い、断るわけにはいかないしなぁ。
残念なことに、その日は用事もない。むこうは調べてから誘っているんだろうけど、話すことないよね?
「お茶飲みに行くだけでいいんじゃないですか?」
「殿下とのお茶会なら、豪華なお茶請けもでるのでは?」
確かに。ラミアの言う通り殿下とのお茶会では普段食べられない豪華なスイーツが出る。
いいパティシエを抱えてるのかな?羨ましい。
そういえば、こないだの執務室にあったお茶セットも、豪華なのが並んでたな。
「せっかくだし、ご馳走されて、さくっと退場しましょうか」
「それが宜しいかと」
執事がレターセットを準備してくれる。
「あそこでしか、味わえないものもごさいますわ、色々と」
ラミア、生ぬるい笑顔ね。ちょっと怖いんだけど。
「今更悔いても遅い、と思い知られるべきでしょうね。散々お嬢様を蔑ろにしてきたのです。ここで、相手にされない辛さを味わえばいいのでは?」
えっと、ラミア?その呟き、しっかり聞こえてるんだけど。
「いいですねー。俺もご相伴に預かってみたいな~。王子殿下がいらっしゃらないなら、遠慮なくお邪魔できるんですがねぇ。顔だけ見せて、お土産としていただけないのかな?」
「お土産をいただくなら、お嬢様が態々王子殿下と同席する必要が無くなってしまいますわ。勿論、それも宜しいかと」
さすがにそういうわけにはいかない。けど、話すこと、ない……し?
ーーえ、やばい、本当に何の話題を振ればいいの?!
最近夜会に出てることを聞く?それで、街道の件に触れられても、困るか……。辺境が街道の管理から手を引いたのはお父様の意向だし、私がどうこうできないしなー。
考えておかないと……。
「お嬢様?」
考え込んだ私が気になったのか、執事が問いかけてきた。
「いえ、何の話をすればいいかなって……」
「……今までのお茶会は、どのようなお話を?」
ちょっと戸惑いを隠せなくなった執事が、恐る恐る聞いてきた。そういえば、婚約者とのやり取りを伝えたことなかったっけ。
「特に、なにも?」
信じられない、という表情でロボス達を振り返った執事に、二人ともしっかり頷いた。
「挨拶して、こっちが話し振って、むこうが何か言って、あとは無言になって、あっという間におわるのよ」
執事は絶句してしまった。
そりゃ、最初の頃は頑張って話題を振ってたけど、そっけないし話を膨らませて貰えないし、気づいたらそんな感じになってた。
あー、着いてしまう……。
馬車がゆっくりと速度を落とし、停まる。ロボスが立ち上がり扉を開けた。
あああ、着いてしまった。
安全を確認したら、ロボスがエスコートをしてくれるのよね。
いつも通り(?)このまま執務室へ向かえばいいんだっけ?
会場の場所がわからないから、とりあえずいつも殿下のいらっしゃるところへ……ロボス?
「降りないの?」
扉の前から動かないので後ろから声をかけたら、驚きの表情のまま振り返ったロボス。
「……げ」
思わず、こぼれた声。
目があってしまった……婚約者と。
二、三度無理矢理瞬きをして、ロボスをチラリと見やった。はっと我に帰ったらしく、素早く馬車を降りて脇に控える。
正しい護衛の立ち位置、なんだけど。そこにロボスが居るのを初めて見たからか、違和感しかない。
「は……お迎え、ありがとうございます」
やばい、初めてのって言いそうになった。
差し出された手をとって馬車を降りると、殿下の護衛と侍従が礼をとって控えていた。
なんだろう。この、初めての馬車から婚約者扱い。……いや、初めてでもない?
デビュタントはーー控え室に集合だったな。その他の……うん、やっぱり初めてだわ。馬車まで迎えに来て貰えたの。
ーーえ?!何事?
「よく来てくれた」
ーーヨクキテクレタ?
え、よく来てくれたって言った?
思わず、ロボスや殿下の侍従、護衛を順に見回した。ロボスは平静を装いきれず、目に驚きが現れてる。なんだろう、未知との遭遇って感じかな……?
侍従や護衛は子どもを見守るかのようの生暖かさだし。
ちょっと照れたような不貞腐れたような顔してるけど、確かに殿下のお言葉。
「ありがとうゴザイマス」
やばい、片言になってしまった!
あまりに予期せぬ未知との遭遇に動揺せざるを得ない。
殿下、歓迎の言葉、言えたんだ。
恐らく私とロボスの思いは一緒だろう。
お茶会は中庭なのか、そのまま広い廊下をエスコートされる。すれ違う使用人や文官や武官が一瞬目を丸くしてから頭を下げるのも、当然と言えば当然。明日は大雪でも振るのか、槍でも振るのかという珍しい光景だし。
ーーいや、まて、私。
世の婚約者はこれは普通だし、お出かけや贈り物なんて当たり前。
視界にぎりぎり映った殿下の侍従が、驚く人々をみて、やっぱりって顔をしてる。
用意されたのは、王族のみが使用する完全プライベート庭園。
私、ここ入ったの初めて。
他の王族の婚約者は知らないけど、プライベートエリアなんて来たことない。
つい、周りをちらちら見てしまった。
さすがというか、上品で穏やかに過ごせるような落ち着いた空間。
「その、……この辺りに来るのは初めてか?」
「はい」
あんたが、誘ってくれたことないんだから、来たことないの当たり前だろ!
思わずイラッとして冷たく返事しまった。
ちょっと焦りだした殿下は、気まずげに目をそらしてそのまま会話を続けるのをやめたようだ。
まーこれも、いつものことっちゃあ、いつものことかなー。はははー。
今、背後でぼそっと会話のキャッチボールとかいったやつ、殿下とやってみろ。仕事の話以外で。
しばらく歩いた庭園の奥にかわいいテーブルと椅子があり、侍女が控えていた。
席までの完璧なエスコート。美味しいお茶とプチフール。素晴らしい景色。目の前には無言で茶を口にするイケメンの婚約者。
5分程経過したかなー。あと10分くらいで帰っていいかなー。
殿下のはるか後方に控える侍従がすがるような眼差しをむけてきてる。私じゃなくて、殿下にすがって欲しい。
「ところで、本日のご用件をお伺いしたいのですが」
仕方なしに口にした。
「あ、ああ。その……来月、姉上が夜会を主催されるのだが」
ああ、そういえば、そんな時期か。
さすがに身内の夜会には私を伴わないといけないんだろうけど。
「私は、いつものように一人で参れば宜しいのですね」
殿下の後方にいるもの達が一斉に蒼白になった。お前、私をエスコートしないだろ、いつも!って嫌味が通じたらしい。
背後でロボスが笑いを堪える気配がする。
「ちっ、ちがっ、違う!」
あら、珍しい。殿下が慌てて否定していた。
ーー私、えらい!
ちなみに、そろそろ婚約者の顔もぼんやりとして思い出せない感じになってきつつあるのは、内緒だ。
シャリィの情報によると、第二王子殿下のところには、私との不仲がさらに広まったせいか、令嬢や令嬢の親が集まっているとか。
ま、今迄何だかんだ言って第二王子殿下が出席する会には、私が必ずいたもんね。……私が居ても、殿下はいないことが多……うん、いや、まあ。
このままってわけにはいかないのも、わかってるんだけど……。
「召集令状?」
執事から渡された封筒は、第二王子殿下からのもの。
「お嬢様……。気持ちはわかりますが、招待状です」
こほん、と咳払いで非難された。
「……お茶会?」
開いた招待状には婚約者のお堅い文字が簡潔に綴られていた。
今更、二人でお茶会?
「何のために?」
思わず口からこぼれてしまったかと思ったけど、呟いたのはロボスだった。
「もしかして、今更、焦りだしたんですかね~?それとも、色んな所に一人で参加してお嬢様のありがたみがわかった、とか?」
それこそ本当に『今更』よね?
お誘い、断るわけにはいかないしなぁ。
残念なことに、その日は用事もない。むこうは調べてから誘っているんだろうけど、話すことないよね?
「お茶飲みに行くだけでいいんじゃないですか?」
「殿下とのお茶会なら、豪華なお茶請けもでるのでは?」
確かに。ラミアの言う通り殿下とのお茶会では普段食べられない豪華なスイーツが出る。
いいパティシエを抱えてるのかな?羨ましい。
そういえば、こないだの執務室にあったお茶セットも、豪華なのが並んでたな。
「せっかくだし、ご馳走されて、さくっと退場しましょうか」
「それが宜しいかと」
執事がレターセットを準備してくれる。
「あそこでしか、味わえないものもごさいますわ、色々と」
ラミア、生ぬるい笑顔ね。ちょっと怖いんだけど。
「今更悔いても遅い、と思い知られるべきでしょうね。散々お嬢様を蔑ろにしてきたのです。ここで、相手にされない辛さを味わえばいいのでは?」
えっと、ラミア?その呟き、しっかり聞こえてるんだけど。
「いいですねー。俺もご相伴に預かってみたいな~。王子殿下がいらっしゃらないなら、遠慮なくお邪魔できるんですがねぇ。顔だけ見せて、お土産としていただけないのかな?」
「お土産をいただくなら、お嬢様が態々王子殿下と同席する必要が無くなってしまいますわ。勿論、それも宜しいかと」
さすがにそういうわけにはいかない。けど、話すこと、ない……し?
ーーえ、やばい、本当に何の話題を振ればいいの?!
最近夜会に出てることを聞く?それで、街道の件に触れられても、困るか……。辺境が街道の管理から手を引いたのはお父様の意向だし、私がどうこうできないしなー。
考えておかないと……。
「お嬢様?」
考え込んだ私が気になったのか、執事が問いかけてきた。
「いえ、何の話をすればいいかなって……」
「……今までのお茶会は、どのようなお話を?」
ちょっと戸惑いを隠せなくなった執事が、恐る恐る聞いてきた。そういえば、婚約者とのやり取りを伝えたことなかったっけ。
「特に、なにも?」
信じられない、という表情でロボス達を振り返った執事に、二人ともしっかり頷いた。
「挨拶して、こっちが話し振って、むこうが何か言って、あとは無言になって、あっという間におわるのよ」
執事は絶句してしまった。
そりゃ、最初の頃は頑張って話題を振ってたけど、そっけないし話を膨らませて貰えないし、気づいたらそんな感じになってた。
あー、着いてしまう……。
馬車がゆっくりと速度を落とし、停まる。ロボスが立ち上がり扉を開けた。
あああ、着いてしまった。
安全を確認したら、ロボスがエスコートをしてくれるのよね。
いつも通り(?)このまま執務室へ向かえばいいんだっけ?
会場の場所がわからないから、とりあえずいつも殿下のいらっしゃるところへ……ロボス?
「降りないの?」
扉の前から動かないので後ろから声をかけたら、驚きの表情のまま振り返ったロボス。
「……げ」
思わず、こぼれた声。
目があってしまった……婚約者と。
二、三度無理矢理瞬きをして、ロボスをチラリと見やった。はっと我に帰ったらしく、素早く馬車を降りて脇に控える。
正しい護衛の立ち位置、なんだけど。そこにロボスが居るのを初めて見たからか、違和感しかない。
「は……お迎え、ありがとうございます」
やばい、初めてのって言いそうになった。
差し出された手をとって馬車を降りると、殿下の護衛と侍従が礼をとって控えていた。
なんだろう。この、初めての馬車から婚約者扱い。……いや、初めてでもない?
デビュタントはーー控え室に集合だったな。その他の……うん、やっぱり初めてだわ。馬車まで迎えに来て貰えたの。
ーーえ?!何事?
「よく来てくれた」
ーーヨクキテクレタ?
え、よく来てくれたって言った?
思わず、ロボスや殿下の侍従、護衛を順に見回した。ロボスは平静を装いきれず、目に驚きが現れてる。なんだろう、未知との遭遇って感じかな……?
侍従や護衛は子どもを見守るかのようの生暖かさだし。
ちょっと照れたような不貞腐れたような顔してるけど、確かに殿下のお言葉。
「ありがとうゴザイマス」
やばい、片言になってしまった!
あまりに予期せぬ未知との遭遇に動揺せざるを得ない。
殿下、歓迎の言葉、言えたんだ。
恐らく私とロボスの思いは一緒だろう。
お茶会は中庭なのか、そのまま広い廊下をエスコートされる。すれ違う使用人や文官や武官が一瞬目を丸くしてから頭を下げるのも、当然と言えば当然。明日は大雪でも振るのか、槍でも振るのかという珍しい光景だし。
ーーいや、まて、私。
世の婚約者はこれは普通だし、お出かけや贈り物なんて当たり前。
視界にぎりぎり映った殿下の侍従が、驚く人々をみて、やっぱりって顔をしてる。
用意されたのは、王族のみが使用する完全プライベート庭園。
私、ここ入ったの初めて。
他の王族の婚約者は知らないけど、プライベートエリアなんて来たことない。
つい、周りをちらちら見てしまった。
さすがというか、上品で穏やかに過ごせるような落ち着いた空間。
「その、……この辺りに来るのは初めてか?」
「はい」
あんたが、誘ってくれたことないんだから、来たことないの当たり前だろ!
思わずイラッとして冷たく返事しまった。
ちょっと焦りだした殿下は、気まずげに目をそらしてそのまま会話を続けるのをやめたようだ。
まーこれも、いつものことっちゃあ、いつものことかなー。はははー。
今、背後でぼそっと会話のキャッチボールとかいったやつ、殿下とやってみろ。仕事の話以外で。
しばらく歩いた庭園の奥にかわいいテーブルと椅子があり、侍女が控えていた。
席までの完璧なエスコート。美味しいお茶とプチフール。素晴らしい景色。目の前には無言で茶を口にするイケメンの婚約者。
5分程経過したかなー。あと10分くらいで帰っていいかなー。
殿下のはるか後方に控える侍従がすがるような眼差しをむけてきてる。私じゃなくて、殿下にすがって欲しい。
「ところで、本日のご用件をお伺いしたいのですが」
仕方なしに口にした。
「あ、ああ。その……来月、姉上が夜会を主催されるのだが」
ああ、そういえば、そんな時期か。
さすがに身内の夜会には私を伴わないといけないんだろうけど。
「私は、いつものように一人で参れば宜しいのですね」
殿下の後方にいるもの達が一斉に蒼白になった。お前、私をエスコートしないだろ、いつも!って嫌味が通じたらしい。
背後でロボスが笑いを堪える気配がする。
「ちっ、ちがっ、違う!」
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