上 下
193 / 243
愛情は感じるもの

18

しおりを挟む
「さすがに亜純先生の彼に声をかけるのは気まずくて、そのお友達に話しかけたの。あの時一緒にいましたよねって。そしたらね、その人、亜純先生の彼とは友達じゃないって言ったの」

 美希の言葉に亜純はこれでもかって程目を見開いた。問題は悠生の友人が別の会場にいたことではなく、友人だと思っていた2人が赤の他人だったことだ。

「え、美希先生……それってどういうことですか?」

「ネットで知り合ったんだって。元々来るはずだった友達がこれなくなって、でも事前に申し込みをしちゃってあるからネットで行ける人を募集したみたいなの。そしたら亜純先生の彼から連絡がきて一緒に参加したってわけ」

「それじゃ、その人もその時に初めて会ったってことですか?」

「うん。だから、登録していた名前はその人の本当の友達で、亜純先生の彼は全く別の人ってこと」

 亜純はさあっと血の気が引いた。新井悠生という名前ももっと言えばプロフィール自体が全て嘘だったということだ。だとしたら、今まで自分が一緒にいたのは誰だったのかと急に恐ろしくなった。
 亜純は慌てて電話を繋げたまま、先程撮った車検証を見返した。とにかく逃げることに必死で名前など確認していなかったが、名前の欄には奥川おくがわ 勇人はやとと書かれていた。年齢も亜純よりも2つ上だと聞いていたのに実年齢は5つも年上だった。

「え……」

 ついこぼした声に、美希が電話越しに「亜純先生大丈夫?」と心配そうに声をひそめた。

「あの……私。さっきまで一緒にいたんです」

「えぇ!? ねぇ、何もされてない? 話には続きがあってね。私が亜純先生の彼のことをその男性に聞いてたら、あとから話しかけてきた女の人がいて、昔結婚詐欺にあったって言ったの!」

 美希の言葉にああ、やっぱり……と納得したものの、亜純はもう少し早く知りたかったと目頭を押さえた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】旦那様の愛人の子供は、私の愛し子です

恋愛 / 完結 24h.ポイント:333pt お気に入り:2,925

悪役王子に転生したので推しを幸せにします

BL / 連載中 24h.ポイント:355pt お気に入り:5,755

アルコールとお砂糖

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

JKがいつもしていること

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:8

BLINDFOLD

BL / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:353

【 異能の転生者 】勇者への道、救世主への道、英雄への道……

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:63pt お気に入り:339

拝啓、殿下♡私を追い出して頂いて感謝致します【完結】

恋愛 / 完結 24h.ポイント:6,404pt お気に入り:2,240

処理中です...