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新しい風

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 依の好きを押し付けて、真白はそんな依とセックスをした。亜純にとっては悠生の時のように心底胸が踊るよなトキメキを感じた恋ではなかった。
 けれど、徐々に好きにはなれた。真白を抱いた過去があることに憤りを感じるほどには。依の子供が欲しいと望むほどには好きになれたのだ。

 亜純は自分ばかりが他人の敷いたレールの上を進み、自分が望む恋愛ができなかったのだと嘆いた。
 結局のところ、望みが叶ったのは依だけだ。それでも卑怯な手を使って嘘をつき続けた結果、その関係は永遠とはいかなかった。

 真白は自ら亜純を依に委ねた。恐らく真白にとっての亜純は、亜純が悠生を想うよりもよっぽど純粋で大きな愛情だったはず。
 しかし、自らの想いを告げることすら諦めて、到底好きになれるはずのない依に譲ったのだ。それも亜純のことが誰よりも好きだということがわかったからだ。

 もしも悠生がまともな人間だったら、自分は悠生の幸せを願って身を引くなんてことがあっただろうかと考えた。
 自分ばかりが幸せになることを願い、相手の幸せを1番に考えたことはなかった。

 依に対してもそうだ。子供がほしいのは亜純の希望であり、亜純の幸せだ。依の幸せは亜純と2人でいることだった。
 双方が互いの幸せを願うことができたら、きっとまだ一緒にいられたはずだった。でもそうはならなかった。自分の幸せを願ってはくれない相手の幸せを願う気持ちにはなれないからだ。

 誰だってそうだと亜純は思うが、真白は違った。自分が幸せになることよりも、亜純が幸せになることを願って身を引き、亜純がこれ以上傷付かないように去ったのだ。

 真白が依の想いを確かめる方法は正しいとは言えない。しかし、依がその後も真白を求めるような男だったなら真白は決して亜純に近付けさせなかっただろう。
 悠生のような男性を排除していくという目的においては随分と手間をかけた見極め方である。

 亜純はもう送信できなくなってしまった真白に対し、泣きながら何度も送信ボタンを押した。
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