上 下
179 / 325
気持ちは変わるもの

38

しおりを挟む
 千紘は樹月にもわかりやすく言葉を追加する。

「樹月は俺じゃなくて他の男と幸せになりなよって言われても無理なんでしょ?」

「……うん」

「それと同じ。樹月と別れたばかりの時は単純に一緒にいても上手くいかないっていう理由だけだった。でも今は違う。俺には好きな人がいて、その人以外考えられないから」

 ただ男2人の会話を聞いているだけのはずが、その内容の中心が自分なだけに凪は急に恥ずかしくなった。
 何を見させられてるんだ……と疑問まで湧いてくる。

 面と向かって好きだと言われてその好意が本物であることは知っていた。けれど、内心どこかでは男同士の恋愛が現実的ではなくて好きという感情も一時のものなんじゃないかなんて思っていた。
 それなのに他人に向かって自分のことが好きで、自分以外考えられないなんて言われたら今までの千紘の言動が全て本物だと再確認させられた。
 同時にこんなに愛されることがあったかな……なんて思ってしまう。

「でも、ソイツは千紘のこと好きじゃないんだぞ!? 付き合ってもないし、振り向いてもらえないのに好きでいたってしょうがないじゃん!」

 樹月は苦し紛れにそう叫んだが、千紘と凪は同時に目を点にさせた。その言葉をそっくりそのまま樹月に返してやりたいと思った。

「理解できてるなら自分がそうしたらいいのに」

 口を開いたのは千紘よりも凪の方が早かった。普段、女性に対しては言葉を選ぶ凪も仕事から離れて相手が男性ともなれば自然と頭に浮かんだ言葉がそのまま飛び出してしまった。

「……は?」

 正論を述べる凪とは反して、樹月は思いっきり顔を歪めて凪を睨みつけた。千紘はと言うと、そんな樹月と凪を交互に見つめて思わずぶっと吹き出してしまった。

 ははっと笑う千紘に樹月は目を見張る。こんなふうに笑っているところを見るのは何年振りだろうかと思えるほど、懐かしい表情だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...